7月4日(金)

 さすがに眠い。
 首が重い。
 テスト・プレイ2日連続のせいで、首にコリが出ている。

 ゲームというのは、自分がプレイするほうが楽で、他人のプレイを見るほうが、疲れ
る。自分の予想しない方向へプレイヤーが動くからだ。
 しかもありとあらゆるポイントを、4人がふだんどおりにプレイしている猛スピード
のなかで、チェックしないといけない。

 英語の同時通訳の人が、15分同時通訳をやったら限界になって、ほかの同時通訳の
人と交代するらしいけど、その気持ちがよくわかる。

 午前11時。嫁と、銀座の「三越」へ。
 ほしい旅行鞄を昨日見つけたので、買いに来た。
 ところが、じっくりよく見たら、使い勝手が悪いことがわかったので、やめることに。
なかなか希望通りの旅行鞄が見つからない。
 私の場合、旅行鞄の使用頻度は極めて高いから、要求も高い。

 4Fの「カフェ・ド・ジョアン」へ。
 パン屋さんの「ジョアン」のカフェなので、バスケットにいっぱいパンが山のように
積まれた、パンヴァリエというメニューがあったので、食べる。

 パンだけではさみしいので、コーンクリームのスープも単品で。  なかなかいける。  残ったパンは、持ち帰れるように、紙袋を用意してくれるのがいい。  頻繁に来るほどではないが、たまには来てもいいお店だ。  午後1時。築地のハドソンへ。  本日、テスト・プレイ・ウィークの3日目。最終日。  出場選手は、かつて10年ほど前、「芸能人桃鉄大会」というのが、開催されて、そ のときに優勝して、その後桃太郎チーム入りした宮路一昭くん。40歳。 当時、チャ ゲ&飛鳥のようなアイドル2人組のひとりだった宮路一昭くんも、いまや体脂肪30% のハゲ&デブカ?である。  そして、もはやテスト・プレイといえば、登場するのが当然のような2人組。『週刊 少年サンデー』で、読者ページ「青春学園」を連載中の、コイズミリュウジと、石川キ ンテツ! ユニット名・ストロウ・ドッグス。  ストロウ・ドッグスが出場となれば、当然、井沢どんすけである。  しかし、井沢どんすけは、すでに2日前のテスト・プレイに参加して、大敗を喫して いる。  で、4人目は、誰かというと…。  やっぱり、敵に回すと恐いが、味方にするともっと恐い男・井沢どんすけなのである。 わっはっはっは。  やっぱり、どっこいズ(井沢どんすけ、すとろう小泉、石川キンテツ)が揃わないと ね!

「えへえへえへっ。井沢どんすけです。一昨日のは、軽いウォーミング・アップのよう なもので、きょうが本番のようなものですよ!」  井沢どんすけという男、いくら大敗しても、翌日には「きょうは優勝できそうな気が しまう!」と言ってのける、お目出度き人なのである。  というわけで、本日の対戦は、「宮路一昭 VS どっこいズ〜南海の大決戦」と銘 打って行われる。  かつての桃鉄名人・宮路一昭くんが、日本一桃鉄が下手などっこいズと、どう戦うか?  テスト・プレイ・ウィークの最終日を飾るにふさわしい対決である。  コイズミリュウジが「数年前、さくまサンの日記で雄姿を見ていた、宮路一昭さんと 戦えるなんて、夢のようです!」  石川キンテツも「アニメ『キャプテン翼J』の主題歌を歌っていた人と、プレイでき るなんて光栄です!」  ストロウ・ドッグスのふたりのほうが、井沢どんすけより、世渡り上手のようである。 「宮路一昭くん! どっこいズ相手なら、勝って当然だよなっ!」 「へへへ。、ちょっとプレッシャーが!」 「ダメだよ、宮路一昭くん! どっこいズに負けるようなら、作曲の発注数を減らすよ !」 「ははは。そ、それは、困る」  観客席は、札幌開発スタッフの川田忠之くん、込山勉くん、小坂晃弘くん、音楽担当 の佐藤昭洋くん。  ハドソン宣伝部の梶野竜太郎くん、藤原伸介くん。  読売広告の岩崎誠。  私、嫁、柴尾英令くん。  札幌開発スタッフは、それぞれ、夕方には、飛行機で札幌に帰らないといけないの で、試合の途中で、退席の予定。  ゲーム・スタート!  最初の目的地は、出雲!  いつものように、どっこいズの3人は、金魚のフンのように、中仙道から、ぞろぞろっ、 ぞろぞろっ、音がするかのように、進んで行く。  宮路一昭くんは、東海道から。  こっちのほうが、青マスが多いから、距離は遠くとも、赤マスで停滞することがない ので、結果的に早い。  突然、コイズミリュウジが叫ぶ! 「あ〜、やばいなあ!」 「どうしたんだ、コイズミリュウジ!」 「宮路一昭さんが…!」

 宮路一昭くんが「えっ? 何? いま4件、物件を買っただけだけど…」 「もうダメっすよ!」  位負(くらいま)けするという言い方があるが、自ら、ちっともまだ位負けする場面 でもない段階から、敗北宣言するコイズミリュウジという男、ちょっと変である。  まあ、どっこいズの3人が、かつての桃鉄名人・宮路一昭くんを強く意識している証 拠と、受け取ろう。  しかし、「連携プレイで、宮路一昭さんを倒しましょう!」と、言葉に出してはいる どっこいズであるが、連携プレイなどという高等技術を彼らが駆使できるはずもない。  戦国時代の足軽のように、いざ試合が始まるや、浮き足立つのにさほど時間はいらな かった。  1年目の9月。スタートから、わずか5ヶ月目。  井沢どんすけは、石川キンテツが☆印カード売り場で、特急カードを2枚買うのを見 るや、あわてて、徐行運転カードを食らわす。  石川キンテツ「井沢どんすけサ〜ン! みんなで宮路一昭さんを倒すんじゃないんで すか〜?」  井沢どんすけ「えへえへえへっ!」  だから、井沢どんすけは、敵に回すと恐いが、味方にするともっと恐い男だってば!  1年目12月。  最初の目的地、出雲に宮路一昭くんが到着! 「うわあ! やられたあ!」 「やっぱり、宮路一昭さん、強い!」 「オレたちは、足元にも及ばない!」 「もうダメだあ!」 「負けたあ!」  ひょっとすると、どっこいズは、本当は負けるのが、好きなのではないか?  たっ たひとりの人間が、目的地に入っただけで、ここまで落胆するものではないと思う。  貧乏神は、井沢どんすけに。 「井沢どんすけサン! 2日前の展開と、まったくおなじですよ〜!」 「あれ〜? そういえば、そうだなあ! 連続ビリは嫌だなあ!」  おっと! 2番目の目的地には、井沢どんすけが入ったぞ! 「えへえへえへっ! ボクの時代が来ましたね!」  もう聞き飽きた言葉である。  どっこいズの3人は、目的地に入るたびに、「ボクの時代が来ましたね!」というの が、口癖なだけである。  お祭りの「そいや! そいや!」と、あまり変わらない。  3番目の目的地は、帯広! 「遠いなあ!」 「うわ〜〜〜、北海道かあ!」  ただひとり、宮路一昭くんは、中国地方から、九州地方に向かう。  しかし、向かい始めて、突然、悲鳴を上げる。 「あっ、あれ? 阿蘇にワープ駅がない!」 「へっへっへ。宮路一昭くん、毎回、ワープ駅がおなじ場所とは限らないんだよ〜!」 と、私。 「えっ? じゃあ、ひょっとして、館山のワープ駅も…?」 「館山は、今回、物件駅だよ〜〜〜!」 「そ、そ、そんなあ…」  宮路一昭くんが、いつも房総半島のワープ駅ばかりつかって、プレイするので、『桃 太郎電鉄12〜西日本編〜』では、ワープ駅の場所を変えてみたのだ。  房総半島のワープ駅は、便利すぎて、旅行気分が半減するというお客さんたちの意見 も多かったので取り入れてみた。  1年目が終了。 <1年目> 1位・宮路一昭 2位・井沢どんすけ 3位・石川キンテツ 4位・コイズミリュウジ  やはり、宮路一昭くんが、トップである。  2年目。 「うわ〜〜〜! やったあああああっ!」と、コイズミリュウジがみんながびっくりす るような大声を上げる! 「コイズミリュウジ、リニアカードでも手に入れたのか?」 「千両箱カードですよ〜! やったあ!」 「えええっ! 千両箱カードぐらいで、そこまで喜ぶかあ?」 「千両箱カードは勝敗を分けますから!」 「えええっ!? 千両箱カードひとつで、勝敗分かれるなよ〜!」  どうも、どっこいズの戦略は、常人と違うところにある。  宝くじカードをたくさん買い込み、最後の年は、ぶっとびカードで、ホールイン・ワ ンを狙う。  安易な必勝方法である。  しかも、2年目にして、どっこいズの3人は、宮路一昭くんをほったらかしにして、 貧乏神の擦り付け合いに邁進する。 「何だよ、けっきょく、いつものどっこいズ(井沢どんすけ、すとろう小泉、石川キン テツ)戦と、変わらない展開じゃないか!」 「そうですかねえ!」 「気分は、宮路一昭さんに勝って優勝なんすけどね!」 「あくまでも、どっこいズ VS 宮路一昭さんですよ!」 「でも、強い選手が、弱い選手を無視するというのは、聞いたことがあるけど、弱いや つらが、強い選手を無視するなんて、聞いたことがないぞ!」  おお! 貧乏神を後ろにつけている井沢どんすけが、宮路一昭くんまで、あと5マス と迫ったところで、急行カードをつかったぞ!  やっと、宮路一昭くんと“指しの勝負”をする気になったか!  しかし、無常にも、井沢どんすけの急行カードの出目は。1と1のゾロ目。 「やるなあ! 井沢どんすけ!」 「笑わすのうまいなあ!」 「えへえへえへっ!」 「井沢どんすけ! 自分がいちばん笑うなっ!」 <2年目> 1位・宮路一昭 2位・井沢どんすけ 3位・コイズミリュウジ 4位・石川キンテツ  3年目に突入。  この辺から、ワープ駅戦法を封じられた宮路一昭くんの調子が、悪くなる。  コイズミリュウジが、するするっと、3連続で目的地に入る。 「おお! コイズミリュウジ! すごいじゃないかあ!」 「……………」 「コイズミリュウジ、鎌倉決戦に続いて、2連勝かあ?」 「……………」 「コイズミリュウジ、返事しろよ!」 「……………」  困ったことに、コイズミリュウジという男、『桃鉄』で弱いときは、よくしゃべるが、 首位に立つと、まったくしゃべらないどころか、私が話しかけても、返事をしなくなっ てしまうのである。  不思議なリアクションをする男だ。 <3年目> 1位・コイズミリュウジ 11億円 2位・宮路一昭      3億円 3位・井沢どんすけ    2億円 4位・石川キンテツ    2億円  面倒なので、億円以下は、切り捨てて表示している。  コイズミリュウジ、首位に立ったものだから、ますます寡黙になる。  おお〜〜〜っ、ここで、宮路一昭くんについていた貧乏神が、ゲスト・ボンビーに変 身してしまった! 「これって、××××××××のような攻撃をするんですか?」 「宮路一昭くん、自分の目で確かめてくれ! テスト・プレイだ!」  宮路一昭くんのゲスト・ボンビーに対する感想。 「いままでで、いちばんひどいゲスト・ボンビーじゃないですか?」 「そうかもしれない…」 「いままで農林物件だけは…」 「宮路一昭くん、それ以上は、公表できない!」  さらに、宮路一昭くんについていたゲスト・ボンビーは、貧乏神に戻り、すぐさまキ ングボンビーに変身した!  これは、痛い! むごい!  ああ! 宮路一昭くんのかつての栄光が、ガラガラと崩れ行く。 「芸能人桃鉄大会」で、ピエール瀧くんに勝ち、浅草キッドのふたりに勝ち、オセロの ふたりに勝ち、穴井夕子さんにも勝った輝かしい戦績は、このまま、あの日本一桃鉄が 下手などっこいズ(井沢どんすけ、すとろう小泉、石川キンテツ)ごときに、負けてし まうのか?  宮路一昭くんもさすがに、「でもまあ、一応、ハンディということで…」というのが、 やっと…。動揺は隠せない。  宮路一昭くんのまさかの不調を、冷ややかに横目で見るかのように、寡黙なコイズミ リュウジは、淡々と目的地に入り、地盤を固めて行く。  まるで、ゴルゴ13のような目つきだ。  ☆印カード売り場でも、黙って、笑いもせず、新幹線カードを3枚も買う。 「うわああ! 新幹線カードを3枚も〜?」 「……………」 「コイズミリュウジ、返事しろよ!」 「……………」 <4年目> 1位・コイズミリュウジ 16億円 2位・石川キンテツ    3億円 3位・井沢どんすけ    3億円 4位・宮路一昭         2320万円。    宮路一昭くん、まさかの、最下位転落。  ゲスト・ボンビー、キングボンビーと、続けて攻撃を受けては、最下位も仕方がない だろう。 「コイズミリュウジ! ダントツじゃないか!」 「……………」 「独走だなあ!」 「……………」 「コイズミリュウジ、返事しろよ!」 「……………」  5年目。哀れ、宮路一昭くん、本日、二度目のキングボンビーを食らう。  ここで初めて、どっこいズの生態に気がついた。  どっこいズは、基本的に、『桃鉄』が下手である。  下手であるということは、目的地に入ることが少ない。  しかも、3人は、必ず金魚のフンのように、隊列を組むかのようにで、目的地に向か う。  そして、目的地の前で、右往左往して、なかなか目的地に入れない。  要するに、ひとたび貧乏神が、宮路一昭くんいついてしまうと、どっこいズは、なか なか次の目的地に入らず、次の目的地が宮路一昭くんに有利に働くことがなくなってし まうのだった。  ショッカーO野ゲームだ! 「宮路一昭くん! 今回から、ショッカーO野ゲームは、持ち金がマイナスの人が優勝 した場合、持ち金を0円にしてくれたあげく、優勝賞金がもらえちゃうんだよ!」 「ええ!? それはやる気が出ていいですねえ!」  しかし、鈴カステラのような顔をした無口なコイズミリュウジが、ショッカーO野 ゲームに優勝して、宮路一昭くん復活の夢を壊す! 「コイズミリュウジ! ショッカーO野ゲームまで優勝するか!」 「……………」 「つきまくりだなあ、コイズミリュウジ!」 「……………」  さらにコイズミリュウジは、ショッカーO野に優勝した、次のターンで、目的地にも 到着!  この世の花を謳歌する! <5年目> 1位・コイズミリュウジ  22億円 2位・井沢どんすけ     8億円 3位・石川キンテツ     8億円 4位・宮路一昭          −800万円 「2位以下に3倍の差をつけて、コイズミリュウジ、独走だよ!」 「……………」  相変わらず、コイズミリュウジは、氷の中に閉じ込められた大怪獣ガメラのように固 まったままである。ちょっと不気味だ。  さすがに「コイズミリュウジ! 少しは、しゃべれ!」と、柴尾英令くんから、激が 飛ぶ。 「いやいやいや…」  やっとしゃべった言葉が、「いやいやいや…」では、初対面の人なら、椅子を蹴って 退席するだろう。ソフト無礼と呼ばれるコイズミリュウジであるが、本当に無礼であ る。 <6年目> 1位・コイズミリュウジ 26億円 2位・井沢どんすけ   15億円 3位・石川キンテツ   14億円  4位・宮路一昭      4億円  ようやく、宮路一昭くんが黒字に戻り、復活の糸口を探し始めるも、コイズミリュウ ジは、上昇気流に乗りっぱなしで、総資産を増やす。 「井沢どんすけ! そろそろ、おまえがコイズミリュウジを追撃するとか、ゲスト・ボ ンビーを食らって、崩壊するとか、派手な展開を見せてくれよ! コイズミリュウジは しゃべらないし、つまんないよ!」 「そろそろトップを狙いたいですねえ!」  しかし、井沢どんすけについていた貧乏神は、キングボンビーに変身した。 「うわああああああ!」。  パチパチパチッ! パチパチパチッ!  拍手が巻き起こる。  しかも、目的地は札幌。  井沢どんすけだけ、岡山。  ほかの3人は、青森近辺にいる。  キングボンビーをたっぷり味わうことができる。  井沢どんすけが、おもむろにカード・コマンドを選び、ぶっとびカードをつかう! 「渾身(こんしん)のぶっとびカードですよ!」  井沢どんすけの叫び声にも、力が入る! 「行け〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」 「おお! 角度良〜〜〜し!」  おお! 本当に井沢どんすけのヘリコプターは、札幌に向かって、一直線! 「や、や、やばい! ホールイン・ワンだ!」  誰もが、そう思った瞬間、佐渡ヶ島に着地! 「あれれれれれ…」 「ハラホレヒレハレ…!」  井沢どんすけ、恒例の崩壊劇の幕開けだ。 「まだ、大丈夫ですよ!」といいながら、井沢どんすけは、新潟駅の上のカード駅が並 ぶラインで逆転を賭ける。 「いいカードを引きますよ!」  しかし、いきなり、幸福な王子カードを引く。 「井沢どんすけ! そろそろ崩壊の音が聞こえてきてる?」 「ふぐぅ…!」 「井沢どんすけ! 返事が日本語になっていな〜〜〜い!」  このあと、石川キンテツが、今回初登場の物件が半額で買えるシルバーカードで、1 0億円の物件を買い、一躍、首位に躍り出る。 「ダメだ、ダメだ、ダメだ、ダメだ、ダメだ…!」 「やばい、やばい、やばい!」  いきなり、無口だったコイズミリュウジが、しゃべり始めた!  ただし、語彙がダチョウ倶楽部レベルだ。 <7年目> 1位・石川キンテツ    29億円 2位・コイズミリュウジ  28億円 3位・井沢どんすけ    10億円 4位・宮路一昭       4億円 「井沢どんすけ〜! 順調に落ちて来てるなあ!」 「そうですねえ!」 「もうちょっと派手な急降下を見せてほしいもんだね!」 「それは嫌ですよ!」  しかし、井沢どんすけ、スリの銀次の当たり年に、いきなりお金を全部奪われる! 「そ、そ、そんな…」  みんなの期待を決して裏切らない井沢どんすけであった。  しかも、持ち金0円の井沢どんすけについていた貧乏神が、満を持して、ゲスト・ボ ンビーに変身〜〜〜!  あまり多くを語ることができないのだが、今回のゲスト・ボンビーは、巻き添えを食 うと大変なキャラである。  首位を走る石川キンテツが巻き添えを食らう! 「さくまサン! これって、いままでのゲスト・ボンビー・シリーズで、最強じゃない ですか!」 「こんなすごいの見たことないっすよ!」 「何で、ゲスト・ボンビーがついている井沢どんすけサンよりも、ボクのほうが被害額 多いんですかあ!」  わめき散らす石川キンテツの言葉から、ゲスト・ボンビーをご想像ください! <8年目> 1位・コイズミリュウジ  45億円 2位・石川キンテツ    20億円 3位・井沢どんすけ        450万円 4位・宮路一昭        −1070万円 「……………」  また、コイズミリュウジが寡黙になってしまった。 「宮路一昭くん、あと2年しかないぞ! マイナスだぞ!」 「宮路一昭さん! このままでは、どっこいズに負けるという最高の屈辱を受けること になってしまいますよ!」 「うーーん。せめて、どんちゃん(井沢どんすけ)には、勝ちたいなあ…」 <9年目> 1位・コイズミリュウジ  45億円 2位・石川キンテツ    21億円 3位・井沢どんすけ    12億円 4位・宮路一昭       4億円 「あれ? 井沢どんすけ、いつのまに浮上してきたんだ!」 「えへえへえへっ!」 「まさか、いまから優勝を狙ってるんじゃないだろうなあ!」 「ボクには、秘策がありますから!」 「井沢どんすけの秘策は、実現したところをまだ一度も見たことがないからなあ…!」 「えへえへえへっ!」  4月、石川キンテツがついに、コイズミリュウジに貧乏神をなすりつけた!  その貧乏神が、目的地の高知まであと4マスのところで、キングボンビーに変身す る。  コイズミリュウジ、ピ〜〜〜ンチ! 「やったああああっ!」 「いいぞ〜〜〜!」 「チャンスだ! 全員にチャンスだ!」 「やばい! もうダメだ…!」  しかし、コイズミリュウジがサイコロをふると、なんと! 出目は4ぴったんこ!  まさに、きょうのコイズミリュウジの絶好調を象徴するかのようだ。  目的地の高知に入る。 「ああああぁぁぁぁぁ…!」  3人の落胆の声が、低く、細く、部屋にこだまする。  すでに札幌開発スタッフは、佐藤昭洋くんを残して、みな羽田飛行場に向かってい て、観客数も減っている。  コイズミリュウジが、目的地に入ってしまったために、キングボンビーは、井沢どん すけに移動した。  井沢どんすけという男、本当によくキングボンビーを食らう男である。 「どうせ負けるなら、いっそゲスト・ボンビーのほうがよかったですよ!」  10月。コイズミリュウジは、農林から小判!をぶち当て、約12億円を獲得。  まったく手がつけられない!  しかし、『週刊少年ジャンプ』の「友情」「努力」「勝利」で育った男・井沢どんす けだけは、最後まで勝負をあきらめてはいなかった! 「石川キンテツ! オレに秘策があるから、協力しろ!」 「そ、そうっすか! 何だかわからないけど、協力するっす!」  井沢どんすけの秘策とは!!!!!! 「ええい、とっかえっこカードだあああああっ! コイズミリュウジと持ち金をとっか えっこだあああああっ!」 「井沢どんすけさん! 持ち金マイナスの場合は、とっかえっこカードは、つかえな いっすよ!」 「へっ?」 「井沢どんすけ、何年『桃鉄』をやっているんだよ!」  ゲームは、終わった…。 <10年目>  1位・コイズミリュウジ  90億7530万円 2位・石川キンテツ    17億5780万円 3位・宮路一昭      14億0720万円 4位・井沢どんすけ    −8億2840万円 「コイズミリュウジ、優勝したんだから、ガッツポーズとかしろよ!」 「いやいやいや…」  あいかわらず、首位だと、口数が少ない。  宮路一昭くんは、なんとか、井沢どんすけには勝った。 「もう一度、彼らと対戦させてください! このままでは終われません!」 「宮路一昭くん、次で負けると、どっこいズ入りだよ!」 「井沢どんすけ、またビリか!」 「3日間で、2回ビリは、つらいっすよ!」  午後7時。私、柴尾英令くん、宮路一昭くん、井沢どんすけ、コイズミリュウジ、石 川キンテツの6人で、銀座の「紅虎餃子房(べにとらぎょうざぼう)」へ。

 話題の中心は、ゲスト・ボンビー!  井沢どんすけが、いたくゲスト・ボンビーをお気に入りなのだ。 「前回のブラックボンビーは、陰険なやつだったけど、今回のゲスト・ボンビーは、潔 いというか、格好いいですよ!」 「本当は、今回のゲスト・ボンビーは、ブラックボンビーよりも弱い設定にしたつもり だったんだけどなあ…」と、私。 「でも、あの巻き添え攻撃は、キングボンビーよりも、強いっすよ!」 「うーーーん。困ったなあ! 作者としては、キングボンビーよりも強いゲスト・ボン ビーは作りたくないんだけどなあ…」 「でも、キングボンビーには、×××××××の攻撃があるじゃないっすか!」 「あっ! あれか! あれは、ひどいっすよ!」 「あれが、悪行のひとつで終了だと思ったら、また攻撃するんだもんなあ!」  いかん。これ以上、彼らの会話を再現していると、『桃太郎電鉄12〜西日本編〜』 の全貌を話してしまいそうだ。  午後9時。おなじメンバーで、銀座「カフェ・ラミル」にて、コーヒー。  午後10時30分。帰宅。  わかってはいたけど、どっこいズのテスト・プレイは、いつもどおり疲れる。 それ でも、井沢どんすけから「『全国編』のチューニングは、申し分ない!」とのお墨付き をもらう。  変更点は、1ヶ所のみ。  今夜は、ゆっくり休めそうだ。  その前に、どっこいズ観戦記がつらい。  いつも書き終えるまでに、5時間ぐらいかかる。

 

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