6月5日(木)

 午前10時30分。嫁と、高円寺の整体さんへ。
 妙なもので、整体さんに行く前日くらいに、背中が痛くなったりする。
「もう悲鳴を上げていいんだよ!」と、ガマンしていたものが、開放されるのだ
ろう。
 整体のお兄ちゃんが、「あ〜、腹減った」と言いながら、背中をボキボキッと
やると、痛みが抜けていく。

 午後12時。整体さんの隣りの「風風(ふうふう)ラーメン」で、油そば。

 午後1時30分。築地のハドソンへ。
 きょうは、『桃太郎電鉄U(仮)』の打ち合わせ。

 メンバーは、札幌開発スタッフの川田忠之くん、小坂晃弘くん、込山勉くん。
 メインプログラマーの田中俊介くん。
 ハドソン宣伝部の梶野竜太郎くん、藤原伸介くん。

 私、嫁、柴尾英令くん。  土居ちゃん(土居孝幸)は、家でせっせと絵を描くお仕事。 『桃太郎電鉄12〜西日本編』は、完成間近だけど、『桃太郎電鉄U(仮)』はス タート直後の作品だけに、いまがいちばん大変なとき。  ゲームの根っ子になるような部分の打ち合わせの連続だけに、数多くの困難に ぶつかる。  たとえば、前から念願だった空路を、通常のMAPの上を通そうとすると、そ れだけで大変な騒ぎになる。  まず、第一に空路に見えるだろうか?  飛行機と汽車の区別は?  汽車から、飛行機への乗り換えは?  目的地を示す、矢印は?  この辺はクリアできたとしよう。  問題は、つねにキングボンビーだ。  キングボンビーが大きすぎて、空路の点線が刺さってしまう。  空路の下を歩かせようかというアイデアも出たが、平地の汽車を踏んづけてし まう場合がある。飛行機のあとをついていくキングボンビーというのもね。キン グボンビーとしての威厳が無くなってしまう。  キングボンビーを小さくすればすむ問題だけど、『桃太郎電鉄11〜ブラックボ ンビー出現の巻!』から、巨大化させてしまったから、小さくできない。まして や小さい迫力の無いキングボンビーなんて見たくない。  ほかにも、『桃太郎電鉄U(仮)』は野心作なので、相当綿密に打ち合わせし ないとまずいものばかりだ。  おもしろさを追求すれば、するほど、不都合が噴出するゲームなので、まさに みんなで知恵を絞って、絞って、絞りすぎて、水溜りが出きてしまいそうだ。  午後6時30分。私と、嫁と、柴尾英令くんと、川田忠之くんの4人で、西麻 布の「内儀屋(かみや)」へ。  私と柴尾英令くんのふたりが、投手だとすると、川田忠之くんは捕手なので、 あれこれ仕事上のサインの確認やら、打者(ゲーム)への責め方を、打ち合わせ る。

 とくに私のほうが、引退前のベテラン投手なので、長年の野球生活で得たもの を川田忠之くんに伝授する形になる。  まあ、「致命傷にならない程度の失敗は率先してするべき!」とか、とか、 「相手がバカにできるような弱みを見せないと、相手は息が詰まってしまう」と か、「人は聞けば、だいたい教えてくれる」とか、「私を恐れるより、井沢どん すけの向こうにいる1000万人のお客さんを恐れろ!」といったようなことだ。  正反対のことを言ったかもしれないが、「人の話はすべて話半分で受け取った ほうがいい!」と、フォローも忘れない。はっはっは。

 午後9時。柴尾英令くんが、川田忠之くんを誘ってくれて、夜の町へ。  不思議なものだ。  自分が会社の社長をやっていたときは、こういうときに若い社員が、川田忠之 くんを誘ってなかよくなってくれるような会社をめざしたものだが、こういう場 面で、さっさと社員は帰ってしまって、明け方まで私が川田忠之くんと付き合っ て、午前6時に家に帰って、そこから仕様書を午前9時まで書いて、仮眠して、 また1日をすごすような生活が続いた。  そういう会社作りができなかったので、会社経営をやめたのに、いまは自分の 会社の人間ではない人が、自発的にやってくれる。  先日、浅草キッドの水道橋博士夫妻が月島にもんじゃ焼きを食べに来てくれた ときもそうだ。  読売広告の岩崎誠が、「博士に駐車場の場所を教えて来ます! みなさん、先 にもんじゃ屋さんへ行っていてください!」と言って、飛び出していくと、柴尾 英令くんが岩崎誠の荷物を持って、もんじゃ屋さんに向かう。  もんじゃ焼きを食べ終われば、また岩崎誠が「ボクが博士を駐車場まで送って 行きますから…」とさっさと案内してくれる。  私は「岩崎誠、頼むね!」も「柴尾英令くん、頼むね!」も一度も言っていな い。  こんな会社を作りたかったのになあ…。  午後9時30分。帰宅。 『桃太郎電鉄U(仮)』のテスト・ロムを、これからちょいといじってみようと 思っている。  すでにMAPの骨格は出来上がっていて、汽車ももう動いているのだよ。  発売時期も決まっていない新作ゲームが。  すごいことでしょ?  ほかのゲーム会社の人には、目の毒のような話だ。

 

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