11月1日(日)


 午前11時。神谷栄和が来る。
 
 嫁、娘、私、神谷栄和の4人で、青山の高級ハンバーガー屋「ホ
ームワークス」に行く。
 季節限定料理という言葉に弱い。さらに「カブキバーガー」など
と言われると、つい頼んでみたくなる。たんなる大根おろしバーガ
ーなのだが、季節限定といわれると、美味しく感じるものだ。

 グルメ・バカ娘の美味しいバーガー屋さんベスト3

    1位・フレッシュネス・バーガー
    2位・ホームワークス
    3位・モスバーガー

 食後、嫁は青山の全国物産館へ。
 私と娘と神谷栄和の3人は、一度家に戻って、MACとベイスタ
ーズ・グッズを持って、ゲーム部屋へ。
 しかしここで娘が、ゲーム部屋の鍵を、嫁に渡してしまっていた
ことが判明する。鍵がない!
 嫁の携帯に電話する。携帯のある時代でよかった。
 その間ユナイテッド・アロウズで、キャラメルティーを飲んで待
つ。むきだしのノートMACと、むきだしでベイスターズ・グッズ
を持ち歩く3人の姿は、とても奇異であった。
 それにしても頭を丸めた神谷栄和の風体は、日本兵そのもので、
原宿で最も違和感があるファッションである。

 午後1時。ゲーム部屋で『桃太郎伝説』のテストプレイの続き。
 花咲かの村から金太郎の村へと、ぶっ通しでテストプレイ。
 それにしても『桃太郎伝説』は、ゲーム史上初のシステムやイベ
ントがたくさんあるのに、それがちっとも評価されないということ
をよく言われる。
 それはひとえに私がいけないので、つい取材が来ると、相手のこ
とをよろこばそうとして、ギャグ・キャラばかり宣伝してしまうか
らだと思う。
 魔法(術)を覚えるのに、修行があるとか、イヌ、サル、キジは、
RPG史上最初のAIだったとか、ボス・キャラがしゃべりながら
戦闘する。一度負けたボス・キャラともう一度戦う時、メッセージ
が変わる。ろっかつの術は、キャラ史上初の必殺技を持っているな
ど、言われてみると確かにそうだ。
 でもねえ、私の世代は、自己アピールは下手というか、みっとも
ないという風習が染み着いているんでねえ。
 自分からここがいい、あれいいと言いまくるのは、どうも苦手だ。
 できればみんなが応援してくれるとうれしいんだけどねえ。
 私のファンがまた、おとなしいことで有名だからなあ。

 午後6時すぎ。『桃太郎伝説』のなぞとき山まで到達したので、
神谷栄和のテストプレイは一応終了する。29日に来て、日帰りの
予定が、11月に入ってしまった。

 午後7時。娘、嫁、私、神谷栄和の4人で、いかにも原宿らしい
お店「バスタ・パスタ」に行く。
 神谷栄和(日本兵似)の丸刈りが、このおしゃれなお店に似合わ
ないこと、似合わないこと。
 うちの娘が、食事中、神谷栄和の頭を見て、笑いっぱなし!
 人の頭を見て、笑ってはいけないと、わが子に教えるのもつらい。
それくらい笑える。

 午後8時30分。帰宅。
 『チョコバナナ』投稿者・樹野こずえ(旧・こんにょ)サンに
電話。漫画の打ち合わせ。最近樹野こずえ(旧・こんにょ)サンは
絶好調だ。

 午後9時。『チョコバナナ』投稿者・岩岡目々さんに電話。
 岩岡目々さんも相変わらず絶好調!
 そにしても本当に最近は、誰と誰がこんな風にがんばってるよ!
というだけで、言われたほうが必死になって、がんばってくれるの
で楽だ。
 きょうも「最近質問が出なくなったな! 質問が出ないというこ
とは現在の自分に満足してるってことで、成長しなくなるぞ!」と、
神谷栄和に言い続けていたのだが、岩岡目々さんに電話して「何か
質問ある?」というと、次から次へと質問が飛び出る様を見て、
神谷栄和が大いにあわてる。
 これだから楽でいい!
 岩岡目々さんには、29日の『当方見聞録』の集会の話をする。
 もうこれだけで、岩岡目々さんはパワーアップする。
  
 午後10時。テストプレイ中に書きためた『桃太郎伝説』の」手
直し原稿をハドソンの浦さんに送る。

 午後11時。もうハドソンの浦さんから返事が来る。たくさん無
理を言ったのに、ことごとく直す予定のようだ。すごい!と思うと
同時に、これはいいゲームになる予感がする。



11月2日(月)


 午前10時30分。日本橋高島屋の「司馬遼太郎展」を見に行く。
 会場は50歳以上のお客さんでいっぱい。平均年齢は60歳近い。
 何と言っても、司馬遼太郎さんは私がいちばん尊敬している人。 
 どんな陳腐なイベントでも満足の予定だったけど、かなり豪華な
ので大満足。
 それどころかまたしても生原稿が展示してあった。司馬遼太郎さ
んは原稿をぎりぎりまで推敲することで有名。万年筆でぐしゃぐし
ゃと消して、文章をどんどん変えて行く。この推敲の仕方には、
どんな一定法則があるのか昔から突き止めたくて仕方なかったのだ。
 それがついにきょう、わかったのだ〜! はっはっは。
 ついにわかったぞ! うれしい!
 入場料800円で、800万円手に入れてしまったぐらいの感動だぞ〜!
 推理小説の犯人を突き止めたみたいだぞ〜。
 いや〜〜〜〜〜、長いことわからなかった。
 え? どういう風に推敲するかって? そんなもったいないこと
ここでは教えません! 興味のある人だけが、私に会ったとき、
聞いてください。
 
 その代わり、絵を描くみなさんに、とっても役に立つ司馬遼太郎
さんのお言葉をメモして来たから教えるね。
 若者向けに、適当に改行、句読点させていただきます。

「もともと素人は素人で下手なんだから、一気に描くことや。
 そうすると下手でも目立たない。
 下手だから、下手なりに工夫して描き直そうと思うと、どんどん 
 下手になってゆく」

 いい言葉でしょ?
 作品を見せる時とか、ああでもない、こうでもないと言い訳する
人が多いけど、そういうことは見苦しいだけ。一気に描き上げて、
現在の自分の力はこれです!と見せればいいと思わない? 

 午前11時。丸善8Fのスナックで、元祖ハヤシライスを食べる。
ここのハヤシライスが日本最初なのだ。早矢仕有的(はやしゆうてき)
さんという人が作ったから、ハヤシライスね。
 甘くて美味しいレトロの味。
 しかもビルの屋上のゴルフの打ちっ放しの隣りにある。お店の
名前がなくて、エレベーターのところに「スナック」という表示が
あるだけ。ここは穴場中の穴場だから、とびきりお勧め!
 東京駅まで歩いて行けるし、本の丸善本店だから、たくさんの本
も買うことができる。活字中毒には夢の楽園だ。

 午後12時。日本橋界隈を歩く。山本山海苔店でのりせんべいを
買う。この界隈は古い鰹節問屋とか、海苔屋さん、印度風カリー
ライス(インドでなく印度なのがいい)のお店があったりしておも
しろい。

 午後12時30分。帰宅。ゲーム部屋で『桃太郎伝説』のテスト
プレイ。いよいよ本当にチューニングの追い込みなので、1分1秒
がもったいない。

 午後2時。家に戻る。ハドソンの梶野くんと武田くんが来る。
『桃太郎伝説』の宣伝計画の進行状況を聞く。大道芸人といっしょ
に紙芝居とか、抽選で当たる桃太郎重箱とか、おもしろい物がたく
さんで楽しい。

 午後2時30分。小学館コロタン文庫の取材。コロタン文庫から
『桃太郎伝説』と『桃太郎電鉄』の本が出るそうだ。
 編集長の高橋さんの息子さんが『ジャンプ放送局』のファンだっ
たそうで、土居ちゃん直筆のサイン色紙を上げる。
 桃太郎シリーズを振り返るのだが、本当に昔のことを最近すっか
り忘れてしまっていることがよくわかる。もう11年だからねえ。
 常に一度前の作品を忘れないと、次の作品に取りかかれないからだ。

 午後4時。レイアウターの野沢ちゃんが来る。『宇宙人ショック』
の打ち合わせ。この時点で、神谷栄和が著者イラストを描き忘れて
いることが判明。携帯で連絡するも、留守。忘れたのは神谷栄和だ
から、そこだけ空欄にしとくか、あの大爆笑の日本兵風ヘアスタイ
ルの写真にしようかということになる。
 神谷栄和! 11月8日までに野沢ちゃんの家にイラストがとど
かないと、空欄のまま発売されるぞ〜! 『チョコバナナ』は率先
して失敗から学ぶことを提唱しているから、本当にそのまま出すぞ〜。
楽しいな。

 午後6時30分。新宿の歌舞伎町のラーメン屋「利しり」で食事。
私、嫁、娘、野沢ちゃん。ここでも娘は喰いっぷりのよさで人気者。
お店の人たちが次々に話しかけてくる。
 ここのラーメンは、ずっとわが家のラーメン・ランキング1位。
 たまに抜かれることがあっても、やっぱりしばらくすると行きた
くなるのはこのお店だ。
  
 食後、嫁は飲み会へ。
 午後7時30分。私と娘はゲーム部屋に戻り、『桃太郎伝説』の
テストプレイの続き。
 どんどんチューニングがよくなって行く。う〜ん、時間がないの
が恨めしい。もっと時間があれば、もっともっとかゆいところに手
が届くような微妙なチューニングができるのだが。
 まあ、いつものことだ。いよいよ『桃太郎伝説』完成間近!



11月3日(火)


 午前11時30分。テレビ神奈川で、横浜ベイスターズ優勝パレ
ードの中継を見る。
 横浜まで行きたかったのだが、推定50万人と聞いていたので、
やめた。まだ手足が不自由だから、混乱に巻き込まれると、とっさ
な動作ができない。しかし沿道では、オープンカーが通り過ぎて、
それで終わりだから、全貌も見ることができない。
 それにしても美しい。高層ビル街の紙吹雪が、本当の雪のように
きれいだ。選手たちの笑顔がいいねえ。びっくりするのは、横浜市
民の混乱がほとんどないこと。整然と並んで列を乱さない。ベイス
ターズ・ファンのマナーのよさには定評があったけど、ここまで見
事だと背筋がざわつく。

 午後1時30分。恵比寿の「筑紫楼」で、いつものカニ肉とふか
ひれのスープ麺と、杏仁豆腐を食べる。
 食べ始めてから、しまった、この店に週刊少年サンデーの石川く
んと近々来ましょうといっておきながら、横浜ベイスターズ追っか
けの旅に出てしまったことを思い出した! 石川くん! 11月の
20日近辺どうですか? 急にいうなよな! もうそろそろ年末進
行が始まっているかな?

 午後2時30分。帰宅途中、タクシーの運転手のあまりに下手な
運転に気持ち悪くなり、原宿のラフォーレの手前で降りる。
 祝日だから、原宿は色とりどりの洋服を着た若者でいっぱい。
しかも朝のラッシュアワーのような舗道で、さらにへばる。
「TIN TIN」のショップが、原宿ラフォーレの隣りの道に移
転したので、寄ってみる。

 午後3時。帰宅。『桃太郎伝説』の手直し原稿を書いて、そのま
ま『桃太郎伝説』のテストプレイ。
 かなり目が疲れる。パソコン用目薬パッソを多用する。効果があ
るのかなあ?
 そういえばきょう書いた手直し原稿で、ひとつ大笑いのエピソード。
ギャグキャラで、歴史の鬼というのが登場するのだけれど、レアな
確率で、横浜ベイスターズに関する問題が出る。で、問題はそれで
いいんだけれど、原稿を書いたのが今年の初めだったものだから、
いつものようにメッセージの最後で、今年も優勝できなくてまいっ
たなあみたいな原稿を書いていたのを忘れていた。
 そのまま製品になってしまったら、大間違いどころか、私は横浜
ベイスターズ・ファンの風上にもおけない男になるところだった。
 このレアなイベントで、1万両もらえるから、ぜひ探してみてね。

 午後4時30分。娘の家庭教師の先生が来る。娘がいない。娘は
遊びに行っている。きょう先生が来ることを忘れているようだ。
祝日だし。しかし勉強しなくていいんだから、家庭教師の先生なん
ていらないと言い続けて来た親も親だが、自分から希望して家庭教
師を付けてくれといって遊びに行ったままの娘も娘だ。
 午後5時。血相変えて、娘が戻って来た。「や〜い!」と言ってやる。

 午後7時。六本木の「志る角(しるかく)」で食事。食い道楽の
本で、おにぎりの専門店だと思い込んで行ったのだが、単なる居酒
屋であった。でも一品一品が美味しい。また行ってもいいお店の評
価だ。生のりの味噌汁がいい。手おけおにぎりという、焼きおにぎ
り三色セットも香ばしくていい。
 店員のお姉ちゃんたちさえ、元気なら申し分のないお店だ。

 午後8時。帰宅。『桃太郎伝説』の最終テストプレイ。
 もうほとんど私のほうで手を入れられない段階に入ってしまった。
 ゲーム前半は十分満足の行くチューニングになった。
 後半が納得は行くけど、もっとデリケートなチューニングまで出
来たらよかったなと悔やまれる。
 ぎりぎりで、威風堂々システムだの、会心の経験値、やたら敵キ
ャラがアイテムを落とすといった、ゲームをやる人にとっては、
この上なく楽しいイベントを入れることができたのだが、そのしわ
寄せがちょっと後半に出てしまったかもしれない。
 でも大体前半がよければ、後半もやってくれるのがお客さんだか
らね。前半に自信ありだ!
 あとはハドソンの人たちによる、バグ取りがメインとなる。

 明日は『さくま式人生ゲーム』のイベント。

 明後日からは、福岡、京都の旅。明日の日記を書いてから、地方
に行けるかな? 忙しい。もう師走だ。 



11月4日(水)


 午前8時。『桃太郎伝説』のテストプレイ。もうほとんど時間が
無いんだけど、最後の抵抗。少しでもいいチューニングにしたい。
 午前11時。テストプレイ終了。いちばん気になっていた氷の塔
のイベントとチューニング。まあまあオーケイ!
 なにしろこの氷の塔は、いつもスッタフともめた苦い思い出しか
残っていなかったので、なんとかちゃんとチェックだけはしておき
たかった。これで心おきなくこの作品を世に送り出してもいい気に
なった。

 午前11時。千駄ヶ谷駅へ向かう。モスバーガーで軽食を取る。
宮路一昭くんと合流。きょうはこれから『さくま式人生ゲーム』の
イベントに向かう。頭に『桃太郎伝説』の戦闘の曲がこびりついて
いて、変。

 午後12時すぎ。両国の国技館に到着。なんと『さくま式人生
ゲーム』のイベントを、あの相撲の国技館で行うのだ! というと
驚くけど、実は国技館の中にあるホールでというギャグ。
 ところがこのホール、あの横綱昇進の共同記者会見をするところ
なので、やたら広い。
 この広い場所で、なんと15のゲーム雑誌関係者が集まって、
『さくま式人生ゲーム』のゲーム大会を繰り広げるのだ。

 午後12時30分。私の知り合いも多数駆けつけてくれた。
アリtoキリギリスの放送作家・福本岳史さん。昼飯仲間からいよい
よゲーム『御神楽少女探偵団』のプロデューサーという肩書きを持
つことになった、ひろたたけし。増田景子さん。読売広告の岩崎誠
くん。東京コミニュケーションアート専門学校の石毛先生と生徒。
ご存知、私の弟子の原口一也。
 さっそく名刺交換会。原口一也の名刺が、ひとめでプロレス・フ
ァンとわかるような名刺なので、福本岳史さんや宮路一昭くん、タ
カラの高田さん、高田さんの紹介の柳坂さんといった人たちが、い
きなりプロレス談義。最近業界ではプロレス繋がりが流行っている。
 と同時に、昨日SONYさんのほうの承認が取れたということを
タカラの高田さんから報告がある。
 みんなが拍手。これで12月10日の発売が正式となった。

 午後1時。いよいよ試合開始。
 集まった雑誌は、ファミ通WAVE、じゅげむ、電撃コミック・
ガオ、ファミ通PS、週刊ファミ通、電撃プレイステーション、
週刊ザ・プレイステーション、HYPERプレイステーションRe-mix、
報知新聞、オリコンウィークThe ichiban、geisen、ENTa、
 HYPERプレイステーション、プレイステーション・マガジン、
 徳間インターメディアの各誌。
 これだけの人数が揃うと、壮観。
 抽選でそれぞれ3チームずつ、A〜Eブロックに分かれて、試合。
総資産の多さで順位を競う。
 こういうイベントというのは、とかくお義理で編集者さんたちが 来ることが多くて、けっこうしらけたムードが漂うものなのに、 各雑誌が事前に、本当に練習して来てるものだから、スタートの 合図と共に、真剣バトル!  週刊ファミ通の長田くんは、マップを方眼紙に写したあげく、何 やら色分けまでしてある。じゅげむサンは、カード売場の画像をフ ァイルしてきて、どこで何を買うかを綿密にシミュレーション。  しかし何と言っても、話題を独占したのは、ファミ通WAVEさん!
 写真を見ての通り、白と黒のタイツに身を固めて、何かあると、 ふたりでポーズ。とても編集さんと思えないので、話しかけてみると、 なんとこれが「凸フェイス」というお笑いコンビ。お笑いをめざしていて、 まだ目が出ないので、ファミ通WAVEさんで編集をしているという、 若者ならうらやましい話だ。  案の定、ジャンプ放送局世代。ほかにもジャンプ放送局を愛読して いたという人たちが多い。ジャンプ放送局世代が、業界に来るように なったことを痛感する。  とにかくこのファミ通WAVEの凸フェイス・コンビの気迫たるや、 すさまじいばかりで、ボタンひとつ押すのに、畳の上を走って、滑り 込むという荒技を見せるものだから、ほかの人たちが気後れして、 とうとう見事に優勝!  すべては気迫に勝るもの無しということを実証した。  優勝賞品は「さくまんえん」というもじりで、39万円相当のタカ ラのおもちゃ! 山のようだ。
文字通り“宝(タカラ)の山”
 ほかにも部門賞がいくつも用意されていて、おいもが当たる戦いも あった、このおいもの名前が「さくまいも」という名前で、本当に 鹿児島のJAとタイアップした、本格的なサツマイモ。  もちろん食べてみたけど、さすが鹿児島。本当に美味しい。  しかし箱には、さくまいもと書かれたシールまで貼られている。  いいなあ、こういう本気のギャグって!  午後5時30分。大爆笑の渦につつまれながら、閉会式。  いや〜、まさかこんなに楽しいイベントになると思わなかった。
気になる順位発表〜〜!
 午後6時。両国駅隣りのちゃんこ鍋屋さんで、スタッフ打ち上げ会。 ここのちゃんこはさすがに美味しい。醤油風味と塩味風味の2種類あ って、塩味風味のちゃんこ鍋は初めて食べたけど、さっぱりしていて、 いい味だ。  午後8時。帰宅。最後にもう一度だけ『桃太郎伝説』のテストプレ イをする。  午後10時。ついに手終い。ゲーム・クリエーターは、時間があれ ば一生テストプレイを続けてしまうものだ。このくらいでストップを かけないと、12月23日の発売に間に合わなくなってしまう。  さて、さらに明日から私は福岡へ旅立つ。  帰りは9日の月曜日になりそうだ。  今回鞄持ちの神谷栄和が来れないので、どうやら嫁と娘が付き添い で来てしまいそうである。こういうときに私はまだ重度の身体障害者 であったことを思い出す。  ひとりで福岡まで行くというのにチャレンジしてみたい気がするの だけれど、寒い季節になると、少し怖くなる。  というわけで、またしばらく日記はお休み。  ほんのチョイ係も書いてから旅に出たかったけど、テストプレイが 追い込みだったんで書けなかった。追い込みをさぼると絶対あとで天 罰が下るのが、この業界の通例。ほんのチョイ係と『当方見聞録』の 新しい添削は来週以降ね。  それじゃまた! 


11月5日(木)


 朝9時。どうやら娘を学校休ませて、家族で博多まで行くことに
なったようだ。ひとりで行ってみたいのだが、まだまだ手足が不自
由なことは予期せぬ場面で、信じられないようなピンチに陥る。
 足のほうは本当に完治一歩手前まで来ているが、問題は左手。
 片手しかつかえないと、不便な場面は多い。
 たとえば右手に鞄を持つと、キップを自動改札に入れることがで
きない。駅弁を開く時も大体両手で開けるものだ。
 売店でスポーツ紙を買うとき、スポーツ紙を受け取る代わりに、
お金を出すことができない。
 左側に身体が傾いて倒れるとき、左手をつくことができないから、
何もできずにそのまま倒れることになる。

 午前10時20分。東京駅大丸デパート地下の「おべんとう公園」
で駅弁を買う。ここはグルメの師匠・すぎやまこういち先生に教え
ていただいた穴場。駅で売ってるお弁当よりも、格段に美味しいし、
たくさんの出店が軒を並べているので、100種類以上の中からお
弁当を選ぶことができる。
 旅行に行かない時でも、お弁当が買いたい時はここがお勧めだ。
 きょうは、目黒けやき弥の「栗林」にしてみた。
 わが食い道楽家族が全員一致で、これは美味しそうだと思っただ
けあって、ドンピシャの美味しさ。
 午前10時56分。新幹線のぞみは博多をめざす。
 出発前から、わが家族はお弁当を広げる。
 栗ご飯が美味しい。椎茸、シャケ、いずれも美味。玉子のなかに
タラコを入れたものがカロリー高そうだけど、やっぱり美味。
 これで1000円は安い。ボリュームもある。

 博多まで、5時間かかるので、わが家族はいつも勝手気ままに本
を読む。娘は漫画か西村京太郎さん、嫁は宮部みゆきサン、私は週
刊文春に、ナンバー。

 午後4時。博多駅に到着。そのままキャナルシティのハイアット・
ホテルへ。今年だけでここのホテルは4回目だ。
 午後5時。食い道楽家族は、ホテルから歩いて1分の「河太郎」
に行く。今年の2月。ハドソンのアイデア旅行で来た時、榎本44
歳がいたばかりに?、名物のイカの活き作りを食べることが出来な
かったというあのお店だ(あの時の日記が大好評だったので、11
月10日発売の『桃太郎電鉄4コマ劇場2』で加筆、再録した)。
 きょうは食い物の神様が宿っているグルメ・バカ娘がいっしょだ
から、まずイカが不漁ということはあるまい。

 嫁と娘は約2年ぶりのイカ。私は6月だかの中尾淳と来て以来。
中尾淳と来た時は、これがまた不思議なことに、20年間ここに通
った中で一番美味しくなかった。
 どうも食べ物の神様は相手を見て、微笑むようだ。
 もちろんきょうは美味しいのだ。イカの肉が厚いし、こりこりと
固い。名物のイカの天ぷらはほろほろと柔らかい。この味じゃなき
ゃいけないんだよ〜と叫ぶ、私。
 榎本44歳、中尾淳というローテーションは食の神様が怒られて
いたようだ。
 きょう初めて、イカ丼というのも食してみたのだが、これがいけ
る。イカの沖漬け風のものが乗っているのだけれど、ゴマだれ風味
がなんとも芳醇。白いゴマのぷつぷつと、イカのツルツルが、なか
なかの変化球。どうも私が好きなクルミも入っているようだ。

 午後6時。キャナルシティに戻って、館内を散歩する。
 これがデパートよりも大きい規模で、今まで何度も来て、知って
るつもりがごく一部でしかなかったことを思い知らされる。
 一着数10万円もするコートを売ってる高級ブティックがあるか
と思えば、フィギュア屋もある。Macの専門店があるかと思えば、
ウルトラマンのショップがある。パパス・カフェという新宿の高島
屋にあるおしゃれなお店もあれば、おにぎり屋さんもある。
 これは1日ここで遊んでも飽きることがない。
 若者ならセガもある。
 
 それでも私は歩いて、歩いて、歩きすぎて、へたりこむぐらい疲
れてしまった。最後の本屋さんに着いた時には、もう足が前に出な
くなっていた。

 午後8時。ホテルに戻って、へばる。
 マッサージを頼んで、きょうはもう寝るぞ。



11月6日(金)


 朝9時。博多ハイアット・ホテルで起床。
 ホテルの5Fに「なだ万」があるので、麦とろ定食を食べに行く。
 フジテレビ『料理の鉄人』に出ている料理人のお店はあまり美味
しくないというのが、食い道楽マニアの間では定説なのだが、私は
「なだ万」はいいと思う。どのお店も派手さはないけど、しっかり
した味だ。
 きょうの麦とろ定食も、まずとろろの量が多いのが、立派だ。お
ひたしの出汁も非常に繊細な味。大ざっぱになってもいいところを
細やかにするとことが一流なんだなあと勉強になる。

 午後10時45分。千鳥橋の福岡コミュニケーションアート専門
学校に到着。

 午後11時。ゲームについて特別講義開始。
 今回でもう3回目なので、かなり暴露的な話もまじえて講義。
 それにしても今の若者はもっと、プロの職業についての質問をど
うしてして来ないのかと不思議に思う。
 『チョコバナナ』の投稿者にしてもそうなのだが、プロの漫画家
をめざしているというのに、1ページの新人漫画家の原稿料を私か
ら聞き出そうとしない。だから1ヶ月に何10ページぐらい描くと、
プロとして生活ができそうだという生活設計が無い。
 
 きょうもそういう質問は出なかった。
 ゲームデザイナーの印税っていくらぐらいなのか?といった質問
が出ない。もし教えなかったとしても、私が思わず近似値をポロッ
と漏らしてしまうぐらいの愛嬌ある質問がほしい。

 昔私がデビュー当時、先輩の作家の人の家に行って、必死に本棚
に並んでいる本を暗記して、帰って来てから、その本を買いまくっ
て、むさぼるように読んだものなのだけれどなあ。こういうことす
るのって、もう時代遅れなのかなあ?

 午後1時すぎ。講義終了。
 午後2時。嫁と娘を拾って、福岡ドームへ行く。
 いい天気だ。福岡の高速道路から眺める海は、晴れた日は美しく
て、ダイナミックだ。
 福岡ドーム来たのは、もちろんここにグルメの師匠である、すぎ
やまこういち先生の手のレリーフが展示されているということをお
聞きしていたからだ。
 6番ゲートと7番ゲートの間の広場を中心に、大きな手の形をし
たモニュメントの指一本一本から、右手、または左手が突き出てい
て、握手することができる。
 著名人ばかり200人以上の人の手のレリーフが展示されている。
 すぎやま先生のブロックも、ドイツ文学者と、横綱・曙と、京唄
子さん、脚本家の早坂暁さんと多彩。
 ほかを見ても、B’z、フィル・コリンズ、勝新太郎、水森亜土、
王貞治、ナタリー・コール、もうどういう選び方なのかわからない
けど、確かに著名人ばかりだ。
 しかもこのモニュメントの名前が「暖手(ダンテ)」というのが、
なかなかいいネーミングだ。
すぎやま先生の右手
 それより悔しいのは、夏に中尾淳とここに来た時に、ウエンデイ ズの明かりに気を取られて、このモニュメントに気がつかずに、帰 ってしまったことだ。  中尾淳がいっしょだからといって、こんな変わったモニュメント が目に入らないなんて! 好奇心が薄れている! 自戒せねば。  午後3時38分。500系のぞみで、京都へ向かう。  車中、神谷栄和の『宇宙人ショック』のアンケート・ハガキの文 面を考える。福岡ドームにいた時、レイアウターの野沢ちゃんから、 文章が無いという連絡が入ったのだ。どうせだから神谷栄和のここ が良い、悪いをアンケートしてみよう。よく週刊少年ジャンプが新 人漫画家の新連載の時にやっていた厳しいアンケートのパターンだ。  はっはっは。何て私はやさしい人なんだろう。神谷栄和のひきつ る顔が浮かんで楽しいぞ。わっはっは。  午後6時。京都着。  そのまま北大路の餃子屋さん「泉門天(せんもんてん)」まで行 く。一度京都のマンションに行ってしまうと、そこからご飯を食べ に行くのが面倒になるからだ。  ここの餃子が小さくて、ぴりりとした辛さがあって、美味しい。  1年以上あいだをあけたくない味だ。  午後7時。帰り道、おいしそうなケーキ屋さんを目にしてしまう。 「バイカル」というお店で、関西に10店舗近くある店のようだ。  柿をつかったケーキというものを、おそらく初めて見る。 「柿衣」という、和菓子のような名前だが、洋風ケーキ。ちゃんと 「季節限定」の文字も入っている。  季節限定とか、新連載という単語はなぜか心躍るものだ。  柿の皮が器になっていて、柿をボール状に切ってある。ただでさ え私は果物の中で一番柿が好きだから、破顔一笑である。減量など どこ吹く風だ。いかんなあ。明日から、太りまくるお店に行くスケ ジュールがびっしりつまっているのに。  午後8時。巨人対大リーグの試合を見ながら、ひさしぶりにのん びりする。こんな日はたくさん本を読みたいけど、眠い。


11月7日(土)


 きょうは京都のマンションで起床。
 嫁の風邪が昨日からけっこうひどい。咳が止まらない。

 朝11時。散歩しながら新京極を歩きながら、四条通りに出る。
 からふね屋珈琲店で、戸田圭祐夫婦を待つ。
 戸田圭祐は、現存する最古の「さくまにあ」として、一部に有名。
今回横浜ベイスターズのセ・リーグ優勝のチケット騒動で大活躍し
たので、グルメ・バカ娘がずっと日本一と言い続ける「M」に招待
することになった、いわく因縁のあの戸田圭祐である(10月8日
の日記参照)。
 しかしなかなか来ないので、娘が腹をすかせて、いつものセリフ
を連呼し始める。
「腹減った」。
 1日何回も聞かされる娘の1年中の季語だ。

 午後12時。戸田圭祐夫婦到着。
 戸田圭祐が、京都の美味しいおそば屋さんを教えてくれるという、
また暴挙に出るものだから、不安が過ぎる。この男の良いことをし
た後のヘマというのは有名だから、ちょっと怖い。
「戸田圭祐よ、東京者に、美味しいおそば屋を紹介するのは、大阪
の人間にうどんの美味しいお店を紹介するくらい難しいが、大丈夫
かい?」
「へ〜、そば粉が70%で…」
 そういう解説は当てにならないぞ。

 午後12時30分。とにかく京都大学の東側にある、戸隠流手打
ちそば処「実徳(みのり)」まで行く。
 戸田圭祐の顔が強ばるなか、実食!
「うまい!」
 戸田圭祐の顔に赤みが戻る。
 いわゆる腰のある、うまいやつ。30本ぐらいを束にして、ざる
に盛るのも親切。きびとろご飯というのもあったので、食べたけど、
出汁が効いていて実にうまい。

 午後1時。戸田圭祐夫婦、私、娘の4人で、方広寺(ほうこうじ)
の「秀吉四百年祭」に行く。
 しかし何も無い。いつもより奉納金の看板の文字が増えているだ
けで何もない。社務所で聞くと、ほとんどの大きなイベントはすで
に終了したという。10月の中旬から11月の中旬までいろんなイ
ベントをやりますというだけのアバウトな案内のまま本当にその通
りに進んでいたようだ。
 ハズレた。

 午後2時。夷川の老舗「一保堂」で抹茶と和菓子。
 午後2時30分。マンションに戻って『さくま式人生ゲーム』を
テストプレイ。サラリーマンの戸田圭祐だけあって、給料という文
字が出てくるだけで一喜一憂するのがおもしろい。
 かなりデッドヒートのまま終盤を迎え、あと4〜5ターンで終了
というところで、バグ発生。固まる。しまった。ずっとセーブ無し
のロムでテストプレイしていたせいで、セーブしておくのを忘れた。
あとちょっとだったのに!
 しかしちょっと前のロムでよかった。これが製品版だったら、大
問題である。

 午後6時。いよいよグルメ・バカ娘のランキング日本一のお店
「M」へと出陣! 「M」は私より1歳年上の太ったお父さんがた
ったひとりで料理するお店なので、1日のお客さんの数を制限して
いる。だから予約無しでは行くことができない。
 京都のガイドブックにも載っていない店だ。

 それにしても、きょうのこの店のおまかせメニューはすさまじか
った。
 戸田圭祐曰わく、1番から9番まで、四番打者がずらりと並んだ
料理。私曰わく、トランプの10から上の絵札ばかりの料理。
 何たって、登場順からいうと、イクラ、キャビア、あわび、トロ、
カニ、松茸、ふぐ、カモ鍋、最後に鯖寿司。
 まさにただいま来日中の大リーグ・オールスターズである。
 8番打者まで軽〜く、場外ホームランを打つといった感じの料理
だ。相変わらずすごい!
 きょうこそデジカメで撮影して、みんなを驚かせようと思ってい
たのだが、またしても食べるのに夢中になって、忘れた。毎度のこ
とである。

 午後9時。帰宅。大リーグとの親善試合がもう終わっていたよう
だ。8対1。う〜む、大リーグはすごいなあ。
 嫁が何やら、iMacを動かしている。
 どうやら京都で書いた日記を、ここからアップすることに挑戦し
ているようだ。すごいことだねえ。どんどん私は駅の自動販売機の
前で立ち往生するおばあちゃんになって行くよ。



11月8日(日)


 ポカポカと暖かい京都の秋晴れ。
 まだ嫁の風邪は直らないようだ。咳が何日も続くのは、激しく咳
き込むよりもつらそうだ。
 昨日、メジャーリーグのホームラン攻勢のような料理を食べたと
いうのに、今夜はさらにもっとすごい料理を食べる予定になってい
るのだ。大リーグの上の料理というとどう表現していいかわからな
い。というのも、まだ私も食べたこともないような超大物に初挑戦
するからだ。
 ただその食べる物の名前を言えば、誰もが思わず「おお!」と叫
ぶ、あれだ!
 そう、マツタケ! 秋の味覚の王様、マツタケを食べに、兵庫県
三田市まで行く予定なのだ。
 誰と? もちろんグルメの師匠・すぎやまこういち先生とだ。

 午前11時30分。すぎやまこういち先生ご夫婦、プティ・ポワ
ンの北岡さんご夫婦と、円山公園の平野屋本店へ行く。
 まだここはマツタケのお店じゃないよ。
 北岡さんご夫婦は、先日サザンオールスターズのベーシスト・カ
ズ坊(関口和之)をごちそうするはずが、横浜ベイスターズ優勝記
念ということで、おごってもらってしまった、あのフランス料理の
お店のオーナーであり、シェフだ。
 この店につくなり、すぎやま先生に、このインターネットの日記
のことを過分なまでにほめていただいた。
 ほめられるなどという事態を想像していなかっただけに、どうい
う顔をして拝聴していいやら、困ると同時に、いつになく日記を書
く手が緊張してしまう。
 師匠の前で、試合に臨む剣道の弟子の心境。まあ、きどっても仕
方がないので、なるべくいつも通りに書きたいものだ。
 
 で、平野屋本店。このお店は、いもぼうと、棒だらのお店。
 といっても、まず京都に住んだことのない人には、なじみのない
料理。
「いもぼう」は、海老芋と呼ばれるサトイモみたいなやつで、とに
かく大きくて、柔らかい。サトイモよりも上品な味で、私がいちば
ん最初に京都らしい食べ物だと思った品だ。「棒だら」は、魚のタ
ラで、一度干してカチンカチンになったものを、煮返したもの。固
いけど、ザクッと食べた時の歯ごたえがダイナミック。
 この2品に、ご飯とお吸い物。これだけの料理を作り続けている
ところがすごい。
 値段も1200円程度でお腹がいっぱいになるまで食べることが
できるから、あまりお金をかけずに、京都を満喫したい人には、絶
対お勧め。 
 
 午後1時。先生方とは、一度ここで別れて、わが家族は高台寺に
向かう。高台寺は、豊富秀吉の奥方・ねね様のお寺だ。
 このところこの高台寺付近が急速な勢いで開発されているのだが、
とうとう「京・洛市ねね」なるファッションゾーンが出来てしまっ
た。円徳院という由緒あるお寺を中心に、忽然と15軒も観光客向
けのお店が建て並んでしまった。
 なかには「高台寺・掌(しょう)美術館」という、ねね様の肖像
画が展示された、歴史的価値のあるものもあるのだが、大半が俗化
された、いかにものお店。
 お漬け物屋、喫茶店、甘い物屋さん、食事所、陶器屋さんと、京
都にありそうなお店は全部ある。
 観光客が「これでまた京都の魅力が減ったわねえ」とつぶやいて
いた。確かに本当の京都を愛する人には、残念な場所だが、サラリ
ーマンで旅行自体するヒマのない人たちに、京都に行ったら、どこ
に行ったらいい?と聞かれたら、嵐山、金閣寺、清水寺のあとに、
ここを推薦してしまいそうだ。
 この俗っぽいスポットのなかでは、円徳院の庭だけは見ていきた
い場所ではある。枯山水があまりまだ手が入っていなくてよい。
 それにしてもまさか豊臣秀吉の奥方である、ねね様も400年後 に、こんなタレント・ショップみたいなお店のキャラクターにつか われるとは夢にも思わなかっただろうな。  でももともと女性客が多いのが、京都なのだから、歴史上で有名 な女性をシンボルマークにつかうのは、上手い商売のやり方だと思 う。そのうち細川ガラシャ夫人の店とかできそうだ。  円徳院の庭をめぐっているうちに、すっかり砂利道で、私の不自 由な足は、上がらなくなってしまった。休もう。  高台寺といえば、葛きりの「鍵善良房(かぎぜんよしふさ)」か ドラやきの「阿月(あづき)」だ。  迷ったあげく、鍵善良房のほうに入るが、あとで知ったのだが、 すぎやま先生ご一行は、「阿月(あづき)」に行っていたそうだ。  午後1時30分。鍵善良房。いつもこの店に入るかいったん迷う。 濃い黒みつの味のせいだ。でもいざ入って、歯ごたえのしっかりし た葛切りを味わうと、ああ、やっぱり来てよかったと思ってしまう。  グルメ・バカ娘は、この黒みつが甘すぎるからといって、抹茶と 和菓子のほうを食べる。小学生が抹茶で、親父が葛きりというのも、 相変わらずバカ家族ではある。
秋晴れの京都の空
 午後2時30分。いったん京都のマンションに戻って、休む。せ っかくの「マツタケを食す会」を前にして、疲れていては美味しさ が半減する。少しでも身体を休めておこうということになる。  午後4時。京都駅。いよいよマツタケに向け、出陣だ。  ほとんど気分は本能寺に向かう明智光秀くらいの心境だ。  マツタケといえば、やっぱり食の世界のダイヤモンド。そのダイ ヤモンドをばくばくと食べてしまおうというのだから、いやが上で も気負ってしまう。  もともと私も、この日記を読んでる人たちとおなじように、マツ タケのどこが美味しいのかと思っていたくちだ。香りの強い物は今 もけっこう苦手で、山椒とか、ミョウガといったものはまったくダ メだ。  だから1本5000円だの、1万円だのと書いてある、京都の八 百屋さんの正札を見て、へっへっへ。こんな値段の高い物が嫌いで よかったと思っていたものだ。  ところが食い道楽を続けていくうちに、いつのまにかマツタケと 対戦する日は、刻一刻近づいていたのだ。  まずシイタケを好きになってしまった。  ただ焼いただけのシイタケでも美味しくなり、あれほど嫌がって いたはずの、すきやきの中に入った、シイタケも好きになってしま った。  そして、3年前。おなじみ伊勢丹7Fの正月屋吉兆で、焼きマツ タケが出た時、もったいないからと食べてしまったのが、運のツキ! こ、こ、これが、グルメと呼ばれる人たちが、必ず秋になると叫ぶ 「マツタケか〜!」。  叫んだ時はすでにもう遅い。  1年後にはもう「焼きマッタケ!」と「ッ」を撥音便で言う業界 用語?を、すらすら言える男になってしまっていた。  そして、ついにきょうの「マツタケを食す会」への初参加である。 ほとんど気分は、未開の国が、初めて、オリンピックに3人の選手 団を送り込む時の心境だ。  うれしくもあり、まだ身分不相応ではないかというためらいもあ る。去年すぎやま先生からお聞きした時は、うらやましかったけれ ど、まだ早いぞという気分のほうが勝っていた。  しかし、我が家は今年、横浜ベイスターズの38年ぶりの優勝が すべての御旗である。  たとえ3人だけの選手団でも、堂々と食べてくるぞと、わけのわ からない高ぶりを見せる。  さて、京都駅から新快速で、尼崎駅へ。尼崎駅から福知山線で、 三田(さんだ)駅まで行く。  三田牛の里として有名な、あの東京の人間がかならず、三田(み た)と読んでしまう、三田(さんだ)だ。  怪獣博士ショッカーO野くんがいたら、すかさず「サンダ対ガイ ラ」とツッコミを入れてくれただろう、三田(さんだ)だ。  その三田牛なのだが、商店街を歩いても、その文字とちっとも出 会うことができない。頭のほうはすでに「マツタケ」のほうにすっ 飛んでいるんだけど、一応『桃太郎電鉄』の取材をしておかなけれ ばと、町を歩いたのだが、日曜日だというのに、ほとんどのお店が 閉まっている。これでは三田を、物件駅にすることができない。  あとで聞くと、近くにダイエーができてから、町はすっかりさび れてしまったそうだ。  午後6時30分。「藤の坊さんだ山荘」に到着。  いよいよ待ちに待った、マツタケ・サミット開催だ。いつのまに かオリンピックからサミットに変わってるぞ!  メンバーはお昼とおなじ、すぎやまこういち先生ご夫妻と、北岡 さんご夫妻。この豪華メンバーに私たちのような者が参加すること 自体おそれ多いのだが、小学6年生にして、本場のマツタケを食べ てしまうガキの屈託のない横顔を見ると、美味しい物を食べる時に 理屈を付けるのは、やめようという気になった。  さて。まず最初に、三田牛がずらりと並ぶ。  いきなり三田牛というのには困ったものだ。  ザ・ビートルズのコンサートを見に行ったら、前座がザ・ローリ ングストーンズだったみたいなものだ。今の若者風にいえば、ダウ ンタウンの前説を、とんねるずがやるようなものだ。  その三田牛を、炭火の上で焼く。たぶん備長炭なんだろうなあ。 遠赤外線で顔が赤くなって、準備OK。  私が最も好きなお肉の食べ方、網焼きだ。柔らかい。甘い。喉ご しツルリ。醤油が香ばしい。  マツタケの前に、三田牛とは本当にまいった。  しかもカボスを垂らして、食べるという技を師匠から伝授される。 これは美味い! この方法は、値段の安いお肉でも接待有効な技だ と思うから、ぜひダイエーの肉で試してほしい。  そして、ついに秋の味覚の王様・マツタケの登場だ。  で、で、でかい! 大きいではなく、でかいだ!  シイタケの4倍、いや8倍はある。カボチャだと思ったら、シン デレラのカボチャの馬車が登場してしまったような衝撃だ。  それでも先生方に言わせると、今年のマツタケは、例年よりも小 さいそうだ。すぎやま先生が手で作ったマツタケの大きさを想像す ると、ほとんど陣笠だ。
なんと北岡シェフが直々に選んでくれる! さくまとすぎやま先生-顔とマツタケの大きさを比べてみて!-
 さあ、このマツタケの美味しさを伝えたいのだが、どうにも伝え 方が難しすぎる。マツタケ自体が、この日記を読んでる人の大半に とって、永谷園のマツタケのお吸い物しか知識がないと思うのだ。 3年前の私がそうだった。  これがお肉なら、柔らかいのひとことで、大半の人が、けっこう 美味しさを想像することができる。  魚が新鮮も予想がつくと思う。  おイモが甘いというのも簡単だ。 マツタケはこのどの形容詞にも属さないのだ。美味しいときの感触 が。マツタケの歯ごたえが、しっかりしたサクッという音だとか、 網の上でたっぷり水分が出るとかは、ほかの食べ物でも味わうこと ができる。これに「香り」という新しいスパイスが加わると、あっ というまに「芳醇(ほうじゅん)」とか「馥郁(ふくいく)たる」 といった難しい表現になってしまう。  芳醇や馥郁では、受験用の漢字でしかない。  とにかくこのマツタケの美味しさには、お手上げだ。  かろうじて推測できるのは、帰り道、コーヒーを飲みたいという 私に「ほかの食べ物をしばらく口の中に入れたくない」と言いきっ たグルメ・バカ娘の言葉がいちばん臨場感がある。    せっかくこのあいだ、値段の高い銀座のステーキの味がそれほど 美味しくなくて、ひと安心した、バカ家族の前に、とんでもないボ ス・キャラが登場してしまった。  来年も来たい。もう横浜ベイスターズの38年ぶりはつかえない しなあ。今から言い訳を考えておかないと。  やあ、しかし、食の道は、はてしないものだ。  最後に、午後9時。京都に戻ったグルメ・バカ娘が、京都ホテル の喫茶ルームで、もう山盛りのシューアイスを食べたことだけ付け 加えておこう。天下無敵だ、あのグルメ・バカ娘は! 


11月9日(月)


 きょうも京都のマンションで起床。
 いやあ、昨日のマツタケの歯ごたえを思い出して、ふふふ、と笑
みが浮かんでしまう。ふふふ。
 グルメ・バカ娘は昨日寝る前に、自分の指に、マツタケに垂らし
たカボスの匂いがして、ふふふ、だったそうだ。
 三田牛、焼きマッタケという両巨匠の影に隠れてしまったが、シ
イタケやタマネギもムチャクチャ美味しかった。
 カボスも見たことのないような大きさだった。
 う〜む。今後どんなマツタケを見ても、昨日以上の感動は無いだ
ろうな。横浜ベイスターズがもう一度優勝しても、今年以上の感動
を味わえそうもないのとおなじようだ。
 でも、世の中には、探せばいくらでも感動できる場所、場面、物
が転がっていることを痛感する。
 しかも感動と出会わせてもらえるというのも、人からであること
も痛感した。

 午後12時。近所の和風料理「縁(えん)」というお店で食事。
 京都の料理というのは、どの品にも微妙な細工がしてあって、美
味しさを伝えることが本当に難しい。
 横浜ベイスターズの佐々木様のように、150キロの速球と、誰
でもわかるくらい気持ちよく落下するフォークボールを評価するの
は、ものすごく簡単だ。
 でも横浜ベイスターズの野村投手のように、速い球がなくて、コ
ントロールのいい投手を、誰にでもわかるように説明するのは難しい。
 この「縁(えん)」というお店は、その技巧派なので、説明が難
しい。
 ただこんな近所に美味しいお店を見つけれらたのは、うれしいこ
とだ。今後京都に来たとき、何度も登場するお店になることだろう。

 午後1時。マンションで帰り支度をしていると、嫁から、すぎや
まこういち先生がこれから食事にでかけるところだという連絡が入
り、マンションのロビーでお別れのご挨拶。北岡ご夫妻もいっしょ。
 さっそく「日記はまだか?」と言われてしまう。
 昨日書き上げることができなかったのだ。急がなきゃ。

 午後2時。すぎやま先生から「本能寺で特別拝観をやっていたよ」
と教えていただいたので、さっそく行ってみる。
 本能寺は、マンションから1〜2分の近所にある。

 新設された宝物殿には「三足(みつあし)の蛙」という、香炉が
展示してあった。
 何でも、あの本能寺の変の前日、この三足の蛙がいきなり鳴き出
して異変を知らせたそうで、で誰かがスカーフのようなもの(袱紗
・ふくさ)を被せてその鳴き声を止めてしまったそうだ。
 歴史的な事件には、必ずこういうエピソードが残っているから
おもしろい。本当かどうかは怪しいけどね。
 帰るとき、以前NHKの大河ドラマ『信長』が放映された時に、
ここで展示された、ガチョウの黒い羽根だけで作られた、信長愛用
のベストが無いので、受け付けのお姉さんに聞いてみる。
「以前ここで見た、ガチョウのベストは展示してないんですか?」
 横で、グルメ・バカ娘が「ガチョーン! ガチョーン!」とつぶ
やいている。一度このバカ娘の頭をパカッと割って覗いてみたいも
のだ。サイコロが1個コロコロと転がっていそうだ。

 けっきょく今回ガチョウのベストは展示されていないそうだ。
リピーター客を増やすために、小出しにするのが博物館のパターン
なのだ。でもそれを知らない人が多いから、一度見たら二度と見に
来なくなってしまう人が大半なのではないだろうか?

 午後3時。泉涌寺(せんにゅうじ)に行く。
 最新のテレビCM「そうだ、京都行こう」に登場するお寺だ。
 これがひたすらだだっ広くて、難行苦行に挑戦しに来ただけのよ
うだ。入り口から本堂までタクシーで相当距離を走った。帰りは歩
くしかないから、ぞっとする。
 山伏になってしまいそうだ。
 名物の狩野探幽(かのうたんゆう)の壁画も、ほとんど色がはげ
落ちて、見ることができない。
 帰りの分の燃料(体力)を考えて、さっさと帰る。

 午後3時30分。泉涌寺(せんにゅうじ)から行きつけの、陶器
屋さん「土渕陶庵(つちぶちとうあん)」にたどり着く頃には、
ゴール寸前のマラソンランナーのように、酸欠状態だ。
「土渕」で、抹茶と和菓子を食べて、少しだけHP回復。

 午後4時10分。京都駅でご飯を食べて行くつもりだったけど、
あと10分で新幹線のぞみが発車するので、飛び乗る。

 午後6時20分。京都着。行きとおなじ大丸デパート地下の
「おべんとう公園」でお弁当を買って帰る。



11月10日(火)


 きょうは東京の自宅で起床。
 
 午後11時。新宿西口電気街。デジカメのフロッピーをどうした
こうしたを買いに行く。ちっとも名前がわからん。
 その前に、「牛たんのねぎし」で食事。

 午後12時。本屋さんに寄る。京都で4日間本屋さんに寄ること
ができなかったら、とたんに買った本が20冊以上。えらいこっちゃ。
読む時間をどう捻出すればいいんだろう。

 午後12時30分。原宿の美容院ヘアストリートへ行く。
 午後2時。弟子の原口一也、衆芸社社長の高村、カメラマンさん
が来て、ゲーム部屋で取材。
『さくま式人生ゲーム』と『桃太郎伝説』の攻略本の撮影をする。 
 取材記者が原口一也なので、緊張感まるでなし。
 しかも最近は『さくま式人生ゲーム』に関しては、原口一也のほ
うがやり込んでいるので、たぶん原口のほうが詳しいと思う。

 午後4時。取材終了で、自宅に戻り、原口一也と雑談。
『チョコバナナ』の投稿者たちから原口一也のところにたくさん手
紙が来たので驚いたそうだ。いまどきこれほど熱心な若者のグルー
プはないから、原口は信じられないようだ。
 たぶん『チョコバナナ』の投稿者たちが成長して、原口一也と
大きな仕事をするようになるのかもしれない。

 午後7時。ひさしぶりに、カプコンの岡本吉起くんが遊びに来て
くれた。
『ストリートファイター』シリーズ。『バイオハザード』シリーズ
と2本もメガヒットを持つ男というのは格好よすぎるよなあ。
 うちのグルメ・バカ娘なんかは、純粋に岡本くんのファンだから、
大喜び。
 こういう男に惚れたらいかんぞと教育する。
 背中に、松方弘樹と書いてあるぞとギャグにする。
 さっそく岡本くんをダシにして、焼き肉の「第一神宮」へ食べに 行く。2日前にあれほどマツタケを喰いまくった家族は、まだ美味 しい物を食べようとしている。岡本くんは飛んで火にいる夏の虫な のだ。「第一神宮」はよく芸能人が来る、本当に焼き肉の美味しい お店。  日頃仕事で美味しい物を食べ慣れている岡本くんも、この店の肉 の美味しさにびっくりする。  岡本くん、岡本くん、と気安く呼んでいるけど、岡本くんは36 歳の若さでカプコンの常務取締役なのだ。ゲーム業界のことをたく さん教えてもらう。岡本くんとしゃべっていると、いかに私がゲー ム業界のことにうといか浮き彫りになる。  笑うな、グルメ・バカ娘!  おまえだって、SMAPのメンバーを全部言えないじゃないか! 子どもらしくないぞ! 近江牛と三田牛の違いはわかるくせに。  岡本くんは現在マニアックなボードゲームを作っているそうだ。 『桃太郎電鉄』みたいなゲームとは対極側のゲームを指向している そうで、話を聞いているとおもしろそうだ。  いよいよ強力なライバルの登場だ。  はっはっは。ゲーム業界ではまったくライバル扱いしてくれる人 がいないので言ってみたかっただけ。  本当に私はゲーム業界で、独自の道をひた走ってるなあ。


11月11日(水)


 午前10時30分。表参道の「APETITO」で食事。
 いつものベーグルサンドにコーヒー。
 この店は、外国人のお客さんが多いので、フランスのカフェで食
事をしていえるような気分になる。っていってるけど、海外行った
ことないから、本当かどうかはわからない。
 
 食後、原宿を散歩。ブティックやギャラリーを見て歩く。
 しばらく歩いていなかった道に、また新しいお店がどんどんオー
プンしていた。もう少し若かったら、欲しかったような洋服がたく
さんあった。

 午後12時。歩き疲れて、ユナイテッド・アロウズで休む。
 午後12時30分。帰宅。土居(土居孝幸)ちゃんと榎本44歳
がすでに自宅の前で待っていた。
 ひさしぶりに3人が揃った。
 
 午後1時。市ヶ谷のミリオン出版へ行く。
 きょうは『コミック・GON』の取材で、ジャンプ放送局の思い
出話を語ることになっている。
 それでこの3人が集まった。
 いきなり、榎本44歳が、この取材に横山智佐を呼んでいなかっ
たことが判明。土居ちゃんと、私で、榎本44歳をいじめ抜く。
『コミック・GON』の編集の中村くんは、ジャンプ放送局で育っ
た世代なので、大爆笑している。
 しゃべっているうちに、ジャンプ放送局の会議室にいるような気
分になって、3人ともどんどん口調が、ジャンプ放送局をやってる
頃に戻ってくる。 
 えのクンの貧乏話もひさびさに炸裂。
 土居ちゃんが変わらず独身なのに、感動。
 ジャンプ放送局中に、横浜ベイスターズの優勝特集をやりたかっ
たと昔を回顧。
 何でも1月発売の号で、予告を打って、この座談会は、なんと!  来年4月発売の号で、大特集されるそうだ。何て気の長い話だと 思ったら、この本は季刊だっだ。  1月発売の号で「当時の投稿者たちは今どうしてる?」みたいな ハガキを大募集するそうなので、昔の投稿戦士たちは、ぜひ1月発 売の『コミック・GON』をぜひ読んで欲しい。  すでに今までも、この本は、ジャンプ放送局と月刊OUTをやら 特集してくれる本なので、買って読んでいただけに、ついに特集の 依頼が来たかといった感じ。  せっかくなんだから、横山智佐も呼べよな〜、榎本44歳。  取材中も、やっぱり横山智佐も加えた4人で、ラジオをやりたい ねえという話になる。『ジャンピング放送局』っていう名前はどう だ?と、いつものバカ話をして、実現化させて行くパターンに入る。  1回きりの特番でもいいなあ。 『さくま式人生ゲーム』が売れたら、ぜひタカラの高田さんにスポ ンサーをお願いしよう。  午後4時30分。ミリオン出版のすぐそばのデニーズで、今度は 『桃太郎伝説』のドラマCDの打ち合わせ。  うちのゲームらしく、ユーザー参加型のCDになるそうで、近々 このホームページでも、募集要項が載るそうなので、みなさんお楽 しみに。  午後6時。帰宅。  ジャンプ放送局のメンバーとの仕事はいちばん楽しいのだけれど、 ひさびさにえのクンのネタで笑いすぎたので、疲れた。  とても外に食べに行く気力がなかったので、ひさびさにファンダ ース。たまにだとけっこう美味しい。  食後、『チョコバナナチップス最終号』の準備を始める。


11月12日(木)


 午前9時。『チョコバナナチップス最終号』の原稿を書く。
 すでに『チョコバナナ』は次の段階に進んでいるから、感傷的な
気分にはならなかった。
 昨日も『チョコバナナ』でいちばんのがんばり屋・岩岡目々さん
から原稿が届いた。また新しい作品32ページの絵コンテと、『当
方見聞録』が3作品だ。まったく衰えることを知らない。

 午前11時。SIDOのひろたたけし夫婦、菅くん、須田くんが
来る。昨日私がうっかりスケジュールを間違えてしまって、本当は
午後3時に来ればよかった。どうせだったら仕事の打ち合わせがし
たいからと、そのままこの時間に集まることにした。

 午後12時。ルナ・アンジェロで食事。辛口のカレーライスが
けっこう美味しかった。カレーの上に、ネギを刻んだのが乗ってい
て、おしゃれだなと思っていたのに、嫁がこれを見て「カレー丼み
たい」と言ったから、おしゃれなカレーは、どう見てもカレー丼に
見えてしまうではないか。カレーにネギなら、確かに日本そば屋の
カレー南蛮だ。いったんそう見えてしまうと、なかなかこの固定概
念を払拭することができない。
 デザートのティラミスが美味しかったから、よかったけどね。

 午後1時。せっかくだからと、ひろたたけしと計画中の『ヒーロ
ー大作戦(仮)』を練る。
 かなりおもしろいネタになった。ゲームだけでなく、ラジオドラ
マ、CD、トレーディングカードなどで展開して行って、ブームに
なったらおもしろいということになる。

 午後3時30分。タカラの高田さん、小沢くん、笠川さんが来る。
きょうは『さくま式人生ゲーム』の打ち合わせではなく、この『ヒ
ーロー大作戦(仮)』をプレゼンテーション。
 本当は内容についても、くわしく伝えたいんだけど、さすがに秘
密ね。いまは『ヒーロー大作戦(仮)』という仮のタイトルで、内
容を想像してね。ショッカーO野くんとか、神谷明さんといった人
たちと楽しくお仕事できたらいいねというのが発端の計画だけに、
決まったらおもしろいものになるに違いない。

 午後5時。ひろたたけし御一行が、次の仕事のために帰る。
 タカラの高田さんから『さくま式人生ゲーム』の宣伝計画を聞く。 
 テレビCMが『おはようスタジオ』の枠で放映されることが決
まったようだ。最近テレビでCMを流してもらえるゲームの数は本
当に少なくなっているだけに、ありがたいことだ。
 ほかにもゲリラ的に『さくま式人生ゲーム』を宣伝できる方法が
あったらいいなあという話になる。

 午後6時。タカラの3人と、わが家族で、きょうは原宿の「旬の
味・市」で食事。居酒屋風ではあるが、全国各地の味を食べされて
くれる物産館風のお店。

 帰宅後。いろいろお仕事。このところ部屋を片づけようとしてい
るのだが、どんどん足の踏み場が無くなっていくのは、なぜだ? 
いらない物をどんどん捨てようとしているのだけれど、保留の品が
増えて、それを地べたに置いてしまうからのようだ。
 これが掃除嫌いの土居(土居孝幸)ちゃんの気持ちかあと、何だ
か納得する。



11月13日(金)


 午前11時。虎ノ門、DOスタジオ。
 なんと、きょうは『さくま式人生ゲーム』のラジオCMの録音。
何だ、ラジオCMの制作かと思うかもしれないが、私も声を出すの
だよ! ぎょえ〜! CMの立ち会いじゃないの!?
 しかもあの三石琴乃さんとふたりで! それって声優さん? 
 横浜ベイスターズの優勝騒ぎの時に、読売広告の岩崎が確かに
「『さくま式人生ゲーム』のラジオCMに出演お願いしますよ」と
いうようなことを言っていたような気がする。
 適当に「はい、はい」とか言ってたんだろうなあ。あの頃何でも、
うわの空で聞いていたからなあ。
 えらいことになった!
 ちゃんと台本まである。今までラジオのCMとかもやったことあ
るんだけど、放送作家だったから、いつも自分で書いていたから、
ほとんどアドリブだった。
 緊張のまま、ブースに入って録音開始。
 横で、三石琴乃さんのまさにプロ!といった声を聞けば聞くほど、
緊張して行く。横浜ベイスターズの佐々木様が日清ごんぶとのCM
で「おいしくなって、200円!」と甲高い声を上げているのを笑
っていたけど、あの気持ちが今わかった。
 スポーツ選手に、演技が無理なように、ゲームデザイナーにも、
演技は無理だ。むしろ素人臭いしゃべりにしたほうがいいことに気
づく。
 1本目、何回も録音して、やっとオーケイ。
 2本目、だんだん演技を要求される。ははは。素人にそれは無理
だぞ〜。
 そんなこんなで、3本分のCMを録音。も〜、へとへと。
 三石琴乃さんは、このあとももう1本ゲームのCMを録音するそ
うだ。

 午後12時30分。タカラの高田さんと、虎ノ門の「播磨屋」で
食事。ここは本来、通販でおせんべいを売るという不思議なお店。
最近ようやく全国各地で店頭販売を始めた。
 ここのおせんべいは、浅草の醤油たっぷりのおせんべいとは、
ちょうど反対側にあるような、まさに現代的なライト感覚のおせん
べい。軽くてふっくらしていて、お餅を食べているような気分になる。
 今のところ、わが家のおせんべいランキング第1位!
 で、この店の片隅に、サービスのつもりなんだろうな、毛氈を敷
いた野点(のだて)のようなスペースがあって、おこわご飯セット
か、白味噌のお雑煮セットを800円で食べることができる。
 きょうはお雑煮セットを食べる。いつもよりちょっと固い。でも
ここのおせんべいは、こんな美味しいお米から作ってるんですよと
いうことを誇るように美味しい。
 本店が、京都北部の豊岡にあるので、前から一度行ってみたいと
思っている。最近行きたいところが多すぎる。

 食後、タカラの高田さんと別れて、隣りの山形物産館に寄ってい
く。ここは空調の調子が悪いのか、おそば屋さんの湿気がいつも充
満していて、美味しい山形の名産品が並んでいるんだけど、身体が
重くなって、物の怪に押されているような気分になる。毎回そうな
のだ。なかにいる人たちはなんともないのだろうか? 一度聞いて
みたい。

 午後2時。帰宅。『チョコバナナ』投稿者・神谷栄和が来る。
 午後2時30分。レイアウターの野沢ちゃんが来る。
『チョコバナナチップス』の打ち合わせ。最終号は、2週間後ぐら
いには発送できるかな。
 午後3時。私と神谷栄和は、新宿高島屋へ。台車とファイルブッ
クを買って、帰宅。

 午後4時。私と神谷栄和は、横浜に向かう。以前セ・リーグ優勝
の時に予約した「ハマの大魔神社テレカ」を取りに行く。実は受け
取りの締切は、11月8日だったのだ。京都へ行っていたりして、
取りに行くことができないままでいた。とうとうきょうがその受け
取り最終日。本当は今晩ハドソンの宣伝担当・梶野くんのバンドの
ライブに行くことになっていた。
 横浜ベイスターズのテレカと、梶野くんのバンドのライブのどっ
ちが大事なんだってことになってしまうけど、横浜ベイスターズの
テレカはきょうで無効になってしまうんだよ〜。
 ということで、嫁とグルメ・バカ娘が、梶野くんのバンド・ライ
ブを見に行くことになった。1バンド4〜5曲で、何バンドも出演
する構成だそうだ。
 嫁の報告では、なんと梶野くんのバンドは、ビジュアル系のバン
ドで格好良かったそうだ。グルメ・バカ娘は、梶野くんがドラムス
を担当していたので、梶野くんをえらく尊敬したそうだ。

 午後5時。ポルテの受け付けで、テレカの引き換え。あまりにも
受付の女のムスッとした態度に腹が立ち、ハマの大魔神社に優勝の
お礼をしてくるのを忘れてしまった。いかん。また行かないと!
 午後5時30分。せっかく横浜まで来たのだからと、横浜ベイス ターズの聖地・関内のベイスターズ・ショップに寄っていく。寄っ ていくっていったって、横浜駅から2つ目の駅だぞ。だからどうし た。ファンなら行くに決まっている。  もう人気は静まっただろうと思っていたのだが、どうして、どう して10人以上のお客さんが。セ・リーグ優勝、日本シリーズ優勝 の頃は、まったく品がなかったこのお店もようやく品物が増えて来 た。買えなかった品物をあれこれ買って行くうちに、ま〜たサイフ からお金がひらりひらりと飛んで行く。  だって、ここのお店だけでしか買えない、横浜ベイスターズ写真 集3000円が売ってるんだもん。  ついでに3Fで「38年ぶりのV栄光の奇跡展」をやっていたの で、見ていく。それほど珍しい写真展ではない。ファンならすでに 何度も見た写真ばかりだ。一応11月16日までね。  午後6時。どこかで食事をしようということになって、そうだ、 講談社の山畑(同級生)が、馬車道にある中華料理店「生香園(せ いこうえん)」が美味しいといっていたのを思い出した。  このお店は、あの周富徳の弟、周富輝さんのお店。  どちらかというと、テレビで見てるかぎりでは、弟の周富輝さん のほうが大好きだったので、行ってみたかった。  馬車道まで歩いて、「生香園(せいこうえん)」に到着。  なんとレジに、周富輝さんがいるではないか!  TVミーハーの神谷栄和は大喜び。  偉いなあ。タレント料理人はなかなかお店に立たないものなのに。  とりあえず、えびチリソース、チンジャオロースーといった、 中華にありがちなものを頼んで、ほかのお店との差を比較する。  これが美味しい! えびチリソースも揚げワンタンのような物が 少しだけ入っていて、えびチリとの相性がよかった。ハクサイのク リーム煮も頼んだんだけど、クリームが牛乳のようで美味しい。  麺も焼きそばも美味しかったって、ふたりで何品頼んだんだ?  美味しいお店と認定したので、杏仁豆腐を次来た時の楽しみに取 っておく。  このお店のためだけに、わざわざ横浜までは来ないけど、横浜に 来て、中華街に行く用事がなかったら、絶対このお店に行くつもり。  食後、相当遠いのに、中華街まで歩いていく。  これはちょっと本当に遠すぎた。足がつらい。  でもグルメ・バカ娘のために、肉まんと、肉団子を買いに行かな いといけないのだ。    午後7時。中華街で買い物。  午後8時。喫茶店でお茶を飲む。へとへと。歩きすぎた。2時間 近く歩き通しだったわけだ。よく歩けるようになったもんだ。  午後9時。帰宅。神谷栄和とゲーム部屋へ『チョコバナナ』の在 庫を運ぶ作業。私は荷物持てないけどね。  午後10時すぎ。嫁と娘が帰ってくる。  梶野くんバンドは楽しかったそうだ。耳がまだうわんうわん言っ てるそうだ。
CLAC'EX(クラックス)のドラムス担当:梶野くん


11月14日(土)


 午前11時。神谷栄和が来る。
 グルメ・バカ娘が、まだ近所の懐石料理屋さんなのに、おそばが
ムチャクチャ美味しいお店「穂積」に行ったことがないというので
行く。
 本当にグルメ・バカ娘には、食い物の神様が付いているようで、
いつも来ていただいているようでというオーナーからのご挨拶があ
って、デザートが2品になってしまった。
 本当にグルメ・バカ娘がいると、こういう幸せがよく起きる。
 反対にグルメ・バカ娘がいないと、いつも美味しいはずの店の味
が落ちていたり、臨時休業になっていたりするから、怖い。
 昨年もグルメ・バカ娘が林間学校でいなくなったのを幸い、さっ
さと私と嫁は京都に向かい、「M」に行こうとしたのだが、この日
に限って、満員で入ることができなかった。
 グルメ・バカ娘の怨念は恐ろしいのだ。
 私が20年間通い続ける博多のイカの「河太郎」。榎本44歳と
行くと「時化でイカがない」と言われ、中尾淳といくと、味が悪く、
先週グルメ・バカ娘を連れて行くと、いつものように美味しいイカ
に戻っているという事実を見るに、食い物の神様が好き勝手にシナ
リオを書いているとしか思えない。

 おそばを作っている若者とも名刺交換をして、いろいろ話を聞く。
美味しいお店の名前が共通していて、おもしろかった。
 グルメ・バカ娘がいると、お店の人となかよくなれることが多い。
 こいつ一体何者だ!?
 
 午後1時。渋谷東急ハンズ。
 スクラップブックを買いに来た。
 昨日から『桃太郎電鉄』のファイルを再構成し直す作業を始めて
いるのだけれど、まるで砂漠を湖に変えるくらい面倒な作業。
 A3のスクラップブックの中から、重複した観光パンフレットを
抜いて、スリムにしようとしたのだが、ゲーム部屋の床が、見事に
敷き詰められ行くだけ。
 ひとつの県当たり、2冊か3冊つかいそう。 
 スクラップブック購入だけで、10万円を越えそうだ。
 
 午後2時。ゲーム部屋に戻って、神谷栄和とスクラップ作業。
 私はまだ重い物を持てないので、ファイリングのほうだけなのに、
膨大すぎて、いきなり眠くなる。

 午後4時。スクラップブックを買いに、新宿アドホックビルへ。
 
 午後6時。スクラップ作業であっというまに半日が過ぎてしまっ
た。う〜ん、効率が悪いなあ…。
 近所の「竈(かまど)」で食事。
 テーブルが座った膝ぐらいまでの高さしかないので、丼を持つ
ことができない私には、とってもつらいお店だということで、実は
このお店に来るのは初めて。私が大阪に出張ででかけると、嫁と娘
が必ずここで食事するそうだ。
 グルメ・バカ娘がそうまでして食べに来るということは、美味し
いに違いない。
 案の定上手い。ハムのにんにく焼きとか、賽の目に細かく刻んだ
豆腐とかおもしろいメニューがいい味している。
 食べ過ぎた。

 午後8時。帰宅。
『チョコバナナ』投稿者の岩岡目々さんに電話。
いつものように質問責めに会い、長電話になる。本当に朝から晩ま
で漫画のことばかり考えている。2週間に一度ぐらい電話している
のだけれど、毎回ちゃんと質問を用意して待っている。
 しょっちゅう来てる神谷栄和から質問が出ない。
 この差は開いて行くばかりだ。

 さらに『チョコバナナ』投稿者・秋月涼さんにも電話。
『チョコバナナ』16巻にハガキで載った走り高跳びの漫画を送っ
て来た。16ページの漫画だったので、漫画の新人賞に応募するこ
とができない。もったいない。16巻だったら、巻頭間違いなしの
作品。アンケートも1位かもしれないぐらい。
 
 中尾淳のように、非常事態なのに、2〜3週間に1度メールを書
いてくるだけで、出入り禁止を解いてもらおうという虫のいいやつ
を見るたびに、もうみんなの面倒を見るのをやめようと思う。
 そろそろと思うたびに、岩岡目々さんから2週間に1度、漫画の
完成原稿32ページと絵コンテが届く。秋月涼さんが、素晴らしい
作品を描いてくる。
 『当方見聞録』の集まりで、がんばる人たちもいる。
 その一方で、全然連絡が来なくなる人たちがいる。
 漫画を送ってくるのだけれど、1枚の手紙も同封して来ない。
どういしたいのかの意志がまったく伝わってこないので、どうして
あげたらいいのかわからない。
 こっちから電話をかけて、家にお出でよと言って、呼んであげて、
家に来て、目を輝かせて「がんばります!」と叫んで、そのうち来
なくなってしまう。
 この繰り返しなのだ。
 だからこっちから連絡は取らないよと決めた。
 この緊張バランスがずっと微妙なままなのでつらい。
『チョコバナナ』の復活はまだまだ遠い。



11月15日(日)


 午前11時。神谷栄和が来る。

 午後12時。『チョコバナナ』で『勇者アギーレ!』の漫画原作
を書いていただいた、あかねこかサンから電話。漫画家の宮西計三
くんの個展を渋谷でやっているから行きませんか?というお誘い。
 宮西くんとは10年以上会っていないので、行くことに。

 午後1時。渋谷東急本店そばのフィギュア屋さん「プロジェクト
6分の1」に行く。どうも最近フィギュアを買いたいという気持ち
が薄れて来ている。何でもフィギュアになってしまって、希少価値
の喜びがないような気もする。何も買わずに店を出る。

 午後1時30分。渋谷パルコ7Fのとんかつ屋さん「蔵田屋」で
食事。自分で胡麻を擦って、ソースをかけ、そのタレに、ひれかつ
をつけて食べる趣向が楽しい。

 午後2時30分。渋谷ロフトの裏のギャラリー「美蕾樹」で、
あかねこかサンと落ち合う。
「宮西計三+谷弘兒 二人展」がそのタイトル。
 私、あかねこかサン、宮西計三で昔話に花が咲く。
 同世代の漫画家さんたちが、みんな病気で倒れているという話を
聞く。自分もそうなんだけどね。そういう年齢なんだねえ。
 ポンポン飛び出る昔の漫画家さんたちの名前を、まったく知らな
い神谷栄和。20年も前の漫画家さんたちだから無理もない。
 あげくに神谷栄和は、あかねこかサンから「『宇宙人ショック』
読んでますよ、上手いですよ。でも漫画で何を訴えたいの?」と言
われる。ここへ来る前、私が「描きたいテーマは決まったのか?」
と神谷栄和を、さんざんイビっていただけに、嫁とグルメ・バカ娘
は大爆笑! 

 宮西計三くんの個展は、11月22日までやっているので、興味
のある人は行ってみてください。強烈な個性なので、好き嫌いが出
る絵だ。そういう絵を見るのも必要だよ。

 午後4時。西武百貨店地下でお弁当を買って帰る。ついでに
「まゆたまご」と「レモンやまいも」という妙な食べ物も買う。
 レモンやまいもは、知らないで食べると、びっくりする味だけど、
すっぱいことを意識してから食べると、けっこうあとを引く味。



11月16日(月)


 午前11時。地図やカーナビのマップなどでおなじみの会社ゼン
リンの方々が来る。矢野さん、西田さん、上野さん、戸田さん。
 ゼンリンさんちはとは初対面なんだけど、さすが地図の会社の方
々。住所を言っただけで、まったく間違えずに来てしまう。

 続いて、ハドソンの梶野くん、武田くんが来る。
 きょうはこのメンバーに、宮路一昭くんを加えて、事実上の『桃
太郎電鉄最強試合』を開催することになっているのだ。
 ゼンリンの西田さんというのが、現在知りうるかぎりの桃鉄マニ
アのなかでは最強の桃鉄研究家なのだ。『桃太郎電鉄』の同人誌を
2冊作っていて、これが濃いなんてものじゃない、京都の天下一品
ラーメンよりも濃い。
 秋田沖油田まで20マスの駅リストとか、サイコロの1〜5個ま
でで出る出目の確率を全部出していたりする。
 ほとんど『ウルトラマン研究序説』に近い本。
 冬のコミケにこの本が出るらしいので、桃鉄マニアはぜひ買って
読んで、腰を抜かせてほしい。
 間違いなく、西田さんは、私より『桃太郎電鉄』について詳しい。

 午前11時30分。試合を前にして、近所のルナ・アンジェロで
会食。舌戦を交わす。
 午後12時30分。宮路一昭くんも到着。いよいよメンバーが揃
う。宮路一昭くんは、かつて芸能人大会で優勝した実績を持つ。今
のところ、私と宮路一昭くんがおそらく桃鉄ランキングの1位、
2位だと思う。ただもう『桃太郎電鉄7』からは、間違いなく宮路
一昭くんのほうが、私より強い。
 かつて私は誰が何のカードを持っているかを常に暗記していて、
何ターン後に、誰がどのカードを使うかまで予測できたのだが、今
はもう記憶力がまったく無いので、昔の強さは無い。

 午後1時。ゲーム部屋で、ついに決戦の火蓋を切る!
 出場メンバーは、西田さん、宮路一昭くん、ハドソンの梶野くん
+武田くんの連合軍、私。
 ゴールは、10年。人間だけ対決。
左からハドソンの武田くん、梶野くん、ゼンリンの西田さん 左から宮路一昭くん、さくま、ゼンリンの矢野さん、西田さん
   さすが、最強メンバーだけに、序盤戦から、独走のプレイヤーが 出ない。かわりばんこに目的地に到着して、決算の度に、順位が めまぐるしく変わる。  それにしても西田さんが、強い!  絶対貧乏神がつかない位置を見事なまでキープする。  何しろ4人で『桃太郎電鉄』をやろうものなら、必ず誰かひとり が、マイナスにへこむものだ。  なのにこのメンバーは誰ひとりとして、マイナスに転じない。  これだけで、この4人がいかに恐ろしいメンバーか、わかる人に はびんびん伝わると思う。  とにかくひさびさに1手間違えると、脱落してしまう雰囲気。  頭をつかうので、首がぱりんぱりんに腫れてくる。  ついに宮路一昭くんが、こらえきれずに、冒険に出たために、 貧乏神がついてしまう。わずか数ターンの遅れがこのメンバーでは 致命傷になる。    午後5時30分。ゲーム終了。  順位は以下の通り。 1位・西田さん(ゼンリン) 70億6630万円 2位・さくまあきら     57億0240万円 3位・ハドソン連合軍    24億4020万円 4位・宮路一昭くん      8億2260万円  マイナスがひとりもいない試合なんて、初めてだ!  例によって、私は貧乏神、キングボンビーを1度も食らわずに終 了というところで、面目を保ったんだけど、まあ、西田さん、評判 通りの強さ!  なんとか貧乏神を食らわせてあげようと思ったんだけど、ほかの プレイヤーを盾にして、貧乏神がつかないように巧みにかわす。 けっきょく西田さんも、貧乏神が1回だけついただけで、キングボ ンビーは0回。  見事としかいいようが無い。  午後6時。このメンバーで食事するなら、日本全国の食べ物が出 る「原宿ふるさとプラザ」でしょうということで、嫁とグルメ・バ カ娘を呼び、でかける。  食事をしながら、反省会と、次の『桃太郎電鉄』の制作について 打ち合わせする。  次の『桃太郎電鉄』を制作するに当たって、ゼンリンの方々が協 力してくれることになっているのだ。これだけ詳しい人がいると、 まずテストプレイに困らずにすむ。安心して冒険ができるので、次 の『桃太郎電鉄』は、ちょっと過激なネタにもチャレンジしてみよ うかなという気になった。  いよいよ今週から『桃太郎電鉄』の新作の作業に入るので、『桃 太郎電鉄』の改造案、改革案でもあれば、ぜひ『ほんのチョイ係』 のほうにぜひ送ってほしい。  たぶんアイデアを出すのは難しいと思うので、昔あって今は消え てしまったカードやイベントで復活させてほしいものなんかだった ら書きやすいかな? たぶんマルサカードが1番多いと思うけどね。    午後10時。『桃太郎電鉄』の話題が止まらないので、後日また 集まることを約束して別れる。宮路一昭くんは、西田さんと、20 年モードで再試合をすることお願いしている。どうしても宮路一昭 くんとしては、きょうの敗北が悔しいらしいのだ。    それにしても疲れた。でもひさびさの真剣勝負は楽しかった。  日本じゅうの桃鉄マニアを集めて、真の日本一を決定してみたいものだ。


11月17日(火)


 午前10時。渋谷にでかける。
 まずは携帯電話のNTTドコモを探し回る。
 ふだん別件渋谷を訪れているときは、ああ、ここがNTTドコモ
かあと思いながら、通り過ぎるのだが、いざ探そうとすると、なか
なか見つからない。
 銀行もそうだ。いざ何かの振り込みで銀行を探そうとすると、
いつも通る道にその銀行があるような気がするのに、行ってみると
無い。そういうことがよくある。
 けっきょく渋谷バスターミナルから、道玄坂を東急百貨店まで行
って、渋谷パルコのほうを通って、丸井ヤング館の隣りに、NTT
ドコモはあった。何のことはない、スタート地点から100メート
ルのところにあったのだ。悔しい。

 何でNTTドコモに行ったかというと、どうも最近充電しても、
すぐ電池が無くなってしまう。たぶん電池パックのせいだと思うの
で、交換してもらおうとした。ところが今は買い換えが安い。
 これはいい機会だ。新しいのを買って、今度こそ、説明書をちゃ
んと読もう(笑)!
 しかし驚いたねえ。てっきりまた電話のメモリー登録を入れ直さ
ないといけないと思ったら、今はコンピュータで、古い携帯からデ
ータを吸い取って、コンピュータに入れて、それを新しい携帯に入
力してしまうんだねえ。
『ドラクエ』の呪文を覚えていれば、他人のゲームカセットでも続
きができてしまうことを知った以来の感動だねえ。
 ああ、言ってることがおやじ臭い。

 午後12時。嫁とふたりで、いつものように渋谷パルコ前のタン
トン・マッサージに行く。15分マッサージだ。
 ちょうど肩のこりがほぐれたところで終了。でも十分体力回復。
またまたおやじ臭い。

 午後12時30分。渋谷公会堂そばの「チャーリーハウス」で
チャーリートンミンを食べる。細麺のラーメンで、嫁のお気に入り
のお店。私も大好きだけど、私はどこか1部分でもいいから、下品
な味が残っていてくれると、安心する。眉目秀麗というやつだと、
ちょっと腰が引ける。

 午後1時。渋谷ロフトで『チョコバナナチップス』用の紙を買う。
A4の紙が500枚だ。

 午後2時。帰宅。税理士の赤根豊くんが来る。
 わが社の決算報告。ついに『チョコバナナ』の累積赤字が3年間
で、1億円を突破したそうだ。ばひ〜〜〜〜〜ん! 本当に突破し
てしまったのかあ…。みんなには想像がつかないだろうが、ふつう
の家庭でこの赤字なら、一家心中である。
 私がゲームを作ってるから、たいした金ではないだろうと思う人
は、10年後の人生で、きっとわずか数10万円の金で、人生を棒
に振ることだろう。
 私にだって、本当につらいお金なのだ。
 つらいから『ほんのチョイ係』のほうで、虫のいいことを平気で
言ってくる若者の残酷な言葉には心底腹が立つのだ。

『チョコバナナ』を始める時に、嫁に、累積赤字1億円を突破する
まで勝負させてくれと頼んだ。人生最後の夢に挑戦するんだ。私の
すべての夢はほとんど実現した。あと残るは『チョコバナナ』で漫
画家を育てることと横浜ベイスターズの優勝だけだった。
 やっぱりダメだったなあ。横浜ベイスターズは優勝したのになあ。
もうこれ以上、本を出したいと嫁に言えないよなあ。
『桃太郎伝説』は出すと発表してしまったし、『宇宙人ショック』
はもう12月10日に発売だもんなあ。
 『当方見聞録』と『チョコバナナ1999』はつらいなあ。
 よっぽど投稿者が死にものぐるいで作品を描いて来て、今時これ
だけ素晴らしい若者がたくさんいるんだ! ここで止めたら、日本
の漫画が途絶えてしまう!と、私が叫べるくらいの投稿者たちの爆
発が無いかぎり、とても出してくれと言えないよなあ。

 中尾淳しても、神谷栄和にしても、単行本にその名が載ってから、
ほとんど作品を送って来なくなるからなあ。描けばいいってもんじ
ゃないけど、何のための出費だかわからないよなあ。
 本当に『わるわ〜るど』を出してから、ちっとも衰えずに作品を
送ってくる岩岡目々さんのためだけに、今後も単行本を出してあげ
たほうがいいような気がする。
 どうせ赤字なら、赤字でもいいから、本を出して上げたいと思え
る努力をしてる人の本を出してあげたいよ。
 本当は赤字が見込める本なんて発売しちゃいけないんだよなあ。
 昔多くの、チャンスに恵まれずに消えていってしまった漫画家志
望の友人たちを見て来た。
「とても親にこれ以上迷惑をかけることはできないよ」と言って、
ペンを折った友人たち。
 私だってそうだ。原稿用紙400枚書いて、出版社に持ち込んで、
忙しいのひとことで見てももらえなかった、20年前。
 あの時お金があったら、友人の本を出せてあげられたのに。自分
の本だって、自分で出すことができたのに!
 そんな気持ちから始めた『チョコバナナ』は、ちょっと時代が
違っていたようだなあ。
 まあ、ちょっとこの問題は今週京都でゆっくり考えて来よう。

 午後4時。タカラの高田さん、森岡さんが来る。このところ続々
『さくま式人生ゲーム』の宣伝用ポスターとかチラシを持って来て
くれる。必死に宣伝してくれていることが伝わって来る。
 森岡さんが必死になって『ほんのチョイ係』のほうで、宣伝告知
をして来てくれたことに対して、もう「さくまにあ」の馬場ダイく
んが都営三田線の三田駅まで行って来たというメールを送って来た。
 森岡さんが、メールを出しておいて、よかったあ!と喜ぶ。
 
 きょうは、ほかにもある。広告代理店の人が来て、『週刊SPA!』
に載せる『さくま式人生ゲーム』の広告写真の撮影があるのだ。
 先日のラジオCM(「エーベルナイ2」の番組用)に続いて、今
度の私は、フライデーされた芸能人のふりをする顔出しCMだ。
 
 家の前に自動車を止めて、さも報道陣から逃げるようなシーンを
撮影したのだが、まんまと3軒先の喫茶店のおばさんに撮影風景を
見られてしまう。ただでさえ、うちはお笑いコンビとかが、顔を塗
りたくって撮影をしたりすることで、有名なのだが、また誰か来た
のかしらと思って見たら、私だもんなあ。私までお笑いの人だと
思われてしまう。って、昔から私は、お笑いの人であった。
 ゲームを作り始めた頃から、すっかりお笑いは、榎本44歳に
まかせっきりだったから、忘れていたのだが、もっと昔、私は結構
テレビやラジオに出ていたのだった。また昔に戻るのか?
 まあ、今さらイメージを守る物も何もないから、おもしろければ
いいや。それでゲームが売れるんなら、やるべきだろうね。
 このままだと『チョコバナナ』は、この『さくま式人生ゲーム』
でしかその姿を存続して行くことしかできなくなるかもしれないか
らな。もし『さくま式人生ゲーム2』が出るようなら、福助から、
虎十郎から、恋ちゃん、お仕事人、総登場させてしまいたいから、
何でもやりましょう!

 午後6時。娘が3階から降りて来て「腹、へった〜」とつぶやく。
タカラの森岡さんが「うわ〜〜、生で聞けた〜!」と喜ぶ。
 すでにグルメ・バカ娘の「腹、へった〜」は、業界ではとっても
有名なのだ。
 残念ながら、高田さんも森岡さんもきょうは、このまま会社に
帰らないといけないそうで、森岡さんはグルメ・バカ娘の喰いっぷ
りを見ることができなかった。

 さ〜て、きょうはどこに食べに行こうと悩んだ末、ついにあの店
に行くことに決めた。
 最近とってもごひいきの懐石料理屋「穂積」だ。
 ランチのコースのおそばが死ぬほど美味しいと、このところずっ
と言い続けている、あの「穂積」だ。
 懐石料理屋であるからして、夜になると、料理の質がぐ〜んと上
がる代わりに、値段もぐ〜〜〜〜〜ん!と上がる。
 それを知っていたので、まだ一度も夜に来たことがなかったのだ。
 ところが先日グルメ・バカ娘を連れていったことから、お店の人
となかよくなってしまって、つい「今度は夜、行きます」と言って
しまった。大人の「行きます」は、早く行けば行くほど、効果があ
るから、3日後のきょう行くことにしたのだ。

 できればいつものように、夜の味はそれほどでもなかったという
オチであってほしかった。
 値段が高いだけ分以上の料理が出てしまった。
 どの料理も丹念に作られている。魚のかますを酢でしめて、それ
をバーナーで炙るやつなど、かなりの味。
 マツタケも出たんだけど、先日あれだけ美味しいマツタケを食べ
てしまっただけに、舌が肥えてるから、話にならないだろうなあと
思ったのだが、さにあらず、十分美味しい。マツタケご飯の炊き方
も絶妙。困ったなあ、どれもケチのつけようがない。
 もちろん料理長さんが素晴らしいのだろうけど、最前線を指揮す
る32歳の若者の料理に対する真摯な態度がことのほか、すがすが
しい。この若者の成長なら見届けてみたいという気になる。
 トドメはデザートに、くず切りが出て、グルメ・バカ娘がうめく。
あのぶっちぎり第1位の京都「鍵善良房」の葛切りと、いきなり互
角に戦ってしまったのだ。京都の「鍵善良房」といえば、葛切り業
界では、絶対右に出るものがいないというのが、定説。その味に匹
敵する味なのだ。
 嫁とグルメ・バカ娘は、「鍵善良房」より、蜜が薄味でさわやか
な分だけ上だとまで言い切った。私はもう少し、葛が固ければ上だ
と言ってしまったくらい美味しかった。
 これは一度、葛切りマニア・サザンオールスターズのベーシスト
・カズ坊(関口和之)を連れて来ないと!
 さらに本編の味の方は、グルメの師匠・すぎやまこういち先生に
言上できるのでは?と思える味だ。

 食後、32歳の若者と美味しいお店について、長話。ついつい長
居してしまった。食い道楽の話は楽しいけど、教養も必要だなあ。
 それにしても近所にこんな美味しいお店を発見してしまったこと
は、食い道楽家族には、拷問である。
 ああ、グルメ・バカ娘の「美味しかったね」のひとことが怖い。



11月18日(水)


 午前10時30分。高円寺の整体さん。リハビリは痛いよ〜。
 午後12時。高円寺南口すぐのラーメン屋さん「代一元(だいい
ちげん)」で、タンメンを食べる。750円。タンメンというと、
とろみがあるものが多いが、あっさり風味にしてるので、好み。
 嫁は、きくらげが入っていないので、ちょっと不満。

 午後12時30分。吉祥寺でいつものように、武蔵野珈琲でジャ
ワロブスターとマンデリンの豆を買う。ここの珈琲が切れると、禁
断症状が出るくらい美味しい。お客さんがほとんど文筆業だったり、
性格俳優さんだったりするからおもしろい。
 こういうお店に通ってると、自然に作家テイストが身に付くのか
もしれない。

 午後1時30分。吉祥寺で靴を探す。またしても買った靴が、足
に合わなかったのだ。もう靴を探してばかり。なんとか東急百貨店
で今、二番目に好きな靴を注文できるというので、4足買う。
 どうして靴業界は、おなじ物を数量作らないんだ。
 気に入ったときに、おなじ品物を買えないって、絶対変だよ。

 午後3時。帰宅。アニメ・プロデューサーの落合茂一さんがいら
っしゃる。いろいろアニメ業界についてお話しする。
 アニメ業界もなかなか不況のようだ。

 午後6時。グルメ・バカ娘が降りて来ない。どうしたんだろう。
いつも午後6時を1分でも過ぎれば「腹、減った〜」と言いながら、
3階から降りてくるはずなのに。
 嫁が呼びに行くと、なんと寝ているではないか!
 本当に食っちゃ寝、食っちゃ寝のガキだ。
 起こそうとするが、まったく起きない。
「起きないなら、置いて行くよ」というと、かすかに首を振る。
「牛や(ぎゅうや)と、十二段家(じゅうにだんや)のしゃぶしゃ
ぶ、どっちがいい?」と聞くと、十二段家の時に、かすかに、首を
縦に振る。でも起きない。
 本当に置いて行こうとすると、むっくり起きあがった。
 しゃぶしゃぶは、グルメ・バカ娘の大好き料理なのだ。
 しかも本当に起きないと、置いて行かれてしまうことをしっかり
わかっている。

 午後6時30分。青山骨董通りの「十二段家」で食事。
 ここのしゃぶしゃぶは、アクが出ないことで有名。
 きょうのお肉は、ポン酢のほうが合うお肉だった。
 
 午後7時30分。帰宅。
 京都にでかける支度。どうも私だけ、明日の夜から、京都に行く
ことになりそうだ。早くも『桃太郎電鉄』の新作のアイデア出しが
うまいこと佳境に入って来ているので、恒例の電車のなかで考える
を始めないと。
 嫁と娘は、週末京都で合流するので、土曜日の夜に、この日記を
アップすることができるだろう。

 午後8時。カズ坊(関口和之)のビデオ『すぐ弾けるウクレレ』
を見る。これだけの量をしゃべるカズ坊(関口和之)は、初めて
見た気がする。ギャグ仕立てなので、ウクレレ持っていない人でも
楽しめる。

 午後8時30分。『チョコバナナ』投稿者・天街由佳子さんに電
話。新人漫画賞用の絵コンテの打ち合わせ。
 とにかくいい作品。絵コンテを4回描きなおしたかいがあって、
以前とは比べ物にならないくらいレベルアップした。本人もこの半
年間ぐらい悩み続けていて、とてもプロなんかめざすことできない
と弱音を吐いていたこともある。
 本人も今回の作品で、大きな壁を乗り越えたようで、質問がポン
ポン出る。ほとんど岩岡目々さんとおなじような反応をするように
なっているから、おもしろい。
 こういう人ばかりだと『チョコバナナ』を続けて行きたいと思う
んだけど、まだまだぽつりぽつりだからなあ。
 まだみんな本当に悩んでいないんだろうなあ。
 質問が出るかどうかで、今後上達ぶりを判断して行こう。
 っていうと、神谷栄和は困るねえ。質問出ないから。

 それじゃ、また私は京都に行って来る。



11月19日(木)


 午前11時30分。代官山ヒルサイドテラスにあるサンドイッチ
専門店「トムズ・サンドイッチ」で食事。
 食後、代官山界隈を散歩。

 午後1時30分。帰宅。
 レイアウターの野沢ちゃんが来る。
『チョコバナナチップス最終号』が完成したので、印刷開始。
 私は『覇王マガジン』の原稿書き。

 午後3時。『オリコン・ザ・イチバン』の取材が来る。ハドソン
の武田くんもいっしょ。
 先日も『さくま式人生ゲーム』の国技館でのイベントを取材して
くれた人で、きょうは『桃太郎伝説』の取材。
 子どもの頃『桃太郎伝説』『桃太郎電鉄』をさんざんやってくれ
たそうで、インタビューもすごく楽チン。最近本当に私のゲームと
『ジャンプ放送局』で育った子たちが、業界に入って来て、私の
ゲームを応援してくれるので、うれしい。
 7〜8年前の取材記者なんてのは「ファンです。いっしょに写真
撮っていいですか?」とまで言うから、撮ってあげて、送られてき
た雑誌を読むと、私のゲームをぼろかすに書いてたみたいなやつ
ばっかだったからなあ。
 最近のジャンプ放送局育ちの子たちは、ちゃんと好意的に書いて
くれるので、いい時代になったなあと思う。

 午後5時30分。取材終了。
 午後6時。東京駅に向かう。
 午後6時30分。新幹線のキップ売場が最近銀行にあるような、
番号札のシステムになったんだけど、これが遅くていらつく。
 うっかり全然進まない列に並んでしまって、しまったということ
が解消されたことは、非常によいのだが、キップを売る駅員さんの
数が圧倒的に少ない。
 番号札を取ると、24人待ちだからねえ。
 待ってるお客さんたちは、一様にぶす〜っとした顔をしている。
そりゃそうだ。窓口で買う人たちは、時間に追われている人たち
ばかりなのだから。
 キップを買って、いつものように、大丸デパート地下のおべん
とう公園で、このあいだ美味しかった、目黒けやき弥の「栗林」を
買って、ホームへ向かう。
 きょうはひとりだから、鞄を持つのが、けっこうつらい。
 でもいつも誰かに持ってもらって、楽ばかりしていては、手の
リハビリが遅れるから、たまには苦しさを手に与えないといけない。

 午後7時。新幹線のぞみで、京都へ。
 車中、いよいよ『桃太郎電鉄』の新作に着手する。
 おもしろいように、ポンポン、アイデアが出てくる。
 これはいいぞ。
 う〜ん、でもこのアイデアをつかうとすると、新キャラをいっ
ぱい登場させないといけないぞ。怠け者の土居(土居孝幸)ちゃ
んに無理をさせないといけない。
 新居を買ったばかりで、ローンに追われている土居ちゃんのこ
とだ。働かざるをえないだろう。
 そのうち全容がまとまりしだい『チョコバナナ』の投稿者が参
加できる部分を作るからね。
 今のところは、どんな時事ネタを入れたらいいか? 役職名で
こんな名前がほしといったアイデアが浮かんだら送ってね。
 たぶん来年の暮れ発売になるだろうから、獅子座流星群はもう
古くなってるぞ。

 午後9時30分。京都のマンションに到着。
 引き続き『桃太郎電鉄』のアイデア出し。
 きょうからずっと『桃太郎電鉄』漬けだ。



11月20日(金)


 京都のマンションで起床。
 ご飯を食べに行こうと思うが、どうしても午前10時30分から
のドラフト会議が気になって、外に出ることができない。

 午前10時30分。う〜ん。西武ライオンズが松坂投手の交渉権
を獲得してしまった。横浜ベイスターズには来なかったなあ。もし
来ていたら、横浜ベイスターズの黄金時代到来だったんだけどなあ。
 まあ来年からは、ベイスターズはもちろん応援するけど、広く野
球ファンとして、楽しく野球を観戦しようと思ってるので、西武ラ
イオンズに入っても、応援しよう。

 午前11時50分。京都駅八条口の「しるそば・たか」へ行く。
看板に「ラーメンを越えたらーめん」とある。「午前11時より売
り切れ次第終了」とも書いてある。
 けっこう期待して行くと、これがなんと駐車場の中にある。
 店内の作りは、牛丼の吉野屋とおなじようなカウンター。
 これはいかにも安っぽい。メニューを見れば、しょうゆ味600
円とある。ますます安い。 
 味の方は、ひさびさの「まずうま」。まずいけど妙に美味しい
「まずうま」だ。焦げたネギの味がぷうんと匂って、好きな人には
けっこう病みつきになる味。備え付けのスティック状のべったら漬
けがいい。ほかのお客さんの食べ方を見ていると、ご飯もいっしょ
に頼んでいる。やっぱりべったら漬けが美味しいせいだ。

 午後12時39分。いつものようにどこかに小旅行しようと思っ
て、京都駅のキップ売り場の路線図を眺める。
 まだ行ったことのない場所は…なかなかないなあ。ヒマさえあれ
ばプラプラでかけてるからなあ。いいかげん行くトコない…あっ!
あった! 特急でいつも通り過ぎてるけど、マキノ駅に行っていな
い。『桃太郎電鉄』ファンなら、マキノ駅というだけで、「ああ、
あの京都駅の上にある☆印カード売場だ」というだろう。そのマキ
ノ駅だ。『桃太郎電鉄』シリーズはすでに11年になるというのに、
まだこの駅に降り立ったことがなかったのだ。
 カタカナの名前というのがおもしろくて、カード駅の名前として
使ったまでで、実はまったく知らない。大学の同級生に牧野という
のがいたので、受け狙いで付けた楽屋落ちだったのだ。その楽屋落
ちすら、牧野本人に今も伝えていない。いつも会っているのに。

 よし、きょうの旅の目的地はマキノ駅に決めた。JRで720円
ならそう遠くあるまい。そう思った時、いつも琵琶湖湖畔で私は
よく遭難することをすっかり忘れていた…。
 またいつものようにとんでもない目に会うのだった。

 湖西線の鈍行に乗るのは、初めてだ。
 でも景色は、スーパー雷鳥などで見て、けっこう知っているので、
珍しくはない。比叡山坂本駅も以前路面電車で来たことがある。
 そのうち、電車は雄琴(おごと)駅へ。おお! これが風俗業界
の聖地・雄琴駅か。見渡す限り住宅地で、ちっとも風俗らしい景色
はない。駅から遠いのであろうか? それとも最近とんと噂を聞か
ないから、条例か何かで潰れてしまったのかな?
 昔、デビュー当時、盛り場ルポをやっていた頃のことを思い出し
ながら、『桃太郎電鉄』のアイデアを練る。横浜高校の松坂くんの
ことをまだ悔やんでいるわりには、ポンポン、アイデアがよく出る。

 へ〜、歴史の本によく出てくる「堅田」は「かただ」ではなく
「かたた」と読むのかあ。などとまだのんき。
 しかし堅田駅を過ぎるあたりから、電車と併走して走っていた、
大きな国道が消えて、どんどん琵琶湖湖畔が近づいてくる。
 湖の色がどんどん濃くなって行くぞ。こりゃ思ったより、田舎の
ようだぞ。
 
 午後1時11分。京都を出てから、40分以上。近江舞子(おう
みまいこ)駅に到着。到着ではない。ここが終点なのだ。すぐ次の
電車が来るというので、待つ。
 だんだんいつもの旅の怖さがせまって来ているようだ。
 だいたい、マキノ駅が京都からいくつめの駅かも確かめずに、行
くからいけないのだが、ぶらり旅だからこそおもしろいと信じてい
る私には、いきあたりばったりという言葉が心地よい。
 すぐ電車が来たのだが、これが「新快速」。やばいよ。こんなの
に乗ったら、マキノ駅に降りられなくなる。
 しかし次の電車は一体いつ来るんだ?
 駅員さんに聞いてみよう。
「マキノ駅まで行きたいんですが…」
「あ〜、次は午後2時3分だから、1時間近く間があるねえ」
 ひえ〜〜〜〜〜。
 ここでくっきり思い出した。琵琶湖の周りは、電車の連結がむちゃ
くちゃ悪いことを。しかも電車の本数もむちゃくちゃ少ないことを。
携帯電話がまだ無い頃、いつもこの辺りをうろうろしていると、か
ならず嫁が、私がどこかで事故を起こしたか、遭難したと思ってし
まう、我が家では「魔の琵琶湖」と呼ばれる、あの琵琶湖だったのだ。 

 仕方なく、私は駅を降りることに。幸い目の前に、近江舞子ホテ
ルという瀟洒な景観が目に入っていた。湖も大きく広がっている。
 近江舞子ホテルまで歩いて、コーヒーを飲む。
 白砂青松が続く美しい景色だ。
 夏は海水浴場で賑わうらしいが、今はほとんど人がいない。
 ビアンカという豪華客船が大津まで就航しているそうだが、1日
1往復しかしないという。
 日本庭園も美しい。バブルが去った今、経営は大変だろうなあ。
おだやかな湖と対岸の山の美しさに、1日のんびりするには最高の
場所だと思うのだが、とにかくホテルのまわりの建物が、ほとんど
朽ち果ててしまっているので、もの悲しい。
 そろそろ電車の時間だと思って、ホテルを出て、海水浴場を覗い
ていったのだが、いい場所だ。豪華であったであろう別荘に、草が
ぼうぼう繁っている。どの別荘も、不動産屋の管理になっているの
が、いかにもバブルどもの夢の跡といった感じである。

 駅に戻ると、さっきの駅員さんが私のことを覚えていたようで、
何か言っている。
「もう電車が上に来ていますよ! 急いで、急いで!」という。
 そんな、私はまだ手足が不自由で、走ることができないのだ。
 たしか時間のほうはまだ5分ぐらいあったはずなんだけどなあ。
「急いで」と言われて、ゆっくり歩くのも失礼なので、もつれる足
を必死に動かす。跳ねているとしか見えないだろうが。
 すると駅員さんが、テレカよりも少し大きい紙切れを出して「こ
れ持って、上に行ってください!」という。へ? 何だ!? いか
にも粗末な紙にコピーで「連絡票」と書いてある。
 文面を読んでみよう。

 連絡票。近江舞子駅より乗車。
 この連絡票をお示しのうえ、乗車券をお求めください。
 近江舞子駅長。
 
 ふ〜ん。初めて見た。これは鉄道ファンならマニアックなアイテ
ムなんじゃないかな? 持って帰ろうかな? 
 そんなこと、のんきに思ってる場合じゃない。急がないと!
 階段を、駈け登ることはできないから、スキップ登りする。

 午後2時03分。近江舞子駅を電車は、近江今津駅をめざす。
 鉄道ファンならもうおわかりだろう。近江今津駅では、まだマキ
ノ駅に到着しないのだ。そんなに遠かったのか?
 近江舞子ホテルの喫茶ルームでもらってきた、湖西線時刻表を見
てみよう。笑ってしまった。
 京都駅から、近江舞子駅までは、12個目の駅。
 京都駅から、近江今津駅までは、17個目の駅。
 京都駅から、マキノ駅までは、19個目の駅!
 そんなに遠いのか〜〜〜〜〜!
『桃太郎電鉄』のMAPはウソをついてるではないか〜〜〜〜〜!
 京都駅からひとつ目の☆印カード売場は、近江舞子駅のほうが
ふさわしいではないか〜〜〜〜〜! やばいぞ!
 しかも京都から19番目の駅であるマキノ駅のすぐ先の、23番
目の駅は、有名な敦賀(つるが)駅なのである。
『桃太郎電鉄』では、マキノ駅から3つ目の駅が、敦賀になってい
る。えらいことになったもんだ。MAPを変えるか?
 マキノ駅はチューニング上、非常に重要な駅だから、そう簡単に
場所を変えるわけにいかない。

 午後2時29分。近江今津駅でさらにもう一度乗り換える。階段
を登ったり降りたり、へばってきた。
 いよいよマキノ駅に近づいていることだけは確かだ。
 きょう3回目の電車はいよいよローカル線の旅にふさわしい車輌。
3両しかないのは、別に珍しくないのだが、なんと車輌が寝台列車
を改造してつかっているのだ。いかにも外壁の塗料も分厚い。
 さらにドアーが、横にスライドする方式ではなく、バスのように
ぺこんとふたつに折れて、手前に開く方式。えらいこっちゃ! 
ほとんど東北を旅しているような気分になってくる。
 雨もぽつぽつ降って来た。

 午後2時37分。とうとうマキノ駅に到着。
 予想はしていたが、駅前にも何もない。
 気温も7度。寒いぞ〜。曇り空がさらに寒さを演出する。
 どうする? また次の電車を待つと、1時間後なのである。
 バス乗り場とタクシー乗り場がある。
 バスの行き先は、マキノ高原。どうも近場にしか行かないようだ。
 バス乗り場でおばあちゃんがふたり並んですわっている。
 一応タクシーを携帯で呼んで、来るまでおばあちゃんと話す。
 マキノ駅という不思議な名前は、1955年というから昭和30
年か。マキノスキー場にちなんで付けられたそうだ。
 日本でカタカナの名前の駅はふたつしかなくて、もうひとつは北
海道のニセコ駅というのは、鉄道ファンのなかでは有名。でもふた
つともスキー場のせいで、カタカナになったというのは、初めて知
った。それにしても、マキノスキー場という名前をほとんど聞いた
ことがない。今もあるらしいのだが、かなり寂れてしまったそうだ。
 大正時代からあった老舗のスキー場で、昔は確かに駅の名前につ
かわれるぐらい混雑したそうだ。
 話をしたおばあちゃんも、30年前ぐらいの時かり出されて、民
宿の仕事をしたと思ったら、リフトの券を売って、寝るヒマもなか
ったぐらい混雑したという。
 民宿なんか小さい部屋に50人も100人もぎゅうぎゅうづめに
しても、まだお客さんが来るくらいの盛況ぶりだったそうだ。
「何でダメになってしまったんですか?」と聞くと、雪がまったく
降らなくなってしまったからだという。
 ふうん。やっぱり現地の人に話を聞いてみると、ガイドブックで
は手に入らない情報を知ることができるなあ。
 そのうちおばあちゃんの話が、大東亜戦争の話に移ったところで
バスが来た。おばあちゃんはマキノ高原に向かう。
 すぐタクシーが来た。
 思い切って、長浜に向かう。駅の数にして3つ目の駅だし、電車
はぐるっと半円を描いてまわるのに対して、道路は横切るはずだか
ら近いと思ったのだ。
 もちろん大間違いだった。えらく遠かった。距離を言ってもわか
らないだろうから、値段をいう。1万1150円だ。ぷぴ〜〜〜!
 その代わり、たっぷり念願の古戦場を回ってもらった。この古戦
場巡りが電車ではできないのだ。
 賤ヶ岳。木之本。姉川と3つ並べただけで、興奮する歴史マニア
はたくさんいると思う。遠くに小谷城跡、余呉湖の位置まで教えて
もらった。歴史の話は、タクシーの運転手さんに聞くにかぎる。
どの人もみんなくわしい。

 午後3時30分。どうせだからと終点を、長浜城にしてもらう。
 長浜城といえば、豊臣秀吉が出世街道まっしぐらの時に、信長様
からいただいた居城だ。私が最も好きなお城でもある。お城の構造
がいいのではなく、ここから見る景色が絶品なのだ。
 途中湾岸道路から見る琵琶湖が、雲を割って、光のカーテンが降
りてくる絶景になっていたので、どうしても長浜城の天守閣から、
この雲の芸術をながめてみたかったのだ。
 ところが! まだ琵琶湖は私にいたずらする。
 なんと! 長浜城は、エレベーターの設置のために、来年の3月
31日まで休館中だというのではないか! うっき〜〜〜!
 どこまで話はおもしろくなってしまうのだ。
 
 仕方なく、長浜駅まで歩く。
 2年ほど前NHKの大河ドラマで『秀吉』をやった時にもこの城
に来て、駅まで歩いた。でも当時は脳内出血で倒れて1年も立って
いない頃だったので、20メートルぐらい歩いたら、立ち止まって、
呼吸を整えたぐらいだった。
 あれから2年。今はすいすいおなじ道を歩いている。
 まだ走れないけど、かなりちゃんと歩いている。
 そのことがうれしい。成長したかどうかは、おなじことをしてみ
ないとわからないもんだな。つくづく。
 
 午後4時。長浜駅。駅で京都駅行きの電車の時刻表をメモしてお
く。これでこれからじっくり町を歩いても大丈夫だ。
 豊臣秀吉と石田三成出会いの像から、北国(ほっこく)街道の黒
壁スクエアへ。秀吉の町だから、全部マンホールの図柄は、ひょう
たんになっている。
 2年ぶりなのに、新しいお店が増えているのは、お見事。
 ここの町の開発ぶりは、健闘という言葉が似合うくらい、よく
がんばっている。
 京都からわずか1時間の距離だから、今後もっともっと発展する
だろう。日本で一番暮らしやすい町にも選ばれている。『桃太郎電
鉄』の2巡目の目的地にしようかな?
 
 どうも2年前よりも、すいすい歩ける。
 もっと前の5年前ぐらいに来た時よりも、すいすい歩ける。
 5年前はすでに、もう身体が悲鳴を上げていたんだろうなあ。
 まったく人間って、ピンチがわからない動物なんだなあとしみじ
み思う。
 
 というわけで、かねてよりの悲願に挑戦する。
 まあ、かねてよりの悲願だけで、何100個もある男のことだか
ら、たいした悲願ではない。駅から2Hくらい離れた「長浜楽市」
という大型スーパーマーケットへ行ってみたかったのだ。
 一時期デパートや大型スーパーマーケットの本ばかり読んでいて、
日本中のデパートを回ったこともある。この長浜楽市も、あの西武
系の郊外型スーパーで、川が流れていたりする新しい形のスーパー
だというようなことが書いてあったので、ぜひ一度行ってみたかっ
たのだ。
 名前も織田信長が開いた、楽市(らくいち)・楽座(らくざ)か
ら来ているのが、うれしいじゃないか。
 でもすでに不自由な足で、昼から何度も電車を乗り換え、長浜市
内も3H近く歩いていたことをすっかり忘れていた。

 そろそろ足がつらくなる頃から、あたりにお店が少なくなる。
 お店がたくさんあると、かなりの距離でも、けっこう楽に行けて
しまうのだが、郊外のだだっ広い景色の中を延々歩くと、必要以上
に疲れる。行けども着かない。
 阪神タイガースの帽子をかぶって、犬を散歩させているおじさん
がいるので、どこにあるのか聞く。まだまだ先という言葉を聞いて、
タクシーに乗ってしまおうと思ったのだ。
 ところがこの先300メートルぐらいのところにあるという。
 足の不自由な人間に、なんと中途半端な数値だ!
 行くか? やっぱりやめるか?
 けっきょくいつも通り、ここまで来たんだからが出て、よろよろ
向かう。もう日が暮れて、あたりは真っ暗。まだ午後5時なのに、
この暗さはいかにも北国だ。

 午後5時。ついに長浜楽市に到着。広い〜〜〜!
 真っ暗だから、どのくらいまで広いのかわからないが、見える範
囲だけでも、広い。野球場ぐらいの広さは十分あるな。とてもこの
足では、見てまわることもできない。
「ちゃんこ蔵間」がある。あの急死した関取・蔵間さんの店だ。
 当時蔵間さんのドキュメント・フィルムを見て、死ぬギリギリま
で、病気を隠して、テレビに出て、学生相撲に厳しい練習を課す姿
が今も忘れられない。
 同い年だったのだ。
 
 もうとても長浜楽市の店内を見る気力がない。入ってすぐベンチ
を見つけ、へたり込む。ひ〜〜〜。何でわざわざ歩いて来たんだろ
う? 5年前からどうしても歩いてここまで来たかったのは、なぜ
なんだろう?
 とにかく来たことのみに満足して、タクシーに乗る。
 たぶんまた来年の4月になったら、ここへ来るだろう。もっと
明るい時に来たい。帰りの電車の時間も気になる。

 午後5時41分。長浜発の新快速に乗る。
 長浜で買った、豊臣秀吉の本を読みながら、うとうとする。

 午後6時44分。京都着。
 午後7時。先斗町にある、オムライス専門店「ルフ」のカレー
オムライスが無性に食べたくなって行く。
 ここのオムライスはどれも美味しい。プレーンなオムライスの値
段が600円なのもうれしい。カレーオムライスは850円だけど、
といても850円とは思えない、豪華な肉がついてくる。
 食い道楽家族は、滅多なことでは、お肉の味をほめないから、よ
ほどのことだと思っていい。

 食後、本能寺の脇にあるクイック・マッサージに寄ってみる。
 わずか10分のやつをやってもらったんだけど、けっこう時間も
長くかかった感じがしてよかった。疲れたもんなあ、きょうは。

 午後8時。京都のマンションに帰宅。

 午後10時。東京から、最上谷(もがみや)家族が到着する。
 春にも京都を訪れた、私の高校時代の後輩の家族だ。
 新幹線が混んでいて、ホームで30分待って、自由席で来たので
遅くなってしまったという。
 いよいよ連休の恐ろしさが始まったようである。

 明日来る、嫁と娘は大丈夫だろうか?



11月21日(土)(木)


 京都のマンションで起床。
『桃太郎電鉄』の仕事を始めると、ふだんおとなしい痔が悪化する
のだが、もう3〜4日前から、どんどん悪くなっている。
 きょうはとても遠出する気にならない。
 ユーミンや桑田圭祐くんがレコーディングが始まると、下痢に悩
まれるのとおなじなのだが、こういう商売を最近人のお勧めできな
くなって来た。以前は、ゲーム制作に入ると、下痢が始まると「おっ、
これで私も一流の仲間入りか?」とよろこんだものだ。
 もう身体のほうがヒロイズムに浸れない。 

 午後1痔。午前中身体を休めたので、少し楽に。
 近所まで散歩にでかける。
 修学旅行でおなじみの新京極から、河原町通り、錦市場へ。
 連休ですごい人出だ。
 弟子の原口一也が、ずっと前からプッシュしていた映画『踊る大
走査線』に長蛇の列。一度見ておかないといけないなあ。

 午後2時。マンションの近くまで戻る。
 家の近所の「キリワッチ」で、コーヒーとホットドッグ。実際
キリワッチで正しいのかわからない。KILIWATCHというスペルだ。
ホットドッグが非常に食べづらいが美味しい。顔がケチャップだら
けになる。

 午後2時30分。帰宅。『桃太郎電鉄7』をプレイする。
 グラフィックの変更、操作性のアップ、新物件駅などをチェック
するのだ。京都で家にこもってひとりでゲームをやるというのは、
かなりもったいないことだ。でもこの『桃太郎電鉄』シリーズの
おかげで、美味しい物が食べられて、『チョコバナナ』の大散財も
乗り切ることができたのだから、がんばらなきゃ!

 午後6時。高校の後輩の最上谷家族が到着。続いて、嫁とグルメ
・バカ娘が東京から到着。新幹線はものすごい混雑ぶりだったそうだ。
 最上谷家族も、朝から二条城から映画村に行って、そこでもう終
わりになってしまったそうだ。
 私は新京極にしか行っていないのでわからないが、連休の混雑は
とんでもないことになっているようだ。
 全員揃ったところで、三嶋亭に行こうとしたら、満員でまったく
ダメ。私が昼に予約することになっていたようだが、すっかり忘れ
ていた。私もいよいよ連休の混雑に仲間入りだ。

 午後6時30分。ひさびさに木屋町御池の水たき料理屋「新三浦」
に行く。鶏鍋料理で、冬は身体があたたまって、そのまま畳の部屋
で寝てしまいたくなるくらい美味しい。最後の玉子粥が絶品。いか
にもいい玉子をつかっているのがわかる。
友人の最上谷家族と
   午後8時30分。帰宅。  昨日夜中の番組『新橋ミュージックホール』だったか。その番組 に出演していたダンス☆マンというグループをいっぺんに好きになり、 きょうあわててCDを買いに行った。嫁が来たのでいっしょに聞く。 やっぱりバカうけ。王様のように、既製の曲に、日本語の歌詞を つけるのだが、その歌詞の素晴らしさが尋常でない。  ダンスミュージックに乗せて、『よくある名字「斉藤」』と歌い 上げるセンスはとにかく聞いてもらうしかない。  ギャグ音楽をハズさない原口一也は、きっと知ってるんだろうなあ。 このCDがクチコミで売れることがなようだと、本当に日本の音楽 シーンは、宣伝しないものは売れない暗黒の時代に入ってしまうと思う。  さて、明日は松阪まで行く予定なんだけど、はたして電車がある だろうか? なければやめてしまうけど。


11月22日(日)


 午前8時。きょうも京都のマンションで起床。
 尾籠な話で申し訳ないが、痔の調子が悪すぎる。
 ♪止まって、なおすう〜、プリザS〜、を愛用したのだが、どう
にもダメ。
 松坂行きを断念して、午前10痔じゃない、午前10時までもう
一度寝る。

 午後12時。新町の「M足屋」さんで食事。
 グルメ・バカ娘が大好きな「M」ではない。
 紅葉の連休で、京都は1年のうちで、今が一番忙しい。
 この「M足屋」はパンフレットにもいつも大きく載っている。
きょうも観光客ラッシュで、10人、20人と団体で人が入ってくる。
 5〜6年前も、ここに来たことがあるのだが、何が気に入らなか
ったのか、それから来ていない。
 その理由はすぐわかった。賄いのお姉ちゃんがとにかく、ブスッ
としている。反応が鈍い。仕事をするのが嫌いと顔に書いてある。
これじゃ美味しい物もまずくなる。
 料理のほうも、際立つ味がひとつもない。刺身のぼてっとした感
じは、これは味のわからない観光客向けに作ってるなあと、すぐわ
かる。
 美味しいと思わせたいなら、少々鮮度の悪い魚は薄く切れば、
けっこう美味しく感じる。でも味のわからない人たちには、肉と
おなじように、刺身の厚さが重要なのだ。

 午後2時。まずい上に、料理がテンポよく来ないまま、2時間が
過ぎてしまった。

 午後2時30分。せっかくこの時期に来て、紅葉のひとつも見ず
に帰るのも何なので、とっておきの場所「しょうざん」に行く。
 京都市内の北のほうの左側にある。北西って言えばいいんだけど、
京都は碁盤の目で四角いから、右左と言ったほうがわかりやすい。
 ここは紅葉の穴場。さすがにだいぶ有名になって来たのか、予約
タクシーが駐車場に、たくさんたまっている。
 それでもほかの紅葉の名所だと、10分で行けるところも、1時
間以上かかるのが、紅葉の頃の京都だ。
錦秋の山々 紅葉を求める車の山 なかなかキレイでしょ? 花より団子娘
   紅葉をながめながら、抹茶と和菓子。  後ろでワシャワシャと、おばちゃんたちが雑貨やお漬け物を買う 嬌声が聞こえて、うるさいが、窓ガラスが見える山はいつも通り、 深紅と黄色で美しい。  横で、待ってましたとばかりに、♪秋の夕日に〜、照る山〜、 もみじ〜、濃いも薄いも〜、その次の歌詞、何だっけ?と、歌う変 な娘さえいなければ、見事な風情である。  とにかく、これで今年も紅葉を見たぞと、満足。  午後3時30分。新京極に戻り、娘のキーボードを買う。  昔なら、100万円したようなキーボードが、わずか1万円と ちょっとで買えてしまう。  電子楽器の進歩はすごいね〜。  昔、あんなぴよぴよのカスカスの音のキーボードを買ってもらう ために、親といっぱい不平等条約を結ばされた日々が悔しいね。  午後4時。少し仮眠する。  午後6時。ご飯を食べに行こうとするが、どのお店も連休の観光 客ラッシュで超満員。  どこに電話してもダメ。  こういう時は、新しくてまだ観光ガイドにあまり載っていない店 に限る。ということで、おなじみの「忘吾(ぼあ)」に行く。  さすがにこの店も、きょうは超満員で、オーナーがしきりに 「ご飯お出しするのが遅れてすんまへん」と何度もいう。  包丁を休めるヒマもないほど動かしているんだけど、さすがに いつもより料理の出るテンポが悪い。でも相変わらず一品一品の出 来は素晴らしい。とくに最後のご飯はいつも釜で炊いているだけに、 ご飯とお漬け物だけでも美味しい。  午後9時になってしまった。いつものように、ふたば書房に寄っ て、たくさん本を買い込んで帰る。まだ読んでいない本がたくさん あるというのに。


11月23日(月)


 午前7時。きょうも京都のマンションで起床。
 なぜか痔の調子が良くて、体調も良好。

 午前9時。イノダ・コーヒ本店で、高校時代の後輩である最上谷
家族といっしょに朝食。最上谷家族とはここでお別れ。
 この3日間で、二条城、映画村、高台寺、清水寺と回ったそうだ。
 業界とはまったく関係ない人間である最上谷とのひとときは、気
の許せるのんきな時間だ。「また来年も来るよ」といって、彼らは
京都駅へ。

 午前10時すぎ。わが家族はぶらりぶらりと近所を散歩。さあて、
きょう1日どうするかと言いながら歩く。
 どうせなら昨日行けなかった松坂に行くか?といつものように、
行き当たりばったりな会話。
 そのまま本当に京都駅へ向かう。

 午後10時30分。京都駅の近鉄乗り場。痔の調子もいいので、
松坂までの特急券があるようだったら、行ってみようということに
なって、窓口で聞くと、あっさり「ある」という。連休で混雑して
ないのかな? 念のため、帰りのキップも買う。

 午前11時15分。近鉄特急で、松坂に向かう。
 午後1時58分。松坂駅到着。
 きょうは昔からの相方である、イラストレーターのえびなみつる
が、作画・脚本・演出を手がけたプラネタリウムを見に行くことに
なっている。
 えびなみつるは、今から20年以上前に、私がギャグの文章を
書いて、えびなみつるが、それに絵をつけるといったやり方で、
かなり長いことコンビを組んでいた。
 現在もコンビを解消したわけではないのだが、私がゲーム、えび
なみつるが天文関係がメインのイラストレーターになってしまった
ために一緒に仕事をする機会が無くなってしまっただけである。
 予定では、4年後、私の50歳を機に、再結成することになって
いる。
 ちなみに、えびなみつるの大学時代の同級生が、堀井雄二、大川
清介、故・安藤しげきであり、その後輩が土居孝幸である。

 だからといって、せっかく松坂に来て、お肉を食べずに帰るグル
メ・バカ家族ではない。
 もちろん行く! 
 まず松坂といえば、日本一との評価が高い「和田金(わだきん)」。
その和田金に電話するも、午後3時すぎまでいっぱいだという。
 そこで最近やたらと目にする「牛銀(ぎゅうぎん)本店」に挑戦
してみることになった。ここも大混雑なのだが、ちょうど70人の
団体さんが帰るところで、グッドタイミングであった。
 すき焼きと網焼きが自慢の店だそうだが、迷わず網焼き。
 うちの家族は、網焼きが好き。
 すき焼きなら、いい肉を買って来て、自分の家で作ったほうが
美味しい。
 というわけで例によって、一番高いお肉を。懲りない家族だ。
 ふうむ。なかなか美味しいぞ。グルメ・バカ娘のランキング第1
位・三嶋亭に及ばないまでも、娘の反応は、かなり好感触〜。
いかが?
   いつも娘は冷たいウーロン茶を注文するのだが、料理が美味しい お店の場合、ウーロン茶が減らない。料理に集中するからだ。 きょうもウーロン茶の減りが少ない。正直なガキだ。  食後、この「牛銀本店」の姉妹店の喫茶「牛銀番茶亭」というの が、おなじ通りにあるという。この「牛銀番茶亭」の2階ギャラリ ーは、なんと彫刻家・籔内左斗司(やぶうち・さとし)さんの常設 館になっているという。  この籔内左斗司の作品は、私も嫁も大好きで『新桃太郎伝説』の CDのジャケットにこの人の彫刻をつかわせてもらったほどだ。  まさかこんなところで出会えると思わなかった。
   午後2時30分。牛銀番茶亭で、抹茶セット。籔内左斗司さんの 作品を楽しむ。お店の前にも、庭にも、トイレにもある。これは 本格的だ。籔内左斗司さんの作品には、今年だけでも、岐阜でも、 博多のホテルでも出会っている。  いいねえ、芸術って。扱いが丁寧で。  ゲームなんて、パッケージしかないから、展示というものができ ないもんなあ。  などと思っていると、とんでもないことに気づいた。  時計の針が午後3時を回っているではないか!  実は、帰りのキップを午後4時26分で取っていたのだ。  あと1時間とちょっとしか時間がない。  今から「みえこどもの城」というところまで行かないといけない のだ。えらいこっちゃ!  無線でタクシーを呼び、みえこどもの城に向かう。  15分ほどかかって、到着したところは、みえこどもの城の真ん 前ではなく、広大な運動場の駐車場。ここからさらにゆるやかに 長い道を登って行った先に、巨大な鉄人28号の頭のようなプラネ タリウムが見えて来た。  この段階ですでに午後3時40分。  とにかく入場するも、CGをつかった恐竜のドラマをやっている。  えびなみつるの『銀河鉄道の夜〜天の川のメッセージ〜』はもう 終わってしまったのかもわからない。  へ〜、ここまでCGのグラフィックは進歩したのかと、感心した ところで、帰りの特急券がパーになった。こうなりゃ腰をすえて 見ていくか。のんびり網焼きを食いすぎたかもしれない。  3分間の休憩のあと、えびなみつるの『銀河鉄道の夜〜天の川の メッセージ〜』がスタートした。  ひさびさに見る相方の絵に、懐かしいやら、絵のアラを探したり しながら、いい仕事をしているなあと感じ入る。  ドームいっぱいに相方の絵が広がると、背中がぞくぞくする。  ふたりして、青梅の化粧品屋の前で似顔絵描きをしたことや、 お金が無いから、公園で打ち合わせをした頃を思い出す。  おじさんは昔話に弱い。
   惜しいことに、このイベント、9月から始まって、12月6日で 終了してしまうそうだ。みんな見に行ってくれというには、ちょっ と時間がなさすぎる。  午後5時。みえこどもの城を後にする。どうせ特急に乗り遅れて しまったのだからと、伊勢まで行く。    午後6時。さすがに伊勢おかげ横丁は、ほとんど店が閉まってい て、真っ暗。怖いくらいに真っ暗だ。   タクシーの運転手さんに教えてもらった、宇治山田駅前の割烹 「大喜(だいき)」で食事。このお店、宮内庁御用達で、よく皇室 の方々も訪れるようだから、ハズレることはまずあるまいと予測する。  伊勢えびが食べたかったのだが、またしても1時間後のキップを 先に買ってしまったので、時間がない。早く食べられるものという ことで、お寿司にする。  お寿司もまた、グルメ・バカ家族の舌はこえているから、がっか りすることが多いのだが、これが美味い! トロも美味しかったし、 ウニもクリーミー。これはもう今後、お伊勢参りの帰りのお店は ここで決まりだというくらい、太鼓判のお店だ。    午後7時09分。近鉄特急で京都へ。  午後9時30分。京都のマンションに戻る。高校時代の後輩であ る最上谷家族と行き違いで、私の実姉が、京都に到着したようだ。 明日会うことに。紅葉の京都は、出演者の数が多い。  それにしても、朝起きた時点では、きょうものんびり家で本を 読んで仕事をするはずだったのに、どこをほっつき歩いているんだ ろう? でもやっぱり電車のなかでたくさん『桃太郎電鉄』のアイ デアが浮かんだから、いいや。  嫁と娘は明日、東京へ帰る。  私は明後日、帰る予定。ということでまた明日と明後日の日記は 東京に帰ってからということになる。アナログな人生だ。 


11月24日(火)


 午前8時。京都のマンションで起床。

 午前11時。姉が来る。
 午前11時30分。もはや京都のお昼ご飯の定番、北野天満宮に
近い「おひるや豆魂(とうこん)」で食事。
 午後12時30分。嫁と娘は東京に帰らないといけないので、
そのままタクシーで京都駅へ。

 午後1時。姉とふたりで光悦寺へ行く。
 京都の紅葉の写真というと、必ずこの垣根が登場する。
 しかし写真のマジックというのは、すごくて、思わず見過ごして
先に行ってしまった。紅葉マニアの姉に言われなければ、気づかな
いままだったかもしれない。札幌の時計台が、まさかビルに取り囲
まれているとは思わないと、おなじくらいのがっかり。
 しかもほかの茶室やら庵をまったく公開しない。
 これで300円を取るのは、ちょっと片腹痛いってやつだ。

 帰りに、源光庵(げんこうあん)をちょっと覗いて行く。
 関ヶ原の戦いの時、伏見桃山城に立てこもった徳川方の鳥居元忠
の軍が、責め立てられて、その血が天井に赤く染まったという。
 その天井を「血天井」と呼ぶのだが、この血天井をけっこういろ
んなところに移築しているのだ。この源光庵にも移築されていると
いう。昔の城の門などを、新しいお城に移築したりすることはよく
あるのだが、何で血天井を移築するのだろう? 気持ち悪くないの
かな?という考え方は、現代的なのかな。

 午後1時30分。さらに歩いて、有名なお醤油屋さん「松野醤油」
に寄る。ゆず入りポン酢が美味しかったので、東京に送る。
 これでギョーザを食べたら、美味しそうだ。
 わが家では、ギョーザには、醤油と酢ではなく、ポン酢をつかう。

 松野醤油のほぼ隣りが、なんと2日前に行ったはずの「しょうざん」
があるではないか。姉が今年の紅葉は、70点だなと点数が辛いの
で「しょうざん」に寄って行く。
 少し姉は満足。
 それにしても2カ所入口があるのは知っていたけど、もうひとつ
3つ目の入口が「しょうざん」にあるとは知らなかった。なにしろ
プロ野球の球場の2〜3倍の広さのあるところだからなあ。
 
 午後2時30分。「しょうざん」から、タクシーで四条大宮に出
て、姉をここで降ろす。姉はさらにこれから嵯峨野のほうへ、紅葉
を見に行くという。私はそのままマンションへ。

 午後3時。マンションで『桃太郎電鉄』をやる。来年度版の問題
点を出すためのプレイ。操作性がさらによくならないかという丹念
なチェック。勝ち負けに関係ないプレイというのもまた楽しい。
 それにしても『桃太郎電鉄』は完熟期に入っているので、さらな
る充実をめざすのはなかなか難しいものがある。
 それでも今回は、プレイ同士のぶつかり合いをもっと激しくと
いう点と、いよいよ30年以上プレイする人たちにも、楽しいイベ
ントを作ろうかなと思っている。

 午後5時。NTTが来る。アイマックのために、電話回線をもう
一本引く。世の中は、電話回線を中心に動いているなあ。

 午後6時。姉が来る。姉と先日行った「縁(えん)」を行こうと
したが、満員。まだ連休の余波があるのか、京都は紅葉が旅のピー
クなのか、なかなかスムーズにお店が予約できない。
 
 午後7時30分。1時間待ちで「露庵菊乃井(ろあんきくのい)」
で食事。ここの料理は量が多いのと、値段が高いことで有名。
 味もいい。ただどうもここの料理長のしゃべりが度が過ぎていて、
気になる。相手の職業を確かめずに、いろいろと世間話をするので、
ちょっと危険。味に関して自信があるのだろうけど、ちょっと慢心
してるような気がする。
 今後ここの味がどう変わって行くのか、けっこう楽しみ。

 午後9時30分。満腹になりすぎたので、歩いてマンションまで
帰る。苦しい。まさに下を向いて歩けないくらいの満腹度。
 
 午後10時。マンションに戻って、またひとりで『桃太郎電鉄』
をプレイする。目が痛い。首が痛い。



11月25日(水)


 午前10時。京都市内をぶらぶらほっつき歩く、三条大橋のあた
りにも新しいお店が増えた。大好きなボローニヤのパン屋も出来た。
 どうして京都には、パン屋さんが多いんだろう。
 しかもそれぞれ支店をやたら出している。
 志津屋(しずや)なんかは、400メートルに1件ぐらいある。
 ボローニヤは祇園が発祥地で、午後6時から売り出すというやり
方でまたたくまに、販路を拡大している。

 午後12時ちょっと前。老舗のパン屋さん「進々堂」で食事。
 京都は本当にパンの美味しいお店が多い。

 午後2時。マンションの近くの地下街・御池ZESTの「ナチュ
ラル・ボディ」に初めて行く。クイック・マッサージなんだけど、
エステみたいにきれいで豪華。いきなり首を冷やされたりして、美
容エステかと思ってしまったほど。
 マッサージをしてくれた人は、あまり上手くなかったけど、お店
がきれいなので、今後も京都に来たら、ここに通うことだろう。
 全国クイック・マッサージめぐりでもしてみようかと思う。

 午後3時10分。この新幹線が500系であることはもう暗記し
ているので、こののぞみで、東京へ向かう。
 車中、『桃太郎電鉄』のアイデア出し。

 午後5時すぎ。東京到着。
 午後6時。帰宅。家で食事。
 食後、『桃太郎電鉄』のアイデア出しのメモをまとめる作業開始。
 いよいよ新作ゲームに着手した気分だ。



11月26日(木)


 ひさびさに東京の家で起床だ。
 午前8時。昨日の晩から始めた『桃太郎電鉄』のアイデア出しの
まとめがまだ終わらないので、続きをやる。
 書いても書いてもまだ終わらないのが、つらいやら、うれしいや
ら。やっぱりアイデアがたくさんあるに越したことはない。

 午前11時。原宿を散歩。
 午後12時すぎ。穏田(おんでん)商店街入り口の牛タンの店
「しずる」に初挑戦。最近「ねぎし」ばっかり行ってるので、たま
には比較を。麦ご飯はここのほうが、麦が多くてヘルシー。麦とろ
もこっちのほうが、味がシャープ。でも食べ安さと注文の単純さと
お店の元気のよさでは「ねぎし」だ。けっこういい勝負。引き分けだ。

 食後、穏田商店街を散歩。表参道に出る。
 古いアパートのギャラリーを見て歩く。
 嫁が手作りのテディベアを買う。
 さらに散歩して、いつもの中継地点カフェ「ヴァジー」で、アー
モンドオレを飲む。

 午後2時。帰宅。
 再び『桃太郎電鉄』のアイデア出しのまとめ作業。
 午後2時30分。工務店の人が来る。あまりにも私の部屋が冬場
寒いので、サンルームを作ってもらおうというので、きょうはまず
下見。でもスペースがほとんど無いので、棚を作ってもらうような
規模でしかないのが残念。

 午後3時。タカラの高田さん、岩崎さん(ありゃ? 岩瀬さん
だったかな)が来る。
 土居ちゃん(土居孝幸)も来る。
『覇王マガジン』の編集さんも来て、攻略本の写真撮影。 
 午後3時30分。榎本44歳も来る。
 引き続き、攻略本の撮影。カメラ担当の人が、えのクンのポーズ
に笑って、シャッターが震える。

 実はえのクンと、タカラの高田さんは初対面。
『さくま式人生ゲーム』で、あれだけえのクンをネタにしておきな
がら、ちっともゲームを見せていなかったのだ。
 いつもの『ジャンプ放送局』とおなじように、変更不可能な時期
になってから、えのクンに見せてやろうと企んでいるうちに、えの
クンが入院してしまって、見せられなくなってしまったのだ。
 で、きょう初めて、えのクンに見せる。
 次々に登場する、えのクンに、当人大笑い。
 よりによって、結婚マスでは、お目当ての女の子に振られたあげ
く、言い寄ってきたのは、えの子。これには本当に大笑い!
   午後6時。『さくま式人生ゲーム』のグラフィックが明るくて、 絵も上手くていいのねんと、さんざんおべんちゃらを言って、えの クンは事務所に戻る。土居ちゃんも、タカラの高田さんも次の仕事 場へ。  午後7時。家族3人で、青山「えさき」で食事。この店はここ 3カ月くらい、いつ電話しても満員。ひさびさだ。日本料理の店で、 食い道楽なわりに、少食なわが家族には、うれしいお店。  ひとつひとつの料理に、派手さはないものの、どれもみんな手の 込んだ、さりげない美味しさ。謙虚さがそのまま料理になったよう で、食べていて気分がいい。  デザートの小豆のグラタン。これは絶品だ。  こんなに美味しくっていいのかな?と思ってしまうほど、美味しい。  さらに帰るとき、嫁が何カ月も前に忘れていった洋服を出してく れた。嫁がどこに忘れたのかも忘れていたのに。しかもこの店は まだ顔を覚えられるほど、何度も来ていない。その間ずっとお店の 人が、忘れ物と名前を暗記していたということだ。  こういうお店は絶対ひいきにしてしまう。  慇懃無礼なお店。無愛想なお店が多いなか、こういうお店だと、 無理してでも毎日行ってしまおうかと思うくらい、評価してあげた くなる。  やっぱり料理は、人柄が作る。  ゲームも漫画も、人柄が作る。  ちょっと反省。  午後9時。『桃太郎電鉄』のアイデア出しのまとめ作業をする。  2日間かかってもまだ終わらない。やっぱりうれしいぞ。 


11月27日(金)


 午前8時。きょうも朝から『桃太郎電鉄』のアイデア出しのまと
め作業。ずっとこの作業を続けているので、また痔が悪化する。
 サロンシップ温熱を貼るけど、手遅れ。

 午前11時30分。嫁のインターネット友達とキディランドで待
ち合わせ、バンブーで食事。
 食後、私は新宿に出て、CD屋さんを回る。
 先日買ったダンスマンのCDをさらにもう一種類探していおるん
だけど、どこに行っても売っていない。

 午後1時。紀ノ国屋書店で、旅の本を買い、さくらやでゲームを
買い、伊勢丹でお総菜を買って、家に戻る。

 午後2時。『桃太郎電鉄』をプレイ。
 午後3時。ファミ通PSの取材。業界人のメモリーカードにどん
なゲームが入っているかという企画。
 私のメモリーカードには、『さくま式人生ゲーム』と『桃太郎伝
説』しか入っていないので、娘のメモリーカードを公開することに
した。

 午後4時。再び『桃太郎伝説』をプレイ。
 京都からずっと続けてプレイしているんだけど、まだ17年目。
 99年やってみようと思ってるんだけど、先が長いなあ。
 最初のうちは、次の作品への新しいアイデアがたくさん生まれた
んだけど、17年目ともなると、だんだんアイデアが生まれなくな
って来た。
 
 午後6時。高円寺の整体さんが福島から送ってくれたサンマを、
嫁が刺身におろしたものを食べる。これがびっくりするくらい美味
しい。産地直送は味が違うね。
 20匹も送ってくれたんで、近所の人に分けてもまだ余る。
 刺身と、焼きさんまで、お腹いっぱい!
 
 食後、いろいろビデオを見る。ギターのリッケバッカーのビデオ
だったり、有田焼の『今泉今右衛門』のビデオ。そのあと『DA PUMP』
のビデオも見ようと思ってる。
 脈絡の無いものをたくさん見て、アイデアを無理やりひねり出す。
これがいつものやり方だ。

 午後9時。ひさしぶりにテレビ東京『誰でもピカソ』を見たら、
ここでチャンピオンになった岸啓介くんが、ニューヨークで個展を
開いたレポートをやっていた。
 岸啓介くんは、ハンズ大賞が縁で知り合って、『さくま式人生ゲ
ーム』でも、ロボット武闘会でロボットをデザインをしてもらった。
もうかれこれ1年半になるんだなあ。
 がんばる若者を見るのは、うれしいね。 



11月28日(土)


 午前7時。どうも早く目が覚める。
 午前8時。『桃太郎電鉄』をプレイする。もう毎日『桃太郎電鉄』
ばかりやっているので、頭の中は『桃太郎電鉄』でいっぱいだ。
 今『さくま式人生ゲーム』と『桃太郎伝説』のことを聞かれると困
りそうだ。

 午前11時。青山ホームワークスで、テリヤキチキン・サンドイッチ。
ここのハンバーガーは大きすぎるので、小さい口の私には食べづらい
ので、とうとうサンドイッチにする。
 でも味はいい。
 嫁と娘もいっしょにいるのだけれど、私の頭は今、『桃太郎電鉄』
のことでいっぱい。一番家族にとって、迷惑な時期だ。もうほとんど
慣れているので、放っておいてくれる。でも突然浮かんだアイデアを
どうだ?と言い出すので、いつも家族を驚かせてしまう。
 
 午後1時30分。西武新宿線野方駅。野方区民センターだったかな?
 WISとかいうホール。
 きょうはここで、ショッカーO野くんが出演する演劇を見に来た。
 いつもながらちゃんと招待券を送ってくれる律儀者だ。
 去年もショッカーO野くんの舞台を見て、その時の役柄が、謎の中国
人だったので、今年の『桃太郎伝説』のなかでも、謎の中国人として
出演してもらった。
 今年も謎の中国人みたいな狂言回しのような役で、笑わせてくれる
だろうと思っていたら、これがなんと、本格的なドラマ。
 関ヶ原の戦いが舞台で、戦に苦しめられる農民と、野武士たちとの
交流を描いた本当に真面目なお芝居。
 しかもショッカーO野くんの役どころは、なんと徳川家康!
中央がショッカーO野くん扮する徳川家康
   ほとんど準主役で、まるでNHKの大河ドラマのような演技。  史実に忠実な歴史物だけに、本当にNHKの大河ドラマを見ている ようだ。娘がよくストーリーがわからないというので、教えたが、 こんなすごいお芝居とは思わなかった。  それもそのはずで、主役の若山騎一郎さんは、名優だった故・若山 富三郎(勝新太郎さんの実兄)さんの息子さんだそうだ。  午後4時30分。新宿に出て、CD屋さんをまわって、ようやく ダンスマンの『背が高いやつはジャマ』のCDを手に入れた。  CDも、本も、ゲームも、作品数が多すぎるよ〜。  これじゃ宣伝費の無い作品は、どんなにいい物でもヒットしない 時代なのも無理ないよ。このCD探すまでに、10件以上のCD屋 さんを回ってるんだもん。  午後5時30分。高島屋の東急ハンズを覗いて、「グリルつばめ」で、 ジャーマンハンブルグステーキを食べる。ハンバーグステーキのことだよ。 ここのハンバーグは、肉がむっちりしていて美味しい。  午後6時30分。家に戻って、再び『桃太郎電鉄』をプレイ。  午後8時。『桃太郎電鉄』を中断。先週の京都からちょびちょび やってるんだけど、コンピュータ3人対決でやっているので、まだ 22年目。99年やろうと思ってるんだけど、なかなか到達しないね〜。 途中アイデアが浮かぶとすぐメモするので、なかなか年数が進まない。  きょうはこれから鍼灸師の弓削くんが来る。それまで『桃太郎電鉄』 のアイデアをまとめる。  そろそろゴーサインを出せるかな? まだもうちょっと粘って、もっと いい作品にしよう!


11月29日(日)


 午前7時。どうもゲーム疲れからか、だるい。
 二度寝する。
 午前8時。だらだらと日本テレビを続けて見る。
 午前9時。鉄道関係の本を読み漁る。また『桃太郎電鉄』のクイ
ズ問題を作らないといけないからだ。本を読んでも1冊から作れる
問題の数は、1問か2問。
 クイズ問題作成は、ライターになりたての頃、必ずやらされる仕
事だ。

 午後11時。そろそろでかけるかと、洋服に着替えようとしたら、
右の肩胛骨(けんこうこつ)のあたりの筋が、つってしまった! 
い、い、痛い! 痛いなんてもんじゃない! 右腕をちょっとでも
動かすと、痛い。まいった。
 しばらく横になる。動くと痛い。寝返りが打てない。

 午後12時。午前中から嫁は、友達に会いに行っていて、ご飯時
だからと、電話が入る。娘を連れて、原宿まででかけるが、動く度
に背中が痛い。

 午後12時30分。嫁とその友達といっしょに、カフェ「ヴァジー」
で食事。ひさびさにここのキーマカレーを食べる。
 
 午後1時。あまりにも背中が痛いので、渋谷パルコ前のタントン・
マッサージに行く。
 15分マッサージを受けたら、マッサージ師の人は「この凝り方
はひどい!」と言い出す。指が入らないくらい凝っているという。
右の肩胛骨だけではなくて、首から下、全部がひどいという。
 肩胛骨が問題ではなく、全体が壊れる寸前で、最初に、肩胛骨に
痛みが来ただけだという。
 昨日も鍼治療受けてるし、それほどひどくはないと思うのだが、
首、肩、背中、腕、手首。確かにどこを押されても、息が止まる
くらい痛い。
 どうやらずっと続けてやってるゲームのせいだ。『桃太郎電鉄』
だ。自分のゲームで、身体壊してどうする!
 左手が不自由なので、右手をつかいすぎていませんか?とも言わ
れた。そういえば毎日ワープロを右手だけで打っている。
 ゲームやって、アイデア出して、ワープロにまとめて。毎日これ
の繰り返しなのだから、ぼろぼろになるのも無理がない。
 15分マッサージをさらに、30分延長して、お灸までやって
もらう。それでも背中の痛さが全然取れない。

 午後3時。帰宅。とにかく寝る。

 午後4時。もっと寝ていたいが、きょうはラジオの録音がある。
きょうは日曜日なので、娘の同級生もいっしょに行く。声優&アニ
メ・マニアの子だ。

 午後5時。文化放送。『エーベルナイ2(ツー)』の録音。きょ
うの番組はすごくて、ラジオを録って、そのまま『エーベルナイ2
延長戦』というテレビ番組をそのまま録画する。おそらく業界初の
試み。深夜放送の番組が終わって、そのままテレビのスイッチを
つけると、番組が今度はテレビで続く。
 テレビのほうは、千葉テレビ、埼玉テレビ、テレビ神奈川などで、
放映されるという。東京近郊の番組というのもおもしろい。
 12月6日に放送される予定なので、ラジオもテレビも見ること
ができる人はぜひ。テレビのほうは、ほとんど私は写っていない
かもしれない。スタジオの隅で、娘と娘の同級生といる。

 午後6時。出演者全員とお食事。とんかつで有名な「まい泉」の
お弁当だ。豪華だねえ。
 娘と娘の同級生は、三石琴乃さんといっしょに食事ができるので、
感激していた。
 午後7時。ポストペットのMOMOのぬいぐるみまで登場。
 私の出番は無いようなので、娘たちと先に帰る。
左から三石さん、生モモ、豊口さん ピングーバラバラ事件!?
    午後8時。きょうはゆっくり身体を休めよう。  あ〜あ、どんどん無茶ができない身体になって行く。  みんな、がんばれる時にがんばっておかないと!  青春の時間は驚くほど短いぞ。


11月30日(月)


 午前8時。まだ背中が痛い。
 ゲーム出来そうにないので、鉄道関係の本をまた読み漁る。

 午前11時。ハドソンの梶野くん、武田くんが来る。
『桃太郎伝説』の宣伝状況を聞く。
 午前11時30分。青山「穂積」で、食事。最近ごひいきの料亭
なのに、おそばがべらぼうに美味しい店だ。
 梶野くんもここのお店のおそばに驚く。出し巻き玉子も美味しい
と絶賛。

 午後12時30分。近所のルナ・アンジェロで、『桃太郎電鉄』
次回作の構想を話す。マドンナ役のキャラについてだ。マドンナ役
というのは『桃太郎電鉄』においては、ギーガボンビーとか、キン
グボンビーのことね。気色悪い。
 やっぱり宣伝担当が宣伝しやすいキャラでないと、お客さんにも
楽しそうに思えないので、いろいろ意見を聞く。ふたりとも『桃太
郎電鉄』に対する思い入れが確固としてあるので、非常に参考にな
った。とくに梶野くんは、映画マニアなので、あのシーン、この
シーンと例がよく出るので助かる。武田くんもまたディズニー・
マニアなので、ディズニーにたとえた例を出すのが上手い。
 やっぱり得意技のある人たちの会話は弾む。
 おかげでなんとなく今回のマドンナ役のイメージが固まった。
 あとは土居ちゃんをどうしごいて、たくさんイメージ画を描かせ
るかだ。

 午後2時30分。帰宅。身体をとにかく休めないと、『桃太郎電
鉄』を作れなくなってしまうので、資料を読むことに専念する。

 午後6時。休むつもりが本を5冊も読んでしまった。それでも右
手を少しは休められたかな?

 タカラの高田さんからの連絡で『さくま式人生ゲーム』のTVC
Mが12月2日朝『おはスタ』で、初めて流れるそうだ。もし見れ
る人はぜひ見てね。私もまだ見ていない。

 午後6時30分。西麻布の「内儀屋(かみや)」で食事。
 ご飯が本当に美味しいお店。昆布を細かく刻んだものを醤油代わ
りにして刺身を食べる趣向がおしゃれ。最近私のなかで人気急上昇
中のお店なんだけど、きょうはどの料理にも天敵の三つ葉が入って
いて、あい〜ん! 運がなかった。どうしても三つ葉の「あい〜ん!」
となる苦みがダメだ。

 午後8時。帰宅。再び旅関係の本を読み漁る。
 身体はまた休めよう。


(c)1998/SAKUMA