10月2日(土)

 秋の交通安全週間のように、10月になれば、私にとって秋の取材月間だ。
 きょうから取材にでかける。
 例によって、私が取材にでかけるときは、日に焼けそうなくらい、いい天気だ。
 午前11時。東京駅へ。
 キップを買ったら、5〜6分で発車ではないか。
 あわただしくお弁当を買って、新幹線ホームへ向かう。
 コンコースで、新幹線開業40周年のイベントをやっていた。
 見て行きたかったなあ。

 午前11時3分。のぞみ217号に乗車。
 きょうのお弁当は「貝づくし」。
 新幹線品川駅でしか売っていなかった駅弁が、東京駅でも買えるようになった。 
品川駅開業当時は、私はわざわざ新幹線入場券を買ってでも食べたくらいなので、お
勧め。値段も安い。

 嫁は「21世紀出陣弁当」。  新しいお弁当が発売されていないと、この「21世紀出陣弁当」を買うところを見 ると、東京駅構内ではこれがイチ押しなのだろう。  中央口の脇に、全国のお弁当が売られている場所がある。  コーエーの岸本好弘さんはここを利用しているようだ。  きょうは、時間がなくて覗けなかった。  車中、『桃鉄研究所』のコメント書き。  いよいよ、清書に入る。  一度書いた原稿は必ず見直して、手を入れる。  新しい発見が見つかることが多いからだ。  まだまだ清書にも時間がかかるくらい掲載したメールの数が多い。  しかもまだ集計もしないといけない。  ぐへっ。静岡を過ぎたあたりから、雨がぽつぽつ降ってきた。  どんどん空は黒くなってきた。  やばい! ひさびさに、雨の取材になりそうだ。  昨年も雨の取材は1日しかなかった。  午後12時43分。名古屋駅で下車。  コインロッカーに荷物を預けようとしたら、北口のコインロッカーはぜんぶ、使用 中。  中央口にもあるの表示だけど、北口みたいに辺ぴなところで、満杯なんだから、中 央口では、もっと無理だろう。  一応、行ってみる。  ひょっとしたら駅の地下駐車場のように、行けども行けどもコインロッカーが続く ような場所かもしれない。  たしかに、まるで地下駐車場に向かうみたいに、地下道を通って行く。  おいおい、階段まであるじゃないか。  コインロッカーは、荷物が重くてしんどいから、利用するんだから、距離も短くて、 階段がないところにしてよー!  やっと、たどりついた。  うへ〜! ぐぬぬぬぬぬっ。  狭い! こんだけ歩いて、この狭さは何っ!  当然、コインロッカーは、みんな埋まっている。  あれ? 向こうに明かりが見える。  なんと! コインロッカーの奥に、手荷物預かり所があった。  50年前は、汽車の運転士の仕事をしていたような、おじちゃんたちが、昔ながら の手荷物預かり所を担当していた。

「はい、この札に住所と名前を書いてくださいね!」 「えっ? それは面倒だなあ…」 「めんどくさくて、すまんね〜。たまに紙を忘れる人、おるでねー!」  なんとも、のどかだ。  午後1時。東海道本線急行大垣行きに乗車。  名古屋と岐阜が近いことを知らない人も多いとおもう。  だいたい20分ほどで、岐阜駅だ。  私と嫁は、大垣まで行く。  午後1時30分。大垣駅で下車。  はっはっは! またしても、大垣駅に着いたら、雨があがってしまったよ。  私が取材モードに入ったせいかねえ。  でも、さすがに曇り空。  大垣には何度も来ている。  松尾芭蕉の『奥の細道』の最終ゴールだし、水まんじゅう、巻き柿がおいしい。 『桃太郎電鉄』シリーズで、巻き柿屋の臨時収入が多いので、認識している人も多い だろう。  駅員さんに樽見(たるみ)鉄道への乗り方を聞く。 「6番の自動券売機で、キップ買って、6番線だね!」  え〜と。自動券売機、自動券売機…。  あれ? 6番は「準備中」の表示。  嫁が、駅員さんに「準備中」なのを伝えに行く。 「あら、ほんと〜!」  駅を降りる度に、時計の針が遅くなっていくようだ。  6番線、6番線…。 「樽見鉄道は、この先50メートルです」の表示。

 でも、行き止まりじゃない?  うわっ。まだ先があった。  乗り換えキップを売っている小屋の古いこと、古いこと。  このまま明治村に陳列できそうだ。  なかで、キップを売っているおじいちゃんは、国宝級。

 ホームで、1両の電車が待っている。  緑色の顔に、赤と青の目鼻がついたようなかわいい電車で、正面から見るかぎり は、機関車トーマスっぽい。  横は、打って変わって、白いボディ。  ちょっと統一感無し。

 午後2時8分。大垣駅を出発。  樽見(たるみ)鉄道は、第3セクターだ。  ここにはレールバスというおもしろい電車が走っている。  レールバスというのは、鉄道車両の台にバスのボディをベースにした車体を載せ、 エンジンもバス用のディーゼルを使用しているような電車のことをいう。  バスがタイヤのまま、レールの上を走るわけではない。  運転席がハンドルになっているわけでもないので、見た目もあまり変わらないが、 ボディだけやっぱりバスっぽい。

 最近は、「閑散路線」用に向いているというので、三木鉄道、近江鉄道、明知鉄道 などで実用化されているようだ。  十九条(じゅうくじょう)駅を過ぎたあたりから、土手に、彼岸花が咲き、柿の木 が増えて行く。  富有柿だ。  このあたりは、富有柿の名産地。

 私の大好きな柿でいっぱい…といいたいところだが、まだ柿は青い。  あとで地元の人に聞いたんだけど、富有柿の旬は、10月の末なんだって。  無人駅が続く…。  樽見鉄道のレールは、どこまでも真っ直ぐだ。  ひたすら山に向かって、進んで行く。

 午後2時35分。本巣(もとす)駅で下車。  これはまた風情たっぷりな駅舎だなあ。  典型的なモルタル造りの建築で、大きなへちまがぶら下がっている。

 駅を出ると、目の前はいきなり住宅地。  商店などはない。  それでも、「本巣機関区」の看板があって、ここには樽見鉄道の本社がある。  修理中の電車なども見える。

 駅の公衆電話に書いてあった電話番号で、タクシーを呼ぶ。  よかった。本当は本巣の前の「糸貫(いとぬき)」という駅で降りるつもりだった んだけど、降りても、本巣からタクシーを呼ぶことになるといわれたので、本巣まで 来てしまおうという判断は正しかった。  さっき見た糸貫駅は、無人駅で、どう見てもタクシーの電話番号など書いていなか った。危うく畑のなかで遭難するところであった。  ちなみに、電車は1時間に1本程度しか走っていない。  午後3時。道の駅「織部の里もとす」へ。  かなり規模の大きな道の駅だ。  城壁風のモニュメントまである。

 道の駅「織部の里もとす」は、安土桃山時代に武士・茶人・陶人として、当時の3 英傑、信長・秀吉・家康につかえて活躍した古田織部(ふるたおりべ)生誕の地だ。  千利休の弟子として、有名な人として記憶している人も多いだろう。  いまでも、陶器の本を読めば、何度でも「織部」という文字に出くわす。 「織部展示館」では、古田織部の生涯を知ることができる。  いきなり、古田織部の像が大きくて、驚かされる。  ほかにも年代別の古田織部の像が並んでいて、像の出来が非常にいい。  信長・秀吉・家康につかえて、千利休の一番弟子という華やかな人生を歩んだわり に、最後は家康から切腹を命じられた上、子孫まで全員切腹というのは、無情を感じ る。  千利休といい、茶人の晩年は、あまり幸福ではない。

 この「織部展示館」の入場料は、300円なんだけど、展示館を出るときに、5つ ぐらいある器のうち、ひとつ好きなものを選んだら、それがもらえてしまう。 さす がに、私たちは荷物が増えても困るので、もらって来なかったけど、思えばすごい大 サービスだ。300円で、茶器がついてくる。  まあ、そんなことより、大好きな柿の里だ。  柿ゼリー、柿ようかんなどを買いまくる。  でも、柿って、柿で作ったものよりも、柿そのもののほうがおいしい。  巻き柿もおいしいけど、どうも柿の名産物って、甘すぎる。

 嫁が、柿を買って、さっそく齧る。 「うううう!」 「し、しぶい!」  甘さが全然ないそうだ。  道の駅で、売っていた柿なのになあ…。  午後3時30分。駅の道「富有柿の里いとぬき」へ。  こっちの道の駅は、やけに小さい。  嫁がお店の人に、さっきの渋い柿を見せる。 「ああ、これは、ヘタがついとるで、干し柿用ね!」  そうか! 干し柿用だったのか。  ヘタといっても、「T」の字のヘタがついていたら、干し柿用なんだって。  道の駅「織部の里もとす」あたりで、柿を買う人は、この印を知っていて買うんだ ろうなあ。  タクシーの運転手さんに「家に持って帰って、干し柿を作ればええで!」といわれ るが、ちょっとねー。  駅の道「富有柿の里いとぬき」に隣接するかのように、富有柿センターがあったの で、見て行く。  入場料無料の柿についての資料などを集めているような公共施設だ。  でも、公共施設特有の出迎えを受けた。  照明は、3分の1以下。暗い。  省エネなのかもしれないが、薄暗いのは、気持ち悪いよ。

「ボタンを押せば、映像が流れます」のボタンを押しても、どれも映像は流れない。 おもしろかったのは、「桃栗3年、柿8年」というけど、いまやバイオテクノロジー のせいで、「桃栗3年、柿も3年」になっているんだって。  ほかにも、柿の調理法として、柿の白和えなど展示しているものの、薄暗い明かり の下では、おいしそうに見えるわけでなし。  入場料無料なだけに、何もしませんよ…どころではなく、とうとう最後まで、富有 柿センターの人は出てこなかった。

富有柿アイスのケースにも鍵がかかっている

 残念ながら、ひさびさに『桃太郎電鉄』の『地方編』では、赤マス地帯だな。  駅の道「富有柿の里いとぬき」に戻って、西村早生(にしむらわせ)という品種の 柿を買う。  ここの売り場のおばちゃんたちは、にこやかで、愛想もいい。  午後4時。岐阜駅へ。

 岐阜といえば、路面電車が走っている街だけど、とうとう来年3月に全廃になって しまうそうだ。  ほかの町では、スローライフの象徴として、新たに建設の話も持ち上がっているこ とも多いだけに、もうちょっと持ちこたえていたら、観光の目玉になるとおもったん だけどなあ…。  物事は、中途半端に新しくても、中途半端に古くてもいけないということだ。  岐阜駅は、駅前をなにやら、整備していて、朽ち果てそうな古い建物の脇で、新し いビルが建っている。  今後、どうするのだろうか?  昔は、織物の町として栄えた岐阜だが、いまやその面影すらない。  午後4時22分。岐阜駅から、東海道本線新快速豊橋行きに乗車。

 午後4時43分。名古屋駅で下車。  名古屋駅のすぐ近くまで、畑、水田と、住宅地が半々だったのに、名古屋に入った とたん、ビル街になる。  名古屋だけが、大都会だ。  午後5時。名古屋駅エスカ地下街の「山本屋本店」へ。

 おなじみ、味噌煮込みうどんのお店だが、嫁がずいぶん久しぶりな気がするという。 そういえば、最近名古屋では、矢場(やば)とん、蓬莱のひつまぶし、またはみそか つの駅弁などを食べて、味噌煮込みうどんを食べに来る機会が減っていたかも。  私は、名古屋コーチン入り味噌煮込みうどん、2315円。  嫁は、きのこと地鶏の味噌煮込みうどん、2415円。

 このお店の味噌煮込みうどんの値段が高いというメールが届いたけど、たしかに若 者には、2000円を越えるうどんというのは、高いよね。  でも、私がフリーライターの駆け出し時代には、すでにこの「山本屋」の味噌煮込 みうどんを食べていた。  あの頃、値段が高いと感じなかったけどなあ…。  いつものように、じゅうじゅう音がする味噌煮込みうどんのフタを取って、固茹で のうどんをフタの裏に乗せる。  こうすると、うどんの麺が覚めやすいが、途中でいい頃合いになる。  この固い麺を、「ちゃんと煮えていないぞ!」と怒る人がいるらしい。  讃岐うどんも、いまはブームになったから、腰の強いうどんの認知度は高くなった けど、「うどんは、やわらかいから食べる」という人たちの希望で、やわらかい讃岐 うどんを出すお店も生まれてしまうこともある。  味噌煮込みうどんの麺がやわらなくなったら、まず食べに来なくなってしまうだろ うなあ…。  味噌煮込みうどんに乗っている生卵は、そのまま味噌スープのなかに沈めておいて、 半熟になるのを待って、ちゅるちゅると飲み込むように食べる。  白いご飯は、レンゲの上に乗せて、煮えたぎる味噌スープのなかをくぐらせて食べ る。  これが、オレ流の味噌煮込みうどんの食べ方。  そういえばさすがに、きょうは名古屋、大垣、岐阜でも「中日優勝おめでとう!」 の垂れ幕が下がっていた。  きょうは、名古屋コーチンのねぎまも食べたけど、これもけっこういいね。

 午後5時45分。のぞみ129号新幹線大阪行きに乗車。  新幹線のなかの電光ニュースで、イチロー選手の連続安打大リーグ記録の達成を知 る。3安打して、タイ記録から、新記録、さらに記録更新と、思いつくかぎりの夢を 実現させてしまうパワーには、ただただ脱帽だ。  午後6時23分。京都駅で下車。  午後7時。京都の家に到着。 『桃太郎電鉄』のアイデア台帳に、きょうの本巣を書き入れたり、『地方編』のマッ プに樽見鉄道を書き加えたりする。  午後9時。アド街ック天国の特集が「湯河原」なので見る。  駅の道「富有柿の里いとぬき」で買った柿を食べながら。

 ちょっとまだ固い。  柿だから、許す。  湯河原は、温泉でいうと、熱海よりも泉質がいいことで名高い。  うちが狙っていた温泉付きの家は、実は湯河原だったのだ。  西村京太郎さんが住んでいるので、あやかりたかったしね。  そういえば、熱海の家の温泉工事は、どうやら長引いているようだ。  いまの時期は、取材に時間を取りたいから、いいけど、取材に疲れたら、温泉が恋 しくなってくるだろうなあ…。  さて、明日はどこに行こう。  いま候補は、2つ、3つある。

 
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