4月22日(火)

 午前10時。嫁と娘が、何やら着物を着ている。

 前から嫁は着物が好きで、よく着ていたのだが、私が病気して以来、ずっと私 の看病が優先で着物を楽しむ余裕がなかった。  私も脳内出血で倒れてから、はや8年目になり、同病の人のほとんどが車椅子 の生活なのに比べて、奇跡的なほど回復した。  お城だって、登ってしまうからね。  そんなおり、菅沼真理(通称:すがねまチャン)さんがまんまと最近、着物に はまったせいで、嫁の着物熱が再燃した。  何も、16歳の娘にまで飛び火しなくてもよいのだが…。  午前11時。家族3人で、銀座の「渡辺内科クリニック」へ。 「渡辺内科クリニック」は、改装していたため、2ヶ月間私は治療を延期してい た。ひさしぶりなので緊張する。  私は人から、図太い神経の持ち主のように思われているが、じつはムチャクチ ャ気が小さいし、臆病だし、神経は細い。  そう言っても信じない人が多いと思うけど、仕事の締め切りを絶対守ること自 体、気が小さい証拠だ。 「締め切りぎりぎりにならないと、仕事がはかどらなくて」という人がうらやま しい。締め切りぎりぎりになったら、私の場合、頭が真っ白になって何も浮かば ないと思う。  そんなわけで、新しくなった「渡辺内科クリニック」に入っただけで、もう緊 張してしまった。もともと病院が大嫌いで、病院というだけで緊張する。  この「渡辺内科クリニック」だけが、緊張する度合いが少ないので、毎月通え るくらい苦手だ。  血圧を測る。 「あ〜〜〜、緊張するなあ!」 「ははは。別に緊張しないでいいですよ!」 「それができれば、楽なもんで…」 「あっ。146の94。ほんとに血圧上がってますねえ!」 「やっぱり〜! ダメなんですよ〜! 新しい環境に弱くて…」 「まあ、この程度だからいいでしょう!」  この「渡辺内科クリニック」は、無理に薬を増やそうとしないので、私にはと ても信頼できる病院だ。  実は、自宅から歩いて30秒のところに病院があるのだが、ちょっとでも血圧 が上がれば、待ってましたとばかりに、薬を増やし、選挙が近づくと、血液検査 のために、注射針で血を採取しながら「××党に入れてくださいね!」というの で、行くのをやめた。  午前11時30分。歌舞伎座の前で、テンユウの杉沢義文さんと待ち合わせ。  杉沢義文さんが先に来ていて、私にだけ気づいて、嫁と娘に気づかない。 「えっ? あっ? ああ〜〜〜! 着物!」 「歌舞伎座の前で待ち合わせだから、着物で来てみました」  そのまま4人で、歌舞伎座の裏の「エルベ」へ。  杉沢義文さんお勧めのシチューのお店。  私はビーフシチューを注文。  みんなはビーフとタンの、ミックスシチュー。  おお! ぐつぐつと煮立った小さな器に入ったシチューが出てきた。  あぢぢ…。あぢぢ…。  この熱さは尋常じゃない。  シチューが熱いのは、わかっちゃいるんだけど、それにしても熱い。  煮えたぎっているからなあ。

 でも、これはおいし〜〜〜い!  けっこう味が和風っぽい。  比較的、あっさりとした味なのもいい。  たまにコールタールのように、こってりしすぎたシチューにぶつかってしまう ことがあるからね。  このお店の近くに、有名なシチューのお店「銀之塔」があって、人気を二分し ているという噂がわかるような味だ。  それにしても、あぢぢ…。  小さい器だから、たいしてお肉が入っていないとおもっていたら、器を箸でか き混ぜると、次々にお肉や、野菜が出てくる。  まるで手品で、世界の国旗がずるずる出てくるみたいだ。  これはいいお店を、杉沢義文さんに教えていただいた。  築地のハドソンの打ち合わせの行き帰りにいいぞ。 <私がもう一度行きたいためのメモ> ●エルベ 住所:中央区銀座4丁目11の8 電話:03(3541)2050 営業時間:平日・11:30〜21:00 土・11:00〜14:00 定休日:日祝日。  食後、「茜屋珈琲店」へ。  杉沢義文さんと、あれこれ情報交換。  午後2時30分。渋谷区役所へ。  統一地方選挙の不在者投票へ。  区長さんはまだしも、区議会議員さんは選びづらいなあ。  もう少し区議会議員さんの活動がわかる方法はないもんだろうか。  午後3時。帰宅。  明日からの取材旅行の下調べ。  下調べしているうちに、旅行先が登場する『地方編』のMAPの形が気になり、 あれこれ路線を変更していくうちに、ついMAP作りに没頭してしまう。  MAP作りは楽しいので、一度始めるとやめられない。  午後5時30分。土居ちゃん(土居孝幸)が到着。 「土居ちゃん! 柴尾英令くんは、恒例のいま起きたばかりだそうだ!」 「えっ。また遅刻?」 「そうだよ。現地で合流だよ〜ん!」  柴尾英令くんは、「人間日付変更線」、または「慢性時差ぼけ人間」と呼ばれ ていて、毎日寝る時間がまちまちになると、とことん時間軸がズレて行く。  だから、『桃太郎電鉄』用の掲示板に、午前9時30分に書き込みがあったか ら、もう起きたと思って、電話をかけても出ない。午前9時30分から寝たのだ。  昨日もそうだった。  柴尾英令くんの知識の豊富さ、新しいものに対する好奇心の鋭さを表して、 「ミスター・デジタル」、「IT男」、「新しガリガリ博士」、「博覧強記」、 その他いろいろ呼称を与えて、みなさん賛美するが、その実態は、3年寝太郎で ある。  午前6時30分。私、嫁、土居ちゃんの3人で、天現寺の先の交差点へ。  ちょうど柴尾英令くんが、交差点に立っていた。  4人で「やきやき三輪」へ。 「いやあ、起き抜けのお酒がおいしいなあ!」 「そうか。柴尾英令くんは、いま起きたばかりなんだっけ」と、土居ちゃん。 「オレは、こういう鉄板でいろんな物を、ジュージュー焼くお店が好きかも…」 「たぶん柴尾英令くんの友だちなら、誰もが柴尾英令くんがこういう脂っぽい鉄 板焼きが大好きなのを知っているとおもうなあ!」 「えへへへ。起き抜けなのに、オレ、もう酔っ払っちゃったなあ!」  酔っているのに「酔っていない!」と言い張る人は多いが、「酔っ払っちゃっ たなあ!」と言いながら、気持ちよさそうに酔っ払うのは、柴尾英令くんぐらい のものだ。

 海鮮焼き、焼きそば、お好み焼き、ネギ焼き、そばめしなどを食べつつ、仕事 の打ち合わせ。  桃太郎チームの恐ろしいところは、酒を飲み、食事をしながら、仕事上のデリ ケートな問題についても、平気で議論できることにある。  土居ちゃんがヒッチコック映画をやたらと詳しいことが判明しつつも、また仕 事の話に戻るように、いつも会話の幹はしっかりしている。  食後、近くの「ピラミデ広尾店」へ。  明日から私が旅に出てしまうので、懸案事項を片づけ、ゴールデンウィーク期 間中の予定も決める。  午後9時30分。帰宅。  ええ〜〜〜っ! また横浜ベイスターズはさよなら負けしたの〜〜〜!  これで7連敗!?  いったいどんな負け方したのよ!  広島相手に、9回裏、満塁から、押し出しで負け〜〜〜!  誰だ! 押し出しの四球なんか投げた投手は!  えっ? 今年自由獲得枠で入団した、土居投手!!!!!  名前が悪すぎる〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!  とほほ…。  まあ、1998年の優勝以来、横浜ベイスターズと、私のバイオリズムが合わ なくなったからいいけどねえ。  昔だったら、7連敗でもすれば、厭世観めいっぱい、仕事は手につかず、ため 息ばかりの日々だった。  それにしても、土居投手とは、名前が悪すぎ。  横浜ベイスターズにはまだ、福本という内野手までいる。痩せているが…。  さらに中野渡投手まで…、これは本当にナムコの中野渡昌平くんの親戚であっ た。  何で横浜ベイスターズには、知り合いとおなじ名前の選手が多いのか。  明日からの旅行の準備。  ひさびさにホテル3泊なので、荷物が多いので、キャリーバッグに入りきらな い。コンピュータが入らないよ〜!  京都を起点に、日帰り旅行を繰り返すほうが、楽だなあ。  というわけで、4〜5日、日記はお休みです。  京都に着いたら、また長い日記になるとおもいます。  どうも取材なのに、明日の天気予報は雨だ。  晴れ男なのになあ…。

 

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