3月31日(水)


 グルメ・バカ娘は、新しい中学校の登校日とかで、朝からでかけたようだ。
 午後12時。嫁と麻布十番「EDOYA」に行く。
 グルメの師匠・すぎやまこういち先生ご夫妻から、洋食の美味しいお店だということ
を聞いていたので、来てみた。
 ナムコのきっしいサンのオムライスのホームページを見ると、ここのオムライスは、
スパイスが強いと書いてあったので、オムライスは嫁が頼み、私はカキフライを食べる。
 私はハーブとか、香草のたぐいがどうもダメでね。
 まだまだ味覚が子どもなのだ。
 ははは。46歳だぞ。

 でも嫁のをつまみ食いしたら、香りはそんなに強くなくて、私の好きなドミグラスソ
ースの味。嫁はトマト・ケチャップであってほしかったという評価。もう一度この
「EDOYA」に来て、今度は私がオムライスを注文してみよう。

 私が食べたカキフライのほうは、すごいボリューム!
 大きな大きなカキフライが、なんと8個も!
 若い時なら、これだけで大喜びだけど、この年になると、ちょっと尻込みしてしまう。
でもカキのエキスがジューシーで、いい味!
 残念ながらこのカキフライは、季節料理で、きょうが最終日でした。

 食後、麻布十番界隈を散歩。
 はるか昔、20数年前に麻布十番に来たことがあるけど、今はビルや新築マンション
が林立してしまって、まったく昔の町並みが思い出せない。
 下町風の情緒あふれる町で、『こち亀』の両津勘吉さんが歩いていそうな町並みだっ
たような気がするんだけどなあ。

 それでも美味しそうなお店の門構えをチェック!
 美味しいお店は、門構えでわかる!
 …と思っていたら、携帯電話が鳴る。
 グルメ・バカ娘からだ!
 また鍵を持って学校に行くのを忘れたから、玄関の前にいるという。またこれだ!
 中学生になっても、これかいっ!!!
 せっかく麻布十番を探索中というのに!
「これからちょうど、たい焼きを買おうとしてたんだぞ!」
「あっ、じゃあ、たい焼き買ってから、帰って来て!」
 バカヤロー!
 有名な鯛焼き屋さん「浪花屋総本店」で、たい焼きを買って、あわてて帰る。

 午後2時。帰宅。グルメ・バカ娘が、玄関にいない。
 なんと! 並びの喫茶店でしっかり、トーストとココアをごちそうになっているで
はないか! 
 しかも喫茶店のおばさんとすっかり話し込んでいる。
 まったくこいつは、大人と話をすることに、抵抗感が無い。
 豪快さんだ。
 宮路一昭くんから電話が入って、奥さんの尿道結石の石が出たそうだ。よかった、
よかった。
 宮路一昭くんのお父さんは、脳内出血を経験しているし、どうも宮路家とは、同病
親族のようだ。同病親族などという単語は無い。

 午後3時。電話で土居ちゃん(土居孝幸)と新作『桃太郎電鉄』のイラストの打ち
合わせ。
 買って来たたい焼きをつい2個食べてしまった!
 病気する前は、一度に5個ぐらい食べていたので、注意しないと2個などぺろりで
ある。デブというものはそういうものである。
 油断してはいかん。

 午後5時30分。グルメの師匠・すぎやまこういち先生ご夫妻が車で迎えに来てく
ださる。
 先日行って、とっても美味しかった浅草の「美家古(みやこ)寿司」に行く。…と
いうより、この日記を読んでいる人なら、あのすぎやまこういち先生自ら、私の携帯
電話に、着メロを入力してくださったお店と言ったほうがわかりやすい。
 あの日の日記を見直してもらうとわかるが、あの日、私は興奮のあまり、お店の名
前を書くのを忘れていたのであった。
「美家古(みやこ)寿司」である。
 
 ところでこお店の美味しさを、おなじみフランス料理の「プティ・ポワン」のオー
ナー北岡さんにお話したところ、この「美家古(みやこ)寿司」のご主人と旧知の仲
ということが判明。
 それならと、ご存知3家族、7人のグルメ隊。
 名付けて「ウルトラグルメ・セブン」(ちょっとネーミングに失敗したな)で、美
家古寿司に行こうということになった。

 午後6時30分。「美家古(みやこ)寿司」に着く。
 カウンターの席についたら、ご主人から、北岡さんご夫妻がちょっと遅れるという
連絡が入っていた。
 それを聞いた、グルメ・バカ娘が、カウンターのケースの寿司ダネをのぞき込んで
「北岡さん、早く来ないかなあ…」とつぶやく。
 なんと食い意地の張ったガキよ。
 大体ちょっと前に、私とおなじようにたい焼きを2個ほうばったあげく、すぎやま
こういち先生ご夫妻からいただいた大きな大きな高知名産ブンタンを1個食べたばか
りなのだ。

 それにしても、グルメ・バカ娘がいいかげんなのは、美味しいお店に行くと、好き
嫌いが減ってしまうことだ。けっきょく好き嫌いではなくて、美味しいか、美味しく
ないかでしかない。
 案の定、この「美家古(みやこ)寿司」さんは、グルメ・バカ娘にとって、破格の
ランクらしくて、あれほど絶対食べなかった、貝類を食べると言い出す!
 さらに、必ず抜いてもらっていた、ワサビをついにそのままでいいと言い出した!
 これは一大事!
 グルメ・バカ娘の、お寿司屋さんランキングに大きな変動が出そうだ!
 
 北岡さんがいらっしゃって、美味しいお寿司を食べながら、美家古寿司のご主人か
ら、お寿司の裏話を聞かせてもらう。
 とくに玉子焼きの作り方は、勉強になった。
 料理というのは、本当にゲーム作り、漫画作り、その他クリエイティブなことすべ
てに共通することがたくさんある。
 何の仕事でも、一流の人たちの考え方の方向は、おなじ方向を向いている。作品作
りのテクニックも大事だけれど、物の考え方がまず先にありきなんだなあと思う。
左から→さくま、すぎやま先生、北岡さんご夫妻、すぎやま先生の奥様
   それにしても、ここの貝類の美味しさは、芸術的だ。  貝類が大嫌いなグルメ・バカ娘を変節させてしまうだけのことはある。すごいねえ。 漫画の『美味しんぼ』を地で行くような話だ。  午後9時。お寿司17カンに、巻物1本を食べて、お腹が苦しくなっているのに、 みなさん、まだ追加注文する。  私はもう苦しい〜。  恐ろしい集団だ。食べるのも早いし。  グルメ・バカ娘もしっかりいっしょになって、追加注文の集団のなかに入っている。  とうとう私よりも食べるようになってしまった。  しかも隙を見ては、玉子焼きをひとりで追加注文している。  午後9時30分。浅草ビューホテルの喫茶ラウンジ。  この恐ろしい集団は、ここでさらにケーキとコーヒーを注文するのであった。  北岡さんご夫妻は先週息子さんの結婚式で、フランスに行っていたので、フランス の有名なレストランの裏話を聞かせていただいた。  私はとんと海外に弱いので、お店の名前を正確に書けるのかどうもかも怪しいのだ が、ポール・ボギューとか、トロワグロといった三ツ星レストランの話だ。  三ツ星レストランが、三ツ星を守るための努力というのは、言われてみれば、当た り前のことだけど、なかなかできないことを熱心にやっている。  まさにゲーム作りとおなじだ。  午後10時30分。いつもなのだが、すぎやまこういち先生ご夫妻に車で自宅まで 送っていただく。本当にもうしわけない。  それにしても、美味しい物を食べられて、一流の人たちの裏話が聞けるというのは、 最高の贅沢だね。  その成果をゲーム作りで出さないと、罰が当たるのだが、さて、本当に罰が当たら ないように、明日から、『さくま式人生ゲーム2』のアイデア出しの旅に出る。  いつものように京都に行くのか、それともほかに行くのか、まったく未定。  グルメ・バカ娘が明日から、中学校の合宿にでかけるので、鬼の居ぬ間に嫁とどこ か美味しいところへ旅立ってしまおうかとも思っている。  ただ4月9日にまたTBSでラジオの録音があるので、それまでにアイデアが出な いと本当にやばい!  いつもアイデアが出るまで、東京に帰らないという自分を追い込む苦行をやるのだ けれど、さて、今回はどうなることやら。

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