6月8日(火)

 嬉野(うれしの)温泉は、雨。
 私の神通力も、さすがに梅雨には勝てないよ。
 でもホテルの窓から見える景色は、山から水蒸気が立ち上って、水墨画の世界を見
るように美しい。

 午前9時。ハミルトン宇礼志野にて、朝食。  私と、嫁は、和食。  柴尾英令くんは、夕食。 「ふたりとも、和食なんですか?」 「へっへっへ、柴尾英令くん。嬉野(うれしの)温泉の名物は、温泉豆腐だから、和 食にしたら、朝食に出てくるかとおもったんだ!」  「ちくちょー!」  おいしいんだよ、嬉野の温泉豆腐って。  その名の通り、嬉野の温泉水で、豆腐を煮るのだ。  すると、豆腐がとろ〜りとなって、おいしいんだなあ。  こういう風にとろりとなるのは、嬉野温泉のお湯だけらしい。

 午前10時。ホテルをチェックアウト。  ホテルの人に、車で嬉野町の町中まで送ってもらう。  嬉野町を歩く。  やっぱり、嬉野茶のお店が多い。  もちろん、温泉旅館も多い。  旅館は50軒以上あるそうだ。

 あちこちに、「美人の湯」、「日本三大美人の湯」の看板が目立つ。  目抜き通りも、素肌美人通りと名づけられている。  残るふたつの美人の湯は、どこかと思って調べてみた。  すると「日本三大美人の湯」は、群馬県の川中温泉、和歌山県の龍神温泉、島根県 の湯ノ川温泉となっていて、嬉野温泉が入っていない。  先日寄った新潟県の月岡温泉も「美人の湯」をPRしていた。  どうもこの手の「三大」ものは怪しい。  江戸時代に、「日本三大美人の湯」を決めることができるほど、日本じゅうを旅し た人なんているわけがない。  いたとしても、江戸時代の人から見た「美人」だ。  ちなみに、美人の湯は、肌が白くなる成分が入っているお湯のことのようだ。

  地名に、温泉一区、温泉二区、温泉三区といった名前があるのが、いかにも温泉 地な風情でいい。おもしろいのは、お店の看板が、妙に道の中央に向かって飛び出し ていることだ。大きな台風が来たら吹っ飛びそうなくらいお店から垂直に出ている。  東京なら即、撤去だろうなあ。

 雨が激しくなってきた。 「さくまサン、仕事のことを考えないと!」 「はっはっは! そんな朝っぱらから無理だよ!」 「きょうはハウステンボスで仕事なんですから、晴れるんじゃないんですか?」 「ハウステンボスに着く頃、晴れるんじゃない?」  ついに柴尾英令くんにキャリーバッグを持ってもらって、傘を差す。  私の場合、右手しかつかえないので、右手にキャリーバッグを持つと、傘が差せな い。  嬉野バスセンターへ。  昨日乗った路線バスが風情があってよかったので、バスでハウステンボスに行こう としたら、午後1時過ぎまでないそうだ。やられた!  タクシーで、ハウステンボスに向かう。  タンシーの運転手さんが、坂本竜馬も通った旧・長崎街道を通ってくれる。  茶畑の間を通る細い道だ。

 昔の人は歩いて長崎まで行って、手に入りづらい外国の本を持っている人の家に泊 り込んで本を写させてもらいに行っていた。 「試験範囲をちょっと写させて!」のレベルではないのだ。  人生を賭けて、本を写しに来るのだ。  明治維新の人たちの志の高さは半端じゃない。  坂本竜馬たちが現代のコピー機や携帯電話を見たら、愕然とするだろうね。  彼らの2〜3ヶ月が、10分ほどですむ。

 次第に、大村湾が見えてきた。  海が見えると、うれしくなってくる。

 午前11時30分。ハウステンボスに到着。

 今回の旅行でいちばん重要な仕事は、7月17日〜11月17日まで、なんと3ヶ 月間に渡って開催される「桃太郎電鉄モバイルラリー」の打ち合わせだ。  テレビCMで「ハウステンボス、ただいま変身中」がたくさん流れているけど、あ のリニューアルが完了する夏休みのイベントとして、『桃太郎電鉄』が選ばれてし まったのだよ。  えらいことになったもんだ。

 東京から、土居ちゃん(土居孝幸)たちが来るまで時間があるので、私と嫁と柴尾 英令くんは、しばらくハウステンボスを楽しむことに。  紫陽花がきれいだ。  青も紫もどの色も濃い紫陽花だ。  霧雨によく似合う。

 ハウステンボスは、3年ぶりだ。  2001年6月に来ている。  もう一度来たいとおもっていたけど、こんなに早く来れるとは思わなかった。  私はもともとレンガ造りの町並みが大好きなのだ。  私は、ハウステンボスの前身である「オランダ村」にも来ている。  鎌倉の家をここにあるような建物に改築したかったんだけど、工費が高いので、断 念した。その非日常性をここでは楽しむべきなんだろう。

 3年前は、ここで台風のような大雨に降られてホテルに閉じ込められ大変だったけ ど、帰る時間が近づく頃に晴れて、遊覧船でケーキとコーヒーを食べながら、ハウス テンボス内を一周したのが楽しかった。  それと、私がここ数年いちばん着ている洋服のブランド、ベイウォッチャーとの出 会いはあのとき、ハウステンボスで買ったのがきっかけだ。  残念ながら、2年前にベイウォッチャーはこっこから撤退してしまったようだけど、 ここに来なければ、ベイウォッチャーに出会うこともなかった。  午後12時30分。土居ちゃんたちが到着するまでに1時間あるので、レストラン 街で、ソーセージなどをつまんで待つことにした。

 ソーセージをつまむはずが、柴尾英令くんは、豪快にステーキをたいらげてますぜ、 みなさん。午前9時に朝食を食べたばかりだというのに。 「ボクを、誰だと思ってるんですか!」 「デブ!」

 雨があがった。  食後、ハウステンボスのいちばん奥の船着場に向かう。  土居ちゃんたちは、長崎空港から、船でハウステンボス内に入船してくるのだ。  私は飛行機がダメなので、こういう入国の仕方ができないけど、空港から船で入って くる仕掛けはいいなあ。

 午後1地20分。土居ちゃん(土居孝幸)、読売広告の岩崎誠、ハドソンの藤原伸 介くんが到着。  岩崎誠が笑っている。 「あっはっはー! さっきまで雨が降ってたのに、さくまサンいるから、晴れちゃう もんなー!」 「また私のせいかよ!」  あいかわらず、私が仕事モードに入ると晴れる法則は、気持ち悪いほどリンクして いる。

 午後2時。ハウステンボスの入り口まで戻って、事務所で打ち合わせ。  大日本印刷九州事業部所長の小林健一さん、吉田優さん、佐藤朋之さん。  ハウステンボスの大谷真一さん、福泉博視さん、吉川勝洋さん。  ムーンクリエイティブの武井智さん、高瀬善章さん。  今回の「桃太郎電鉄モバイルラリー」の解説を聞く。  おもしろいよー!  予め、携帯電話のメールアドレスを登録しておいて、携帯ストラップのようなIC チップを持って、ハウステンボス内を歩いて、14ヶ所の電子ポスターに、このIC チップを近づけると、ピコーン!と音が鳴る。  しばらくすると、携帯電話に指示が来たり、ヒントがもらえたり、ハウステンボス 内の物件を手に入れることができる。  この物件からは、収益も出るらしい。  お金がもらえるわけじゃなくて、ポイントがもらえる。  ゲームだからね。  途中で、福の神が現れて、収益率をUPしてくれたり、貧乏神も登場するそうだ。 『桃太郎電鉄』と「スタンプラリー」を合わせたようなおもしろい企画だ。

 この「桃太郎電鉄モバイルラリー」に参加すると、オリジナル桃太郎電鉄携帯スト ラップがもらえたり、ポイントによって、抽選で「貧乏神が去る像」がもらえたり、 特別なものがもらえる企画をしているようだ。  正直言って、ここまで大規模な企画になるとおもわなかった。  さらに「アニメーションワールド」というスタート地点では、史上初土居ちゃんの 原画展を開催する。  土居ちゃんが描いたカレンダー画面を展示したり、ブラックボンビーとか、ハリケ ーンボンビーがいまの形になるまで何度も描き直した下書きとかも展示する予定。  もちろん、7月17日は、『桃太郎電鉄U(仮)』の情報は、解禁後だから、12 月まで見ることができない『桃太郎電鉄U(仮)』初登場のキャラの原画もゲーム発 売に先駆けて展示することができる。  これは、うれしいでしょ?

 会期中は、おなじみ! 2mのキングボンビーの着ぐるみもハウステンボス内を闊 歩する。 「藤原伸介くん、3ヶ月間ハウステンボスで、キングボンビーの着ぐるみですごすっ ていうのはどうだ?」 「いやいや…!」 「さくまサン! その冗談、ハドソンの大里専務にいわないほうがいいですよ!大里 さん、そういうネタ大好きだから、藤原伸介くんは本当にここに3ヶ月間住むことに なってしまうかもしれないですよ!」 「うん。それはやばいかも!」 「…って、でもこの話題、日記に書いちゃうんでしょ?」 「うん。おもしろいからね。はっはっは!」  モバイルラリーで、ICチップに反応する電子ポスターを貼る場所を視察を兼ね て、ハウステンボス内を案内してもらう。  ここで、ハプニングが起きる。  なんと! 挨拶に来ただけの恰幅のいい大日本印刷九州事業部所長の小林健一さん が、首をかしげながら柴尾英令くんに対して、「東筑高校の柴尾くんじゃないかとお もうんだけど…」と言い出したのだ。  聞いて、びっくり!  小林健一さんと柴尾英令くんは、同級生だったのだ!

 思わず、ふたり並んだところを写真に収める。  おない年とはおもえなーい!  ふ〜む。真面目に人生を歩むと、小林健一さんのように「所長」に出世して、不真 面目に人生を歩むと「所長」ではなく「焼酎」ばかり飲む男になってしまうのかと、 いたく感動。  しかもいいかげんなのは、柴尾英令くんは小林健一さんのことをどうやら、おぼろ 気にしか覚えていなようなのだ。 「女の子の顔と名前ならほとんど覚えているんだけどなあ!」 「柴尾英令さんの高校時代ってどんな生活してたんですか?」 「部活(文芸部)ばっかやってて、酒飲んでたよ!」 「おいおい、高校の頃からかい!」  要するに、高校生の頃から、この調子だったわけだ。  三つ子の魂、百までだ。  いまハウステンボスでは、『名探偵コナン』のスタンプラリーをやっている。  6月30日までやっていて、7月17日からうちのモバイルラリーになるわけだ。 ちょっと責任重大だなあ。 『コナン』はテレビアニメやってるからなあ。『コナン』並みの集客をあげるのは ちょっと難しいぞ。  おっとっと! ナッツアイスバーをという文字が私を「おいで! おいで!」と呼 んでいる。  ハウステンボスには、甘いものの誘惑が多くて、困っちゃうよ。にやにや。  もちろん、ナッツアイスバーを食べる。  仕事ですから!  仕事ですから!  仕事ですから!

 オランダ風の衣装のお姉さんが、ミルクアイスに出来立ての熱いチョコレートを コーティングしてくれて、ナッツをまぶしてくれるのだ。  これは、おいしいよー! 「ハウステンボスに来たら絶対食べるべし!」と、太鼓判、どん!

 土居ちゃんの原画展を開くアニメーションワールド館を見る。  A3サイズのパネルが50枚貼ることができるらしい。  このスペースをどうつかうかだ。

 ホテルアムステルダムの中庭で、コーヒーブレイク。  土居ちゃんの「桃太郎電鉄原画展」について真剣に討議する。  例によって、柴尾英令くんが手間のかかるアイデアを出す。 「そんな面倒なこと、誰がやるんだ、柴尾英令くん?」 「やっぱり、オレかあ! 自分でアイデア出しておきながら、自分がやるはめになる だろうと思ってたよ!」 「はい! じゃあ、柴尾英令くんがやることに決定!」 「あっはっは!」 「ちくちょー!」

 おっとっと。長崎の「松翁軒(しょうおうけん)」のチョコラーテを売っているぞ!  夜食代わりに買う。  えっ? バウムクーヘン専門店があるって?  土居ちゃん、バウムクーヘン専門店だってさ! 「バウムクーヘン専門店? 何それ?」と言いながら、土居ちゃん、うれしそう。  デブは絶対、バウムクーヘンが好き!  バウムクーヘン専門店で、アイスバウムを食べる。  外側は、しっとりしたバウムクーヘン。なかにアイスクリーム。  アイスクリームハンバーガーのようなものだ。  バンズが、バウムクーヘンで、パテが、アイスクリーム。  まさに理想的な食べ物だ。  仕事ですから!  仕事ですから!  仕事ですから!

 うーん。バウムクーヘン専門店には、試食もあって、いたれりつくせりだぞ! 食 事の時間が近いから、お腹が減ってきている。  甘いものの誘惑に対する抵抗力がまったく失せている。 「ダメだ。たぺえっぱなふだよ!」 「さくまサン! 食べながら、食べっぱなしだ!と言わないでくださいよ!」  歩いた、歩いた。  私がこれだけの距離を歩けたのが不思議なくらい歩いた。  土居ちゃんたちを迎えに行って、一周。  モバイルラリーの視察で、一周。  この広いハウステンボスを2周すると、さすがにしんどいよ。  それでも全部を見切れたわけじゃないしね。  やっぱりハウステンボスに2泊して、ゆっくり見るべきだった。  1日じゃ足りない。

 午後5時30分。ホテルヨーロッパにチェックイン。  あいかわらず豪華だなあ。  通路だけで、一部屋作れるくらい広い。  部屋に入ると「ウエルカム・フルーツ」に、バナナとアメリカン・チェリーが置か れてあった。  部屋は全室ツイン。  広いよー!  いまでも、私がいままで宿泊したどの部屋よりも広い。  バスタブも、いままで見た日本のホテルではいちばん広い。  冷蔵庫のミネラルウォーターは飲み放題。  窓からの景色は、ハウステンボスなんだから、気持ちいいに決まっている。  ホテルヨーロッパは一生に一度は泊まってみる価値があるとおもう。

 午後6時。ハウステンボスの「河童」で、卓袱(しっぽく)料理を食べる。  メンバーは、私、嫁、土居ちゃん、柴尾英令くん、岩崎誠、藤原伸介くん、ムーン クリエイティブの武井智さん、高瀬善章くん。    最後に出た枇杷(びわ)の入った牛乳プリンのようなものが、おいしかった。

 そういえば、ハウステンボスは、もっとフルーツが食べられる場所が多くてもいい なとおもった。  路面電車があってもいい。  これだけの広さを一周できるだけで、来る価値が生まれるとおもう。  路面電車は、のんびりの象徴みたいな乗り物だからね。  オランダに実際走っている古い車両なんかを持ってきたら、おもしろい。  馬車鉄道でもいい。  10人くらい乗れる馬車はレールの上を走るんだけど、動力は馬。  まさに、一馬力だ。  路面電車なんかあったら、私は一日じゅう乗っているだろうなあ。

 西村京太郎さん、内田康夫さんといった人たちに、ハウステンボスを舞台に、推理 小説を書いてもらって、テレビドラマにするのもいいとおもう。  ロケをしている段階から、お客さんにとっては、サプライズになるし、テレビ放映 後は、ロケ地の名所めぐりとしてつかえる。  あと、間違いなく、成長し続ける中国のお金持ちさんたちが憧れの場所にするのが いちばん手っ取り早く集客力を上げる方法だとおもう。  まだまだ中国の物価は日本に比べて安いから、中国のお金持ちが来るには値段の高 い場所だろうけど、3年以内にあっという間に中国の物価は急騰するだろうから、中 国の庶民でもハウステンボスに来ることができる。  それこそ長崎空港から、船で直接ハウステンボスに来れるアクセス方法が力を発揮 する。  午後9時。ホテルの部屋で、マッサージを受ける。  ひ〜〜〜! 足が痛〜〜〜い!  ビンテージカーの話題が好きなマッサージ師さんと、トヨタ2000GTの話で盛 り上がったり、ニッサン・シルビアの自慢話をする。 「ブルーバードで、いちばんいいデザインは、やっぱり510ですね」  510型という言い方が出来る人は少ない。  鉄道マニアでいうと、モハとかキハとか車両の略称で会話するレベルだ。  もちろん、隠れ自動車マニアである私は「510なら、私は乗っていましたよ!」 と返答する。 「スカイラインは、ケンとメリー!」 「それも私は乗ってましたよ!」  この人、私が所有していた車の名前をどこかで調べてきたのかとおもえるほど、私 が乗りこなしてきた車の名前を言ってくれるので、身体もほぐれた上に、いい気分。  さすがに、リゾートホテルなので、LANケーブルがないので、さっさと寝る。  ハウステンボスに来てまで、仕事をするべきではないよね。

 
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