5月12日(水)

 午前4時。へ〜クション!
 寒くて、目が覚めた。
 エアコン切って寝たのになあ…。
 う〜、さぶ。

 やっぱり九州でも、まだ朝晩は寒いんだね。
 このあと、本を読みふけってしまい、朝までずっと二度寝ができず。
 ど〜も、この旅館と相性が悪いようだ。
 あとでわかったんだけど、玉名温泉って、旅館が5軒しかないみたいだね。
 だったら、競争心、向上心などあるわけないね。

 午前8時。嫁と食堂へ。
 朝食は、おいしい。

 料理はいいんだよ、この旅館。  固形燃料で、味噌汁を温める趣向がいい。  どうしても固形燃料で温めるというと、干物や、鍋が多いけど、いちばん温かくあ ってほしいのは、味噌汁だもんね。  ここの料理長には、人間らしさを感じるなあ。  午前9時。チェックアウト。  フロント係のアルバイト学生のような女の子が、いきなり「延長コードは?」とい う。  確かに昨日、VAIOのコードが短いので、延長コードを借りた。 「えっ? 持ってこないといけなかったですか?」 「いえ!」  だったら、何で聞くんだ?  私たちが食事中、旅館の人はふとんを上げて、冷蔵庫の飲み物もチェックして行っ たぞ。そのときに回収しないか?  どうもこの旅館のルールがわからない。  けっきょく、昨日食事してから2時間以上料理を片付けなかった不手際に対しても、 いっさい謝罪なし。  二度と来ることはないな、この旅館。  午前9時5分。JR玉名駅へ。

 リレーつばめ号のキップを買おうとしたら、売り切れといわれる。  グリーン車も満席?  ひえ〜〜〜っ!  どうしよう。次の列車は1時間後だ。  仕方なく、自由席のキップを買う。  今朝の『めざましテレビ』の星占いで、獅子座は最下位だったからなあ。  発車まで、駅の売店で、お土産品チェック。 「植木のすいかカステラ」というのを見つける。

 すいかカステラだよ、スイカ!  植木というところは、熊本の手前のスイカの名産地だ。  こういう変なものは、買わねば。  午前9時38分。新八代(しんやつしろ)行きリレーつばめ37号に乗車。

 やっぱり、自由席に空席は見当たらず。  ひ〜〜〜、旅行用キャリーバッグ持ったまま、デッキで立ち続ける。  最近私は、自分がまだ身体が不自由なことをよく忘れてしまうのだが、さすがに電 車の車両と車両の間で、立っているのは、バランスも取れず、つらい。  おまけに、なぜか人がよく通るので、その度に、旅行用キャリーバッグをどかせて、 通路を空けないといけない。  そんなにトイレに行く人って多いの?  …と思ったら、このリレー号には、喫煙車が、いちばん端の6号車にしかないから、 わざわざ6号車まで、タバコを吸いに行く人たちだったのだ。  人が頻繁に往来するわけだった。  お年寄りが多いから、私とおなじ頻尿の志士のみなさんだとおもった。  午前9時55分。おっ! 運よく上熊本駅で空席が出来た。  いち早く嫁が見つけて、席を確保してくれた。  出来た嫁じゃ。 「山之内製薬の妻」じゃ。  いや、「山内一豊の妻」だ。  いやあ、リレー号は、スピードが速くて、横揺れが激しかったから、疲れた、疲れ た。そうだ。私は足が不自由だったんだ。  午前10時18分。新八代(しんやつしろ)駅に到着。  3月に開通したばかりなので、駅舎が真新しい。  ディズニーランドのリゾートゲイト・ステーションみたいだ。

 この駅は、新幹線史上初めて、在来線の電車のホームとおなじホームに、新幹線が 停車していて、すぐ乗り換えられる。

 おなじホームでの乗り換えだから、なんと在来線から、わずか3分間で、新幹線に 乗り換えられる。  まさにリレー号だ。  いままでの新幹線は、必ず在来線から、エスカレーターなどに乗って、新幹線専用 の改札口を通って、新幹線ホームに出たものだ。  この光景は、新幹線が博多まで開通したら、見られなくなってしまうだろうから貴 重だ。  でも、私には仕事があるので、新幹線に乗らず、新八代駅で下車。  新八代を、『桃太郎電鉄』の物件駅に昇格させるかどうかの取材開始だ。  さすがに新しく出来たばかりの新幹線駅だけに、駅のまわりは、だだっ広い田園風 景が広がるだけ。  これは予想していた。

 タクシーで、八代市内へ。  運転手さんはしきりに、八代(やしろ)、八代(やしろ)と発音する。  よ〜く聞くと、「八代(やっしろ)」と、小さい「っ」が入っている。  地図帳では「八代(やつしろ)」である。  でも、八代出身の歌手・八代亜紀さんは、八代(やしろ)だ。  調べてみたら、八代(やつしろ)という地名は古代からある名前だそうで、神々が 往来する「社(やしろ)」が語源で、「八代(やしろ)」になって、「八代(やつし ろ)」になったそうだから、運転手さんの発音は間違えではないのだろう。  だったら、「八代(やしろ)」と読ませてしまったほうが、他県の人が覚えやすく てよい名前ではないだろうか。  午前11時。八代市内の「松濱軒(しょうひんけん)」へ。 「しょうひんけん」と、音だけ聞いていると、「商品券」みたいだ。

 ここは熊本54万石のお殿様だった松井氏が、お母さんのために作った庭園だそう だ。  花菖蒲(はなしょうぶ)が有名な庭園と聞いていたけど、満開は例年6月。  今年は桜も、1〜2週間早く咲いているので、ひょっとしたらもう咲いているかな? と思ってきた。  さすがにまだ早かったらしく「今週末ぐらいから、どんどん咲くようですよ」とい われる。  それでも、何本かは咲いていた。

 庭園は、54万石のお殿様が作っただけあって、立派!  しかもこの庭園、柵も少なければ、ロープで囲むようなことを、一切しないので、 観光地の感じがしない。  桁外れのお金持ちの家に、お邪魔したような気分になる。  大きな池が広がる。  無造作に置かれた飛び石なども、うっかりすると池に落ちそうだ。  お客さんの通路よりも、庭園の景観を重視した作りが、贅沢だ。  ここは私邸だったのだから、これが本来の姿なのだろう。  池を巡る道も、木が曲がりくねって成長しているところは、こっちが腰をかがめな がら歩かないといけない。

 熊本54万石のお殿様の庭園だから、家のほうも立派。  まるで日本旅館みたいな感じ。

 さすがに江戸時代は、こんな形のお屋敷ではなかっただろうけど、あの宮本武蔵も ここを訪れている。  鉄道エッセイの最高峰と呼ばれる『阿房列車』の作者・内田百間(うちだひゃっけん) さんも、ここに泊まったことがあるようだ。  最近こういう庭園を見るのが好きになってきている。  午前11時15分。八代駅へ。

 熊本県第2の都市・八代(やつしろ)の駅舎と呼ぶには、木造モルタル造りの小じ んまりとした駅舎だ。  かつては鹿児島本線の特急が停車する重要な駅だったけど、新幹線が新八代駅に新 設してしまったために、この駅は今後寂れる一方になるのだろう。  でも、のんびりした古めの駅舎は「別に新幹線のことは気にしてませんよ…」と悠 然と立っているような気がした。  駅の向こうに巨大な日本製紙の工場の煙が、もうもうと立ち上っている。  何事にも動じないような煙の昇り方のようだ。  駅には、コンビニが併設されていた。  ローカル線の駅舎は、こういう風にもっとお店として活用されるべきだとおもう。 場所を説明するときに「八代駅」だけですむわけだから、利用価値は高いはずだ。  郵便局にしてもいいわけだし、役所の出張所でもいい。  駅しかないから電車に乗ってくる用事がない、だから乗客が減る一方の悪循環なだ けだ。  電車に乗ってこないといけない状況を作ってあげればいいのだ。  毎週日曜日、演歌歌手が新曲のキャンペーンに来るでもいい。  お笑い芸人のオーディションを開いてもいいとおもう。  駅ごとに、歯医者、耳鼻咽喉科、内科、小児科などの病院ばかりある鉄道路線が あってもおもしろい。  もっと駅に人が集まってほしい。

 駅の売店で、「そら豆あん万十」を買う。

 最近は、「饅頭」を「万十」と表記するところが見当たらなくなっているだけで、 「万十」と手書きで書かれた文字で、旅の気分がいっぱいになる。  味のほうは、葉っぱの匂いが強い、そら豆餡のお餅であった。 『桃太郎電鉄』の物件にするには、いまいちかな。  新八代駅までのキップを買って、改札を通る。  1番線のホームの隅っこには、新幹線が開通したためにローカル線として、再生さ れた肥薩おれんじ鉄道がある。昨年までの鹿児島本線だ。  この駅が、始発駅になる。  でも、ホームの半分は、熊本方面行きの電車のホームにもつかっているので、始発 駅の雰囲気はまるでない。  午前11時42分。銀水(ぎんすい)行き普通列車に乗車。  ローカル列車なのに、黄色が鮮やかな新品の車両だ。

 3分ほどで、新八代駅に着く。  3分くらいなら、いまの八代駅に、新幹線駅を作ってあげてもよかったと思うのは 素人考えなんだろうなあ。  東京の国際フォーラムを思わせるような新八代駅の駅舎を、昔の八代駅に作るには、 まずあの巨大な日本製紙の工場を潰さないかぎり無理だ。  子どもの頃に習ったブラジルの首都を、ブラジリアという何もないところに移転さ せた意味が、いまごろになって実感を伴った。  新しいことをするためには、過去を潰すより、何もないところから始めるべきなの だ。  新八代駅の「みどりの窓口」で、新幹線のキップを買う。 「鹿児島中央駅まで、大人2枚。指定席、禁煙でお願いします」 「えーと…。指定席は席を離れて乗る以外は、満席ですねえ…」 「うへ〜〜〜! じゃあ、グリーン車は空いていますか?」 「つばめには、グリーン車がありません!」 「ええーーーっ! 知らなかったあ!」  私は、新路線について、わざと調べずに乗る。  まったくの白紙のほうが、驚きが多くていいいからだ。  イッツ・サプラ〜イズ!  しかし、グリーン車がないとは思わなかった。 「座席はすべて、グリーン車並みにゆったりしていますから!」  おお! いいねえ。その気骨。  さすが、薩摩隼人!  いや、まだここは新八代。 「うーーーん。どうしよう…」  次の新幹線にしてもいいんだけど、新八代駅で待つには、駅のまわりには何もない からなあ。 「自由席ではどうですか?」 「うーーーん。きょうは玉名から、自由席に乗って、立たされたからなあ…」 「リレー号が新八代駅に到着して、新幹線自由席に乗り換えるまでに、3分間ありま すから、5分前くらいに自由席車両の前に立っていれば、確実に乗れるとおもいます よ」 「あっ、そっか。ここは始発駅だしね!」 「どうしますか?」  うーーーん。運の悪い日は連鎖するから、どこかで断ち切りたいなあ…。 「指定席の席が離れるのは、どのくらい離れてしまうんですか? 別の車両ですか?」 「いえ、通路をへだてて、並びの列です」 「あ、じゃあ、指定席にします」  昨日の旅館から、ちょっとツキを失っているので(横浜ベイスターズも昨日負けた)、 なるべく慎重にしたい。  このツキを戻す方法って、けっこう有効なんだよ。  ツキがないときって、さらに危険度の高いことをして、一気に挽回しようとして、 さらに傷口を広げる場合が多い。  こういうときは、確実性が強いことを、いくつかくりかえしていると、そのうちツ キが戻ってくる。  私は「強運」と呼ばれることが多いけど、派手な偶然劇ばかり、みんなの目に映る から、いきあたりばったりのように思えるけど、基本的には慎重で、臆病である。 「石橋を叩いて、ほかの人が渡るのを見届けてから渡る」ような男だ。  私が石橋を叩いたばかりに、石橋にヒビが入ったかもしれないからね。  新幹線の発車時間まで、新八代駅の観光案内所で、八代の名産品をチェック。  大きくて黄色い晩白柚(ばんぺいゆ)が目に飛び込んでくる。  柑橘系なのなかでは、一番大きな品種で、子どもの頭くらいの大きさがある。  私は柑橘系の酸味があまり得意ではないので、さほど好きな食べ物ではないけど、 その大きさから「柑橘系の王様」と呼ばれるインパクトと、「晩白柚(ばんぺいゆ) 」 という言葉のおもしろさは、『桃太郎電鉄』の物件には、絶対必要だ。  でも、観光案内所でひときわ目立っているのは、やっぱり、い草だ。  畳表の材料として作られる、い草の匂いがぷうん!と広がっている。  九州新幹線が描かれた、い草のざぶとんがおもしろい。

 観光案内所のお姉さんたちに「い草」のことを、あれこれ聞く。 「い草って、ボクは完成品しか見たことがないんですけど、最初は畑で作られるんで すか? 水田ですか?」 「たしかにそうですね。少々お待ちください」  そういって、資料を持ってきてくれて、わざわざカラーコピーしてくれた。  い草は、水田のようなところで、苗を植えるようだ。 「畑に苗を植える」とあるから、水田ではなく、畑なのかなあ。 『桃太郎電鉄』では、物件名を仕様書に書くとき「い草」だけでは困る。 「い草畑」、「い草園」、「い草田」といった表示の仕方をしないと雰囲気が出ない。 この一見簡単そうなことが意外と、統一されていない。  たとえば、シイタケ。  シイタケは、クヌギのような木に、シイタケ菌を植えつける。  この時点で、シイタケは、「シイタケ畑」ではないことがわかる。  では、「シイタケ林」かというと、その後、袋をかぶせたり、日光の当たらないと ころに木を並べて、きのこを発生させる工程があるから、「シイタケ林」とは言い切 れない。  こういうときは、シイタケを作っている人に聞けばいいんだけど、一度大分県の人 に聞いたら「そうだねー! わたしらシイタケ団地って、呼んでるけんどねー!」と いわれてしまった。  だから一度だけ『桃太郎電鉄』では、大分の物件で「シイタケ団地」という名称で 登場しているはずだ。  でも見れば、見るほど「シイタケ団地」では、なんか工業団地のようだ。  けっきょく、いまでは「シイタケ栽培」という表記にしている。  で、「い草」。 「い草畑」がいいのかな。 「い草水田」でもいいかな?  でも「い・草水・田」と切って読んでしまいそうだ。  やっぱり「い草畑」にしよう。  観光案内所のお姉さんたちに、もうひとつ聞いてみる。 「い草って、どの本を見ても、『い草』と、『い』の文字を、平仮名にしているんで すけど、漢字ではどう書くんですか?」 「あら? そういえば、そうですよね!」 「い草を、『井草』と書くなら、カンタンだから、わざわざ『い草』にするわけない ですよね」 「そうですよね〜! いままで考えたこともなかったですね」  お姉さんたち、親切で真面目なので、この調子だと、真剣に調べ始めてしまう。  それでは新幹線に乗る時間が来てしまう。  お礼をいって、観光案内所を後にする。  あとで調べたら、「藺草」と書くようだ。  これなら「い草」と表記したくなるわけだ。

 午後12時19分。いよいよ新幹線つばめに乗車だ。  わくわくするね〜。  20数年前、私は『月刊OUT』(みのり書房)という雑誌で、連載を持っていた。  この連載のなかで「鉄道ファンは、蒸気機関車とか、いまはなくなったものばかり 持ち上げる。だったらオレは、古くなる前のいまの新幹線から好きになってやる!」 と冗談で宣言した。  本当に冗談だったんだけど、あの雑誌の読者のノリは尋常じゃないので、みんなが どんどん新幹線グッズを送ってくる。  修学旅行のときに乗った新幹線の飲料水を飲む用の紙袋とか、コーヒーについてく る砂糖を送ってくるのは笑えるけど、手作りの新幹線枕、はては同級生のお父さんが、 新幹線開通のときの運転士さんだったか?車掌さんだったか?で、その人が子どもが 生まれたときに、「新幹線」から「幹子」ちゃんという名前にしたというエピソード とともに、新幹線の車掌さんの腕につけているワッペンまで送ってくれるようになっ た。  東北新幹線が開通すれば「もう乗りました?」のハガキが、100通近く来る。  気づけば、新幹線ファンでなければ、やばい状況になってしまったのだ。  そんなわけで、他称・新幹線ファンの私が、つばめ新幹線に初めて乗る。

 つばめ新幹線は白くて、かわいい車体だ。  6両編成しかないんだね。  山形新幹線のつばさとか、秋田新幹線こまちのように見える。  車内は、たしかに新幹線では初めての和風基調だ。  ドアは九州産のクスノキ。  窓がすだれのようなロール・ブラインド。  シートは、西陣織の手法を用いているそうだ。

 テーブルは、蝶々のように広がる木製の小さなもの。  洗面所には、八代のい草で作った縄のれんがかかっている。

 座席は、2座席×2座席の、たしかにゆったりとした作りだ。  これなら「グリーン車はありません」と、みどりの窓口の人が胸を張っていえるだ けのことはある。  床の模様が不思議。  真っ白で、タイル状に格子模様にドットがひとつ。  私にはどうしても、サイコロの1の連続にしか見えない。  職業病か?  でも明るい雰囲気でいい。  つばめ新幹線4号は、静かに走り出した。  ものすごく滑らかな走り出しだ。  いままでの新幹線も滑らかだとおもうが、ほかとは比べものにならないほど、滑ら か。冬季オリンピックのカーリングが滑るみたい。

 車内アナウンスが、おもしろい。  日本語、英語はわかるが、韓国語、中国語まである。  アジアの玄関である九州らしくていい。  これもまたほかの新幹線では味わえない感覚だ。  けっこうつばめ新幹線には、斬新が多い。  在来線から、おなじホームで乗り換えられるのも、斬新。  グリーン車がないのも、斬新。  喫煙車がないのも、斬新。  新八代駅の「みどりの窓口」で、私は「禁煙席を」といったけど、わざわざいわな くてよかったのだ。  いまは鹿児島まで、40分ほどで着くからいいけど、博多まで開通したときは、や っぱり喫煙車両をつけるんだろうなあ。  午後1時5分。あっというまに、鹿児島中央駅に着く。  快適なり。  九州新幹線が、博多まで開通するのは、平成25年ごろ。  9年後かあ…。  だんだん新しい新幹線に乗れるかどうか、微妙な年齢になってきた。

 鹿児島中央駅は、昨年まで西鹿児島駅だった駅舎のまま。  というより、かなり前から九州新幹線開業に合わせて、改装していたから、私にと っては以前も利用している駅なので、あまり驚きはない。  それでも、改札口を出たところのプロムナードにお店が増えて、にぎやかになって いた。

 おっと! 駅を出てからのほうが、驚いた。  駅のとなりに、大きな建物を建設中だ! 「アミュプラザ鹿児島」というビルで、ビルのてっぺんに巨大な観覧車が乗ってい る。何でも100mの高さの観覧車になるらしい。

 9月オープンというから、まだまだ先。  ビルには、180軒の店舗が入るらしい。  プールまであるとか。  今後、鹿児島といえば、このビルがテレビなどで映し出されるようになるんだろう なあ…。  午後1時30分。天文館のホテル・レクストン鹿児島へ。  きれいなホテルだ。

 昨日の旅館がひどかったし、鹿児島は以前からいいホテルがないことでは定評があ ったので、非常に心配だった。  エレベーターを降りると、吹き抜けになっていて、両側に部屋があり、マンション か、団地みたいな雰囲気。  部屋は、広い。  LANケーブルも無料サービスなのがうれしい。  コードを差し込むだけ。わざわざディスクをインストールしてもらわなくてもいい。  いやあ、息を吹き返したよ。  インターネットがつかえるというだけで、海にもぐっていて、海面に顔を出したく らいの安堵感がある。インターネット依存症だなあ…。

 午後2時。鹿児島随一の繁華街・天文館まで歩く。  おんや? 「菓々子(かかし)横丁」?  新しいお店だ。  ちょっとチェックしてみよう。  ケーキ、和菓子、かるかん、バウムクーヘン、駄菓子などを売っている。  ウ〜〜〜、おいしそうな、シュークリームだあああ…。

 お茶も売っているし、お団子も売っている。  民芸陶器まで売っている。  お店のなかに滝まであるぞ。  いろんなお店がたくさん入った横丁と思いきや、これが鹿児島で有名な和菓子屋さ ん「薩摩蒸気屋」さん一軒のお店。  今回、鹿児島でこの「薩摩蒸気屋」の看板を何度も見た。  いまいちばん鹿児島で勢いのある企業なのだろう。  いい企業は、従業員も親切で一生懸命だ。  おばちゃんが、一生懸命、かからん団子と、けせん団子について説明してくれたの で、つい買ってしまったよ。  かからん団子は、山帰来(さんきらい)という葉っぱで包んだ新潟の笹団子みたい な味のお団子。かからんというのは、この山帰来(さんきらい)という葉っぱの別名 のようだ。  けせん団子は、葉っぱがシナモンみたいな香りがするとおもったら、日本で唯一、 鹿児島と沖縄でしか育たないシナモンの木のことだそうだ。

 かからん団子も、けせん団子も、そこそこおいしいお団子。  あったら食べてしまうけど、さすがに『桃太郎電鉄』の物件に登場させるほどでは ないかも。  午後2時30分。天文館のラーメン屋さん「こむらさき」へ。

 鹿児島に親戚がいるという石関はるみちゃん(漫画『コンシェルジュ』の原作者・ いしぜきひでゆきの奥さん)から、鹿児島に行ったら、騙されたと思って食べてみて ほしいと力説されていたラーメン屋さんだ。  土居ちゃんと、熊本で食べた「こむらさき」と名前はまったくおなじお店だけど、 全然関係ないお店らしい。  新横浜ラーメン博物館に出店しているのは、熊本の「こむらさき」。  石関はるみチャンが「騙されたと思って、食べて欲しい!」といったとおり、騙さ れてみようじゃないの!  だ、だ、だ、騙されたあ(笑)!  おいしいほうに、騙されたあ!  まるでソーメンみたいに麺が白いんだ。騙されたあ!  しかも、極端な細めん。騙されたあ!  まったく麺が縮れていない。騙されたあ!

 ちょっとしゃべりづらいので、「騙されたあ!」はもうやめよう。  とにかく、タンメン+ビーフンみたいな味なんだ。  鹿児島ラーメンは、豚こつスープの濃い味のイメージだけど、ほのかに甘みのある あっさり薄味系のスープ。このスープがうまい! 「よくかき混ぜてくださいね!」といわれて、丼のなかを掘り起こすと、大量のキャ ベツが出てきた。このキャベツがおいしい。  こまかく刻まれた煮豚があっさりした味で、これまた結構!  これは、不思議なおいしさだ。  こってえい系の鹿児島風ラーメンとおもって食べに来たら、予想との落差に「なん じゃ、こりゃあ!」とびっくりしてしまうけど、「ちょっと変わっている」といわれ てから来ると、純粋においしい。  実際、このラーメンをボロクソにけなす人も多いらしい。  博多ラーメン、久留米ラーメン、熊本ラーメン、鹿児島ラーメン…。  九州のラーメンは、どこもこってり系だと、私も思っていた。  いやあ、うまかった…。  間を置かずに、また食べてみたい味だ。  午後3時。谷山町の「奄美の里」へ。  1万6000坪の敷地に、奄美大島の雰囲気を再現したという触れ込みなんだけど、 どう見ても着物の大島紬(おおしまつむぎ)で、大儲けした人が、日本庭園を豪奢に、 豪華に、豪勢に作ってしまっただけの気がする里だ。

 でもよく出来ている。  金持ちの悪趣味な感じはない。  まるで京都の醍醐寺の日本庭園を巨大化したようなダイナミックな庭園だ。

 ちゃんと「大島紬の出来るまで」を模型で見せたり、画像で見せたりして、真面目 に大島紬についても、ちゃんと説明している。

 もちろんここに来たのは、嫁の趣味。  ちゃんと東京からわざわざ大島紬を持ってきて、きょうは大島紬のいでたちで来て いる。嫁の画像はここでは、公開しない主義なので、嫁の着物姿をみんなに見せられ ないのが残念。  しかし、広い。  広いなんてもんじゃない。  たしかに奄美大島の雰囲気を再現している。  まるでジャングルのようだ。

 大島紬を作っている工程も、見ることができる。  いつも思うんだけど、着物を作る人たちの苦労って、そろそろ報われる方策はない ものだろうか?  言ってみれば、コンピュータ・グラフィックスを、ひとつひとつドットで、描いて いくような壮絶さがある。  テーチ木染めと呼ばれる手法で、何度も、何度も、染めては、腕でぐいぐいと絞め 上げ、糸に色を染み込ませていく。  これを20回くらいくりかえすそうだ。  手や指に、染料が染み込んでしまうんだろうなあ。  次に、今度は手織りの布を、田んぼの泥のなかに漬け込んで、泥染めする。  この泥染めをすると、いい色が出るようになるそうだ。  着物作りは、コンピュータとまったくおなじなのに、自然との闘いと、体力の消耗 が加わって、格闘家並みの苦労だ。  よく私は「ゲームを作るなんて、大変な仕事をよくやりますね!」といわれるけど、 着物作りに比べたら、100分の1の苦労もしていない。  一度ゲーム・メーカーは、社員を奄美大島に連れて行って、見せたほうがいいかも しれないね。改心するよ〜。  午後4時30分。ホテル・レクストン鹿児島へ戻る。 「奄美の里」で歩きすぎた。  ベッドにひっくり返った瞬間に、ゴーゴーといびきをかいて、寝てしまった。  こんなに疲れたのは、初めて。  1時間ほどで目が覚めた。  まるでぐっすり8時間寝たくらい、熟睡した。  嫁にメールするが、返事がない。  健脚な嫁も、さすがに寝ているのだろう。  そういえば、私と嫁は、いつもいっしょに旅行しているけど、いつも別の部屋を 取っている。  仲が悪いわけではない。  いっしょにいる時間と、ひとりですごす時間のバランスをよくしたいため。  四六時中、いっしょだと、見るもの、聞くもの、何でもおなじになってしまって、 新鮮味がなくなってしまうとおもっている。  お互いのペースですごせるほうがいいのだ。  これは、わが家だけの方針ね。  みんなの家庭には、みんなの家庭のあり方があっていいと思っている。  ちなみに、うちは自宅でもおなじ。  私が1階で、嫁は、3階に部屋がある。  嫁が3階なのは、私の足が不自由だから。  だいたい、私が毎日、嫁とおなじ部屋で、横浜ベイスターズの試合の行方で、一喜 一憂して、拍手したり、がっくりして、突っ伏していたりしたら、うっとおしくて仕 方ないと思う。  午後6時30分。嫁と、再び天文館まで歩いていく。

 地下にある居酒屋「魚処 磯辺」へ。  つばめ新幹線で、女性の車掌さんが配っていた鹿児島のパンフレットに載っていた お店だ。  地の魚が食べられるというので来てみた。

 きびなご、太刀魚、貝類など、鹿児島らしいお刺身の盛り合わせが、おいしい。  豚の角煮、アスパラガス、竹の子の大名焼きなど、手当たり次第に食べる。

 嫁が、「亀の手」に初挑戦。 「亀の手」に似ている貝類ではない。  まんま「亀の手」だ。  ぷしゅ!と指で押して、なかから、にゅ〜と出てくる部分を食べる。  なんだか、子供の頃に雑木林で食べた、クヌギの食べ方に似ている。味も。けっ きょく、私も食べちゃった。

<私がもう一度行くためのメモ> 「魚処 磯辺」 住所:鹿児島県鹿児島市千日町3-8-B1F 電話:099-225-6455 営業時間:18:00〜1:00(金・土曜は〜3:00) 定休日:日曜  午後8時。ホテル・レクストン鹿児島へ戻る。  さっき仮眠したものの、あれから天文館までの往復で、さらにたくさん歩いてし まった。  私にしては、珍しく仕事をする気力も体力もなく、ただ呆然と『トリビアの泉』を 見て、風呂に入って、さっさと寝る。  明日は、鹿児島地方、大雨洪水注意報が出る模様。  雷も鳴るそうだ。  私が取材旅行にでかけると必ず晴れるの法則も、さすがに通用しそうもない。  鹿児島の豪雨は、すごいからなあ…。  そんな雨を見るのも、九州らしい取材かもしれない。

 
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