7月14日(月)

 昨夜、ようやく先週の『マネーの虎』を録画で見ることができた。
 ひさびさに、ぶるぶる震えるシーンがあった。
 フランスロールで、「虎」側にまでに上り詰めたほうではなく、ラーメンのほうだ。
 
 流暢に話す志願者。
「あっさり」と「こってり」で、「あっさり麺」というネーミングの素晴らしさ。 非
の打ち所がないような展開で番組は進んで行く。

 ところが、ひとりの女性社長の「あなたの性格的な欠点は何ですか?」で、絶句した。
 黙ってしまったのだ。

 すごいね。『虎』側として、この番組に登場する社長さんは!
 人間の本質を見抜くのが上手い。
 …というより、それだけ多くの人に騙されて、あの席に到達したんだろうなあ。
 仕事するときに、自分の欠点をさらそうとしない人が、どれだけ多いことか! 同様
に、「出来ません!」、「無理です!」、「苦手です!」といえない人が、どれだけ多
いことか!
 
「出来ない!」ということは、そのひとことで仕事が出来なくなる場合が多いから言い
づらい気持ちはわかる。でも、嘘をついて「出来ます!」といって、失敗した場合には、
二度目のチャンスはなくなる。
「出来ない!」といえば「じゃあ、この仕事ならできる?」と言ってくれる人は多いの
に。しかも「出来ない!」といった上で、仕事すれば、少々のミスや、失敗は許してく
れるものだ。

 私のもとを消えて行った人の大半が「出来ます!」と豪語して、出来なくなって去っ
て行った人たちばかりだ。
 私は、そんなに高いレベルを要求していない。

『マネーの虎』は、いつも社長さん側がおもしろい。

 午前10時。東京に帰る支度。
 といっても、荷造りは嫁がぜんぶやってくれるので、私はやることはない。
「この本も東京に送ってくれる?」と、宅急便の箱をパンパンにさせることくらいだ。

 午前11時。ヤサカタクシーの宮本さんが迎えに来てくれる。
「どうせ東京に帰るなら、お伊勢参りをして行こう!」
 例によって、無茶苦茶な寄り道をしていく。

 えっ? 事態を飲み込めていない人がいる?
 京都から、伊勢によって、伊勢から、名古屋、京都と帰るだけですよ。
『桃太郎電鉄』では、京都から伊勢まで、わずか4マス!
 近いのですよ。

 そんなわけで、名神高速道路をひた走り、栗東(りっとう)インターで降りて、石部
(いしべ)、水口(みなくち)、土山(つちやま)といった江戸時代の東海道五十三次
の道を走り、鈴鹿(すずか)を越えて、関(せき)に出る。
 関の先の亀山から、伊勢自動車道で、芸濃(げいのう)、津(う)、久居(ひさ
い)、一志嬉野(いちしうれしの)、松阪(まつさか)、勢和多気(せいわたき)、玉
城(たまき)を通って、伊勢へ。

 遠いやんけ〜〜〜ッ!  はっはっは。もっと近いと思っていた。  伊勢神宮の内宮(ないぐう)に着く頃には、午後1時30分になっていた。

 腹減った。伊勢うどん、食べたい。  あっ。しまった!  魂胆がバレてしまった。  私がもともと、お伊勢参りなどという信仰心などあるわけがない。  伊勢うどんが食べたかっただけだ。  もう少しほかにも食べたいものがあるけど。  何はともあれ、おかげ横丁の「わらじや」へ。  伊勢うどんと、手こね寿司のセット、1000円を注文。

 伊勢うどんのたまり醤油の黒い濃厚なタレをかき混ぜる。  ずんぐり、むっくり、柔らかいうどんをかき混ぜる。  黒くなった、黒くなった。  スープは、ない。  讃岐の生醤油うどんに近い。  さぬきうどんだと思って食べると、拍子抜けするくらい腑抜けにやわらかい麺にびっ くりする。  でも、甘くておいしいのよ。    手こね寿司もおいしい。  漁師さんが手早くご飯を食べるために、カツオを醤油に漬け込んで、酢飯の上に乗せ て食べたことから広まった。  おいしいんだけど、量が多いと、飽きてくるので、伊勢うどんと、手こね寿司のセッ トにしている。  ふうっ。これでなんとか、空腹が満たされた。  おかげ横丁を歩く。  月曜日だというのに、観光客が多い。

「ひゃあ! 伊勢って、いつのまにこんなに立派になってん!」と、ヤサカタクシーの 宮本さんが驚いている。  20年以上前の伊勢しか知らない人が、ここを見たら、あまりの変貌ぶりにきっと腰 を抜かすと思う。  へ〜〜〜! 松阪牛の串焼きなんか、始めたのか!  おいしそうだな。  帰りに食べよう。

 ほうっ。蒲鉾(かまぼこ)を揚げて、串に刺して売っているお店がやたらと増えたな あ! 「棒天ぷら」というのか。  棒天ぷら屋。 『桃太郎電鉄』の物件名になりそうな名前だな。  今回の『桃太郎電鉄12〜西日本編〜』に入れようかなあ。  さすがに、もうそろそろ物件名を変更するのはよそう。  しかも、まだ食べていない。  食べてから、その評価を次の作品に反映させよう。 「すごろく団子」というお店があったぞ!  看板にサイコロが入っている。

 何だ、すごろく団子というお団子はないのか。  でも、このお店で売っていた、タコの串揚げと、冷やしレモン水はおいしかった。

「伊勢福」というお店のマークも、サイコロだった。  サイコロ・グッズを集めているので、このお店ののれんがほしかったんだけど、もち ろん断られた。当然だ。

「伊勢名物さめのたれ」という、文字が多い。  前に来たときは、全然目にしてないぞ。  サメをみりん漬けにしたものか。  買って帰るかなあ。  ほかにも買いたいものあるしなあ…。  午後2時。おかげ横丁の首都・赤福本店へ。 『桃太郎電鉄』では「ふくふく餅」の名前で登場するお店だ。  このお店は、まさに私の桃鉄人生のスタート地点のようなものだ。  高校の卒業旅行で、男ばっか6〜7人で、大垣行き夜行列車に乗って、伊勢から紀伊 半島の潮岬まで旅行したのが、ちょくちょく旅に出るきっかけになったのだ。そのとき 食べておいしかったのが、午前6時名古屋駅ホームのきしめんと、伊勢で食べた赤福餅 だ。  以来、旅に出て、名古屋駅に寄るときは、必ず赤福餅を食べ、ひどいときなど新幹線 で、わざわざ名古屋駅で降りて、駅構内で赤福餅を買って、次の新幹線まで東京に帰る なんてことをしていた。  食べ方は、もちろん、箱食いである。  1箱、12個入っている赤福餅を、備えつきのへらで、ぱくぱくと12個東京駅に着 く前に食べてしまう。  身体に悪くないのかって?  悪かったから、入院したんですよ。  赤福餅の話を始めると、きりがない。    で、きょう、ここに来たのは、赤福のカキ氷を食べるため。  毎年、6月、7月、8月の3ヶ月間だけ、このおかげ横丁でだけ、赤福入りのカキ氷 が食べられるのだ。最近、鳥羽駅前でも、この赤福のカキ氷を食べられるという情報も 入手したけど、やっぱり食べるなら、ここで食べなきゃね!  そういえっば、名古屋のメルサえも食べられるような話を聞いたなあ。  というわけで、きょうの寄り道旅行の全貌が明らかになったであろう。  容疑者・さくまは、この時期に、伊勢に来ないといけない理由があったのだ。 伊勢 うどんは、いつ来ても食べられる。  しかし、赤福氷だけは、この時期にしか食べられない。  おまけに、容疑者・さくまは暑いのが苦手。  伊勢の夏の暑さは、頭がぼい〜〜〜ッとするような暑さだ。 「亀さん! さくまは伊勢に向かったに違いない! 行こう!」  十津川警部は、叫んだ!  そうなんだよ。赤福のカキ氷はおいしいんだけど、毎回来るたびに、汗でびしょび しょになるのが嫌でね。  今朝、起きたら、いい具合に曇り空なんで、急に思い立ってしまったのよ。  あまり暑くない日に、赤福のカキ氷が食べたい。  ここ数年、ずっとそう思っていた。  私のお伊勢参りは「赤福参り」。

 そんなわけで、「赤福本店」の前の店舗で、赤福氷 400円を、私、嫁、ヤサカタ クシーの宮本さんと食べる。 「うわっ! 来た! きーーーーーん! まいった!」  ヤサカタクシーの宮本さんが苦しんでいる。  抹茶風味のカキ氷のなかに、赤福の餡(あん)が入っている。  あの絹のようにさらさらのこしあんが、カキ氷に合うこと、合うこと!  いつもは、赤福餅のなかに入っているお餅も、赤福氷のときだけは、外に出て、白玉 風にカキ氷のなかにいる。

「お餅がおいしいなあ! うわっ! 来た! きーーーーーん!」  どうもヤサカタクシーの宮本さんは、こういう食べ物を食べなれていないせいか、 さっきから何度もこめかみを痛くしている。  私なんか、全然きーーーん!と、来ない。

 さらに、おかげ横丁を歩く。  どうも来るたびに、おかげ横丁は広がっている。  お店も増えている。  何より、変わった食べ物をたくさん売っているのがいい。  桑名の「貝新(かいしん)」が、はまぐりの串焼きを売っている。  こういう老舗が、しっかりした味を提供しているところに、おかげ横丁が、ほかの観 光地に比べて、格段に素晴らしいところだ。  粗製濫造なお饅頭しか売っていないところは、一線を画している。  全部、江戸時代風に統一している素晴らしさは、ほかの観光地が大いに見習うべきだ と思う。京都ですら、このおかげ横丁を学ばないといつのまにか、観光王国の名を奪わ れてしまうかも。  はまぐりの串焼きもおいしかった。  冷やしキュウリ1本 100円っていうのも、いいなあ。  本当に観光客が飽きないように、いろんなものを作っている。  ちゃんとお伊勢参りの歴史資料館もある。

 宝くじも売っている。江戸時代の「富くじ」のイメージだな。  カメヤマローソクだ!  へえ。「煙管(キセル)」で煙草を吸わせてくれるのか。  1回 20円か。  安いなあ。  おもしろいけど、私はもう煙草を吸うのやめちゃったからなあ。 「ほなら、私が試しましょか!」  ヤサカタクシーの宮本さんが、試してくれた。

「味は、煙草とおなじですか?」 「おんなじ、ちょっときついかな?」 「ショートホープよりも?」 「きつい! ゲホッ、ゲホッ! 最後のんが、えらいきつかった!」  あっ。さっきからやたらと目にする「さめのたれ」が食べられるお店があるぞ! で も、もうお腹が苦しいよ。  そんなに量多く食べたと思えないけど、短時間にいろんなものを胃袋に過剰出荷し過 ぎた。  でも、食べよう。  これが私の仕事だ! 「海老丸」で、「さめのたれ」のみりん漬けと、塩焼きの2種類。さんま寿司。猟師汁 など、注文する。

「さめのたれ」は、みりん漬けのほうがおいしかった。  まあ、『桃太郎電鉄』の物件に登場させるほどの味ではない。  さんま寿司を、なんとかひとつだけ食べる。  うまい! でも苦しい! 完全にお腹がまあるくなった! 「さいみそ」と呼ばれる、醤油のもろみがおいしかった。

 コロッケの看板があった。  いつもなら喜々として走るのに、もう食べたくない!  こんなに苦しくなったのは、ひさしぶりだ。

 おかげ横丁の帰り道に、食べる予定だった、松阪牛の串焼きも、棒天ぷらも、とうふ ソフトも食べる気にもならず。  しまいには、絶対買って帰るつもりだった「伊勢たくわん」すら、買う気にもならな いほど、お腹が苦しい。  海老ラーメンも買いたかった。 「伊勢おかげ横丁」は、絶対お勧めだよ!  和風ディズニーシーだよ。

 何たって、買い食いのネタの宝庫だ。  見るだけでも楽しい。  松阪牛の串焼き、棒天ぷら、手こね寿司、伊勢うどん、冷やしキュウリ、赤福氷、伊 勢たくわん、はまぐりの串焼き…、食べ歩きだけで、1日ここにいても飽きないと思う。  もう一度、ゆっくり来ようっと。  午後3時30分。宇治山田(うじやまだ)駅へ。  特急に乗車の時間が近いので、ヤサカタクシーの宮本さんとは、そそくさとお別れの 挨拶。きょうもありがとうございました!

 午後3時52分。名古屋行きの近鉄特急に乗車。  前の上本町(うえほんまち)行きの特急が、前のほうから、8号車、7号車、6号車… と下がっていく編成だったので、次も6号車の前で待っていたら、名古屋行きの特急は、 前のほうから、1号車、2号車、3号車の順。  お土産持って、コンピュータ引きずって、反対の6号車まで歩くの、しんどいよ!  何でおなじホームから出る電車の乗車位置が違うんだよ!  どうも近鉄というのは、ホームページの出来も重たいし、見づらいし、横揺れも激し いし、列車の色も地味で、好きになれないなあ…。  何度か寝るけど、激しい揺れで、何度も目が覚める。  午後5時15分。名古屋駅に着く。  新幹線のキップが買える窓口がひとつしかないので、10数人並んでいる。  でも、ここで買わないと、新幹線のほうに直接行ける改札口を利用できないようにな っている。便利なようで不便だ。  待たされるのが嫌なので、遠回りして、JR名古屋駅のほうに向かう。  午後5時47分。東京行きのぞみ22号に乗車。  乗車前に、一応、駅弁を買う。  しかし、まだお腹いっぱいは解消されず、苦しいまま。  VAIOを取り出して、仕事を始めるも、かがむとお腹が苦しい。  午後7時26分。東京駅に着く。  とうとう駅弁を食べず終い。  東京は、寒いね!  冷房が入っているみたいだ。  午後8時。帰宅。  一週間ぶりだ。  ようやく、駅弁を食べられそうな状態に。 「名古屋TOP3」という駅弁。  えびフライ、チキンライス、みそかつが、名古屋のTOP3のようだ。  プラスきしめん付きというのが、笑える。

 うん。えびフライ1本。みそかつは4切れくらい。チキンライスの味もいいし、これ はいいかも。ちょっと覚えておいて、今後名古屋では、これがいいかも。みそかつのみ の駅弁もいいんだけどね。  本当に最近は、どこも駅弁に工夫が多くて、楽しい。  思いがけず、伊勢で歩きすぎたので、疲れた。

 

-(c)2003/SAKUMA-