4月8日(木)

 午前9時30分。最近、旅行していない。
 そんなわけで、嫁と東京駅へ。

 午前10時13分。Maxとき313号に乗車。
 乗車と同時に、東京駅で買った「極付(きわめつき)弁当」を広げる。
「極付(きわめつき)弁当」は、現在駅弁業界でいちばん値段の高いお弁当として最
近、話題になっている。
 陶器の土瓶茶が付いて、そのお値段、なんと4000円である!

 一の重、二の重に分かれている。  黒豚の味噌漬けは、鹿児島霧島公園の麓で育った豚で、こんにゃく煮は、群馬県下 仁田産、とこぶしは、瀬戸内海産、梅干は、和歌山の南部産、岩海苔は、三重県の天 然岩海苔といった風に、とにかく厳選された食材が並ぶ。

 味は、たしかにいい。  とくに、黒豚の味噌漬けは絶品だ。  でも、なんか今年の巨人軍の史上最強打線のようで、ひとつひとつは素晴らしいん だけど、お弁当として並ぶと、まとまりに欠ける。  やっぱりこの値段には問題があるとおもう。  駅弁に4000円を出せる人について考える。  私はおいしければ、値段は気にしないほうだ。 「値段のわりに、おいしい」という言葉は好きではない。  30円でも、3万円でも、おいしいものは、おいしい。まずいものは、まずいとお もっている。  でも駅弁は、値段を気にすべきだとおもう。  駅弁に4000円を出しても平気なお金持ちは、まず知り合いに懇意な料亭がいて、 わざわざ東京駅まで届けてくれるような関係があると思うのだ。  この「極付(きわめつき)弁当」も、予約するとJR東日本の新幹線指定席まで届 けてくれるそうだ。  やっぱり料亭がお弁当を作って、届けてくれる風習を意識しているわけだ。  そういう人は、「極付(きわめつき)弁当」が必要ないとおもう。  それ以上のお金持ちは、電車自体に乗らない。  どこへでも高級車か、自家用ヘリだ。  要するに、駅弁に4000円を出す人は少ないとおもうのだ。  4000円を出す理由というか、自分に対する言い訳が見つからない。  日本旅館の夕食のように、とにかく食卓を所狭しと料理で埋め尽くすみたいにしか おもえないのだ。  取材の意味もあって私は買ったけど、さすがに、ふたりでひとつしか買わなかった よ。  駅弁は、やっぱり1000円前後で個性を出すべきだとおもう。 「崎陽軒のシウマイ弁当」のように、シウマイという大砲がいて、その周りに、小の ようなシナチクが並ぶようなバランスが大事だとおもう。  東京駅の「深川めし」もいい。 「極付(きわめつき)弁当」をひとつしか買わなかったので、抑えでもうひとつおも しろそうなものを買った。 「江戸の黒いなり」だ。  おいなさんの色が、黒いのだ。  琉球産の黒砂糖をつかったらしい。

 江戸料理の老舗「八百善」が作ったと口上にあったので、期待したのだが、甘く な〜〜〜い! 『細腕繁盛記』のモデルにもなった「八百善」だけに、味が上品過ぎた。  おいなりさんは、ちょっと下品気味に甘くあってほしかった。  食事後、コーヒーを飲んで、本を読み始めると、あっという間に眠くなって、熟 睡。  路線にトンネルが多いせいもある。  午前11時30分。越後湯沢駅で、下車。  ぴゅうううううっ!  寒いっ! 寒いっ! 寒いっ!  これは寒いっ!  ええ〜〜〜ッ? 越後湯沢のホームから目の前に見えるスキーのゲレンデには、 しっかり雪が積もっているよ〜〜〜ッ!  東京では、そろそろ桜が終わりだというのにねえ。  寒いわけだあ!  駅のホームに、越後湯沢旅館組合寄贈の温度計があった。  温度は…、9度?????  温度を見て、もっと寒く感じちゃったよ!  小さい国なのに、変化に富んでるねえ。

 午前11時48分。越後湯沢駅から、金沢行きはくたか8号に乗車。  この列車、金沢まで行くんだね。  車両も、サンダーバードに似ていて、新しくて、豪華だ。

ホームには温泉が…

 列車は走り出すと、右側に高い山が連なって見える。  どの山の山頂にも、富士山のように雪が積もっている。  美しい風景だ。

 この列車は、驚くほど停車駅が少ない。  有名な六日町を停車せず、十日町でやっと、停車。  十日町からは、長いトンネルの連続だ。  トンネルを抜けると、雪がすっかり消えて、今度は沿線が桜の木で迎えてくれた。 季節感のジャイロスコープが狂う。頭が混乱しそうだ。  でも思わぬところで、桜を見ることが出来て、うれしい。  なんと十日町の次の停車駅は、直江津(なおえつ)駅だ。  JR東日本が、かなり自信満々に宣伝している「ほくほく線」は、停車駅を少なく て、スピードアップを図っていたわけだ。  越後湯沢まで、1時間10分。  越後湯沢から直江津まで、51分。  わずか2時間で、直江津まで来れるようになるなんて、夢のようだ。  つい30年前は、6〜7時間かかったのではないだろうか。  犀潟(さいがた)という駅を過ぎたら、日本海が見えてきた。  車窓に広がる海っていうのは、列車旅の最高のごちそうだ。  いつもは暗い日本海も、きょうは明るい。  海の向こうに、ひとつも島がないので、勇壮な景色だ。

 ふと、TOKIOの「日本列島一筆書き」のソーラーカーが走っていないかな?と おもえるような風景だ。  そろそろロケはこの辺じゃないの?  直江津駅に停車。  列車は、7分遅れているそうだ。  直江津駅までが、信越本線で、ここからが北陸本線になる。  理由も言わずに、遅れている時間だけをいうのは、あいかわらず北陸本線っぽいな あ! 冬場、雪で遅れるのが当然だった路線だけに、いまの時代には、ちょっと説明 不足。  ずっと右側に、海が広がる。  午後1時。糸魚川(いといがわ)駅で下車。  うほ〜〜〜!  1両の電車が、淋しそうに停まっている。  これが大糸線の電車なのかあ!

 実は地図上から考えると、糸魚川というのは、新宿から中央本線で松本を通って、 そのまま北に向かってまっすぐ大糸線に乗って、日本海にぶつかったところが糸魚川 だ。  だから私も、新宿から出かけて、大糸線で、糸魚川に来たかった。  でも何度インターネットの乗り換え案内で調べても、越後湯沢まで新幹線のコース を選んでしまう。  新幹線は、地図上の距離を狂わせてしまうんだね。  しかも、さっき乗ってきた、ほくほく線のはくたか号のスピードアップで、さらに 狂った。  しかもこの1両の大糸線では、勝負にならない。  私の旅行計画を狂わせ続けてきた大糸線に、いとおしいものを感じた。  なにしろ、ホームに大きな看板で「祝! 大糸線 1往復増発!」とあるんだも ん。1往復増えただけで、こんなに喜んじゃうような路線なわけだ。

 思わず「近いうちに、大糸線全線に乗ってあげるからね!」と、つぶやいちゃった よ。

 糸魚川を、富山県だとおもっている人も多いとおもうけど、実は新潟県。  その前に糸魚川(いといがわ)自体が、初耳の人も多いか! 「糸魚川ー静岡構造線」というと、だいぶ多くの人が「ああ!」と言ってくれるかな? 「フォッサマグナ」というと、もっと多くの人が「おあ! あれね!」と言ってくれ るだろう。  きょうは、その「フォッサマグナ・ミュージアム」が目当てでやってきた。 「フォッサマグナ」。  ラテン語で「大きな溝」という意味。  まるで怪獣のような名前に、子どもの頃から、肌が粟立つような憧れを持っていた。 日本列島を真ん中から分散するようなスケール感に、畏怖と畏敬を感じたのだろう。  駅前からタクシーで、フォッサマグナ・ミュージアムまで10分。  途中いつものようにあれこれ、運転手さんから、糸魚川について聞く。  ご他聞に漏れず、郊外の大型スーパーのせいで、町の商店街は、ガタガタになって いるようだ。  糸魚川高校、糸魚川中学の校庭の桜が、満開だ。  きれいだなあ!    運転手さんが「美山公園の桜は、もっときれいだ!」というので、寄り道してもら う。  ところが桜は、きまぐれというか、高度と陽当たりによって、咲いたり、咲かなか ったりする。美山公園は、相当高い場所にあったので、五分から六分咲きくらいで、 満開とはいえなかった。  でも、その代わり、絶景を見ることができた。

 姫川と呼ばわれる川越しに、黒姫山の白い頂が見えた。  桜の向こうに、雪山が見えるなんて、初めてだよ。  信じられない構図だ。  午後1時30分。フォッサマグナ・ミュージアムへ。  きれいな博物館だ。

 ここでたっぷり、フォッサマグナについてお勉強しようとおもったんだけど、フォ ッサマグナ・ミュージアムの展示物の80%は、世界の鉱物について。  世界の鉱石や、誕生石が展示されて、キラキラ、キラキラ、きれいなことは、きれ い。  ちょっと当てが外れる。

 糸魚川は、日本一の「翡翠(ひすい)」の産地なので、「ひすいの里」と呼ばれて いる。駅の売店で、ひすいチョコレートなんてものまで売っているくらいだ。  元・宝石商だった嫁は、翡翠関係の展示物に書かれていることに、ふむふむとうな ずいていたけど、私はさっぱりわからない。  翡翠(ひすい)といえば、緑色と覚えていたけど、白とか、黄色とか、たくさん種 類があるようだ。

 よく考えたら「断層」ぐらいじゃ、展示物というものがあるわけないよね。

これはなんでしょう?

 けっきょく、フォッサマグナを発見したナウマン博士の年表を展示したりして、苦 しい努力はしているようだ。  ちなみに、ナウマン博士は、ナウマン象の発見者でもある。  おもしろかったのは、糸魚川駅前の観光物産センター「ヒスイ王国」に、フォッサ マグナの模型があったんだけど、日本地図とは逆で、北に伊豆半島が配置されていて、 南に能登半島があるのだ。  何でわざわざ反対の模型なんか作ったんだろう。

 ふだん見慣れない地図を見させられると、こめかみのあたりが、イライラする。  フォッサマグナについて少しだけ語っておく。  私が学生の頃習ったフォッサマグナは、糸魚川から真下に向かって、静岡まで一直 線に細い断層ができているものだったけど、最近の調査では、かなり広い範囲の断層 だったことがわかったらしい。  いまの見解では、糸魚川ー静岡間は、西側のへりで、東側は、新発田(しばた)ー 小出(こいで)のライン。柏崎からなんと、千葉県房総半島まで、伸びているそうな のだ。  すごい広域だね。  この広い範囲のなかに、富士山があるんだけど、さすがに富士山はフォッサマグナ から除かれているようだ。富士山が断層と言われても困るけどね。

 ふと、私は中学生のとき、地学クラブに入っていたことがあったことを思い出し た。関東ローム層とか、シラス台地、フォッサマグナと聞くと、わくわくするのは、 まだその因子がかすかながら残っているからか。  午後2時30分。糸魚川駅に戻る。

 午後2時41分。越後湯沢行きはくたか11号に乗車。  あれ? この列車は行きのときに乗ったサンダーバードに似た車両とも違うなあ。 きれいな車両だ。  乗車してすぐ、糸魚川駅の売店で買った、牛乳パンを食べる。  パッケージからして、『ねじ式』のつげ義春さんを彷彿させるようななつかしい絵 だ。パンの間に、白いクリームがはさまっている。  味が、レトロ〜〜〜!  なつかしく、おいしいよ!

 いのや商店という洋菓子&ドイツ菓子のお店が作っている。  住所が、糸魚川市本町6の8だから、糸魚川の名産と呼んでもいいのかも。  ひすいチョコは、原宿でよく売っている「砂利チョコ」の一種。  翡翠(ひすい)がモチーフだから、カラフル。

 味は…、私の場合、基本的にチョコレートと、アイスクリームなら、何でも大好き だからなあ! 語れる資格がない。  もちろん、おいしかったよ〜!  いつも言ってる。  午後3時4分。直江津駅で下車。  改札口のそばで、妙な衣装を着たおじさんが、駅弁を売っていた。 「鱈めし」と書いてある。  棒ダラと、タラコをつかったお弁当で、この間の新宿京王デパートの駅弁大会で、 売り上げナンバーワンに輝いたそうだ。  今晩どこで食べるかまだ決まっていないんだけど、新宿京王デパートの駅弁大会 は、信用度が高いので、ひとつだけ買ってみよう。  人なつこいおじさんの人柄もいい。

 ここ数年、情の無い人たちに苦しめら続けているので、こういう人のよさそうな人 が勧めるものは、騙されたと思って、買ってしまうことにしている。  直江津駅の駅舎は、まるで新幹線駅のように、巨大で、きれいだ。

 駅前からタクシーに乗ったので、「運転手さん、直江津駅が大きくて新しいのは、 新幹線駅用に作られたからですか?」と聞く。 「いや。新幹線駅ではないですね。2年前に出来たばかりですけど…。新幹線駅はほ かのとこにできるんとちゃうかなあ?」  長野新幹線は、本来は北陸新幹線が正式名称で、金沢まで延伸するはずなんだけど、 ちっとも工事が進んでいるという話を聞いたことがない。  長野ー飯山ー上越ー糸川ー富山の区間は、工事中らしいんだけどねえ。  今回どこにも高架線を見ることはなかったなあ!  地元の人に聞いても「いつ完成するか知らんなあ!」「この駅作るのにも、3年ぐ らい工事が遅れたからねえ」と、まったく新幹線の気配なし。  午後5時30分。春日山神社へ。  春日山城址だ。  歴史マニアなら、もうすでに、ピコ〜〜〜ン!とボタンを早押ししているとおもう けど、上杉謙信の居城だ。

 春日山神社から、直江津の町が一望できる。  日本海側っていいうのは、海と山が近いから、景色が豊富でいいねえ。

 上杉謙信の居城は、この春日山神社から、さらに登ったところにあるらしい。  運転手さんの「相当それなりの準備して登らんと、きついですよ」の言葉に、さっ さとあきらめる。  上杉謙信の時代のお城は、どこも山城で、山のてっぺんにある。  織田信長の岐阜の居城、稲葉山城なんて、ロープウェイで登るくらいだからね。 「え〜〜〜! そんなに遠いん?」と、近くの観光客も驚いていた。  相当きついのだろう。

 午後4時。高田駅へ。  高田駅は、上越市の中心地だけあって、町も大きいし、商店街の規模も大きい。  お城をイメージしたアーケードは、けっこう圧巻だ。  直江津駅から乗ったタクシーの運転手さんは、親切でいい人なんだけど、こっちの センサーが狂うほど、謙遜に、謙遜を重ねるので、困る。

 この高田の大きな町並みを見ても、「何もないでね!」とか「人が歩いておらんで しょう」というけど、ここまで大きな街は珍しい。  高田駅の駅舎も、レンガと瓦とステンドグラスの見事なデザインだ!

 さすがに「運転手さん! 素晴らしい町じゃないですか! 謙遜しすぎですよ!」 という。 「へ〜。どうにも宣伝が下手なもんで…」 「ダメですよ! 運転手さんみたいな人がこの町を宣伝しなきゃ!」 「上越市には、上越市らしい食べ物はないんですか?」 「う〜ん。ないですねえ!」  この言葉も、あとで謙遜であることが判明する。  高田駅の西は、いま雁木(がんぎ)の町並みとして、整備中。  雁木とは、雪の深い地方で、軒から庇(ひさし)を長く突き出して、道をおおって、 積雪中でも通行できるようにしたものだ。  通りに面した家々がおなじ庇(ひさし)を出すことによって、家と家をつなぐ道路 にして、道路が雪に埋まっても、歩くスペースを確保するという雪国ならではの知恵 から生まれたものだ。

 古い町並みと、雁木(がんぎ)が、独特の風景なんだけど運転手さんお勧めの シャッター・チャンスの場所がいまも工事中なので、悔しがっていた。  さらに、お寺が並ぶ界隈があって、狭い地域になんと、63のお寺が密集してい る。これもまた観光地になりそうだ。親鸞聖人ともゆかりのあるお寺が多いそうだ。

 午後4時30分。高田公園へ。  たまたま昨日、嫁がインターネットで、この高田公園の桜が満開だという情報をキ ャッチしていた。  さっきから謙遜ばかりするタクシー運転手さんが「高田の桜は、東京上野の山の桜 よりもきれいですよ!」と言い出す。  これは、珍しいことだ。 「なにしろ、日本三大夜桜のひとつですから!」  あとのふたつは、どこだ?  もちろん、運転手さんは知らなかった。  ちょっと調べてみた。  日本三大桜の名所といえば、 高遠(長野県高遠町)に、 吉野山(奈良県吉野町) に、 弘前城(青森県弘前市)だ。  日本三大桜というのもあって、こっちは1本が見事な桜の木ってことなのかな。  三春滝桜(福島県三春町)、薄墨桜(岐阜県根尾村)、神代桜(山梨県武川村)と いうことになるらしい。次点で、下馬桜(静岡県富士宮市)。  あれ〜〜〜、「日本三大夜桜」なんて、ないぞ〜。  いったい、どこなんだ?  あっ、あった、あった!  高田城址(新潟県上越市)。おお! 筆頭にあった。  あとは、円山公園(京都府京都市)に、 丸山公園(長崎県長崎市)か。  へ〜〜〜、京都の円山公園がそうなのか。  まあ、日本三大なんとかっていうのは、よくわからないことが多い。  覚えたとしても、なぜか最後のひとつを忘れる。  でも、謙遜しまくる運転手さんが珍しく自信たっぷりだっただけのことはあった!  すごいよ、すごいよ、高田公園の桜は!  公園が桜で燃えているようだ。  吉野の山の義経千本桜は、歌舞伎で演じるほど有名だけど、この高田公園の桜は1 000本どころではなく、3400本もあるそうだ。  その3400本が、きょうちょうど満開になったのだ。  私と嫁は、桜運がいい!

 高田城址の三重櫓に重なる桜が美しい。  太鼓橋風の橋から池に向かって咲く桜も、美しい。  何もかも、美しい。

「運転手さん! これは、すごいよ! 美しい!」  謙遜する運転手さんが、これ以上はないといった表情で喜んだ。  郷土愛がこんなに強いなら、もっといろんな場所を観光客に押し付ければいいのに!

 お花見用の屋台がたくさん出ている。  観光名物を売っているようだ。

 まず「上越名物するてん」という妙な名前が目に飛び込んできた。  おお! 言われてみれば、すぐわかった。  スルメの天ぷらで、「するてん」だったのか!  試食する。  うまいっ!  1パック、買う!  あっ! さっき直江津駅で買った「鱈(たら)めし」を、ここでも売っていた。  きょうの晩飯はこの「鱈(たら)めし」にしようと、ここで2個目を買う。  誰も信じてくれないだろうけど、これから東京まで戻るつもりなのだ。はっはっは!  驚いたでしょ? もはや日本海はそんなに近いのですよ。  ふと「鱈(たら)めし」の脇を見ると、「くびきの押し寿司」というのを売ってい た。 「くびき」というのは、「頚城」というとても読めない地名のはずだ。  そんな地名の名前がついたお弁当は、買わなきゃ!  三段の押し寿司で、ホタテとしそ、野菜の五目、アミエビと味噌漬けが、はさまっ ていると書いてあるだけで、そそられる。  いよいよ、地方物産買いの勢いに拍車がかかる! 「白いどらやき」というのも、買う。  これがおいしかった!  年に一度、この桜祭りのときだけ作るといっていたけど、もったいない味だ。  これだけ充実した屋台というのも、珍しいねえ。

 とどめは、「いいだこ焼き」!  蛸のイイダコのたこ焼きだ。  おいしいんだけど、でかいっ!  でかいなんてもんじゃない!  まるでピンポン球を食べているみたいだ。

「いいだこ焼き」を売っていたお兄ちゃんたちに、「このイイダコは、産地直送って 書いてあるけど、どこからなの?」と聞くと、「明石です!」との返事。  う〜〜〜ん。地元のいい蛸だったら、『桃太郎電鉄』に登場させることができたの に〜! 惜しいッ!  このくらいだよな、高田公園で買ったのは。  あっ。まだあった。  濡れせんべいの「しっとりもち」に、直江津名物「継続だんご」だ。  結論!  こんなに食べ切れない!  はっはっは!  午後5時。直江津に戻って、港の近くの「安寿姫と厨子王の供養塔」に案内しても らう。

 お話も悲しければ、供養等もわびしいじゃないか!  直江津に安寿姫と厨子王の伝説があったんだね。  森鴎外の『山椒大夫』の元ネタだ。

 午後5時15分。直江津駅近くで、降りて、少し町並みを見て行く。 「富寿し」で、玉子焼きを買う。1本840円。  お寿司屋さんが本業だけど、ガイドブックによれば、玉子焼きが名物と書いてあっ たのだ。  これ以上買っても、食べられないことがわかっているんだけど、これが『桃太郎電 鉄』の仕事であるから、買わねばならない。  さすがに嫁が「重い!」と悲鳴をあげた。  私は手が不自由なので、片手にしか物をもてないし、重いものを持つとバランスが 崩れて、歩きながら右に蛇行して行ってしまう。  そんなわけで、荷物はぜんぶ嫁が持ってくれるんだけど、あちこちで買った名産品 のビニール袋だらけで、高田公園の桜みたいになっている。  あれから、イカの一夜干し、もずくなども買っている。  直江津の町並みは、ちょっと寂れすぎだなあ…。  午後6時13分。直江津駅から、越後湯沢行きのはくたか17号に乗車。  足が膨れ上がっているのが、よくわかる。  靴を脱いで、まず熟睡。  午後7時1分。越後湯沢駅に到着。  行きは、越後湯沢駅から、直江津駅までの間に、十日町駅に停車したんだけど、こ の列車は、十日町駅にも停車しない。直江津駅からひとつめの駅が、終点の越後湯沢 駅だ。大胆な時刻表だ。  午後7時11分。越後湯沢駅から、東京行きとき334号に乗車。

 車中にて、夕食。 「鱈(たら)めし」をまず食べる。  うまいよ、これっ!  棒ダラがもともと好きだったので買ったんだけど、甘さがなんともいえずいい。  タラコは、半生というか、ちょっと炙った程度なので、しょっぱくて、棒ダラの甘さ とよく合う。  ご飯がまた昆布飯と凝っている。

 器が小さいので、高をくくっていたけど、量も多い。  これは直江津名物として、イチ押しにできるくらいの味だ。  こういう現地で買ってみないとわからない名品があるから、取材しないと『桃太郎 電鉄』は作れない。  富寿しの玉子焼きも食べる。  うまいじゃないか!

 きょうは、食べるものぜんぶが当たりだ。  おいしいものに出会えた旅は、それだけで80点以上だ。  午後8時23分。東京駅に着く。  午後9時。帰宅。  げっ! 横浜ベイスターズが、阪神相手に4−0で、勝っている!?  4、4、4連勝?  4連勝なんて、ここ2年間まったくなかったぞ!  阪神戦3連勝だって、たしか3年ぶりのはずだ。  えっ? えっ? えっ?  ひょっとして、中日と並んで、首位? 「首位」?  その言葉、知らないなあ!  だいぶ前に聞いたことがあるけど、意味は忘れたなあ。  はっはっは!  考えたこともなかった言葉だよ。  横浜ベイスターズ・ファンの清正まなつチャン、江口貴博くんからも、狼狽した メールが届く。  今年途中でぱったり勝てなくなっちゃいそうで、怖い。  まだ3連敗すれば、最下位に転落するような時期だしね。  でもいまの時期、猛打で各選手が打率ベストテンの上位を占めていると「ひょっと すると、今年は行けるかも」といいほうに勘違いして、打率はあがるかも。  ああ! 万年最下位チームのファンは、喜び方がわからな〜〜〜い!

 
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