3月9日(火)


 ふっふっふふ。うふふふ。ふっふっふっふ。
 にやにや。ふひひひひ。ほほほ。あははは…。
 きょうの私は、縁起が、いや演技が出来無いぞ。
 1日いいことが続いたあげくに、最後に満塁本塁打が出たような、とってもいいこと
があったので、正直言って、日記を書くのも面倒なくらい、いまは思い出し笑いをして
いたいのだ。
 きょうのいい1日をこまめに書いていくと、昨年の横浜ベイスターズ・セ・リーグ優
のときみたいな前後編になってしまいそうな気がするので、超ダイジェスト版にする。

 まず午前中から、ゲームのアイデア出しのまとめに入っていたのだが、まとめている
うちに、どんどん新しいアイデアが加わって行って、すでに実戦でつかえるようなアイ
デアに煮詰まって来た。
 そのゲームの名は『さくま式人生ゲーム2』だ!
 もうほとんど今年の始めくらいには、とてもパート2を作る気力が無くなっていたの
だが、最近になってようやくアイデアが出始めて、ひょっとしたらと思っていただけに
大きく前進!

 午後11時30分。外に出てご飯を食べに行こうと思ったら、まるで冬に逆戻りした
ような寒さ。とても遠くまで行く気になれなくて、一番家に近い「キハチ・チャイナ」
で、上海風焼きそば。デザートのバナナ・アイスクリームのほうが美味しかった。

 午後1時30分。読売広告の岩崎誠と、ニュートン・サテライト・ジャパンの平根さ
んが来る。平根さんは、2年ぶりぐらいのご無沙汰。
 で、新しい仕事の打ち合わせなので、くわしいことはここで、書けないので、手短か
に書く。手短かに書くと、とてもショッキングなので書きづらい。
 実は『チョコバナナ』をつかって、漫画の仕事ができないか?というものなのだ!
 しかも実は私が、この日記で『チョコバナナ』をやめると書いてから、まだ10日前
後。まだきょうのほかにも『チョコバナナ』を単行本化しましょうという話が密かに来
ていたのだ!!!!
 何というタイミングなんだろう?
 ふ〜む、と唸るしかない。
 不思議と、もう使わないだろうと思った資料を捨てると、その仕事が舞い込むという
のは、業界の人なら、一度や二度、経験があることだろうけど、ライフワークを終了し
た次の週に立て続けに、話が来るのは、偶然にしては、誰かがシナリオを書いているみ
たいだ。
 
 午後2時。プロスペックの江口貴博くんが来る。
 江口貴博くんは『ワールド・ネバー・ランド2』を持ってきてくれた。実は、江口貴
博くんは、リバーヒル・ソフトと深いお付き合いをしている。で、リバーヒル・ソフト
のある場所が、福岡県福岡市。きょうの平根さんと、岩崎誠の話が、福岡県に関連する
話。
 まるできょうのこの日のために集まったようなメンバーになってしまうから、この業
界はおもしろい。
 福岡県と『チョコバナナ』がどう結びつくのかは、また後日ね。詳しく書くと、やば
いし、例によって、企画というものは、99%OKでも、前日にパーなんてことはしょ
っちゅうだから、どうなるかわからない。
 
 午後3時30分。こういうときにかぎって、来るメンバーは、『チョコバナナ』投稿
者の汐崎隼(旧・汐崎じゅん)さん、樹野こずえ(旧・こんにょ)さん、藤川かつらサ
ンってところが、奇妙でしょ?

 ここ2日間だけでも、『チョコバナナ』に関する奇妙な話が、3件も舞い込んでいる
のだ。
 この先どうなるのだろうか。

 午後5時すぎ。すぎやまこういち先生ご夫妻から電話。
 浅草のお寿司屋さんに初挑戦するんだけど、どう?というお電話。もちろんOK!!!
 先週私だけ青山の和風料理のお店「穂積」に参加できなかっただけに、もちろんろん!
の大OKですよ!
 しかも実は密かに、すぎやまこういち先生にとんでもない、おねだりをしてしまおう
と、てぐすねひいて、お待ちしていたのだ。
「てぐすねひいて」と図々しい言葉を言ったあとに「お待ちしていた」と敬語をつかう
の変だぞ!

 さあ、ここからが、今私の胸の中にある言葉を並べ始めたら、文庫本2〜3冊分にな
ってしまう。
 どう短くしたらいいかわからない。本当は短く書きたくない。
 きょうも『チョコバナナ』投稿者3人に「シナリオは削って、短くいいセリフで描く
ものだ!」と教えたばかりなのに、肝心の私がへたっぴーになってしまってる。
 こういう場合は、恥をさらすことにする。

 先週「穂積」の食い道楽会に私だけ、紀伊半島にいて、参加できなかったことは、こ
の日記を読んでる人はかなりの人が知っていると思う。
 そのなかで、実はとんでもないことを嫁から聞いてしまっていたのである。
 この日記でもおなじみのフランス料理の巨匠である「プティ・ポアン」の北岡さんが、
今流行の携帯着メロを、なんと、なんと、なんと×10000! すぎやまこういち先
生から直々に、あの不朽の名作『花の首飾り』を録音してもらったというではないか!
 しかもメロディーだけでなく、伴奏パート付き!
 な、な、なんという贅沢!

 インターネット世代に人に、このすごさを伝えるのは難しい。
 少しでもたとえるなら、小室哲哉が君の携帯を手にして、その場で『キャン・ユー・
セレブレイト?』を着メロに入力してくれるようなもんだぞ! 小室哲哉でわからない
なら、ユーミンだ、桑田圭祐だ、この贅沢さがわからないやつがいたら、私がこん棒で
殴ってやる!というくらいだ。

 こんなうらやましい話を聞いていて、黙っていられないのが、私だ! でも私は弟子
だ。弟子から師匠に要求なんてことはできない。でも叶う夢なら…。ううっ。思い出す
だけでもまた涙が出て来てしまう。
 この辺の心を動きを書きたいけど、きょうの私はデビュー当時の下手くそなフリーラ
イターに戻っている。
 事実だけ書くと、子どもの頃から私は、すぎやまこういち先生のファンなんてーもん
じゃない! あまりにもファンすぎるので、人に言わないくらい熱狂的なファンだった
のだ。
 バレると、なるほどという事実はいくらでもある。
 まず私のペンネームのひらがな。
 すぎやまこういち先生が昔々『ザ・ヒット・パレード』という番組のディレクターを
していたときに、テレビのテロップに出ていたのをマネした。
 さらに高校進学。私は学習院と、都立武蔵丘高校の両方に受かり、都立武蔵丘高校に
進学した。なぜか? この学校の卒業生が、元・東京都知事の青島幸男さんと、その同
級生ですぎやまこういち先生だからなのだ。
 あまりにも出来すぎた話なので、作り話のように思えるかもしれないが、本当の話だ。
 本当の話だから、友人の堀井雄二が『ドラクエ』で、すぎやまこういち先生と組んだ
時は、嫉妬をしたことがない私が、生まれて初めて嫉妬した。『ドラクエ』がヒットし
たからではない。すぎやまこういち先生と組んだことが嫉妬なのだ。
 しかし運命は…、ダメだ、やっぱり長くなりそうだ。
 先を急ぐ。けっきょく堀井雄二のおかげで、すぎやまこういち先生ご夫妻ともお知り
合いになり、弟子にしてもらって、今日に至っている。

 で、問題の携帯着メロ。
 私はすぎやまこういち先生の数多くある曲のなかでも、一番好きな曲があって、これ
が40歳以上の人が曲名を聞いただけで、鼻の穴が広がる『君だけに愛を』!も、もち
ろんいいんだけど、実はそのB面(きょうお聞きしたら両A面だったそうである)の
『落葉の物語』が、もう死ぬほど好きだったのである。
 この曲をどうか、どうか、着メロに…という図々しいお願いをしてしまったのだ。何
たって、30年前の曲だ。先生が覚えておられなかったどうしよう? いろんなことを
考えながら、直球勝負。ストレートにお願いしてしまったようだ。実は興奮状態で、き
ょうのお寿司屋さんのことをよく覚えていない。妙に、貝の美味しいお店だということ
は覚えている。

 すぎやまこういち先生ご夫妻といっしょに、お寿司を食べて、先生が『落葉の物語』
をオリジナル・アレンジで、着メロに録音してくれて、登録までしてくれる! こんな
幸せは、アラブの王様だって、できないぞ!
 何たって、先生が試しに、音を鳴らした瞬間に、もう、じわ〜〜〜〜と、涙が出て来
て、しゃべれなくなってしまった!
 実はこの部分を書きながら、また泣いている。

 嗚呼!!
 ゲーム作ってよかった!
 この業界に来てよかった!
 すぎやま先生が『桃太郎伝説』『桃太郎電鉄』を好きなおかげで、こうして、こんな
うれしい思いをすることができるんだ。
 ありがとう、桃太郎! おまえ、本当に親孝行だぞ!

 午後10時。すぎやまこういち先生の奥様が運転の車で、自宅まで送っていただいて、
天に昇りっぱなしの晩である。
 帰宅。何をしたか。
 もちろん、CDを引っぱりだして来て、ザ・タイガースの『落葉の物語』を嫁と、
グルメ・バカ娘に、自慢た〜〜らたら、聴かせる。
 嫁は私の8歳下だし、娘はいま12歳。
 30年前の曲だから、さすがに知らない。『君だけに愛を』と『花の首飾り』は、
ナツメロの番組で知っているそうだ。
 インターネットの読者は若い人が多いから、注釈付けないといけないのが、面倒。ザ・
タイガースというのは、沢田研二(ジュリー)さんがいたGS(グループサウンズ)。
 この解説をしていいなら、今から、百科事典全28巻分ぐらいしてもいいよ。
 GS(グループサウンズ)についての話なら、横浜ベイスターズより詳しくて、熱狂
的だからね。ど〜だ、恐ろしすぎるだろ!
 私も恐ろしいから、人前で話さないくらなのだ。

 ああ〜、もうダメだ。きょうはこのくらいにしとこ!
 この着メロを、同世代の誰に聴かせて、自慢するか、これがここ数日の課題だ。おお、
そうだ、確か明日は、大学時代の同級生・伊東正義が来るはずだ。まずは最初のえじき
だ。ユイ音楽工房の篠宮勝さんも来るはずだ。おない年だから、飛んで火に入るだ。
 なんてことを考えながら、寝るぞ!

 しまった、やっぱり長くなってしまった。ゴメン! 



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