6月1日(月)  お昼、娘が運動会の翌日で、お休みなので、恵比寿の筑紫楼に行 く。ふかひれラーメンが美味しくて、この日記には何度も登場した けど、「杏仁豆腐」ナンバーワンのお店。  帰りに駅前のフィギュア屋さんに寄る。  珍しくほしい物がない。R2D2の電話機がよかった。コードレ スなら絶対買ったのになあ。  午後2時。『チョコバナナ』投稿者の藤川かつらサンが来る。  16巻用の『たすけて!福助!!』がまとまる。  だんだん調子が上がってきた。  藤川かつらサンとは、アニメ企画も打ち合わせ。  実現したらいいけど、それはスポンサーあっての話。ダメだった ら、自分でアニメ化してやろうかな?  午後3時。宮路一昭くんが来る。 『桃太郎伝説』用の曲を聴く。全曲OK!  宮路一昭くんは、桃太郎シリーズを本当に理解しているので、世 界観を崩さず、曲を作ってくれる。カズ坊(関口和之)との、曲の バランスもすごくいい。  宮路一昭くんがゲームボーイ版『桃太郎電鉄Jr』をテストプレ イしてくれる。  鹿児島からスタートして、いちばん早く稚内駅に到着した人が勝 ちという「すごろくのたび」が、圧倒的におもしろい。さすが桃鉄 の鬼の宮路一昭くん。13ヶ月で、稚内に到着!  2試合目は、さくま名人に負け、くやしがる! 「すごろくのたび」の時のさくま名人は、ラッキー運が入ってるか ら、滅法強い。  ゲームボーイ版は傑作だよ。  夜、娘は昨日の運動会でへばって、寝ているので、藤川かつらサ ンと嫁と、私の3人で、新宿のラーメン店「利しり」に行く。案の 定店長さんに、食い道楽の娘が来てないのはなぜかと聞かれる。  なにしろ、どこのお店でもうちのグルメ・バカ娘は、有名人だか らなあ。食いっぷりのよさが気に入られている。  帰宅後、旅行の準備。  明日からまた旅だ。しばらくまた日記のほうはお休み。  はたして本当に岐阜城は、ロープウェイでなく、車で山頂まで登 れるのだろうか? まさか途中までで、あとは徒歩でよじ登れなど と言われないのだろうか? 天気があまりよくなさそうなのも心配。  お供の中尾淳! 予定通り、名古屋駅のあそこで待ち合わせだ!  それじゃ、みなさん、しばらくお休み〜。



6月2日(火)

 午前9時52分のひかり号で、名古屋へ。
 ここ数日業界人から「また旅行ですか?」とあきれられながら、
きょうも行く。何たって、家から東京駅までタクシーで15分なん
だもん。私には「もっと旅をしろ!」としか聞こえない。
 ダメなやつほど、いいわけが上手い。完全にこのパターンだな。

 午前11時40分。名古屋駅で、鞄持ちの中尾淳と待ち合わせ。
 そのまま東海道本線に乗って、岐阜へ。
 本当は、名古屋で、トンカツを食べる予定だったのだが、どうも
空模様が怪しい。すでにポツポツ降って来ている。

 昼過ぎ、岐阜駅に到着。
 夢にまでみた織田信長の居城、稲葉山(岐阜)城に登るのだ。
 ずっと昔から、この城は険しい金華山の頂上に建っていて、ロー
プウェイでしか行けないことはわかっていた。
 高所恐怖症の私には、ロープウェイは、鬼門で、とにかくダメ。
わずか3分と言われても、登ると決めた瞬間から、足がすうすうす
る。いまこの原稿を書いていても、足の裏がむずむず、すうすうを
繰り返しているほどだ。
 危険じゃないんだから、という問題ではないのだ。
 むしろ、高い所に登ると、怖すぎて、無性に落ちてみたくなるの
だ。だから困った問題なのだ。

 20年前ぐらいも、城の下まで行って、断念したことを思い出す。
 しかし、ついに最近、展望台までドライブ・ウェイが走っている
という情報を得た。何だ、行けるのか!
 いてもたっても居られず、きょうの旅となった。

 私の安土・桃山古戦場の旅もほとんど終わりに近づいていて、ほ
とんど行き尽くしている。この稲葉山城は、歴史の知識を持った頃
から行きたいと願っていたビッグな城なのだ。
 ああ、いま、その夢が叶う。

 はやる心で、タクシー乗り場へ。
「岐阜城まで!」
「岐阜城ならロープウェイですよ!」
「ロープウェイは苦手なんで、ドライブウェイのほうからお願いし
ます!」
「ドライブウェイから、お城に登るには、山道で何時間かかるかわ
かりませんよ」
「何!?」
 聞けば、ドライブウェイのてっぺんは、岐阜城とは、2、3個隣
りの山だそうだ。しかもその岐阜城までは、いろいろな山道が何本
もあって、運転手さんでも登れそうもない山道だという。
 そ、そんな…。足の不自由な私には絶対無理ではないか!
 ロープウェイ? それはやめよう!
「とにかく行けるところまで行ってください!」

 車は、舗装された山道を登っていく。なんだか最近旅先で山道ば
かり登っているような気がする。落石注意の看板ばかり見る。
 着いたところは、粕森公園。
 公園案内図があるので、見る。
 案内図に、岐阜城がない! ない! ない!
   とりあえず展望台に登る。  はるか遠〜〜〜〜〜くに、小さく岐阜城が見える。  こうして私の夢は露と消えた…。  運転手さんが、わざわざ傘を持って来てくれた…。
    誰か岐阜城に登ったことのある人は、どんなものが陳列されてい るのか教えてください。よっぽどいいものがあれば、ロープウェイ に…登……るのは、う〜む。つらいなあ。とにかく教えてください。  というわけで、次は創業明治27年の洋食屋さん「三河亭」に向 かう。
   タクシーが着いた先は「え? 新聞配達所?」というような、ち ょっと危険な門構え。戻るか? でもメニューの「高等ライス」と いう名前に、まずくても食べてみたいという衝動のほうが強い。  内装もいかにも古びていて、江戸川乱歩の小説の舞台になりそう だ。覚悟を決めて、中尾淳とふたりして「高等ライス」を注文する。  とどいた高等ライスは、釜飯のどんぶりに入ったカレーライスの 上に、半熟気味の目玉焼きがのっている。  関西では、生卵がのっているカレーが多いが、ここは半熟の目玉 焼きというのが変わっている。 「美味しい!」  レトロ風味のカレーだけど、甘いし、目玉焼きで味がマイルドに なって、食べやすい。するする入っていく。 「高等ライス」というのに、770円という値段も笑える。  あっというまに食べ終えたら、本にのった記事がメニューの裏に 貼ってあって「カレーには忘れずに、ソースをかけてください。ソ ースは自家製で…うんぬん」と書いてある!  しまった。手遅れだ!
   まあ、岐阜城は断念したものの、美味しいものに出会えて気分が いいので、市内見物をすることにした。  雨の降る中を、大雑把な地図感覚で、適当に歩く。  疲れたら、高島屋デパートの喫茶店で休み、また歩く。  すると、交差点の名前に「柳ケ瀬」の文字が!  あれ? ここが美川憲一の「柳ケ瀬ブルース」で有名な歓楽街・ 柳ケ瀬かあ? 旅を趣味にしてから、いつかこの柳ケ瀬に来ること もあるとは思っていたが、きょうになるとは思わなかった。少なく とも20年以上「柳ケ瀬」という名前を忘れていた。  こういう出会いもあるんだなあ。  旅はやっぱりあてもなくブラブラするもんだ。  しかしかなり疲れて来た。  どうせなら岐阜駅でなく、名鉄の新岐阜駅をめざす。  疲れてるなら、直行しろよなあ。  途中、信長ゆかりの円徳寺に出くわす。
   これもまたうれしい誤算だ。  新岐阜駅から、名鉄名古屋駅へ。  名古屋駅広小路口に、新幹線の自動予約機があった。  おもしろいので、さっそくつかってみる。  ちょうど銀行のキャッシュ・サービスのようで、指で押していく と、指定席を予約できる。さらに領収書まで出る。便利だ。  午後4時17分のひかり号で、京都へ。  京都のマンションに着き、さっそく中尾淳が『さくま式人生ゲー ム』のテストプレイ開始。  ひと通り見終わったのに、中尾淳はやめる気配なし!  作者としては、うれしいが、情けないぞ、中尾淳!  親戚のガキにゲーム貸してやったら、返さないみたいだぞ!  いいかげん腹が減ったので、近所の「うしのほね・あなざ」に行 く。ビーフシチューがあいかわらず美味しい。  食後、マンションに戻ると、途中経過で勝っていたはずのベイス ターズが、巨人に4対4の同点にされている。 「え?」という間もなく、目の前で、どんどん点が入っていく。   あ〜あ〜。佐々木様のセーブ日本新記録は、おあずけか。    本を読んで寝るとするか。明日も雨らしいしなあ。  ベイスターズは負けちゃうし、三浦カズは、W杯の代表からハズ されちゃうし、野茂は退団しちゃうし、岐阜城には登れなかったし、 こういう日は、寝よう! 寝よう! 



6月3日(水)

 午前中、近所のイノダコーヒー本店で、朝食。
 おなじみ男のサンドイッチ!ビフカツサンド。美味しいけど、ビ
フカツはカロリーの王様だから、2切れだけ食べてやめる。
 ああ、全部食べたかった。分厚いベーコンは塩もたっぷり、高血
圧の素だ。明日合流する土居ちゃん(孝幸)に、このビフカツサン
ドを食べさせてやれ!

 食後、文化博物館で「秀吉展」を見る。
 豊国神社に伝わる宝物、ふすま絵、太刀といった、うれしい陳列
品ばかり。教科書で有名な豊臣秀吉の肖像画もあった。
 聚楽第に関する資料をこんなにまとまって見れたのは初めてだけ
にうれしい。
 6月の後半までやっているので、歴史好きの人はぜひ!

 寺町の電気街に行って、ゲームを買う。
 子どもの名前にに大成(ダイナ)と名付けてしまった、ウルトラ
マンというより、体型がロボコンになってきたタニヤマ無線の鈴木
千華雄くんは食事で外出中であった。

 こっちも食事をするかと、錦小路へ行くが、きょうは水曜日。京
都は、水曜日が休業のお店が多いので、お目当てのお店がことごと
くお休み。
 中尾淳は、あなごが好物らしく、焼きあなご専門店の休業にショ
ック。
 仕方なく、うちの嫁が作ってくれたチャレンジ・ノートを開く。
 婦人雑誌などで、ちょっとおもしろそうなお店は、メモしておい
てくれるのだ。そのなかに、トルコライスというおもしろい名称の
メニューがあった。ここへ行こう。

 下賀茂神社のそばの「のらくろ」がそのお店。
 トルコライスは、ふわふわ玉子のオムライス風。
 ドミグラスソースがちょっと酸味があって、クセが強い。
 そして、その上に、ビフカツがのっている。
 2食続けて、ビフカツはヘビーだ。
 ビフカツもちょっと塩っぽい。
 味は、私の趣味から微妙にズレているけど、この味を好きな人は
多いと思う。洋食屋さんマニアなら、行ったほうがいいレベルの味
だと思う。お店の人の愛想はすごく感じがいい。
   食後、下賀茂神社に来たのだから、みたらし団子屋さんに寄らな ければと、向かうが、水曜日なので、休業。  マンションに戻り、ゲームを始める。  同業者の悪口を言ってはいけないので、つまらなかったゲームの 実名は出さない。  そう思うと、ひさしぶりに見た『ワールドスタジアム2』は、や っぱりおもしろい。まだ左手が不自由なので、中尾淳にコンピュー タと戦わせる。中尾淳は、愛知県出身なので、中日ドラゴンズを選 択。コンピュータを横浜ベイスターズにする。  さすがにちょっと操作が複雑になっているようで、横浜がぽんぽ ん得点を入れる。ゲームなのに気持ちがいい。大人げない。  中尾淳が私に気を使って、わざと横浜に負けているのかと思うほ ど、鮮やかな横浜ベイスターズの大勝である。  けっきょく8対18で、横浜ベイスターズの勝ち。ちょっとむな しい。  やっぱりわかりやすいゲームはいいねえ。定番には定番のよさが ぎっしりつまっているよ。3球3振だと、バッターが尻餅をつく演 出なんて、地味だけど、プレイヤーにはうれしい演出だ。  最近おもいついた野球ゲームのいい参考になった。  夜、昨日看板をチェックしていた、はも料理のお店に行くが、ま たしても水曜日なので、お休み。  本当に京都は、水曜日がつらい。  う〜ん、食べる場所に困るなあ。  中尾淳といっしょだと、値段の高い食べ物屋さんに行くわけにい かないしなあ。  そういえば、河原町三条近くの、有名な「あじビル」に、値段が 安くて美味しいお寿司屋さんがあったと、私の姉が言っていた。  私の姉であるからして、滅法!食い道楽である。  その姉が力説していたのだから、本当だろう。  それにしても、盆地の京都で、お寿司屋さんというのもなあ。  看板見ると、タコ80円と書いてある。回転寿司よりも安くない?  しかもお店の名前が「元祖ぶっち切り寿司」。  入るの、ためらうなあ、このお店。  わが家庭は、寿司にはただならぬ執念があって、お寿司だけはい くらお金を払ってでも、美味しいものを食べていたいという気持ち が強い。  榎本44歳のように、毎週かかさず回転寿司行くなら(実話)、 4週分のお金を貯めて、1回値段の高いお寿司を食べたい。  しかし、私の姉の情報を重視しよう! 決断!  ところが、美味しいではないか!  中尾淳が、お寿司自体食べるのひさしぶりだと、よろこんでいる。  メニュー的にも、京大根のお寿司や、美人茄子のお寿司といった おもしろい名前のネタもあって、おもしろい。京大根のお寿司は、 もう一度食べたいと思うくらい美味しかった。  ただにぎりが大きいというより、大きすぎる。  マグロも白身も、京樽の茶巾ずしぐらいの大きさだ。  あっというまに、お腹がいっぱいになる。   ただ、これは若者の京都旅行には絶対お勧めだね。  にぎり7品(イクラが美味しくてでかい!)に、マグロ3品セット と、京大恩の寿司まで食べて、ひとり3000円は安い。  マンションに戻ると、横浜VS巨人戦が壮絶な戦い。  これは心臓に悪い! 追いついても追いついても、引き離される。 京都にまで来て、なんでこんな試合を見なきゃいけないの!  何? 同点においついた!? 9対9?  なんちゅー試合なんじゃあ!  あっ、あっ、中継が終わってしまう〜。  何度もベイスターズ・ダイヤルに電話。  けっきょく11対10で負ける。  うひょ〜。つらい1敗だなあ。  佐々木様の新記録もおあずけのまま。  きょうの負けはつらいなあ。



6月4日(木)

 午前9時。中尾淳とマクドナルドで食事。
 きょうは午後から大阪のメイクソフトウェアさんで『桃太郎伝
説』の打ち合わせ。東京から、土居ちゃんと、宮路一昭くんが合
流する。
 なのに私と中尾淳は、朝も早くから電車に乗ろうとしている。
 また悪い病気で、前から一度行きたかった商人の町・堺に行く
のだ。全然寄り道にもなっていない。メイクソフトウェアさんの
ある南森町を越えているぞ、これは!

 というわけで、京阪三条駅から、特急で、北浜駅へ。
 北浜駅から、恵美須町へ。
 徒歩で、阪堺(はんかい)電気軌道の恵美須駅へ。
 午前11時15分。この恵美須駅がすごくて、始発駅なのに、
路線図が貼ってない! 当然キップ売り場もない! 時刻表もな
い!
 ワンマンカーという看板が車輌に付いている。
 どうやら東京の早稲田を起点とする、荒川線とおなじような路
面電車のようだ。市電ってやつね。大阪だから府電って言わない
のかなあ?
   とはいえ以前から、通天閣のそばにある、1両編成のこの電車 に乗ってみたかったのだ。  見るからにオンボロな電車というのは、旅マニアにはそそるも のがある。もちろん少々のひどさにはガマンできる心づもりもあ る。だからクーラーが入っているだけで、やはりこの電車は、都 会の電車だと思ってしまう。  しかし、ここは関西。  何駅目かの今池駅のホームには、張り紙が貼ってあって「ここ はホームです。ふとんをひいて寝るところではありません」とあ るのに、その下で、浮浪者さんがふとんを敷いて、ぐうぐう寝て いる。  そのうち車内にも駅の路線図が貼ってないことに気づく。  バスだって、路線図ぐらい貼ってあるぞ。  電車は、住吉駅を過ぎ、宿院駅を過ぎる。  なかなか堺駅に着かない。  おや? 御陵駅? あれ? これって、堺駅を過ぎてない?  次の駅のホームに貼ってあった路線図をすばやく見る。  ない! 堺駅というのがない!  もうすぐ終点の浜寺駅前である。かれこ40分ぐらい乗ってい るぞ! 昭文社の『旅・王・国』を調べる。  どうやら恵美須駅から20分ほどの高須神社駅で降りるようだ。  ええい、このまま終点まで行ってやれ!  12時15分。浜寺駅前に到着。終点のくせに駅前という名前 はどういうことなんだ? 根性がないぞ。 見ると、左方に南海 電鉄浜寺公園駅という文字が目に入る。右を見れば、浜寺公園が 見える。  とにかくとんでもないところまで乗り越したことは確かである。  ついでだから、浜寺公園をちょっとのぞく。  ええ? プールが何個もあって、野球場が3面ぐらいあって、 海にまで面してる、とてつもなく大きい公園ではないか。おまけ に明治維新の英傑・大久保利通ゆかりの地でもあるようだ。  案内図をざっと見て、すぐ浜寺公園駅へ向かう。  今度はちゃんと4つぐらい先の駅に「堺駅」の文字がある。    12時30分。堺駅到着。  想像していたより、エスカレーターの完備した大きな駅だ。駅 ビルも10階以上の市役所のように大きな建物だ。  駅前の案内図を見るが、名所がまったくない。  豪商の栄華を忍ばせる、商人街みたいのもないようだ。  堺といえば、日本の歴史史上唯一独立国並みに繁栄した町なの だから、もう少し町をあげて、風致地区ぐらい作ってもいいので はないだろうか?  あまりにも地方中都市として、はまりすぎている。  とりあえずいちばん有名な、仁徳天皇御陵と、堺市博物館が近 いようなので、行ってみる。  堺の町並みは、ごくあたりまえの風景で、南国の都市にありが ちなフェニックスの通りがあるのだが、どうも町の雰囲気とマッ チしていない。  教科書であまりにも有名すぎる仁徳天皇御陵は、横からしか見 えないので、とてもあの鍵穴のような古墳が目の前にあるとは、 ちっとも思えない。予想はしていたが、ちょっと淋しい。  博物館も悪くもなく、良くもない。とにかく中途半端。  タクシーを待つがなかなか来ない。ずっと来ない。  やっと来たタクシーは、堺駅から乗ったタクシーとおなじ人だ った。旅先のこういう偶然は、妙なわびしさを見事に演出する。  再び堺駅へと向かう。  午後1時30分。なんば駅。  歩きすぎで、足の豆が痛い。旅に出ると、すぐ無理をするから だ。  おとなしく仕事場に直行しろよなあ。 『桃太郎電鉄』の取材という名目は、いいわけに最適だなあ。  ダメなやつほど、いいわけが上手い!  最近の私の座右の銘である。  なんば駅から千日前へ。『夫婦善哉』の作者として知られる、 織田作之助がこよなく愛した洋食屋・自由軒で昼食。  ここの名物が、なんと「名物カレー」。なんて大胆な名前だ。 自分から「名物」というな。まるで『さくま式人生ゲーム』のよ うだ。  ドライカレーの上に、生玉子がのった名物カレーは、600円。  かなりからい! 世間知らずの中尾淳は、ひとくち食べて「か らい!」と叫び、水をガバガバ飲む。どうやら水を飲むと、さら にからく感じるという定説を知らないようだ。素人め!  それにしても、からい。  昔カレー粉を間違えて、カレーピラフの上に落として、もった いないから食べてしまった時のようだ。  味は悪くない。ただ味が濃い。昔の私なら絶賛しただろう。  タクシーで、南森町のメイクソフトさんに向かう。  大渋滞。何だか遠回りしているような気がする。  浦さんに電話する。なんば駅でタクシーに乗って、堂島にいる のはやっぱり変だという。  変だよなあ。昔ならケンカしただろうけど、血圧を下げる薬を 飲むようになってからは、不思議と怒らなくなっているので、そ のまま渋滞に身をまかせる。  午後3時過ぎ。すでに土居(土居孝幸)ちゃん、宮路一昭くん が東京から来ていて『桃太郎伝説』の打ち合わせの最中。  順調そうなので、ひと安心。  土居ちゃんの絵が案の定、遅れぎみのようだ。  最近土居ちゃんの仕事が遅いなあ。ジャンプ放送局みたいに毎 週の締切りがなくなると、生活のリズムがつかめないようだ。  夜、浦さん、メイクソフトウェアのみなさんたちと、JR福島 駅近くの「妻鹿(めが)」に行く。  ここの魚の鮮度は、特筆ものの美味しさだ。  ただどうも場所が覚えられない。まわりに目立つ大きな建物が ひとつもないのだ。  きょうのお刺身も美味しい。  海老のアーモンド揚げというのが、珍味でさくさくとした歯ご たえがいい。  メイクソフトウェアの新メンバー(片山くん、酒井くん)は、 小学生の頃ファミコン版の『桃太郎伝説』を買ったという。  最近こういうパターンばっかだ。  小学生の頃、ジャンプ放送局読んでましたという人に会うこと が増えてきた。もう開始から16年たつからなあ。  つい昔話を始めて、遅くなる。  午後10時。淀屋橋から、京阪三条駅に向かう。  メンバーは、土居ちゃん、宮路一昭くん、中尾淳。  店を出る前にベイスターズ・ダイヤルに電話。  対巨人戦、3対0で勝利。佐々木様の127S日本新記録達成! 気分がいい。  駅から、動かない左足を必死に引きずりながら、マンションへ と急ぐ。『プロ野球ニュース』に間に合いたい!  やった! 佐々木様が生出演だ。  引き続き、スポーツうるぐすだ。またしても、佐々木様、生出 演だ。うれしいねー!  いい顔だねー! 男の顔だよ。  何より3連敗でストップしたのが、うれしい。  眠れなくなりそうだ。はっはっは。



6月5日(金)

 午前9時。宮路一昭くんからの電話で目が覚める。
 実は午前5時から起きて、テレビの朝のスポーツ番組で、佐々木
様のセーブ日本新記録をはしごしていたので、午前8時すぎに再び
寝てしまったようだ。

 午前9時30分。土居ちゃん、宮路一昭くん、中尾淳が来る。
 ちょうどテレビで、三浦カズの緊急記者会見が始まった。
 これは今後尾を引きそうだな。
 何で岡田監督は、カズを外したのかなあ。W杯で、全敗した時、
カズがいたら、カズのせいにできたのに。カズを外して、全敗すれ
ば、カズを外した岡田監督の人選ミスになる。
 カズを代表にしていて、勝ったら、最後の5分くらいカズを出し
てあげればせすんだことだし、とにかく岡田監督にとって、ハズす
メリットがまったくないと思う。不可解だ。

 午前10時15分。近鉄京都駅から、特急で、大和西大寺へ。
 午前11時すぎ。唐招提寺に到着。
 唐招提寺に来たのは、私が大好きな東山魁夷画伯のふすま絵が、
年に3日間だけ公開されるからだ。きょうはその初日。
   すでに順番待ちの人が、100人近く。  雨がぽつぽつ降っていたせいもあって、ふすま絵は、暗くて、 ビデオで見たときの感動がない。生の迫力というものを感じても よさそうなものだが、これだけの行列のなかでは、あじわいが半 減する。  偉いのは、やっぱり土居ちゃん。 「座って見ると、いいよ」  なるほど、立って見おろすより、座ったほうが、雄大な景色の なかにとけ込みやすい。角度でこれほどまでに違うものなのか。  土居ちゃん、まるでイラストレーターみたいじゃないか!
    できることなら、行列のないところで、じっくり見てみたいも のだ。裏口入学はないものだろうか。  11時30分。唐招提寺そばの「龍王庵」で、抹茶と和菓子。  すっかり土居ちゃんとの旅は、抹茶と和菓子が付き物になって しまった。土居ちゃんも、もうすぐ43歳だからなあ。
   午後1時。奈良の興福寺に行く。  土居ちゃんと「迦楼羅(かるら)像」を見ていると、後ろの中 学生が「このカルラって、『新桃太郎伝説』の最終ボスだよなー」。  げげっ! どぎまぎ。う〜ん。かわいいやつだ。  誰だ? 頭なでてやろうと思った時には、修学旅行生のなかに 紛れ込んでいた。惜しい。  実はこの興福寺の国宝殿に陳列されているものから、『新桃太 郎伝説』の敵キャラになったものは多い。  唯一、阿修羅像だけが、空想のものだっただけに、今回の『桃 太郎伝説』のほうでは、3面のアシュラに変更しようかという話 になった。ちゃんと旅行しながら、常にゲームの打ち合わせをし ているのだよ。食べてばっかじゃ…食べてばっかだな、やっぱり。  午後2時。朝が駅弁だったので、お腹が減ってきた。  興福寺から延々、新薬師寺に向かって歩く。  途中、奈良ホテルがある。いかにも政治家さんが泊まりそうな ホテルだ。雨も激しくなってきたので、ここで食べようかという 案も出たが、中尾淳がいるので断念。金額も高いし、中尾淳のせ いで、入れてもらえないかもしれない。昔鎌倉で、現在週刊少年 ジャンプで「ジャンプ団」を連載してるどんちゃんといっしょに 行った時、高級店で予約していたのに、断られたことがあるから なあ。  そして「そば処・観」にたどりつく。 疲れた〜。坂道と砂利道はつらい。足の裏の豆が痛いよ〜。  観定食1500円が美味しかった。  梅ごぼうに、茎わかめが美味しくて、温かいそばなのに、こし があって、おつゆも上品な味で美味しい。奈良でおそばはここ! というガイドブックの解説に嘘はなかった。  午後3時。近鉄奈良駅から、京都へ。  午後3時30分すぎ。京都駅から、京阪七条の漫画専門店 「BIG BOSS」へ行く。  近々、週刊モーニングのお仕事のお手伝いをすることになりそ うなので、漫画の情報をオーナーの石田さんに聞く。  貴重な情報をたくさんいただいた。  午後6時。京都駅の「カフェ・デュ・モンド」で、ハドソンの 浦さんと待ち合わせ。  うちのグルメ・バカ娘、イチオシのお店「M」へ行くのだ。  まだ一度も浦さんが行っていないので、土居ちゃんとふたりで ご招待。中尾淳はまだ下っ端なので、京都市内で、食べ物屋さん を物色に行かせる。インカ料理の店にチャレンジするそうだ。  で、「M」へ。  相変わらず、美味しい物の連発に、浦さんも驚く。  宮路一昭くんは「家に帰って、かみさんにこんなもの食べてき たなんて言えないですよ〜」と困っている。  土居ちゃんは、ひたすらビールを片手に「うまいな! うまい な!」を連発している。  けっきょく、こんなものをいつも食べてる小学生って許せない ですよねってことで落ちつく。おまえのことだ、佐久間ゆり!  それにしても、こんな大きな伊勢エビを食べたのは、私も生ま れて初めてだ。残った部分を蒸してくれたんだけど、これが蟹の ようでまた美味しい。無駄なく材料をつかうところがこのお店の ご主人の名人芸なところだ。    歩きすぎて疲れて、食べ過ぎて、疲れて、忙しい1日であった。  きょうは野球がないので、ゆっくり寝るぞ〜。



6月6日(土)

 午前10時。パンの駸々堂で、朝食。
 午前11時。近所の本能寺で、きょうと明日、信長まつりという
のをやるので見に行く。
   期待はしていなかったのだが、ひどすぎる。  住職や来賓の挨拶が20分で終わったのは、よかったが、それだ けでイベントがなく、ブルースブラザーズのテーマや、スピッツの 音楽が、夏の浜辺のスピーカー並の大きさで流れ始める。  どう見ても、町内会のお祭りなだけである。  以前大河ドラマの『信長』の時は、ガチョウの羽とかでできた信 長の陣羽織とかが見ることができたので、期待していたのだが、商 店街の福引きのほうが、メインのようだ。  仕方なく、土居ちゃん、宮路一昭くん、中尾淳と、錦市場を歩く。  土居ちゃんが大好きな、佃煮「親父泣かせ」をみんなが買う。  午後1時。歩き疲れたので、イノダコーヒー本店に行って、昼食。 美味しいビフカツサンドを土居ちゃんに勧めて、太らせる。  ここで突然新しいゲームの打ち合わせ。  今年の始めの九州旅行で、漠然とこんな感じのゲームを作りたい なあと言っていた『桃太郎ランド』が、いきなり全速力で走り出し たように、鮮明になった。  土居ちゃんは「もうほとんど出来上がったような気がするなあ」 と、相変わらずである。でもいちばん難航していた部分をきれいに 突破できたのだから、土居ちゃんのいう「出来たも同然」は正しい。 早くこのゲームを作りたいものだ。まあ、急に進んだと思っても強 にやめることもあるので、あまり期待しないように。  もし上手くいったら、きょうのこのアイデア出しは、運命の日と なるだろう。  午後3時。土居ちゃんと、宮路一昭くんは、帰京。私と中尾淳は、 京都ロイヤルホテルへ。エッセイストの永尾カルビと会う。  永尾カルビの甥が、今年就職で、ゲームメーカーを受験中なので、 いろいろゲーム業界のことを聞きたいという。甥も同席。  ゲーム業界は、めまぐるしく変化してるから、ちっとも参考にな る情報を教えることができないよと、説明する。本当の話だ。  なにしろ昨年の暮れに、ベンツを乗り回してた人が、今年に入っ たとたん、倒産してしまうような業界だから。  夜、近所の「はもセット」という文字がずっとこの1週間気にな っていたので、いい機会だから、中尾淳と行く。 「柳家本店」というお店なのだが、基本的にはお寿司屋さんのよう だ。  前菜から、はもとキュウリの和え物、はもの玉子の塩辛、はもの うきぶくろ、はもせんべいといったものから始まり、はもの落とし、 はもの箱寿司、土瓶蒸し風のはもの吸物と来て、デザートのシャー ベットで終わり。  これで3000円以下なのだから、ほどよいお値段のような気が する。味のほうも、ひとつひとつがていねいに作ってあって、特に はもの箱寿司は、料亭で出そうなくらい美味しい。    食後、土居ちゃんたちの会話で、最近テレビをちゃんと見ていな いことに気がついたので、真剣にテレビ番組を見ることにした。



6月7日(日)

 午前9時。いつもの京都ホテル6Fの「入舟」で、朝粥定食。
 きょうは名古屋に寄って、東京に帰る予定。
 もちろん、すんなりとは帰らないけどね。
 午前11時30分。名古屋駅に到着。
 地下鉄で、栄駅へ。名古屋の地下鉄に乗るのは、20年ぶりぐら
いだなあ。
 午後12時。名鉄栄町駅から、終点の尾張瀬戸駅へ向かう。
 5年前ぐらいから、陶器が好きになり始めて、有田、益子、伊賀、
信楽と回っていたのに、陶器の俗称である、瀬戸物の「瀬戸」に行
っていないのは、もぐりのような気がするので、やってきた。

 尾張瀬戸駅を降りると、観光案内の看板は多いのだけれど、町は
くすんでいて、ひとつの時代が終わったような匂いがする。
 どの店の看板のペンキも剥げ落ちていて、そのままが多い。
 町の真ん中に大きな川が通っていて、がんばればおもしろくなる
町だと思うんだけどなあ。政治家がいないのかなあ。
 お婆さんが多い。
 瀬戸銀座商店街というのがまた、崩れ落ちそうで、とてもこんな
ところで食事なんかしたくない雰囲気なんだけど、ファミレスなん
てまったくないし、高級そうなお店なんかあるはずない。
 仕方なく、「みそかつレスト・サカエ」という、お爺ちゃんとお
婆ちゃんでごったがえすお店に入った。
   せっかくだからと名古屋名物「みそかつ定食」1300円にする。  まったく味なんて期待してなんかいなかったのだが、これがべら ぼうに美味しい。ふつう「みそかつ」といえば、ちょっぴり辛いは ずなんだけど、甘い! なんとも言えない、美味しい甘さだ。揚げ 物は忘れず残すようにしてるのだけれど、これはダメだ。ひさびさ に全部食べてしまった。太るぞ、これは。  午後2時。瀬戸に来る電車の車内ポスターに「桶狭間古戦場まつ り」というのが、昨日、きょうとあった。桶狭間(おけはざま)の 戦いは、織田信長が最初に歴史上にデビューした記念すべき合戦で、 もちろん20年前ぐらいにおとずれているのだが、イベントがある と聞いては行かねばなるまい。  と思って、瀬戸から桶狭間までの行き方がわからない。  運悪く、東京への帰り道なので、旅の本を持っていない。  本屋を探すが、まったくない。たまにあっても日曜日なので、ど こも閉まっている。  瀬戸市駅という、JRの駅に出たのだが、本屋がない。  売店のおばちゃんは、もちろん桶狭間なんて場所は聞いたことが ないというし、2H先の本屋さんを教えてくれる。  腫れ上がった足の豆と、ふくらはぎはもう限界になって来ている。  とても2Hは歩けない。  売店のおばちゃんが、とにかく高蔵寺駅に出ろという。  反対の方向だと思うのだが、すぐ電車が出るというので、乗る。  午後2時20分。高蔵寺駅着。  もう時間がないので、とにかくタクシーで行く。  聞けば「桶狭間まで25分ぐらい」という。ラッキー!  と思ったのもつかのま、運転手さんは桶狭間ではなく、長久手の 古戦場だと思っていた。  桶狭間までだと、1時間半以上かかるという。  それでは、大名行列のイベントまで間に合わない。  長久手といえば、小牧・長久手の戦いだ。  豊臣秀吉と徳川家康が戦い。秀吉の甥のヘマで、家康に負けてし まった有名な合戦だ。  こっちで十分。長久手まで行ってもらう。  どっちみち近々行く予定になっていた場所だ。
   午後3時。長久手町の郷土資料室に到着。  館内はこじんまりとしながらも、ちゃんとジオラマの模型も作っ てあるし、合戦の経過をビデオでも流している。  総じて愛知県というのは、歴史の宝庫なのに、ちっともお金をか けたミュージアムを作らない傾向にある。  長久手は少ない予算のなかで、一生懸命やっているなあと思った。  午後3時30分。藤が丘駅着。  とりあえず名古屋駅に向かっているのだが、ドアの上の路線図に、 大須駅という文字が見える。大須観音で有名な名古屋の下町だ。  前から一度行きたかったところだ。  ま、どこでも前から行きたかったところなんだけどね。行ったこ とのない場所は全部ね。  午後4時。伏見駅で乗り換えて、やっぱり大須駅へ。  電車に乗っていたので、ふくらはぎの痛みも鎮まるかと思いきや、 筋肉がパンパンに張ってきて、さらに歩きづらくなる。  せっかくここまで来たのだからの癖をいいかげん直さないとなあ。  ううっ、大須観音の石段を登るのもつらい。  ここでやめて帰ろうと思ったのだが、商店街の看板に「ウ〜ム大須」 と書いてある。何なんだ「ウ〜ム」というのは。  ついこの言葉に誘われて、商店街を歩いてしまった。  すっかり「ウ〜ム」の意味を調べるのを忘れながら。  もうダメだ。完全に動けない。  中尾淳と何度も喫茶店に入ろうとするのだが、休むとふくらはぎが 固まるし、ご飯が食べられなくなる。  入院以来、食事制限をして、少食になっているので、1日の食事の 量が限られている。  以前なら、旅に出て、見たものは全部食べていた。  1日6食に、喫茶店5〜6軒なんていうのは、ザラだった。  午後5時。少し早いのだが、タクシーで大門の山本屋本店に行く。 いつも名古屋に来ると必ず寄る、エスカ地下街の山本屋総本店が最近 行列だらけで、20分以上待たされる。  何とか1件空いている店をキープしておかなきゃというので、来て みた。系列のお店だから、味にそう変わりはないはずだし。  この店は「みそ煮込みうどん」の店なのだが、いつも季節限定メニ ューというのがあって、カキが入っていたり、マツタケが入っていた りと、なかなか飽きさせない。  きょうは「一半特選黒豚入り1900円」というのがあった。  黒豚の産地鹿児島から直送だそうだ。  鹿児島に一半(いちはん)なんていう地名があったかなあ。 『桃鉄』の作者としては、知らない地名があるとムキになるものだ。  まあ、美味しいのだから、謎は後回しにしよう。  ふう、食った、食った。  お金を払う時に、お店の人に聞くと、「一半(いちはん)」は、 一人前半の意味だという。へ? 一人前半ってことは、大盛りってこ と? 「そうです!」  しまった。つい値段がいちばん高い物を頼めば、珍しい物を食べら れると思っていた。大盛りなら、値段が高いのは、当たり前だ。  はっはっは。旅はこういう失敗があるから楽しい。  午後6時。名古屋駅で「伊勢うどん」を買って、新幹線に乗る。 中尾淳も家に帰ったので、「伊勢うどん」が異常に重い。半生タイプ の麺は重いぞ〜。買うんじゃなかった。  あとは家に帰って、鍼灸師の弓削くんの登場だ。足がパンパンなの で、今夜の治療は痛いぞ〜。



6月8日(月)

 午前中、レイアウターの野沢ちゃんが来る。
 コンピュータが壊れて、先週からうちのコンピュータで『わるわ
〜るど』の単行本の作業をしているそうだ。私は旅行中なので知ら
なかった。
 午後12時すぎ。『チョコバナナ』投稿者・パープルウォームさ
んが岡山から来る。
 16巻用の漫画を完成させて来た。ひさびさに『チョコバナナ』
に登場しそうだ。と言っても断言出来ないのが、いまの『チョコバ
ナナ』だ。出来る限り増ページして載せたいけれど、うれしい伏兵
が常に集まるので、絶対がない。
 すごい本になったもんだ。

 午後2時。私はたまっている仕事を片づける。
 ゲームのアイデアをまとめたり、漫画雑誌用の企画をまとめたり、
アニメのプランニングをしたり、桃太郎電鉄4コマ劇場第2集の発
売日をいつにするかとか、『チョコバナナチップス』第15集の台
割り決めとか、榎本44歳に電話していじめるとかいろいろ。小刻
みにお仕事。

 夜、原宿ふるさとプラザで食事。
 旅行明けなので、のんびり仕事をするのが身体にいい。




6月9日(火)

 午前中、雨が降り出した。
 きょうはひさしぶりに、神宮球場で、横浜ベイスターズ対ヤクル
トの試合があるのだ。
 神宮球場の年間シートを購入して以来、2ヶ月。雨で試合が流れ
て、まだ1試合しか見ていない。しかも負けている。
 また、きょうも雨かあ? 何だか年間シートを買った意味がない
なあ。

 午前10時30分。『チョコバナナ』投稿者のパープルウォーム
さん、藤川かつらサンが来る。
 午前11時。アニメ・プロデューサーの落合茂一さんが来る。
落合さんは『チョコバナナ』の投稿者をつかってアニメ番組を企画
してくださるありがたい方なのだが、そこはプロ。まだまだ『チョ
コバナナ』の漫画をそのままアニメにしてくれるほど甘くはない。
 けっきょく藤川かつらサンの絵で、私がプランニングした企画は
ボツ。もう一度挑戦だ。
 ついでに『チョコバナナ』の最新作品をいくつか見ていただいた
のだが、『宇宙人ショック』と『ヒーローマニア』を気に入ってい
ただいた。
 やっぱり思い切りのいい作品は見ていて気持ちがいいということ
だ。『チョコバナナ』の漫画家は、ちょっと真面目すぎる。真面目
な人を不真面目にするのは難しいものだ。

 お昼。家のすぐ前にある天ぷら屋さん「松林」に行く。
 前からずっとこのお店に入りたかったのだが、なにしろ天ぷらは、
カロリー大魔王。私としては極力避けたい。
 しかしきょうは時間がないこともあって、初挑戦することにした。
 困った。美味しいじゃないか! 家から30秒の場所に、美味し
い天ぷら屋さんは困ったもんだぞ。常連になっちまいそうだぞ。野
菜だけの天ぷらセットなどと、デブが「野菜ならそんなにカロリー
高くないから」と、言い訳しそうなメニューがたくさんある。

 食後、『さくま式人生ゲーム』のテストプレイ。
 パープルウォームさんが、ミニゲームの「ガラスの時代」をやっ
たら、いきなり自分の絵が出て来て、驚いていた。

 午後2時。増田景子さんが来て『さくま式人生ゲーム』の打ち合
わせ。いよいよグラフィックの締切りがタイトになってきたようだ。
これ以上大幅にグラフィックを増やすと、納期に間に合わなくなる
との報告。う〜ん。こういう話が出てくると、ゲームも佳境に入っ
て来たなあという気がしてくる。
 午後3時。タカラの高田さん、くぬぎふみたかサン、小沢くんが
来る。
 きょうは小沢くんが、パープルウォームさんに、ゲームキャラの
デザインのチャンスをくれたので、その打ち合わせ。まだ採用され
ると決まったわけではないので、そんなに期待しないように。
 それでもこうして、朝は、アニメの企画、昼過ぎには、ゲームの
キャラ・デザインの話。『チョコバナナ』の投稿者が少しずつ船出
しような気配が出て来たのは、うれしいことだ。

 小沢くんとパープルウォームさんが打ち合わせしているあいだに、
こっちは高田さんと『さくま式人生ゲーム』の打ち合わせ。
 大好評のミニゲームをさらにパワーアップすることなったのはい
いが、だんだん納期を睨みながら、仕事をしなければならないので、
仕事の優先順位を決めないといけない。

 そうこうするうちに、午後5時30分すぎ。
 雨でベイスターズ戦はもうあきらめていたはずなのだが、どうも
雨がポツポツ程度で、中止になるほどではないようだ。
 さあ、困った。すっかりタカラの皆さんといっしょに食事するつ
もりのペースになっていた。う〜ん。仕事があるからと嘘をついて
も、日記でバレてしまう。日記でうそをつくと、必ずどこかで目撃
者がいるわけだから、まわりまわって、バレるものだ。
 素直に「すみません、野球を見に行きたいのですが…」という。
 すでに言葉の途中で、みんなに笑われている。
 タカラさんご一行は、快諾してくれたあげく、パープルウォーム
さん、藤川かつらサン、増田景子さんの3人を食事に誘ってくれる
という。なんてありがたいことを。せっかく岡山から出てきたパー
プルウォームさんをほったらかして、ベイスターズ戦を見に行くの
は、かなり心がとがめていたのだ。
 おかげさまで、家族3人神宮球場に行くことができました。

 ところが、試合は両軍残塁の山で、ゼロ行進。ちっとも点が入ら
ない。
 娘はハンバーガーと、ポップコーンを食べて、早くも眠くなって
いる。私でも眠いぞ!
 試合開始の頃にやんだ雨が再び、降り出した。
 お〜い、このまま雨が激しくなって、あげくに負けるのは嫌だぞ。
 う〜ん。それにしても点が入らない。満塁のピンチだ!
 ふ〜〜〜〜〜、危ない、危ない、身体によくない展開だ。
 眠るな、娘! と思いきや、いきなり娘が、ブッブーとメロディー
を奏でることができるカズーと呼ばれる笛がほしいと言い出す。カ
ントリーソングなどでたまにつかわれる楽器なのだが、なぜか球場
で売っている。おまえがそんなの持つとうるさいから買うなという
と、自分でさっさと買いに行ってしまった。
 思った通りだ。うるさい!
「かっとばせー、○○○○!」をいっしょに、ブッブブッブッブブッ
吹きまくり、そのうち、ブッブブッブッブブッ、キューティーハニー、
キャンディ・キャンディといった、アニメの懐メロを吹きまくる!
鉄腕アトムなんて、どこで覚えたんだ、おまえは!
 やめてくれ! 恥ずかしい!
 私が念を送れないではないか! 気が散る!
 あれ? 波留がヒットを打ったぞ! 鈴木尚典だ! おっ、やっ
た〜! 得点だ、得点だ、均衡を破ったぞ! 先取点はベイスター
ズだ! おっ、ゲッツー王の駒田が、ボテボテのヒットだ! 2点
目が入ったぞ〜! 
 9回裏。2対0のまま、佐々木様の登場だ!
 球場が「わ〜ん!」となって、拍手の嵐だ!
 佐々木様、おひさしゅうございまするう〜。今季初ですがな、生
で佐々木様を見ることができるのは! 今季私が見たベイスターズ
の試合は0勝2敗。これでは佐々木様に会えませんです!

 やった〜! さすが、3者凡退、そしてゲームセット!
 娘が、バッタバッタと三振を取る佐々木様を見て「かっこいー!」
という。ったりめーだーなー、佐々木様だぞ!
 やった、やった、今季わが家族初勝利だ!
 ありがとうございます、タカラさん! おかげさまで勝つことが
できました。明日も晴れたら来るぞ!
 かなり雨に濡れてしまったけれど、最高の気分で、球場を後に。
 娘はあいかわらず、ブッブブッブッブブッ、カズーを吹きっぱな
し。離れて歩け、バカ娘!




6月10日(水)

 午前中、本格的に雨が降っている。
 これはきょうの神宮球場は中止だな。
 昨日勝って気分がいいから、きょうも試合があればいいのにと思
うのは、巨人ファン。負け根性がしみ込んでいる横浜ベイスターズ
・ファンは、前日勝っていれば、これから一生試合がなくても、幸
せが尾を引くのだ。

 午前10時30分。恒例、高円寺の整体さんへ行く。
 ついに肩の治療に耐えられた!!!
 あまりの痛みに笑い声が出てしまうくらい、左肩を後ろに、ぐい
ぐい引っ張る治療がついに痛くなかった。2年と半年。ようやく筋
肉の緊張が和らいで来たようだ。
 とはいえ、まだまだ左手は不自由。やっと手が開く状態で、物を
持つことができない。これもまた気の長いリハビリを続けて行くし
かない。

 お昼。浜田山の神戸屋キッチンで食事。焼き立てのパンが本当に
美味しいお店だ。

 午後2時。帰宅。『チョコバナナ』投稿者のパープルウォームさ
ん、宮路一昭くんが来る。
 宮路一昭くんと『桃太郎伝説』の音楽の打ち合わせ。
 前回リテイクを要求したオープニング曲を聞く。OK! いい曲
だ。やっぱり『桃太郎伝説』は、青空が連想できるような曲じゃな
いとね。
 午後3時。ムサシノ広告の伊東正義が来る。
『桃太郎電鉄Jr』の広告戦略を聞く。ふんふん。えのクン(榎本
44歳)をもっとつかってくれと要望を出す。

 午後5時。パープルウォームさん、岡山に帰る。
パープルウォームさんに『さくま式人生ゲーム』の隠しイベント・
女風呂のイラストを依頼する。うひょうひょ。欲しくなるだろ〜。

『ファミ通』からのアンケートに答える。
 7月10日号というから、7月3日ぐらいの発売の本に載るのか
な?

 午後6時。青山の日本料理屋「えさき」に行く。
 私には初めてのお店。器がどれもあじわいのある物ばかりで、目
が楽しい。料理も奇抜さを狙わず、それでいてちょっと新しい工夫
が入ったものばかり。こういうお店は評価したい。



6月11日(木)

 午前1時。レイアウターの野沢ちゃんが来て『わるわ〜るど』の
単行本の校正。
 午前11時。ひさびさに原宿駅前の博多じゃんがらラーメンを食
べに行く。

 お昼。『チョコバナナ』投稿者のはせがわちずサンから『いよっ!!
お仕事人』の漫画が届く。ついに来たな!
 いいぞ。けっこういいぞ。これなら十分16巻に載るだろう。巻
頭行けそうだけど、どうしよう。ほかにもおもしろい作品たくさん
あるからなあ。うれしい悲鳴だ!

 午後1時30分。放送作家の纐纈(こうけつ)幸博くんがひさび
さに来る。彼はSMAP中居くんが出ている『サンデージャングル』
の構成をしている。私と彼の業界での先輩がいっしょなので、兄弟
弟子の関係になるのかもしれない。
 『ジャンプ放送局』の単行本の後ろの漫画に昔よく登場していた
ので、覚えているサクマニアも多いと思う。
 そういえば長山洋子ちゃん、石川秀美(現・薬丸夫人)ちゃん、
河合奈保子ちゃんといった芸能人を紹介してくれたのは、彼だった。
 いろいろお互いに近況報告。
 ほかにもいろいろ打ち合わせたけど、これはまだナイショね。

 午後3時。ハドソンの梶野くんが来る。
 キングボンビーの携帯用ストラップをたくさん持って来てくれる。
非売品のグッズなので、これは『桃太郎電鉄』のアイデアを送って
くれて、私の参考になるようないいアイデア、情報をくれた人にプ
レゼントしようかな。とくに貧乏神の悪行を考えてくれた人のごほ
うびにしてあげたいな。
 梶野くんと『オールナイトニッポン』の録音テープを聞く。
 何でもロンドンブーツ1号、2号の田村淳くんのほうが、朝6時
まで『桃太郎電鉄7』にハマったというようなことを言ってくれた
というのだ。おお、本当に言ってるぞ。こまかく解説してくれてる
なあ。頼んで言ってもらったのではないので、うれしいね。
 どういうわけか『桃太郎電鉄』は、芸能人の支援者が多い。

 午後6時。きょうも神宮球場に出勤だ。
 さすがにきょうはうちの娘も野球は見たくないようなので、お留
守番。『いよっ!!お仕事人』を読むんだとうれしそうだ。うちの娘
がいちばん『チョコバナナ』読んでるからなあ。
 近所のお寿司屋さんに電話して、お弁当を作ってもらう。前回
このお弁当を持って行って、負けたので、縁起担ぎの私としては、
あまり納得は行かないのだが、球場のカレーライスは、しょっぱす
ぎて、高血圧症の私にはつらすぎる。お寿司屋さんの人柄のよさの
ほうを選択だ。

 さ〜て、いきなり2回表に、3点先取!
 こりゃいいぞ!と思ったが、その後またく点が入らない。
 ホームラン病の川村投手だけに、ドキドキハラハラする。
 ああ! 1点取られた! 3対1だ。
 おっとまた得意の残塁が始まったぞ。慣れてはいるけど、球場で
この光景を見るのはつらいぞ。
 ランナーふたりで、ローズ様だ。ローズ様は最近2割5分を切る
不調なだけに期待できないなあ…。おおおおおおっ! やった!
 ホームムランだ! ホームランだ! 6対2だ!
 これを待っていた〜! おおっ、うれしくて涙が出そうだ! 
 やっぅぅった〜!と、涙声になってしまう。
 うれしいな〜。
 最後は佐々木様の登板かと思ったが、3点差でないと、セーブが
つかないので、横山投手の登板となった。横山投手は今年私がご指
名の選手なのでうれしい。いっぱい経験を積んでくれ。

 というわけで、にこにこ顔で帰宅。

 さて、また明日から、しばらく日記はお休み。
 函館に行く。函館のマンションを売ることになったので、荷物の
整理に行くのだ。札幌ハドソンへ行く時の中継地点として大いに活
躍したし、知り合いもできた大好きな街だけど、札幌に行くことが
ほとんどなくなって、全然利用しなくなってしまったので、売るこ
とにした。例によって、電車で行く。
 遅くとも、15日の月曜日には帰って来る予定。
 それじゃまたね!



6月12日(金)

 午前10時。Maxやまびこ43号で、まずは盛岡駅をめざす。
 Maxは、JR東日本が派手に宣伝した車両だけど、二階建てと
う以外まったく特徴がない。盛岡までいちばん早く行くわけでな
いし、1階に乗ろうものなら、閉所感満点で気持ち悪い。空調も
悪くて、長く乗っていると、気持ち悪くなってくる。
 しかもブルーとグレーの中間のような車体の色が、数年でくす
みかけているだけに、いっそう影が薄い。

 とはいうものの、世間はW杯のチケットが入らないと大騒ぎし
ているのに、わが家族は、何でフランスに行かず、函館をめざし
ているのだろうか?
 まあ、函館のマンションを売る時期がたまたま重なってしまっ
ただけなのだが、どうも世の中に逆らっているような気がする。
 こういう逆らい方は、けっこう好きだったりするんだけど。

 函館のマンションを買ったのは、7〜8年前かなあ。
 当時は、バブル真っ盛り。うちはハドソン真っ盛りの頃。
 なにしろ10日間東京、10日間札幌みたいな生活をしていた
のだが、なにせ私は飛行機が苦手。
 延々電車で札幌に向かうのだが、バブル期だけに、ホテルがい
つも満杯。なのにゲームの作業状況で「それ、行け!」となるの
で、ホテルの予約が大騒ぎ。まずない。
 あっちのホテル、こっちのホテルに泊まり、ひどい時は独房の
ようなところに泊まるので、心身共にぼろぼろになっていた。
 函館のほとんどのホテルに泊まったんじゃないかなあ。
 というわけで、購入したのが、明治維新の函館戦争で有名な
五稜郭(ごりょうかく)のマンション。これでホテルを気にせず、
札幌のハドソンに行けるようになったのだから、非常に大切な拠
点だったのだ。
   ところがここ5年間ぐらいは、ずっとハドソン大阪でゲームを 作るようになってしまったので、行く機会がまるでなくなってし まった。なのでたまに行っても、嫁がまず掃除にひとしきり時間 を取られる。だったらもうバブルも崩壊したから、ホテルにしよ うということになった。ずっと高い管理費を払っているのもばか ばかしい。  それにしても買った当時は、今にも新幹線がすぐ函館まで来る ような勢いだったんだけどねえ。まさか青森までも来ないとはね。  新幹線さえ来れば、5時間以内で、博多へ行くよりも早く函館 に着くはずだから、十分余生をここですごすつもりでいた。  それくらい気に入っていた街なのだ。  というわけで、今回は思い出いっぱい感傷旅行になるはずだっ たのだが、どうもお笑い娘がいて、浸れない。  そういえば、きょうは金曜日。娘よ、学校はどうした?  はい、親が休ませてしまったのでした。悪い親!  しかも「おい、ゆり、寿司を食いに函館まで行かないか?」と きたもんだ。  午後1時32分。盛岡駅着。  毎回通勤?の度に、食べることになっていた「八幡平そば」の 店に向かうが、地下道を間違えて、対岸に出てしまった。  足が不自由なので、もう一度戻るのはしんどい。  やむなく目の前の「啄木庵」に入る。  石川啄木(いしかわ・たくぼく)の名前が出てくるところが、 いかにもみちのくだ。とにかく「啄木」の名前の入ったお店がや たらと多い。名前がまたいいんだろうねえ。これが石川一郎だっ たら、こうはならなかっただろうな。    さて、啄木庵では、ひっこそば1800円というのを食す。 「ひっこ」というのは、ご飯のお櫃(ひつ)のことだそうだ。  わんこそばの大皿が3枚に、天ぷら、みそ汁、お新香などが付 いたやつだけど、おそばが美味しかっし、海老の天ぷらが妙に美 味しかった。とてもこの値段の味ではない。  しかし総じて、わんこそばというと、目を白黒させて食べるも のという印象があるが、あのイメージには私は昔から大反対で、 何でおそば本来の味がいいことを宣伝しないのかと常々思ってい る。  イベント色の強い、わんこなどを一度やってしまうと、盛岡ま で来て、もう一度わんこに挑戦しようと思う人は少ないと思うの だ。よほどの大食漢でなければ。私もけっきょく2回ほどやって 飽きた。 いまだに苦しかったことしか覚えていない。  盛岡では、わんこでなく、ふつうのおそばを食べることを推奨 したい。  午後2時33分。はつかり13号。  いつものように8号車を真ん中から壁で仕切っただけの、粗末 なグリーン席。全部で4列16席しかない。  しかしここで、あの『桃太郎電鉄』の貧乏神が生まれた由緒あ る座席なのだ。大半のゲームのアイデアは実はここで思いついた。  ここは私にとって、移動会議室であり、移動読書室であった。  きょうもここで、アニメの企画を考えたり、本を読む。  週刊少年マガジンの編集長だった内田勝さんの『奇の発想』 (三五館刊)は、『チョコバナナ』の投稿者にぜひ読んでもらい たい1冊だ。今の漫画がいかにつまらないかわかるはずだ。  テリー伊藤さんの『スーパースター改造計画』(ティーツー出 版刊)もおもしろかった。うちの嫁は「ホメ降ろし」という造語 を作って、この本を評していた。言い得て妙だ。  午後6時頃。青函トンネルに入る。  もう何10回このトンネルを通ったかなあ?  いろんな人ともここを通ったなあ。  深海恐怖症で、ブルブル震えていたどんちゃん(現・井沢どん すけ)や、水族館のように海中が見えると思い込んでいた横山智佐。  いつもずっと寝たままの関口和之(サザンオールスターズ)くん。    列車は、トンネルを過ぎ、地上へ。  函館に近づく。  アナウンスで「次は、五稜郭〜!」という。  えっ? 私が通っていた頃は、五稜郭に止まらなかったぞ。  こんなチャンスはない! 娘、降りるぞ!  得意の気まぐれ&行き当たりばったりが始まってしまった。  午後6時55分。五稜郭駅で下車。  予想はしていたが、何もない。ごくふつうの田舎駅だ。  いいのだ。降りた事実さえ残れば。
 午後7時すぎ。タクシーで函館大門の鮨金(すしきん)総本店に 行く。  ここは毎回函館に来る度に、寄っていたお店で、電車の関係で閉 店ぎりぎりに入るのが常だった。しかも何も言っていなかったので、 お店の人たちは2年間ぐらい、函館の人間だと思い込んでいたそう だ。そりゃそうだ。毎月東京から列車で通ってくる客なんているわ けがないからね。バレてからは、すっかりこのお店の人たちとなか よしになってしまって、函館=このお店のイメージだ。
↑ 我が家の担当・福田さん
 しかも銀座博品館(ぎんざ・はくひんかん)裏に、東京の出店が あるので、店の人たちは交代で来る。おかげで函館に行けなくなっ てからも親交は続いていた。  銀座のお店はさすがに値段が高いので、オススメできないけど、 よっぽどお目出度いことがあった時は、このお店のトロとサーモン、 ホタテの磯部焼きは食べてみてほしい。  それとメニューにはない「ウニ・イカ・ソーメン」。  これは「死んでもしらんぞ〜!」という美味しさ。  うちはこの銀座のお店を、むしゃくしゃした時や、ストレスを発 散したい時によくつかう。  午後8時。ホテルニューハコダテ。  マンションはもうほこりだらけなので、ホテルに泊まる。  ここは小説家&ミュージシャン&女優南果歩さんの旦那でもある 辻仁成(つじ・ひとなり)さんの『函館物語』(集英社文庫)にも 登場するホテル。  フロントでこの本を売っていたので、買う。  ここは古い銀行をそのまま改装したので、エレベーターもなくて、 まるで明治時代の学校に泊まるような感じ。部屋数も少ない。  いかにも芸術家たちが常宿にしたがりそうなホテルだ。  ホテルから『チョコバナナ』投稿者・はせがわちずサンに電話。 『いよっ!!お仕事人』の単行本化をめざそうよという話になる。  いよいよ次号16巻は、いろんな人が揃い踏みしそうで楽しみだ。



6月13日(土)

 昨日早々と寝てしまったせいか、午前4時に起きてしまった。
 何とかもう一度寝る。

 午前9時。明治館裏の海鮮市場1号館に行く。
 まずはここの「いかいか亭」で朝食。朝食といいながら、ボタン
海老、イカ、イクラ、サーモンが入った豪華な、いかいか亭丼17
00円を食べる。娘は1000円のイクラ丼。東京だったら200
0円か3000円はする。
↑海鮮丼
   メロンも注文する。  夕張メロンではなく「ikメロン」というメロンだったが、これが 2個3000円とムチャクチャ安いお値段。夕張メロンなら1個で 3000円からだ。しかも夕張メロンとそっくりな味だし、むしろ ちょっとさっぱりしているので、食べやすい。  お店の人は、何度も「夕張メロンじゃないですよ」を繰り返す。  函館の人は本当にいい人ばかりで、正直者が多い。  その昔むき出しの交通費10万円をタクシーに置き忘れたら、 わざわざマンションまで届けに来てくれたという土地柄だ。  新幹線さえ通ってたら、永住したかもしれないのになあ。  食後、いつものように海産物のお土産をいろんな人に送る。  あの鳥山あ…おっと、間違えた、名古屋明くんが、原稿料も印税 もいらないから、ギャラは函館の海産物にしてといって、絵を描い てくれるあの海産物は実はここだったのだ。
 ここの加賀くんという人が親切で、いつも季節のいい品物をみつ くろってくれる。まずここのイクラの美味しさで右に出るところは ないと思っている。
↑加賀くん
   何たって常連になったおかげで、防腐剤の少ないイクラを入れて くれるのだ。その代わり10月からの旬の時期じゃないと、絶対 イクラを売ってくれない。この頑固さがいい。  今年もたくさんの人がここのイクラを待っている。  午前11時。五稜郭のマンション。  荷造りといっても、私は手足が不自由だから、見ているだけである。 またく役立たずだ。娘とガムテープを買いに行くぐらいしかできない。  さて『思い出ぽろぽろ』。懐かし品々の連発で「ほろり」と来ると 思ったのだが、これがさすがに仕事の中継地点だっただけに、何の生 活感も残っていない。  いちばん目立つのは、PCエンジンの白い本体だ。1号機だから ヒューカードしか入らない。  けっきょくあっというまに、後片づけ終了。  午後12時30分。  気まぐれな家族は、何を思ったか、函館駅から秋田をめざす。  まずは海峡8号で、青森駅をめざす。  途中、なかなか携帯電話が繋がらなくて、秋田のホテルを予約でき ない。やっと繋がったら、満杯。仕方ない現地で探すか。  海峡8号は、青函トンネル開業10周年とかで「ドラえもん海底列 車」になっていた。車内はドラえもんのシールでいっぱいで、大山の ぶ代さんのドラえもんの声が流れる。なんとものどかなものだ。
 それにしても、もうこのトンネルは10周年になるのか。  RPG『桃太郎伝説』を作った頃はまだ開通していなくて、青函連 絡船だった。思えば電車と船で通勤していたわけだから、すごいこと だよなあ。精神的にはタフだったんだろうけど、そろそろあの頃から、 身体はもうぼろぼろになっていたんだろうなあ。  暴飲暴食を絵で描いたような生活してたからなあ。  ホテルで買った『函館物語』を読む。  文章もカメラも、辻仁成さんで、文庫本にしては非常に豪華な本だ。 文章もすごく上手い。いまどきの若者の文章ではないので、ちょっと 驚いた。この人の文章いいなあ。函館は昔「ハコダディ」と発音して いたと何かの本に書いてあったけど、その洋風な「ハコダディ」を連 想させるような文体が美しい。  函館に観光で行った後に読むといいよ。また函館に行きたくなる。  午後3時05分。青森駅着。  ここで仰天すべき事実が発覚! 何と! 秋田行きの特急がない!  そんなバカな。しかし特急は午後2時すぎを最後に、あとは普通列 車ばかり。夕方からは、全部夜行列車である。知らなかった。  仕方なく青森に泊まることにする。  青森ならホテル青森だ。  青森というのは、昔からまったくいいホテルがない。格式あるホテ ルというから泊まると、ベッドにちょうど腰掛けるところあたりがへ こんでいるような使い古されたホテルだったりする。  値段は高いくせに、廊下がワックスの匂いでむせかえるようなとこ ろもあった。  だからこのホテル青森は、建設中の頃から早く完成しないかなあと、 待っていたホテルだ。以来、青森はここのホテルと決めている。  午後4時。観光物産館アスパムに行く。  三角形の大きなビルで、青森の新しい象徴となる建造物だ。  これもここ10年間の札幌通勤のあいだに出来た建物だ。 『桃太郎電鉄』の青森関係の物件駅情報は、いつもここで仕入れるこ とにしている。  今回もまずりんごジュースを飲み、ながいも漬という新製品があっ たので買う。りんごは、王林と世界一という2つの銘柄を宅急便で東 京に送る。
 アスパムに来たら、必ず寄るのが、アスパム裏の公園というか、 岸壁。ここから見る海が大好きで、いつもここのベンチでボーっとす る。札幌と東京の慌ただしい行き帰りのなかで、ここだけはほっと心 がなごむ場所だった。
↑「青い海公園」
 きょうももちろんボーっと、波の音を聞く。  晩年は海の見えるところで暮らしたいなあ。  そのうち品のよさそうな白髪の紳士が現れて、手すりにもたれて、 やはりずーっと、海を眺める。おじさんもこの景色が好きなんだろう なあ。
 きょうのこの公園はいつもより狭い。  8月2日から始まる「ねぶた祭り」の、ねぶた置き場が出来ていて、 大きなテントの中で、ねぶたの制作中である。  娘とテントの中を覗き歩く。これはいいものを見た。

↑バカむすめによる「ねぶた」2態

   午後6時。ホテル青森に戻る。  青森で食事というと、駅から少し歩いた「K」というお店に決めて いたのだが、近年驚くくらい味も品も落ちて、とても行けないような お店になってしまった。ホタテづくしの美味しいお店だったのになあ。  というわけなので、たまにはホテルで食事することにした。  もともと旅先のホテルでは食事しないほうだ。  いくらお金に頓着がないといっても、値段が高くてまずいのだけは 勘弁願いたいからだ。  17階の「ル・ボア」は、眺望もよく、サファイア・コースという 4000円と比較的安いコースの料理がかなり美味しかった。  八甲田牛のヒレ肉もなかなかの味だった。  味もよくて、大好きな海が一望できるというのは、かなり評価が高 い。ここの景色はまず青森随一ではないだろうか。  夜、へばってきたのでマッサージを頼む。  いちいち脳内出血の話をしなければいけないので、マッサージを頼 むと、けっこう面倒くさい。しまいにだんだん脳内出血の話の構成が 上手くなっていくのも、腹が立つ。落語家さんじゃないんだから。受 けるポイントもだんだん身について行く。  ここのホテルのテレビはケーブルテレビが入っていて、チャンネル 数が多く、いろんな番組をガチャガチャ回しながら、だらだら見る。 嫁と娘は『Gメン75』を見たそうだ。原田大二郎がまだ真面目くさ って演技をしていた頃だそうだ。  ベイスターズの敗戦を確認して、寝る。



6月14日(日)

 旅先では本当に朝早く目覚めるものだ。
 午前6時ぐらいから目が覚めてしまった。

 午前7時。5階の「みちのく」で、朝粥定食を食べる。
 いきなりお茶といっしょに、りんごジュースを持って来るのが、
いかにも青森だ。
 なぜこんなに早くから食事をしているかというと、日曜日なの
で東京へ向かういい時間の列車が取れなかったから。夕方青森を
立つ予定が、青森駅午後1時28分のはつかり18号に乗らない
といけない。
 それならばゆっくり起きて、午後1時すぎに帰ればいいじゃな
いかと思うでしょうが、それでは旅行王の名前がすたる。
 なんと昨日知り合ったタクシーの運転手さんが、午前8時に来
てくれて、これから太宰治の生家である「斜陽館」まで行くので
ある。
 津軽の地理にくわしい人、まず「くすっ」と笑ってください。
 あとでもっと笑えます。

 というわけで、雨の中、西津軽の金木(かなぎ)に向かう。
金木(かなぎ)の地名は、「かねぎ」か「かねき」か「かなぎ」
なのかさっぱりわからなかったのだが、今回道路標識を見たら
「かなぎ」になっていた。でも運転手さんは昨日からずっと「か
ねぎ」と発音している。カーネギーみたいだ。

 観光タクシーというのは、タクシーのメーターを倒さずに、こ
ことあそこを見て、いくらぐらいと交渉するやり方で、実際のメ
ーターよりはるかに値段が安くて、おまけに現地出身の運転手さ
んが観光ガイドまでしてくれるので、最近はもっぱら観光タクシー
を頼むことにしている。
 実はこれも司馬遼太郎さんの取材方法のマネである。

 午前9時。金木の斜陽館着。
 あまりの大きさがびっくりする。約680坪というから、東京
郊外の一戸建てが、20軒分である。でかい!
 あの太宰治がこんな大きな家に生まれるなんて、意外だったが、
その著書の中で「この父はひどく大きい家を建てたものだ。風情
も何もないただ大きいのである」と記してあるのだが、ヒバの木
の香りのする古い建物は、風情を絵で描いたようなのだから、皮
肉なものだ。
 斜陽館を見たあと、金木駅へ行く。たとえ電車に乗らなくとも、 駅にだけは行っておきたい。  まるで高倉健さん主演で、映画を撮るためにセットを組んだの かと思うような古い駅だ。
 午前10時30分。板柳ふるさとセンター着。  板柳というのは、五所川原駅から3つ南の駅。  実は相当前から、青森で必ず買う、りんごジュースと、りんご ジャムというのがあって、板柳のりんごワークというところで作 っているというのはわかっていた。しかもいつもいっしょに付い てくるパンフレットには、宿泊施設もあって、遊ぶところもたく さんあるようなところとあって、気にはなっていたのだ。  でもどの観光パンフレットを見てもないし、旅行雑誌にもまっ たく登場しない。  それどころか今回観光タクシーを運転してもらっている中村さ んですら、まったく聞いたことがないというぐらいだ。  ところがこれがすごくいい。  いろいろな花の匂いでいっぱいのきれいな場所で、温泉大浴場 もあれば、サイクリング・コースもあり、りんご細工の体験教室 もあったりして、三重県の合歓の郷並みのいい場所だ。  何でこんないいところをもっと宣伝しないのだろうと思ったら、 このセンターは、財団法人で、町営だとか。そりゃ宣伝下手だろ うな。もったいない。コンサートでもやったらいいのに。  喫茶店で食べたアップル・パイは、さすがりんご王国。温かく て美味しいこと、美味しいこと。コンビニのアップルパイが二度 と食べられなくなりそうだ。  いつかもう一度来たい。そう思いながら、時間がなくなってき たので、ふるさとセンターをあとにする。
 五能線を越えたとことで、運転手さんがここのシュークリーム が大きくて美味しいと評判だという。それは桃鉄! 車を止めて もらって、お店へ。
 大きい! 肉まんみたいだ。これが150円! 安い。  さらに、つぶあん入りシュークリーム!? ミルクバナナ?  妙な食べ物ばかりだ。  さっそく車のなかで食べる。  大きいわりに、甘さひかえめで、美味しいじゃないか!  不思議なのは、ミルクバナナ、80円。皮がなんと、最中の皮。 知らないで口にすると、意表をつく。これは珍なり。  やばいな、調子に乗ってどんどん甘い物を食べている。  午後12時過ぎ。青森駅到着。  まだ列車まで1時間近くあるんだけど、駅の売店で本を買って、 駅構内へ入る。  実は駅の立ち食いそばナンバーワンは、この青森駅のプラット ホームのお店だと思っているのだ。とくに列車に器持ち込みで食 べられるのがよかった。  しかしきょうは、列車持ち込み禁止の張り紙が。  美味しかった「ほたてそば」もメニューからなくなって数年が 立つ。駅そばも歴史と変遷があるようだ。  ふと見ると「縄文むかしそば」という名前が。  三内丸山(さんないまるやま)遺跡が発見されてから、青森は 遺跡づいている。この縄文むかしそばも、くるみ天、とろろ昆布 、鶏肉、山菜わらびが入っているとある。これは食べたい!  と思ったら、売り切れ。午後1時前で品切れはないだろ?  いや、ここは青森。商売熱心な街ではない。  隣のお客さんが「いなり!」というが、これまた「売り切れで す」。  無敵だ、この駅そばは。  とりあえず「めかぶとろろそば」390円を食べる。  めかぶがこりこりして変な味だが、美味しい。    午後1時28分。はつかり18号。  昨日駅のテレカで見た、1日1本しかないという、はつかりの 新型車輌が、入線してくる。これはラッキー。  しかし乗ってみるとい、いつものはつかりとほとんど変わりが ない。どうも色替えのようだ。ゲーム・キャラみたいだ。トイレ だけはずいぶんときれいになっている。これはいいことだ。  それより心配なのは、盛岡駅で、はつかりから新幹線に乗り換 えるのに、8分しかないこと。  昔は6分しかなくて、いつも必死に走ったことを思い出す。  しかもこのはつかりは冬場だと、雪で必ず列車は遅れる。6分、 7分送れるのは当たり前で、困ったことに、遅れても、遅れを取 り返す気がまったくない。何回か臨時列車に乗ったことがある。  あの頃のことを急に思い出して、不安になる。  今回8分に伸びたとはいえ、私は手足が不自由になっていて、 走ることができない。  とはいえ、2時間近い旅だから、本を読む。  内田康夫さんの対談集『全面自供』(講談社文庫)。  『新鮮!寿し本』(博学こだわり倶楽部編・河出夢文庫)。  旅先でもお寿司の雑学本を読んでいるんだから、困ったやつら ですな、この家族は。 『新鮮!寿し本』のイラストを、昔からの相方である、えびなみ つるが描いていた。旅先で雑学本の文庫本を買うと、大川清介、 かすやたかひろ、えびなみつるの誰かが描いていることが多いの で、楽しい。旅から帰ると「旅先でへたくそな絵を見たぞ〜」と、 当人たちに電話するのを趣味としている。  さて、だんだん列車が盛岡に近づく。  あと2分で盛岡駅だ。走れないまでも、必死に歩くぞと、意気 込んだら、嫁の携帯がプルルルル…。  えっ? すぎやまこういち先生から? 何? 今晩新宿の伊勢 丹の正月屋吉兆に行くからいっしょに行けないかという電話らし い。 「行く! 行く!」  ちょうど東京駅に着くのが、7時ぐらい。  どうせきょうは日曜日で、晩御飯をどこで食べようかと悩むは ずだった。何という偶然。電車のなかだと携帯が繋がらないこと が多いし、繋がってもトンネルですぐ切れてしまう。繋がるとし たら、この乗り換えの8分間しかないのだ。そこへ電話をかけて くるなんて、さすがはわがグルメの師匠。食い道楽の神様がつい ているとしか思えない。  よっしゃ、必死に歩くぞ。  午後3時56分発・やまびこ10号。  意外と余裕で間に合った。すぎやま先生ご夫妻と食事できるよ うな幸運があるということは、ゲームのいいアイデアも出ること が多いはず。さっそく『桃太郎電鉄』の新キャラを考える。  出た! 嘘のようなまことだが、出た!  新型のボンビー「ビビンボ」である。  内容についてはナイショ。娘に言わせると、キャラの行動とネ ーミングが合っていないというので、名前は変わるかもしれない。 最近なかなか文句の付け所がマニアックになってきた。  午後6時48分。東京駅着。中央線の快速で、新宿駅へ。  それにしてもこんなハードなスケジュールでも、ちっとも疲れ ていない。本当に病気で倒れてからのほうが元気になってしまっ たものだ。以前ならもういまごろは、青息吐息で、たとえすぎやま こういち先生ご夫妻からのお誘いでも、断ってしまったと思う。  いま平気で、伊勢丹に向かう自分に驚いている。  午後7時20分。正月屋吉兆で、おひさしぶり。実は私はけっ こうご夫妻と会っていて、うちの嫁と娘が久方ぶり。  吉兆の美味しい料理に舌鼓を打ちながら、いつものように、あ そこで食べたあれが美味しかった、まずかったという話で盛り上 がる。  お店の人にまで、盛岡駅から直行したことを笑われる。  すぎやま先生にも呆れられたのが、うれしい。  さすがに奥さんはいま、盛岡にいると聞いて、これは無理だと 思ったそうだ。  最近無茶自慢ができなくなっていたので、ひさびさにうれしい。    午後10時過ぎ。帰宅。さすがに新宿の街も人通りが少なかった。 W杯を見に帰ったのだろう。  すでにもうアルゼンチンの1点が入っていた。  電波少年のなすびのほうが気になるので『電波少年』を録画する。  郵便物を整理する。旅から帰ると、『チョコバナナ』投稿者の 岩岡目々さんから原稿がとどくのジンクス通り、16巻用の完成 原稿が届いていた。  それどころか、あの『ウンコマン』まで漫画になって届いていた。 けっこうおもしろいぞ。絵の古めかしさが、味になっている。  そうそう。『チョコバナナ』は16巻でひとまず一区切りだけど、 今のところ完全に終わってしまうわけではないので、お楽しみに。 少なくとも来年中に1冊は出す予定だし、個人集や『桃太郎電鉄』 の4コマ本は出して行くつもり。できれば『バナナDAYS』の本 も出版してみたい(というと、また出版できなかった時、あのとき 出すと言ったのに約束が違うと、ののしられるので、あくまで出し たいという希望ね)ので、変わらず投稿を続けてください。    ハガキのほうも『コムナビ』のほうで続けては行くつもり。でも こっちも相手がいることなので、いつまで続くのかは断定できない。 7月発売号も一度は休載になって、ぎりぎりで復活したぐらいだか らね。人気アンケートのほうにも○してね。



6月15日(月)

 旅先で早く起きるくせがついてしまったのか、午前6時ぐらいに
目が覚めてしまった。無理してでももう一度寝る。
 おかげで、旅行の次の日でも、すっきり目だ。
 午前中、日記をまとめながら、アイデアをまとめる。

 お昼、原宿のバンブーで食事。
 旅行中の食べ過ぎで、2kgも増えてしまったので、減量大作戦。
パン食にする。

 午後、美容院に行く。今週もずっと忙しいので、いま美容院に行
かないと、行きそびれてしまいそうだった。

 午後3時。宮路一昭くんが来る予定だったが、レコーディングが
伸びているという連絡が入る。
 けっきょく4時30分ごろ来る。
『桃太郎伝説』の最後の3曲を聴く。どれもOK。早くゲームのな
かで聴きたいものだ。

 夜は、函館から、青森から送った海産物や果物が到着したので、
家族で食べる。イカの沖漬けとか、シャケハラスとか、どれも塩っ
ぽい。こんな塩っぽいのばかり食べていたから、脳内出血になって
しまったのだなと納得。健康になってみないとわからないことだ。

 あとはいつものように、鍼灸師の弓削くんを待つ。



6月16日(火)

 午前11時。原宿駅で中尾淳と待ち合わせ。
 原宿駅そばのお店で食事。ピタというパンを食べる。
 原宿にはこういうわけのわからないパンを売り文句にしているお
店がたくさんある。いま原宿でポピュラーなのは、ベーグルパンと
いうやつだ。どのお店にもある。

 午後1時。『チョコバナナ』投稿者・神谷栄和くんが来る。
『宇宙人ショック』の打ち合わせをいろいろ。
 どうせなら今年中に単行本にしようじゃないかという話になる。
 プロをめざしたいそうなので、プロになるということはどういう
ことかを教える。

 レイアウターの野沢ちゃんが来て『チョコバナナチップス』
『チョコバナナ・パワーズ』の打ち合わせ。
『チョコバナナ・パワーズ』というのは、漫画の投稿者向けのチッ
プス形式の添削本。

 午後6時。中尾淳と神谷栄和は、夜の原宿にでかける。

 家族と野沢ちゃんは、函館の海鮮市場で買った海産物を食べるが、
量が多すぎて、食べきれない。毛蟹2尾、シャケ、ホタテ、タコ…。
せっかく昨日1日で体重を落としたのに、また太ってしまいそうだ。

 夜、いよいよ『チョコバナナ』16巻の仕込みを始める。
 野沢ちゃんに、募集ページのラフデザインを渡す。

 サッカー大好きジュビロ娘の野沢ちゃんが、中田英寿のインター
ネットに、先日のアルゼンチン戦のことが書かれてあったというの
で、嫁に中田英寿のインターネット日記をプリントアウトしてもら
う。本人が書いてるみたいだぞ。聞き書きなのかな?
 それにしても何だかすごくいいやつに思える。
『中田語録』(文芸春秋刊)を読んで以来、中田英寿は私のなかで
どんどんいいやつになっていく。
 しかし私はいまだに中田英寿が、どこのチームの選手なのかを知
らない。とても私が元サッカー部だったとは思えないだろうな。背
番号も11で、レフトウィング(古い言い方)だったんだぜ。

 ベイスターズが完封勝ち。うれし。



6月17日(水)

 午前10時。杉並区上井草の診療所へ行く。
 血圧がだいぶ高くなって来ているので、用心しなきゃ。

 午前11時。吉祥寺の武蔵野珈琲で、恒例ジャワロブスターの豆
を500グラム購入する。
 午後12時すぎ。家に戻ろうと中央線に乗ると、中尾淳から電話
が入る。
「すみません、携帯電話の電池が切れました」。アホなやつめ!

 午後1時30分。『わるわ〜るど』の青焼きが届く。
 中尾淳と神谷栄和が来る。
 税理士の赤根くんが来る。税金の話は苦手だ〜。
 レイアウターの野沢ちゃんが来て『わるわ〜るど』の校正。

 午後2時。読売広告の岩崎誠と、小沼さんが来る。小沼さんとは
初対面だが、お仕事内容はみんなに伝えづらい。広告業界の人とだ
け言っておこう。それより30数年ベイスターズのファンだという
ので、ついその話で盛り上がる。

 午後4時。お笑い芸人志望の門脇忍が来る。おもしろい男なので
売れてほしいのだが、なかなかおもしろさが表に出ない。つかいこ
なせる人がいないだろうなあ。もったいない才能だ。

 午後6時。野沢ちゃん、中尾淳、神谷栄和、門脇忍と原宿「鳥良」
へ行く。ここの名古屋風どて鍋、じゃこ飯、手羽先などは美味しい。
娘のオススメである親子丼が大人気で、うちのグルメ・バカ娘っぷ
りを、みんながヴァーチャル体験したようだ。
 まったくうちの娘の「美味しい物センサー」は異能だ。
 
 テレビ神奈川で、ベイスターズ戦を観戦しながら『チョコバナナ
チップス』の原稿書き。ありゃ、逆転されてしまった。ありゃ、今
度はまた逆転したぞ。
 嫁と娘が帰ってくる。明日誕生日の娘にプレゼントを買って来た。
誕生日だというのに、ほとんど物をほしがらぬ変な娘だ。本当に食
い物があいつの人生の中心にあるようだ。
 姉から電話があったり、『チョコバナナ』投稿者から電話があっ
たり、トドメにショッカーO野くんから電話があったりして、けっ
こう忙しい。今週はなぜか電話が多くて、1日10本以上電話が入
る。すでに6月の来客が完全に埋まってしまって、7月も埋まって
しまいそうなので、なんとか調節しなきゃ。
 でもこれでも入院する前の4分の1ぐらいの忙しさである。一体
あの頃は、何に燃えていたのだろう。

 おっ、佐々木様の登場だ。
 ひゅー! 連続三振! 見事だね〜。めでたく17試合連続セー
ブの日本記録達成。去年自分が立てた記録を1年で塗り替えてしま
うのだから、たいしたもんだ。
 優勝して、大リーグに行ってほしい。
 きょう発売の週刊ベースボールは、佐々木様の表紙。これを読ん
で寝るのだ。至福。



6月18日(木)

 午前中。『チョコバナナ・チップス』の原稿書き。
 午前11時。原宿駅で『チョコバナナ』投稿者・たつきじゅんサ
ンと待ち合わせ。
 原宿駅近くで、食事。
 帰宅後、いろいろ漫画の描き方をレクチュア。

 午後1時すぎ。ムサシノ広告の伊東正義が来る。
 午後2時。市ヶ谷の角川書店へ行く。
 内密の話なので、誰に会ったとかは、ナイショ。

 せっかく角川書店に来たので『ゲームウォーカー』編集部に寄っ
ていく。ここには『チョコバナナ』創刊号当時にスタッフだった土
門保夫がいるのだ。『チョコバナナ』読者には、ロリコン土門とし
て記憶している人もいるだろう。
 土門はしっかり『チョコバナナ』を買っていて、開口一番「分厚
くなりましたねえ」。土門も16巻で『チョコバナナ』は終わって
しまうと思っていたので、まだまだ続くよと伝える。

 午後4時。『わるわ〜るど』の表紙の刷り出しが来る。
 午後4時30分。レイアウターの野沢ちゃんが来て、表紙の色を
変更する。

 夜、きょうはグルメ・バカ娘12歳の誕生日。
 グルメ・バカ娘にふさわしいように、フランス料理業界では、有
名すぎる銀座レカンに予約して行く。
 このお店は初挑戦。
 ところが入り口で「ネクタイをお召しでない方は…」と言われて
しまった。最近はノーネクタイの店は減ったのだが、ここはそうい
うレベルではなかった。予想しなかったこっちが悪い。とはいえ私
はネクタイをしない主義なので、このお店に来ることはないんだろ
うなあ。味を取るか、主義を取るか。まあ、しばらく保留。

 この銀座レカンの2,3軒先が資生堂パーラーなので、こっちに
入る。ちょうどここに移転して1年が立つ。1周年記念フェアのコ
ース料理が美味しそうなので、これにする。
 このお店は、グルメ・バカ娘のなかでも上位に顔を出すくらいな
ので、娘はかえっておおよろこびである。
 しかもコールドスープ、ローストビーフ、チキンライス、コース
メニューのどれもが美味しいので、さらにおおよろこび。

 そしてわが家、恒例の誕生日儀式。
 不二家のホールケーキを買いに行く。
 私にとって、子どもの頃からの最高のごちそうなのだ、不二家は。
 下品な味、甘すぎる味といわれようが、いろんな思い出のある不
二家は、永遠のごちそうなのだ。
 ついでにペコちゃんの携帯ストラップが売られていたので、買う。

 タクシーで帰宅中、ベイスターズ・ダイヤルに電話をし続けるが、
ずっとお話中。
 するとカーラジオから、たったいま横浜ベイスターズがさよなら
勝ちしたという、他球場の途中経過が流れる。
「きゃっほー!」

 最高の気分で帰宅後、不二家のケーキで「おめでとう!」。



6月19日(金)

 午前中。W杯の開会式のビデオを見ながら『チョコバナナ・チッ
プス』の原稿書き。
 ジャンボ・マックスみたいな彫像が、ゆっくり歩いているのを見
ていたら眠くなる。虫のような造形のデザインはおもしろいのに。
『桃太郎伝説』の原稿書き。

 午前11時。コンパイルの仁井谷正充社長さんが来る。
 元気そうで何より。続々ゲームを作ってようだ。
 宮路一昭くんが来る。宮路くんを、仁井谷さんに紹介する。
 コンパイルは倒産したと思っている人がまだ多いので、これから
もどんどんゲームを出して、コンパイル健在を広めてほしいものだ。
 セガの新ハード「ドリームキャスト」は、まさに『ぷよぷよ』向
きの機能があるので、コンパイルは再浮上できるはず。

 お昼。近所のおけい寿司に行く。
 すっかり最近ここの「お寿司ランチ」にはまっている。

 午後2時。レイアウターの野沢ちゃんが来て『チョコバナナ・チ
ップス』の編集作業。

 午後4時。私の姉が来る。うちのグルメ・バカ娘を、ケーキ・バ
イキングに連れて行ってくれるという。昨日誕生日ケーキを食べて、
翌日ケーキ・バイキングに行くか? ふとどきを絵で描いたような
ガキだ。ガキが「餓鬼」から来ていることを実証するガキだ。

 午後5時。『チョコバナナ』投稿者のえんらえんらサンが漫画原
稿を持ってくる。16巻用の作品だ。たぶん載るだろう。いい出来。
 漫画の話をしながら、カレーの話をしたら、みんなカレーが食べ
たくなってしまった。
 食べ物の話をしていて、その食べ物が食べたくなるという点では、
カレーがいちばんだと思わない? 
 みんなは何の食べ物の話をすると、無性に食べたくなる?

 午後7時。新宿中村屋のコールマンカリーを食べに行く。嫁と野
沢ちゃん、えんらえんらサン。このカレーは、私のグルメの師匠・
すぎやまこういち先生のイチ押し。

 午後8時すぎ。『チョコバナナ・チップス』の紙を買いに、アド
ホック・ビルに行ったら、10分前に閉店。お腹減っていたから先
にカレーを食べに行ったのが失敗だった。

 午後9時。帰宅。ちょうど娘も帰って来た。お腹が外からわかる
くらいパンパンに膨れているぞ、娘! どのくらいケーキ食べ続け
たんだ! 人の顔を見たとたん「苦しい!」と叫ぶのはよせ!

 午後10時。鍼灸師の弓削くんが来る。血圧を計ったら、すごく
低くてホッとした。このところ診療所で高いので心配だった。
 血圧の下が高いのはストレスが原因という。
 確かにこのところ忙しい。少し休まないとな。



6月20日(土)

 午前中。また来週大阪に行くので、前後の寄り道旅行のプランを
練る。名古屋でみそかつ丼を食べて、彦根城へ行こうと思う。その
彦根に、関ヶ原の戦いのときの石田三成の居城・佐和山城の跡があ
るのだが、去年彦根に行った時、駅の向こうにお城が見えたのだ。 
 お城の本を読むと、城址しかないと書いてある。
 ではあの城は何? 
 先日の岐阜城に続いて惨敗するかもしれないが、石田三成という
戦国ビッグ・スターの城址とあれば行かねばなるまい。

 午前11時。『チョコバナナ』投稿者・紅結羅(くゆら)さんが
来る。
 カフェ・ヴァジーで昼食。

 食後、家で漫画の話。紅結羅さんもどうしてもプロになりたいそ
うだ。気の強い性格はプロ向きだ。
 おかげで2時間の予定が、延々6時間のコーチになってしまった。
質問をたくさんしてくる投稿者には、つい時間たっぷり教えたくな
るものだ。

 夜、南青山の青山(SEIZAN)というお寿司屋さんに初挑戦。
 芽ネギ、貝割れの昆布じめ、松坂牛の握りといった、ほかでは見
られないネタがおもしろい。青山のお寿司屋さんというだけで、
1個2000円とか3000円すると思ったら、300円、400
円という値段が多くて、かえって怪しんでしまう。
 どれもちゃんとした味だし、握りが小さいので、食べやすい。

 食後、娘の誕生日プレゼントの買い忘れを買いに、ローソンへ行
く。任天堂パワーの書き込みシステムの『ファイヤー・エンブレム
紋章の謎』というやつだ。最近すっかり娘はすっかり『ファイヤー
・エンブレム』にはまっている。おたく街道まっしぐらだ。

 午後9時。『チョコバナナ』投稿者・天街由佳子さんに電話。
ものすごくいい絵コンテが上がった。16巻には間に合いそうもな
いので、じっくり何度も描き上げることにした。 

 ふわっはっは。ベイスターズが中日ドラゴンズと同率首位だ!
 1敗すれば、4位まで転落しかねない1位だが、首位は首位だ。
 明日からプロ野球のストライキが始まり、秋まで続けば、優勝だ。
 どうだ、負け根性たっぷりだろ!
 何でもいい。何でもいいから優勝してくれよ〜。
 ああ、また明日からドキドキの毎日だ。

 ってなこといいながら、午後10時になると、NHKでW杯を見
てしまう。長いことマスコミで生きていると、好むと好まざると、
こういう国家的イベントは見ないわけにはいかない。
 どうせなら中田英寿を応援するぞ。

 と言いながら、こういう時こそ、ほかのテレビ局はどうしている
のか気になる。がちゃがちゃリモコンを動かす。どの局も寒そうだ。
 ケーブルテレビのどこかで、浅草キッドが生番組をやっていたの
が楽しい。いいねー、こういうスタンスって、好きだなあ。

 前半戦。0対0。
 オフサイドは面倒だなあ。昔サッカー部の時もオフサイドの概念
を覚えるのは大変だった。
 しかしまあ、日本のサッカーのレベルは高くなったもんだなあ。
今頃言うのも何だけど。よくまあ、あれだけ正確にパスを出せるよ
うになったもんだ。私なんど逆サイドに誰がいるのかわからないの
に、やみくもにパスを出していたぞ。
 点が入らないと、ヒマだ。
 他局を見る。中田英寿の「オー・プラス」のCMが流れると何か
笑える。
 ありゃ、クロアチアが1点。
 さっそくアナウンサーが「まだ時間があります!」の常套句を始
めた。大変だなあ。
 あっ。終わってしまった。あっけない。
 言い訳が難しそうだね。
 こういう時こそ、がんばったねの声がたくさん上がってほしいも
んだ。向こうも必死なんだから。勝負は時の運。

 ひさしぶりに、だらだらしてから寝よう。



6月21日(日)

 きょうは1日一生懸命休むのがお仕事。
 さすがにちょっと疲れているので、無理をしないようにする。

 お昼。新宿の「王ろじ」で、とんかつサンドイッチを食べる。
 アドホック・ビルの画材屋さんで『チョコバナナ・チップス』用
の紙を買う。

 午後3時。帰宅。
 先日LDを整理したら、買っただけで観ていないLDが大量に出
てきた。少しずつ観て行こう。
 まずはLD『アポロ劇場50周年記念ライブ』を観る。
 モータウン・サウンドと呼ばれる、黒人音楽の巨匠たちが次から
次ぎへと登場する、R&Bマニアなら、垂涎の1枚だ。
 スティービー・ワンダー、ダイアナ・ロス、ウィルソン・ピケット、
フォー・トップス、テンプテーションズ、ドリフターズ、ロッド・
スチュアート…。
 まるで私たちの世代にとって『懐かしのグループ・サウンズ』大
会を観ているようだ。

 LDを観ながら、昼寝。
 しばらくして嫁を呼び、もう1度このLDをいっしょに観る。
 そのぐらいこのLDには感激してしまった。

 夜、嫁の弟といっしょに、近所のいちばん原宿っぽいお店「エス
コッツ」で夕食。
 わがベイスターズはまた連勝。中日も勝ったので、同率首位のま
まだ。この時期での首位は19年ぶりだとスポーツ新聞に載ってい
た。何でもいいから優勝してくれ! 去年2位になって、首位に迫
った時「優勝」の2文字を口にしなかったから、今年はもう「優勝」
を連呼するぞ!

 LD『スペシャリスト』を観る。
 シルベスタ・スタローンとシャロン・ストーンが競演したやつだ。
 恐ろしくテンポが悪い。役者はみんないい。テンポの大切さを教
えてくれる作品だ。
 最近テンポというか「間」というか、すべての娯楽作品は「間」
が司っているような気がしてならない。
 どんないい企画も「間」が悪いと、すべてをぶちこわしにしてし
まう。しばらくお勉強しよう。



6月22日(月)

 朝からLDを観る。
 いつも思うのだが、LDの封は開けづらい。
 しかもLDを観るのに、リモコンが3本必要なのが、面倒だ。
 何しろ渡しは常にビデオ内蔵テレビを買い、スーパーファミコン
内蔵テレビまで買った横着者だ。
 この稀代の怠け者に、LDの封は面倒すぎる。おまけに今、手が
不自由なので、LDの封を切るまでに、5〜6分はかかる。

 と文句をタレながら、観たのは『禁断の惑星』。
 1958年製作というから、40年前の作品。
 『スターウォーズ』のR2D2に影響を与えたロボット・ロビー
が登場するSF映画だ。たぶん子どもの頃観たことがあるのだろう
が、古い映画を今の映画のつもりで観ると、テンポが悪すぎる。
 思った通り、ぐーぐー気持ち良く寝てしまった。
 明日からの旅行に備えて、いい休息になった。

 午前11時。『チョコバナナ』投稿者・秋月涼さんと待ち合わせ。
 ラ・フォーレ原宿2Fの「キリン・シティ」で食事。

 帰宅後、ハガキ投稿だけだと思っていた秋月涼さんが漫画を描い
たから見てほしいという。上手い! 何でみんな初めて描いてこん
なに上手いんだ。ただ14巻なら楽勝で載るレベルなのに、15巻
見てもおわかりのように、最近のレベルは日進月歩。
 すでに次の16巻はほとんど15巻の作品をほとんど抜いてしま
っているのだ。おそらく秋月涼さんのは、苦戦するだろう。贅沢な
悩みだ。

 午後3時。『チョコバナナ』投稿者・藤川かつらサンが『たすけ
て!福助!!』の原稿を完成させて来る。本来ならOKな原稿なのだ
が、藤川かつらサンにはプロ・レベルの作品を要求しているので、
16ページ中、2ページ完全描き直し。1ページに1カ所ずつぐら
い、セリフの書き直しをする。厳しい!
 途中、衆芸社社長・高村安夫が来て、このやりとりを見て「漫画
の打ち合わせって大変なんだねえ」。

 夜、新潟出身の藤川かつらサンと原宿にある新潟料理の店「静香
亭」へ行く。この店の隣りに新潟情報館「ネスパス」があるので、
藤川かつらサンに教える。新潟の観光パンフレットが大量に置いて
あるので、資料を集めるのに便利なのだ。
 
 さて、毎度恒例ですが、明日からまた1週間近く、京都に行って
来ます。今回も寄り道旅行を予定しているので、お楽しみに。



6月23日(火)

 きょうからまた旅行。
 もはや恒例となった、9時52分発ののぞみで、名古屋へ。
 例によって、11時30分すぎ、名古屋駅で中尾淳と待ち合わせ。
 きょうは我が家からMac2400を鞄に入れて、持ってきたもの
だから、すでに名古屋駅に着く頃には、へばっている。
 先が思いやられる。

 地下鉄で栄駅へ。
 きょうは、みそかつ丼の美味しいお店に挑戦する。
 お昼12時。「元祖みそかつ丼」と書かれた看板のある「叶(か
のう)」に入る。小さな店だが、名古屋では有名な店のようだ。カ
ウンターにテーブル席3つぐらいしかない。
 メニューがなく、お店のおばちゃんがいきなり「みそかつ丼でい
いですか?」と聞いてくるところに、このお店の自信とパワーを感
じる。
 さてここのみそかつ丼が変わっているのは、かつの上に、生卵が
のっているところ。もともとみそかつは、みそが非常に濃い味だか
ら、生卵でアジをマイルドにするのは、上手い作戦である。
 たぶん関西のカレーライスの上に、生卵をのせるパターンを踏襲
したのだろう。
 しかしここのみそかつは「生卵などなんぼのもんじゃい」という
くらい味が濃い! 思わず口がすぼむ。濃い〜。
 これが本場の味なのだろうが、よそ者にはちょっと濃すぎる。
 濃すぎてちょっと味を判定できない。
 よって評価は持ち越し! ほかの人の意見が聞きたい。

 午後1時06分。名古屋発こだま。
 最近こだまの本数が少ないので、乗るまでに30分も待たないと
ローカル駅まで行けない。
 午後1時36分。米原駅着。さあ、道楽旅行の始まりである。
 米原駅から彦根駅へは、ふつう東海道本線で行く。
 しかし私は、近江鉄道で行く。ここで「おお!」と叫んだ人は相
当の鉄道マニアである。
 米原駅発、彦根駅経由、近江八幡駅まで、JRなら20分で行く
ところを延々1時間かけて、近江鉄道はのろのろ進む。ちなみに2
両編成。
 何でまたこんなわざわざ遠回りするのかというと、これには理由
がある。この近江鉄道というのは、西武鉄道の総帥・堤義明さんの
お兄さんが経営する私鉄なのだ。
 早い話、西武ライオンズとは親戚の会社。
 そのためここには、東京の西武鉄道でかつて活躍した西武電車が、
廃車にならずに、払い下げられて、今も当時の姿のまま走っている
のだ。
 その東京の西武鉄道・西武新宿線上井草駅のプラットホームに、
へばりつくように隣接する家に40数年間生まれ育ったのが、私
さくまあきらなのである。
 さて気づいてもらえただろうか? 払い下げの電車が走っている
ということは、わが青春時代に乗った電車にもう一度乗れるのであ
る。ロマンを感じない?
 大林宣彦監督で映画化されるようなネタだと思わない?
『青春ガタンゴトン』かな?
 何たって、上井草駅から西武新宿駅まで7つも駅があったのに、
料金20円の時代だからね。西武新宿線の話をすると止まらなくな
るので、先を急ごう。
 その急ぐはずの近江鉄道米原駅が遠い。
 新幹線米原駅のホームから、山吹色の西武電車が見えたのに、駅
の矢印を行けども行けどもたどりつかない。
 昇って、降りて、降りて、地下道を通って、駅を出て、工事現場
を通って、昇って、やっとたどりついた時には、ホームから見えた
電車は発車したあとであった。
「彦根まで、大人を2枚」
「彦根ならJRのほうが近いよ」
「いえ、この電車に乗りたいんです」
「11分までないよ」
「はい、けっこうです」
と言いながら、時計を見ると、あと30分ぐらいある。
 さすがにそれはまいったぞと一瞬思ったのだが、駅舎がもうその
まま明治村に入ってもおかしくないような、懐古の宝庫。じっくり
観察しよう。
 と思ったら、あっというまに30分がすぎてしまった。
 ゆっくり、ゆっくり、山吹色の電車がホームに入って来る。
 ワンマン電車になっているのが、ちょっと淋しいが、間違いなく
私が通学につかっていた電車である。夏休みになれば、毎日西武新
宿まで映画を見に行っていた電車である。あの娘と乗り合わせただ
けで、ドキドキした青春電車である。
 さっそく車輌をすみずみまで見るが、製造年月日のプレートがな
い。いくら探してもない。ええい、ここは恥のかき捨て。運手士さ
んに聞く。若くて人のよさそうな運転士さんは「そういえばこの車
輌にはプレートがないですねえ。ほかのにはあるんだけど」と笑顔。
 仕方ないので、臨時警報機に付いている年月日を見る。
 1968年4月とある。
 1968年─1952年=16年
 私が16歳の時だ。ちょっと私の記憶より近年の印象がある。警
報機のほうがあとから付いていることは多いから、やはりこの車輌
はもっと古いと思う。高校生の頃なら、こんな山吹色ではなく、も
っと真っ黄色の車輌だったはずである。
 なかなか青春というものは、スピーディに、劇的に、思い通りに
蘇らないもののようだ。またそうでないと有難味がない。
 いずれにしても電車が走り出すと、私は子供の頃に戻った。
 車窓からながめる景色が西武新宿線に見えて来た。
 浜田省吾の曲に『恋の西武新宿線』という歌があったことを思い
出す。ご当地ソングは強いわけだ。今でも忘れない。
 彦根までわずか2駅である。2駅なのにひとり290円。なかな
か青春のお値段は高い。

 彦根駅につくと、操車場があって、私の青春列車が、勢揃いして
いるではないか。まるで私を驚かせるために仕組んだみたいに、た
くさん並んでいる。
 真っ黄色の電車もある。今乗ってきた山吹色の電車より、もっと
古い車輌もある。うわあああっ、全部乗りたい!
 興奮のまま、近江鉄道の改札を抜け、JRに向かうのだが、ここ
で水を差される。
「ここはキップを見せて通過ですか?」とわざわざ改札の人に言っ
たのだが、私と中尾淳のキップをじっと見たあと、黙ったまま、椅
子に座り、窓ガラスを閉めた。返事ぐらいせんかい!
 私の青春時代の西武電車は、ちょっと遅れても、車掌さんがドア
を開けて待っていてくれた、やさしい電車だぞ! 小学校に上がる
前列車のいちばん前で見ていると、運転席に入れてくれた電車だぞ。
 あの頃の西武鉄道魂はどこへ行った!!!
 あまりにも腹が立ったので、思わず写真に撮ってやった。
 名前まで暗記してしまったが、ルール違反なので書かない。
 ちくしょー! 

 2時30分。今回の旅のメインである、佐和山歴史館に向かう。
 関ヶ原の戦いで破れた石田三成の居城として、歴史ファンにはあ
まりにも有名な城である。
 なのにずっと今まで、観光ガイドでも取り上げられることがなか
った。しかも城址だけで城はないという記述が気になっていたのだ。
 こういう情報の時は嫌な予感がする。
 駅のタクシーに「佐和山歴史館まで」というと「そこは市立とか
国が作った歴史館ではないですよ。私立ですよ」と答える。
 個人で作ってしまうなんて、すごいじゃないか。

「えっ? ここ?」
「ちょっ、ちょっと待ってよ」
 これって、廃屋? 自由におはいりくださいとあるぞ。
 暗い。電気がついていない。受付に人がいない。どうも勝手に見
ていいようだ。それにしても霊気漂うような恐ろしい建物だ。
「これはやばい! 帰ろう!」
 歴史館の隣にも石田三成関連の建物があるようなのだが、あまり
にも怖い。霊感などというものはまったく感じない私だが、このま
ま居続けると、その手の映画の主役になってしまいそうだ。
 運良くタクシーも来たので、飛び乗る。
「彦根城まで!」
 口直しに、桜田門外の変の井伊直弼(いい・なおすけ)で有名な
彦根城に行くことにした。
 ここはもう旅行の本に大きくページが割かれるような大きな城だ。
 霊気は漂わないだろう。
 
 午後2時40分。彦根城着。
 霊気は漂わないが、私の天敵が待っていた。
 急坂の石段である。急にもほどがある。敵に攻め込まれないため
に、急な石段にしたと立て札にある。
 さっそく断念。中尾淳だけ行くことにした。
 
 彦根城博物館のほうを見る。
 これは必見だ。井伊家というのは、昔武田信玄がその甲冑を赤づ
くしにしたのを踏襲して「赤備え」という名で伝わる甲冑を着てい
たのだが、その甲冑を生で見ることができた。
 美しい朱色だ。
 これは格好いい。思わずワープロが「格好井伊」と変換したのは
笑える。「井伊直弼(いいなおすけ)が、言葉を言いなおすけ?」
というギャグまで思い出したぞ。 

 庭園もなかなかに美しく、池の水が澄み切っている。
 その水面を湧き水が揺らす。風情だ。
 しかし横には「だからどーした」という顔の中尾淳。
 中尾淳には、日本庭園は300年ほど早いようである。

 午後5時すぎ。京都のマンションに着く。
 最新ゲーム『XI(サイ)』を中尾淳にやらせる。
 相当ハマるようだ。

 午後7時すぎ。近所の「吉四六(きっちょむ)」へ食べに行く。
 大分の郷土料理なので、城下ガレイとか、りゅうきゅう、豊後牛
のステーキといった大分ならではの食べ物を食べることができた。
 かなり美味しい。商売熱心そうではないが、いい味だ。
 京都に来てまで、大分の郷土料理を食べる必要はなかったかな。

 それにしても、あいかわらずとんとん拍子に行かない旅だ。
 佐和山城は、もう少し何とかしてくれないと、石田三成が浮かば
れないような気がした。どこまで石田三成はツイていないのだろう
か。PHP新書『石田三成』(小和田哲男)を読んで寝る。



6月24日(水)

 午前10時すぎ。阪急電車で梅田へ向かう。
 午前11時すぎ。梅田駅で、ハドソンの浦敏治さんと待ち合わせ。
 美味しいうどんが食べたいとリクエストして、タクシーで谷町9
丁目の「ふる里」へ行く。
 外から見ると小さいのだが、なかはお昼時で100人近いお客さ
んでぎっしり。大阪の人気店らしい。
 私は、げそうどん、浦敏治さんは、天きつねうどん、中尾淳は、
ホームランうどんを注文する。ホームランうどんというのは、いろ
んなものがたくさん入った、ミックスうどん。生卵や、サツマイモ
の天ぷらまで入っている。
 げそうどんは、大阪特有の下品なげそを期待していたら、しっか
りしたイカで、けっこう上品な味だった。
 元々お寿司屋さんをやっていたようで、浦さんはお寿司も頼む。
 私は久々に減量中なので、巻物をひとつでガマンする。
 美味しそうで、もったいない。

 食後、近くの喫茶店で打ち合わせ。
『桃太郎伝説』のギャグ・キャラのデザインを渡す。
 デザインは土居ちゃんではなく『チョコバナナ』投稿者のパープ
ルウォームさんと、神谷栄和くんのデザイン。賑やかしで入れてみ
た。私が作るゲームのどこかここかに必ず『チョコバナナ』の痕跡
を残して行きたい。

 午後2時。毎日放送。『ゲームの若大将』に出演する。
 私にとってはおなじみの柏木アナウンサー、西靖アナウンサー、
堀田ディレクター、放送作家の内木場秀樹くんのチーム。
 この人たちは本当に『桃太郎電鉄』が好きな人たちで、毎年新作
が出る度に番組に呼んでくれる。柏木さんと西さんは『桃鉄7』の
おもちゃ工場のグラフィックにも登場している。
 もう出演というより、友だちの家に遊びに行った感覚で出演でき
るので、気楽だ。みんなの人柄のせいもあるのだろうが。
 きょうも半年ぶりですねえという会話から始まって、なんと番組
の最初から最後まで出ずっぱり。図々しいゲストだ。
『さくま式人生ゲーム』や『桃太郎伝説』のことをたくさん聞かれ
たけど、やっぱり『さくま式人生ゲーム』というタイトル名は、大
爆笑であった。いかにも私が付けそうな題名だと必ず言われるのだ
が、タカラの高田さんが命名者である。
「ゲームのタイトルにゲームデザイナーの名前が入ったのは、史上
初ではないか?」と柏木さんに言われて初めて、事の重大さに気づ
いた。言われてみれば初めてだ。恥ずかしいやらうれしいやら。

 午後5時。番組録音終了。
 京阪電車淀屋橋駅から、特急で四条駅へ。
 午後6時すぎ。祇園の大好きなお店・久露葉亭(くろーばーてい)
へ行く。
 ところが、どうも店内が明るくて、様子が違う。
 とりあえず入ってみるが、名前が「クローバー亭」とカタカナに
なっただけなので、安心した…と思いきや、聞くと、前のお店とは
まったく関係ないというではないか。そんな〜。
 今さら店に入ってしまったので、帰るわけにもいかず、そのまま
食べる。けっこう美味しかったりするが、どうも前の久露葉亭が
、絶対お勧めのお店だっただけにショックが大きすぎる。

 食後、マンションに戻り、テレビを見る。
 巨人対広島戦。途中経過のベイスターズ対ヤクルト戦が知りたい
だけだったりする。
 おおっ! 勝った! 首位をがっちりだ。
 なんだか勝ちなれていないので、背中がもぞもぞする首位だ。



6月25日(木)

 本当はきょうは城崎(きのさき)あたりまで足を伸ばそうと思っ
ていたのだが、1日のんびりすることにした。
 京都で1日何もしないなんて、もったいないのだが、逆にものす
ごい贅沢のような気がする。

 こんな日は、京都までのんびりして見える。
 午前10時すぎ。中尾淳と錦小路市場の穴子の美味しいお店に行
くが、開店は午後11時30分ということで、断念。
 仕方なく高島屋デパートの地下へ。
 ここの「きょうの味どころ」は、京都の老舗中の老舗のお弁当を
お安いお値段で食べられてしまう、穴場中の穴場なのだ。
 しかも10数人分ぐらいで終了なので、並ばないといけない。
 萬亀楼(まんかめろう)、幾松(いくまつ)、わらびの里、菊乃
井と聞けば、夜のコース1万円5000円からの店ばかりだから、
早くから並ぶおばちゃんはすでにもういた。
 しかし開店は午前11時から。まだ40分ある。
 やめよう。こういう時は7Fの食堂街だ。ひょっとするとおもし
ろそうな店があるかもしれない。
 おっ! なんと! あの「吉兆」と並ぶ「たん熊」があるではな
いか! 昼から1万円は手強いぞ…と思ったら、1000円、20
00円のお弁当がちゃんとあった。
 まあいいや。とりあえず有名な「たん熊本家」に入った事実だけ
作ろう。嵯峨野弁当2500円は、かなり美味しい。そうめんなど
付いていて、目も涼しい。
 
 食後、昨日持ってきたMac2400の調子が悪いので、タニヤマ
無線の鈴木千華雄くんのところへ行くが、あいにくお休み。
 どうもきょうはタイミングが悪い。
 タニヤマ無線でCDプレイヤーを買う。
 サザンオールスターズの『海のYeah!』も買う。

 そしてきょうはマンションで漫画を読む。
 嫁から電話が入る。きょううちの嫁は、視力をよくする手術をし
たのだ。良好だかどうだかわからないが、終了したとのこと。
 私が京都に残っているのも、実はこの手術のせいだったりする。
 私が東京にいると、嫁の手助けがない私はまだ不自由なので、か
えっていると邪魔なのだ。というわけで私がいない時の手術となっ
たのだ。何とも情けない。
 夕方、京都の町を散歩。

 帰宅後、再び漫画を読む。小山ゆうサンの『あずみ』だ。
 残酷な内容なのはわかっていたので、今までまとめて読んだこと
がなかった。昔『がんばれ元気』の頃にお仕事させてもらったこと
がある。すごくやさしい方だったので、残酷すぎることはないと思
って読み始めた。
 けっこう惨い。でもストーリー展開はあいかわらずムチャクチャ
上手いなあ。上手すぎる。読んでいて辛い内容なんだけど先が知り
たくなる。

 ありゃ? きょうもベイスターズが勝った?
 7連勝だぞ〜。だんだん心配になってくる。
 でも首位は気分いいなあ。



6月26日(金)

 午前9時。イノダコーヒー本店で朝食。
 喫茶店におかれたスポーツ新聞を何紙も読む。どの新聞を読んで
も、ベイスターズが首位だ。うれしいね〜。『電波少年』のなすび
が白目をむいてよろこぶあの表情になってしまいそうだ。

 気分がいいので、中尾淳とゲームのアイデアを考える。と言って
も考えるのは私で、中尾淳はいつものようにモニターである。
 前から『怪物パラ☆ダイス』をベースにした新作は何度も企画し
ては消えていたのだが、ふと、きょうはひさびさに神のお告げを聞
いてしまった。
 冗談半分で『チョコバナナ』の漫画『虎十郎天下御免!』で作り
直したら、ぐんぐん新作に変化して行く。これはいい!
 とは言うものの、その場でいいアイデアだと思っても、大半のア
イデアは1ヶ月後に致命的な欠陥が見つかるか、情熱が失せてしま
っているかのどちらかである。
 ただ今回は、情熱の具合がほどよい。
 次から次へと、アイデアが出て、そのアイデアの欠陥がすぐ見つ
かるのだけど、その場で解決方法がすぐ見つかる。
 こういう時のアイデアは、実現することが多い。
 まあ、1ヶ月経ってみないとね。

 気がついたら、午前11時30分。コーヒーを飲み直したとはい
え、長居しすぎだ。帰りにコーヒー豆を買って、姉に宅急便する。
私の姉がここのコーヒーが好きなのだ。どうも姉弟というのは、あ
まり会っていなくても嗜好が似るから不思議だ。年齢も離れている
ので、ほとんど姉弟っぽくないはずなのになあ。

 いつものように錦市場でものぞくかと歩きはじめたのだが、どう
にも次から次へと『虎十郎天下御免!』のゲーム・アイデアが出て
仕方がない。かといって、また喫茶店に入るのはつらい。
 こういう時は、いちばんの会議室、電車だ。
 出町柳駅から、叡山電鉄で鞍馬駅まで行くことにした。
 
 午後12時20分。鞍馬行きの電車までまだ20分も間がある。
 八瀬遊園行きならすぐ出るというので、飛び乗る。本当に飛び乗
るといった感じで、退院後初めて、走る…まではいかないけど、駆
ける…も、まだ無理かな。少し小走りした。私にとっては大きな前
進だ。

 よーし、じっくりアイデアを練るぞと思ったら、なんと午後12
時40分。もう終点に到着してしまった。わずか15、6分の旅で
ある。こいつはまいった。せっかくだから、ケーブル駅を見て行こ
う。見に行くだけである。私は断じて、ケーブルカーとかロープウ
ェイは乗らない。
 どっちみちケーブルカーは点検中とかで運休中であった。
 しばらくあたりを歩くと、緑が深いきれいな景色の連続で気持ち
いい。川の流れもリズミカルで、川釣りの人たちが夜のテレビの5
分間番組の旅に出てくるみたいだ。
 若狭街道に出た。ならばバスがあるのではないか。バス停を見つ
ける。いちばん早いバスは、北大路のバスターミナルまで行くとい
う。これでいいや。こういう適当な旅が大好きだ。

 午後1時30分。北大路バスターミナル着。途中でバスのなかか
ら私が大好きな餃子のお店を見かける。
 北大路で気になるようなお店が見つからなかったので、バスで見
かけたお店へと歩く。近いと思ったが、けっこう遠かった。
 足の調子はいい。

 午後2時。餃子のお店「泉門天(せんもんてん)」に着く。
 ここの餃子は、病院でもらう紙の包装紙に入った粉薬のような形
をしていて、小さくて薄いので、すごく食べやすいので好きだ。い
つも行くお店はここではなく、祇園のほうだ。
 ここで餃子定食を食べる。あいかわらず美味しい。
 620円と値段も安いよ。
 バスに乗っていても、ご飯を食べていても、ゲームのアイデアが
出続ける。いい調子だ。この仕事をやっていていちばん楽しいのは
この瞬間のような気がする。ゲームが完成に近づくと、妥協、計算、
読みの連続となって、楽しいわけではないからね。
 いまはどこまでも夢のように楽しいゲームに夢想してかまわない
時期なのだ。

 食後、寺町のタニヤマ無線Cゾーンへ。おや? また鈴木千華雄
くんがいない。昨日に続いて確認するのが恥ずかしいので、そのま
ま帰る。一刻も早くアイデアをMacに入れてしまいたいからだ。
 夕方、2時間ぶっ通しでMac2400を叩き続ける。
 次から次へと問題点が噴出して来るのだが、いい調子でクリアし
て行く。いいぞ、いいぞ。
 のめり込みすぎるといけなので、中尾淳にちょっと前に発売され
たゲーム『MOON』をやらせる。ギャグ・センスはいいけど、何
をやっているのかよくわからないという。確かにわかりづらい。で
も雰囲気はいい。前に私はすぐ断念してしまったのだが、前よりも
進むことができたので、ゲームの雰囲気のよさがわかってきた。

 午後8時すぎ。前から一度行きたかった、京都の有名ラーメン店
「天天有(てんてんゆう)」に行く。
 うわさのチャーシューはそれほどでもなかったが、スープがちょ
っと甘めで好きな味だ。豚肉と鳥がらのミックスかな? 寒くなっ
たらもう一度来てみたい。健康な身体になってしまって、毎日の食
事時間が規則正しくなってしまった今、午後8時から開店のお店は
夜遅くになってしまって、なかなか行きづらい。

 新京極の喫茶店リプトンで、またアイデア出し。
 きょうはとうとう『虎十郎天下御免!』で1日が過ぎてしまった。
 こんなことはひさしぶりだ。これが持続するといいのだが。
 思うとおりに行かないのがゲーム。
 サッカー日本チームも思うとおりに行かないようだ。たった今
ジャマイカに1点取られた。みんな足が重そうに見える。疲れてそ
うだ。長旅だもんな。



6月27日(土)

 午前7時。昨日読みかけた『七夕の国』の続きを読む。『寄生獣』
のヒットで知られる岩明均さんの新作だ。
『寄生獣』よりベースがしっかりしたいい作品だ。訳知り顔の人たち
は『寄生獣』よりインパクトがないというのだろうが、これだけのシ
ナリオを書ける人は、評価されないといけないと思う。

 午前10時。中尾淳に『MOON』の続きをやらせる。進展しない。
楽しそうなのだから、前半でもっと楽しませてよ。もったいないゲー
ムだなあ。
 午前11時。夷川の末廣寿司で食事。テイクアウがほとんどで、テ
ーブル席は2つしかない。
 穴子寿司、あなきゅう巻き、いなり寿司の3品を頼む。いかにもお
ばあちゃんのお店といった味で美味しい。
 お昼12時。京都ホテルのラコントでお茶を飲む。

 午後1時30分すぎ。ひかりで東京へ。
 午後4時すぎ。東京駅大丸の地下で、お弁当を買う。なだ万のお弁
当は美味しいよ。
 午後5時。帰宅。
 嫁はまだ手術後の敏感な目の状態のようで、目をあまり開けていら
れないようだ。レーザーを目に直接当てて、視力を回復させるという
やつなのだが、非常に聞いていると怖くなる。私の場合はまあ、極端
な恐がりで、コンタクトレンズも嫌で、今もメガネなくらいだからな。
 嫁もおとなしく寝ていればいいのだが、なまじ目が見えるのに、本
が読めないのが相当辛いようだ。活字中毒者に、本厳禁はつらすぎる。

 さて、私は午後6時30分に早くも風呂に入る。
 きょうはベイスターズ対巨人の首位攻防戦があるからだ。
 正座して、テレビを観るのだ。
 おお! いきなり3対0。幸先いいぞ。
 その後、まったく点が入らないではないか。
 どんどんピンチの連続になって行くぞ!
 おいおい! 佐々木様は8回2死から登板? 酷使しすぎだよ〜。
 でもこんなピンチ、佐々木様じゃないと押さえられないからなあ。
 45歳の男が、ベッドに正座して、拝んでいる姿は滑稽を通り越して、
哀れである。しかもその男はまだ左手が不自由で、正しく拝めない。
 やった、よし! 2死! あとひとつだ!
 えっ? 放送終了?? また日本テレビ?
 日テレが巨人持ってるのに、延長戦がいちばん短いぞ!
 あ〜! パーフェクTVでやってるのかなあ。私の旅行中に、パーフ
ェクTVが入ったのだが、やり方もまだわからん!
 くっそー! ベイスターズ・ダイヤルでもまだ教えてくれない。
 やった! 日テレのナイターの次のドラマでテロップが流れた!
 3対2だ。うれしーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!


 というわけで、土曜日に帰って来たけど、日記の登場はたぶん遅れて
いると思う。インターネットにアップできるのは嫁だけだからね。まっ
たく私ひとりでは何の役にも立たない。ゲーム作れなかったらと思うと
恐ろしいね。桃太郎様々だ。

※なんとかUPはしましたが、誤字があっても許してね。さくま嫁



6月28日(日)

 朝早く起きたのだが、旅の疲れを取るために、また寝る。
 午前中、『チョコバナナ』16巻のページ数の調整をする。
 どうやってもページ数が増えてしまう。7月10日の締切りまで
に、目の覚めるような漫画作品が到着すると大変なことになってし
まう。大変なことになってほしいやら、ならないでほしいやらだ。

 午後1時。青山の虎屋に行く。和菓子で有名すぎるお店だが、実
はここのお赤飯が、分量もほどよく、味が上品で美味しいのだ。さ
すがに老舗なので、値段が1000円と高い。
 
 食後、青山通りを歩いて家まで帰る。けっこう疲れたが、リハビ
リしないとね。
 帰宅後、『チョコバナナ・パワーズ』の原稿書き。漫画の投稿作
品を添削する小冊子だ。まだまだ『チョコバナナ』の伝説作りは続
けて行くぞ。

 夜、京都で中尾淳といっしょだと、値段の高い物を食べられない
ので、禁断症状が出るのか、焼き肉の第一神宮へ行く。一応、少量
食べるように心がけたので、体重は増えずにすんだ。焼き肉は見事
なまでに体重増えまっせ。

 帰宅後はもちろんベイスターズ対巨人戦。
 勝ち慣れていないので、今の時期の首位は疲れる。
 いっそ10対0ぐらいで負けるか勝つかしてくれたほうが、佐々
木様を休ませることができていいのだが、きょうも接戦。身体によ
くない試合だ。途中5対2と逆転されたので、あきらめがついた。
 と思ったら、同点に追いつく!
 すごいや、ベイスターズ! 本当に強くなったものだ。
 しかしまたまたテレビ中継は終了。ストレスが溜まる。
 いったん風呂に入る。
 風呂から出たとたん、清原がさよならホームラン!
 う〜ん、やられたなあ。清原だからいいや。清原は西武時代から
好きだったから許す。
 勝ち慣れていないチームのファンは、8連勝は重すぎる。きょう
負けて肩が軽くなったような気がする。情けないなあ。




6月29日(月)

 午前中、ゲーム『虎十郎天下御免!』のアイデアをまとめる。
 まだこのゲームのことばかり考えているのだから、かなり本気な
のだろう。だいぶアイデアの出る量は減って来ているが。

 いいなあと思っていた、サッカーの中田英寿選手のホームページ
が終了してしまうという。みんなからのメールで読むに耐えられな
い内容が多すぎたのが原因だそうだ。もちろん心やさしい人もいた
ということなんだけど、わかるなあ。
 私も『チョコバナナ』の6巻の頃、本当に腹が立って、腹が立っ
て、仕方なかったもん。
 私が「努力すると絵が上手くなるよ」と書けば「努力しない人は、
絵を描いてはいけないんですか」というハガキが来る。
 漫画のコメントに対して、私のいうことは間違っている。その読
者の友達はみんな違う意見だという。確かに同人誌の世界ではそう
なのかもしれないけど、一応私はプロの業界の常識を伝えてるのに
間違っていると言われても困ってしまう。できれば同人誌にはびこ
っている間違った絵の描き方を是正したくて、『チョコバナナ』を
始めた部分は大きかったので、ショックだった。
 あげく、プロの世界ではこうだと書くと、私はプロになる気はな
いから関係ないと言われてしまう。
 悲しかったのは、弟子入りしたいという子から手紙が来て、「さ
くまサン、手塚治虫さんの『漫画の描き方』という本は漫画を描く
のにすごく役立つから、読んだ方がいいですよ」と書かれてあった。
 読んでなかったら『チョコバナナ』みたいな本、作らないよ。
 弟子入りを希望するくらいだから、私が漫画の描き方に関する本
を4〜5冊出していることくらい知っているかと思ったし、手塚治
虫さんの『漫画の描き方』を読んでないと思われたのは、さすがに
まいったなあ。  

 中田英寿くんのところより、『チョコバナナ』のほうがたくさん
いい人がいたんだろうなあ。だから私のほうはまだここまで続いて
来たけど、途中何度『チョコバナナ』をやめようと思ったかわから
ない。
 やめなかったのは、本当に頭が下がるような、的確な評価をして
くれる読者と、ノイローゼ寸前になりながら、必死に努力し続けた
投稿者がいたからだと思う。

 

 お昼。青山通りのおそば屋さん「高田屋」に初挑戦。
 鴨南そば。まあまあ。お昼とあって、サラリーマン風の人たちの
すごい行列。早めに入っておいてよかった。
 食後、青山墓地を散歩しながら、歩いて家まで帰る。
 歩きすぎて、へばる。

 午後2時。ハドソンの梶野くんが来て、『桃太郎電鉄Jr』の宣
伝についての打ち合わせ。
 桃太郎マークが入ったゲーム雑誌や、コロコロコミックをラーメ
ン屋さんに持っていくと、餃子が1皿100円で食べられるように
なるという企画がおもしろそう。京急のルトランカードと地下鉄の
Tカードになるというのもうれしい。やっぱり『電鉄』だから、オ
レンジカードになってほしい。しかも昨年のルトランカードはベイ
スターズだったんだぜい。もちろん買いに行った。今年は桃太郎な
んてうれしすぎるじゃないか。
 それと昨年の『桃太郎電鉄7』のゴールド・プライズ賞に輝いた
盾を持ってきてくれた。デカくて重い。
 
 夜、原宿の「全紅華(ぜんこうか)」に行く。
 けっこう最近できたばかりで、珍しい北京ダックの専門店。テレ
ビでもけっこう取り上げられていたので、マスコミ攻勢がおさまっ
た頃に行こうと思っていた。
 味のほうは、なるほど北京ダックは、たいしたもんだ。みそだれ
の味がいける。このみそだれでいろいろほかのものを食べてみたく
なるくらいだ。ただ北京ダック以外の味のほうがちょっと。私の趣
味とは合わなかった。こういう味が好きな人もいるのかもしれない。
私はあまり中華が好きな方ではないので、断定ができない。
 とにかく北京ダック好きの人は、一度は訪れないといけない場所
でしょうね。


 あっ、それからこの日記のカウンターってやつが、もうすぐ1万
5000になるけど、1万5000の次からは、2万、2万5000
と、5000ずつの単位にさせてください。
 おかげさまでアクセス数が多くて、旅行から帰ってくると、贈呈
本にサインして送るのが、けっこう大変なのです。
 その代わり旅のお土産をプレゼントしようかなとも思ってます。
年寄りだから、思ってるだけで忘れることが多いから、期待しない
でね。




6月30日(火)

 午前中、ゲーム『虎十郎天下御免!』の原稿書き。
 まだ続いている! これは相当入れ込んでるなあ。
 どこのメーカーから発売すると決めたわけでもないのに、これだ
けずっと原稿書きが続いているのは『桃太郎電鉄』の最初以来だ。
 そろそろ本当にゲーム化したくなってきた。

 お昼。東京駅八重洲口ブリジストン美術館隣の光澤堂眼鏡店へ行
く。すぎやまこういち先生に紹介してもらって、検眼する。
 何で眼鏡屋さんに行ったかというと、老眼用眼鏡をあつらえるの
だ。そんなに老眼はひどくないということで、遠近両用メガネにし
たのだが、老眼は老眼である。
 最近はこういった爺(じじい)になることには、大分慣れてきた。
 もう年寄りなんだからと自覚した上で、若いことをしてやろうと
思う。

 眼鏡店の近くの老舗Sでサンドイッチを食べるが、まずかった。
 八重洲ブックセンターに行く。
 ここは1万5000円以上本を買うと、郵送が無料になる。
 案の定2万5000円近く買って、めでたく無料である。
 で、たぶん夕方にも本屋さん行く予定だから、また本を買ってし
まうんだろうな。

 午後5時すぎ。新宿駅で新幹線のキップを買う。来週は福岡に行
くのだ。何だか1週間おきに旅行している。
 小田急の10Fだか12Fの本屋さんで買い物。
『虎十郎天下御免!』の資料によさそうな本を見つけた。

 午後6時。小田急14Fで、弟子の原口一也と食事。私に影響さ
れて、ホームページで日記を書いているので、ごちそうしていかに
も師匠は太っ腹で、面倒見がいいという役を演じて、日記に登場し
ようという魂胆。
 両方の日記を読むとおもしろいよ。
 不思議なもので、ひさしぶりなのだが、原口の日記をいつも読ん
でいるので、ひさしぶりの気がしない。話題も日記のあの箇所、こ
の箇所について話ができる。インターネット日記のいいところだ。
 それにしても31歳になった、原口一也が若者からオヤジ呼ばわ
りされているというのは、へ〜と思う。何しろ原口は、ジャンプ放
送局の投稿者だったわけだから、いつまでたっても若物のイメージ
がある。まあ、20歳から見れば、31歳はオヤジだわな。

 帰宅。すぐベイスターズ対広島戦をテレビ神奈川で見る。
 げっ。7対2で負けている。これは無理だ。
 と思っていると、反撃。今年のベイスターズはがんばるなー。
 これ以上は無理だと思うけど、がんばるベイスターズはかわいい。
よくここまで強いチームになったもんだ。
 と思ったら、広島江藤がホームラン!
 しかも3打席連続ホームラン!
 2ラン、満塁、2ラン!
 それじゃ、ひとりで8点じゃないの! そんな劇的なことをされ
ちゃたまんないよ〜! せっかく反撃したのに〜。
 9対6まで行ったのになあ。
 きょうは佐々木様をお休みさせる日と割り切ろう。シーズンはま
だ長い…お? おろ? ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれよ!
 佐伯が2打席連続ホームラン? 進藤がホームラン? ちょ、ちょ、
今シーズンまで本塁打ゼロの石井までホームラン? 
 13対9で、ぎゃ、逆転?????
 おおおおおおおおお〜い、、嫁!
 何だかわからないが、嫁を呼ぶ。
「た、た、た、大変だ!」
「何が、どうしたのよ」
「し、し、試合が、たたたたた大変なんだ、ああ、説明できない!
と、と、とにかく見てくれ!」
 アナウンサーまで興奮している。テレビ神奈川は完全にベイスタ
ーズ寄りでいいので、アナウンサーはとうとう「うわの空です」と
放送史上まれなことを叫んでしまっている。許すぞ〜! 文句が来
るかもしれんが、私だけは、おまえの味方だぞ〜。
 ああ、もうダメだ。ど〜していいかわからない!!
 1点取られた。12対10だ。
 ん? これじゃ9回表に佐々木様が登板してしまうぞ!
 ああ、出てきてしまった! ああ、少しは休ませてあげないと…
でも、うれしいや! ああ、何言ってんだかわかんねーやー、もう!
 えっ? あと2分ほどで放送を終了???
 テレビ神奈川が何をしている! 完全中継じゃないのか!
 そうだ、パーフェクTVだ!
 ええい、どこだ? チャンネルが多すぎてわからん!
 急げ! 佐々木様が投げ終わってしまう。いや、すぐ投げ終わっ
てしまうなら、勝利だ。ああ、また何言ってんだかわかんねー!
 そうだ、パーフェクTVといえば、土居ちゃんだ。
 土居ちゃんに電話しよー!

   「土居ちゃん、スカイ・パーフェクTV2というのは、どうやっ
   て見るんだ?」  
   「ああ、それね。僕のは旧式で、スカイ放送が入ってからだと、
   チューナー変えないと見れないから、わかんないなー!」
   「何だよー! テレビ王の土居ちゃん、テレビのことなら何でも
   知っていてくれよー!」

 ああ、もうダメだ。見ることができない。
 せめて結果だけでも。ベイスターズ・ダイヤルだ!
 ふひゅゅゅ〜。勝ったぁぁぁ〜。ああ〜よかったー。
 ああ、疲れた。
 それにしてもすごいぞ、ベイスターズ!
 これは絶対今シーズン、優勝だよ!
 優勝する時は、こういう劇的なことが起きるんだ。
 しかも日曜日、さよなら負けしたのに、この大逆転は奇跡を呼ぶ
ぞ〜。ああ、もうベイスターズのことを書くと、きょうは朝まで書
き続けそうだから、もうやめる!


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