4月17日(土)


 昨晩、録画しておいた『永遠のアトム 手塚治虫物語』をやっと観ることができた。
 主演の奥田瑛二さんが、手塚治虫さんに似ているのには、びっくりを通り越して、
不思議を感じたほどだ。
 ドラマとしては、アニメまでミックスして、ほとんど陳腐のほうに片足突っ込んで
しまってる部分も多かったけど、身につまされる話が多くて、けっきょく感動して
しまった。
「漫画は本妻で、アニメは愛人なんだよ! 愛人はお金がかかるんだよ!」
 まるで『チョコバナナ』のことを言われてるみたいだった。
 手塚治虫先生にお会いした日々も思い出してしまうから、冷静に見れないね、この
作品は。

 午前11時30分。新宿駅南口。
 駅構内の「I」で食事。ハンバーグ丼なる珍奇なメニューがあるので入ったのが運
のツキ。
 ピラフのような炊き込みご飯の上に、ハンバーグ、大根おろしに、イクラが乗って
いるというと美味しそうでしょ?
 でもやっぱり駅構内の軽食って絶対まずいよね!
 わざとまずくしないといけない決まりでもあるんじゃないかと思うくらいだ。
 まず、すでにイクラが白い! 鬼太郎の目玉おやじが並んでいるようだ。おまえに、
ゼリーのような味。まさに人造イクラ。
 そして、メインのハンバーグ。
 思わず学食のハンバーグを思い出させる味。
ハンバーグ丼
   まずくはないが、決して美味しくないハンバーグの味だ。  だいたい料理の上に、煮たサヤエンドウがちょこんとのってるやつって、こういう B級の味になることが多い。  まあ、いいや。まずい料理のことで、こんなに長く話をすることない。  今から私と嫁は、甲府まで、桃を見に行くのだ!  桃は先週が満開だったそうだけど、まだまだ咲いているところもあるという情報だ ったので行くことに。  と、そこに電話!  グルメ・バカ娘だ! 「カギ、忘れた…!」  またかいっ! もうこっちはあと10分で、電車に乗るんだから、もう無理だ!  いつもそうなんだから、自分で工夫しなさい!  だいたいきょうは学校の友だちと遊びに行くというから、こっちは甲府に行こうと してるんだ。  というわけで、哀れ、グルメ・バカ娘は制服姿のまま取り残されることに。  午後12時。スーパーあずさ7号。  例によって、電車のなかは仕事場。 『さくま式人生ゲーム2(仮)』の「あらすじ」の最終的なまとめに入る。  調子いいぞ! チューニングが大変そうだけど、おもしろくなりそうだ! これで 行けるぞ!  午後1時31分。甲府駅着。  ゆっくり桃を見て、美味しい物でも食べて帰ろうと思ってたのに、またグルメ・バ カ娘のカギ忘れたシリーズのために、予定を変更。  桃を見て回れる時間は、2時間とちょっとになってしまった。  甲府というと、最近イチ押しの青山「穂積」の本店がある。  この本店で食べて帰ってやろうと思ってたのに、まただ!  グルメ・バカ娘を連れて行かないと、絶対美味しいお店で食べることができなくな る。  今回もだ。  とにかく急いで見て回るために、タクシーで行くことに。  きょう乗ったタクシーの運転手さんがやたらと花に詳しい人で、桃と桜とすももが 同時に咲いている場所に連れて行ってくれるという。これはラッキー!  先週が桃の満開だっただけに、平地の桃の木はすでに花が落ちてしまったあと。  ところが甲府盆地というくらいで、山のほうに向かうと、寒暖の差が激しくて、上 に向かえば、向かうほど、桃の花が咲いている。  御坂(みさか)町というところの街道沿いの一軒の家の桃が、特別大きくて、濃い ピンク色になっていて、ここだけ観光客が群れている。
 どういうわけか、近所の農園とは、ファミコンの画像と、プレステ2ほどの差があ るくらい、この家の桃は、鮮やかな紅に近いピンク色だ。  桃がこんなにきれいだとは思ってもいなかった。  というより、若い頃、桃も梅も桜も、区別がつかなかったような気がする。年を取 ると、花が美しいと感じるようになるもんだなあ。  このあと桜と桃が両方咲く通りをめぐる。 「売地」と書いてあった。  この土地を買うと、桜もついてくる。  最近桜のある家が贅沢に思えて来たけど、甲府に引っ込むのはさすがにねえ。  未練がましく、記念撮影。
   続いて、運転手さんは、一宮町の「見晴らし園」へ連れて行ってくれた。すでに桃 の盛りは過ぎてしまったために、絶景とはいえないが、まあまあ気持ちのいいところ。  それより、この「見晴らし園」で食べた桃のソフトクリームが美味しかった! 意 外なほど上品な味で、原宿で売り出したら、これは売れまっせ。収穫、収穫。  嫁はワインを買ったようだ。ほんの〜りしましょか?
 車はあわただしく、甲府駅へ向かう。  駆け足、駆け足!  電車の時間は、午後3時58分。運転手さんは、午後3時30分に駅に着くことに 意地を張っている。  おもしろい運転手さんだ。八戸出身の石森さん。なかなかいい人だ。街道沿いの花 の名前を次々言えるのは、たいしたものだ。  こういう人との出会いがあるだけでも、旅というのは楽しいものになる。  わずか2時間の旅なのに。  午後3時30分。見事に甲府駅に到着。  甲府駅2Fで、あわびの煮貝も買うことができたあげく、ステラおばさんのクッキ ーとコーヒーまで飲む余裕までできた。  午後3時58分。あずさで、新宿に向かう。  再び『さくま式人生ゲーム2(仮)』の「あらすじ」のまとめ作業。まとめと言い ながら、いよいよ仕様書を書き始めているような気がする。絵の枚数が尋常じゃなく なりそうだ。  午後5時30分。新宿駅着。  八王子駅をすぎると、どうも特急の速度は激減する。  この区間のスピードが落ちなければ、東京b甲府間は、1時間半ぐらいにまでに縮 めることができるんじゃないだろうか?  まあ、在来線の本数が多くて、抜けないから遅くなるんだろうな。  午後6時。帰宅。  のんきな顔をしたグルメ・バカ娘が、手を振って待っている。  これだよ。まるでカギを学校に持っていかなかったことを忘れたかのような笑顔だ。  どうしていたのかというと、近所で1500円のトレーナーを買って、制服を着替 えて、友だちと渋谷まで遊びに行っていたという。  しかも予想したとおりの時間に、私と嫁が帰って来たから、玄関で待った時間はほ とんどないという。  ダメだ。無敵だ。こいつには困らせる責め苦というものが通用しない。いつもなん とかしてしまう。  それにしても、こいつを連れて行かないと、美味しいお店で食事ができなくなるハ メになるのだけはカンベンしてほしい。  ほうとう鍋の「小作」すら寄ることができなかった。  午後7時。青山のしゃぶしゃぶ屋さん「十二段家(じゅうにだんや)」にひさびさ に行く。  実は木曜日、グルメの師匠・すぎやまこういち先生から電話あって、赤坂プリンス ホテルのしゃぶしゃぶの店に行くということを聞かされていたのだ。ところがあのと きは、ちょうど文化放送のラジオの録音と時間が重なってしまったので、ごいっしょ させてもらうことができなかったのだ。  以来、食い意地の張った、バカ家族の胃袋は、しゃぶしゃぶをずっと欲していたの だ。といっても、わずか2日間しかガマンできなかったんだけどね。  しかしこのお店。ひさびさなんだけど、いつ来ても、お客さんがいないので心配に なる。老夫婦ふたりだけでやっている。  京都の老舗の系列店だけに、肉も美味しいのだけれど、これだけ人がいないと、サ ービスがわが家族に集中してしまって、気楽に食事ができなくなってしまう。  午後9時。青山骨董通りから表参道、原宿を抜けて、歩いて帰宅。ひ〜〜〜、疲れ たぞ〜〜〜!  さあ、あとはきょう電車のなかで書いた文章を、ワープロに入力しないと、これが また推敲に推敲を重ねるから、時間がかかる。今晩じゃ終わらないだろうなあ。


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