6月14日(金)

 午前9時30分。嫁と近所の喫茶店「らぴす」サンのモーニング・セッ
トで、朝食。
 近所の人が来ていて、トトカルチョで「2対0」で、チュニジアが勝つ
ほうに賭けたという話をしていた。いいねえ。そのへそ曲がりっぷりが。
 こういう人がいないと、賭け事は成立しない。

 午前10時30分。タクシーで渋谷を通ると、「フットボール・カフェ」
の前に長蛇の列。歩道橋にまで行列が続いている。
 何たって、きょうはW杯「日本×チュニジア」戦だ。  日本じゅうが、泡立つように煮えたぎっている。  私としては、どうしても1998年の横浜ベイスターズ優勝の日を思い 出してしまう。あのセ・リーグ優勝の日の甲子園とおなじ胸騒ぎがずっと 朝から続いている。  十中八苦勝つだろうけど、万が一を恐れている。  午前11時。インフォスタワー11Fの「アミューズ」へ。 「アミューズ」は、サザンオールスターズが所属している芸能プロダクシ ョンだ。  で、きょうはサザンオールスターズ関連のお仕事ではなく、「アミュー ズ」今年イチ押しのアイドル・グループ「ボーイスタイル」との雑誌対談。  この仕事は、放送作家業界の重鎮(体重が)である福本岳史さんのお招 きによって、実現した。   私は『週刊少年チャンピオン』の連載ページ「BOYSTLEの達人 (チャンピオン)スタイル」の2回目のゲストなのだそうだ。1回目のゲス トが、スター・錦野旦(にしきのあきら)さん。ほえ〜、すごい人のあと だな。 「BOYSTLE(ボーイスタイル)」のメンバーは、4人で、15歳と 16歳の女の子たち。早い話、うちの娘とおない年である。まあ、うちの 娘は変わり者だから、おない年でも参考にはならない。  どちらかというと、15〜6歳のアイドルとしゃべるというのは、長い こと芸能ライターをやっていた私としては、大変であることは熟知してい る。  ところが「BOYSTLE(ボーイスタイル)」のメンバーは全員、関 西出身なので、自分たちからしゃべる、しゃべる。しかも若いのに、相手 に通じるように工夫してしゃべっている。  さすが、芸能界の老舗・アミューズ所属だ。  教育がいい。  で、話題は私が先生役で「旅の達人になろう!」というのが、テーマ。  日本じゅうのラーメン屋さんの話をしたり、仙台の地下街は、笹かまぼ こを丸ごと試食できるよといった話をする。  こういうとき、よく「うちの地元に来たことがありますか?」と聞かれ ることが多い。 こういう展開は、私にとって、待ってましただ。  尼崎出身の子には、「つかしん」というデパートの話をして、松阪出身 の子には、松阪牛の和田金、牛銀の話をする。
 それにしても女の子たちは、事前にいただいていたプロモーション・ビ デオより、さらにかわいくなっているのが、芸能界だねえ。  芸能界に入ったばかりの子って、1週間単位で顔が変わって行くからね。  午後12時30分。渋谷の「カメラのさくらや」で、プロアトラスを買 って帰る。どこぞのホームページで、「プロアトラスは感動的!」と挑発 されては、買sわないわけにいかない。しかも今つかってるVAIOのウ ィンドウズ2000には、まだプロアトラスをインストールしていないの で、京都滞在中、毎日淋しかったのだ。  神奈川新聞の「横浜ベイスターズ情報」と、「プロアトラス」を見ない 日はないからね。  午後1時30分。帰宅。  ちょこちょこお仕事して、「日本×チュニジア」戦のキック・オフを待 つ。    まだ時間があるので、アーノルド・シュワルツェネッガー主演『シック ス・デイ』の映像特典を観る。『シックス・デイ』はわかりづらい設定と 展開がちょっと気になったかけど、じゅうぶんすぎるおもしろさだ。  とくに、SFの部分が、机上の空論ではなく、ジェット機ヘリコプター 両用機といった近い将来に実現可能なものを作っているのが、見事だと思 う。  しかし、今の映画は、絵コンテをCGで作って行くのがすごいなあ。  ストーリーボードは、そのまま漫画の単行本として発売できるほど、克 明だ。  うちのゲーム作りも、もう少し克明に絵を作ってもらってもいいのかな と思った。  てなことを思っていたら、はっ。  ありゃま! 仮眠していたではないか!  あれ! 中田英が、小野がピッチに立っているではないか!  ああ、よかった。まだ試合開始5分前だった。  危うく世紀の一戦を見逃してしまうところだったよ。  午後3時30分。「日本×チュニジア」戦、キックオフ!  もはや国民のほとんどが、結果を知ってしまっているので、いまさら素 人が試合を解説してもよけいなことだ。  中田英寿が、ゴールしたのは、マスコミ的には、よかった、よかったの 安堵だったし、2対0という数字も、決勝進出のための守りのサッカーで はなかった証拠になった。  時代を呼ぶ風が、いまサッカーの頭上を吹き荒れて、逆巻いているのが、 よくわかる。  横浜ベイスターズが38年ぶりの優勝をしたときに、佐々木様という人 間のふりをした神様がグランドにいたように、今回も中田英寿という神様 がピッチに立っていたということなのだろう。  神様がいないと、勝利の女神様も寄ってこないんだろうなあ。  午後5時30分。自宅を出ると、国立競技場がすぐ近くなので、ヘリコ プターが何台も旋回していてバリバリうるさい。、嫁との会話が聞こえな いほど。『地獄の黙示録』じゃないんだから!  午後6時。神保町の小学館へ。  実はきょうのこの打ち合わせは、午後5時からだったんだけど、昨日電 話して、午後6時にしてもらった。でも本当はみんな、私からの打ち合わ せ時間変更を心待ちにしていたようなのだ。はっはっは。そうだったのか。  でも真相は、私が「日本×チュニジア」戦は、6月16日(日)だと勘 違いしていたのと、気づいても、広島ー大竹ー柳井の取材で、とても連絡 が取れる状態ではなかっただけなのだ。  といっているところへ、ハドソン宣伝部の石崎仁英くんから「6月18 日は、日本×トルコ戦なので、打ち合わせの時間を変更しませんか?」の 電話が入って大笑い。  大笑いしたのは、小学館編集の大島誠くん、広告代理店テンユウの杉沢 義文さん、漫画原作者の石関秀行。うちの嫁。  会議のほうは、まだ隠密裡の話なので、匂わすことも×。  といっても、大半は「日本×チュニジア」戦の話題だったけどね。  午後8時。おなじメンバーで、神保町の『出雲そば総本店』へ。
 夜にこのお店に行くのは、ひょっとして初めてか、20年ぶりくらい。 「のやきかまぼこ」が目に入ったので、注文する。  このあいだ、松江に行ったとき、いろんな物を取材で食べ過ぎて、最後 にもう食べられなくなって悔しい思いをしたのが、この「のやきかまぼこ」 だ。正しくは「あご野焼きかまぼこ」という「あご野」「焼き」と音節を 切って読んでしまいそうな不思議な名前のかまぼこだ。  美味しい。飛び魚のかまぼこなんだけど、美味しい。かまぼこというよ り、竹輪っぽい。  午後9時30分。「帰って、韓国戦を見ましょう」と意見が一致して、 散会。  午後10時。帰宅。  TVを見たり、ネット・サーフィンしたり。  横浜ベイスターズのセ・リーグ優勝のときのほうが、リーグ優勝より、 感動したように、たぶん決勝トーナメントより、きょうの試合のほうが、 一生強い印象として、死ぬまで瞼に焼きつくんだろうなあ。  そして、きょう「日本×チュニジア」戦を見た人は、死ぬまで語り継い で、日本がW杯で優勝するような時代になったとき「そうはいうけど、日 本が初めて決勝に進出したときの選手たちのほうが、個性があったなあ!」 とうそぶくのだろう。
 

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