5月27日(月)

 タクシーは、乗ったお客さんに、最初に目的地までのコースを聞くのが、
義務付けられている。
 ところが、きょう乗ったタクシーは、聞きもせずに、明らかに大きく遠
回りの道を行こうとしている。

「どのコースで、築地へ行こうとしていますか?」
「いえ、あの、その、すみません!」
「すみませんでなくて、どのコースで行こうとしているのを聞きたいだけ
なんですけど…」
「いえ、あ、う、はあ。すみません!」
「だから、いまのうちにどのコースを言えば、間違っているかどうかもわ
かると思うんですが…。少々遠回りになってもいいんですから!」
「はい。ああ、ええ〜、間違えました。すみません」
「……………」
「……………………」
「ちょっと、あんた、取り返しがつかなくなるよ!」
 この運転手は、「間違えました!」といえば、すむと思って「間違えま
した!」と言っているだけなのである。「間違えました。どのコースを通
れば、よろしいのでしょうか?」と、責任のハンドルをこっちに渡してし
まえばいいのに、この期に及んで、まだ失敗を、あやふやな直感で取り繕
おうとしている。

 私たちを乗せた時点で、「どのコースを通りましょうか?」と聞けばす
んだことである。
「気分よく乗れないから、そこで降ろしてください!」
 けっきょく、途中で降りて、ほかのタクシーを拾って、築地に向った。

 午前11時。嫁と、新宿伊勢丹デパート2Fの「アフタヌーンティー」
へ。
 10日置きに変わるスペシャル・メニューが無くなって久しい。
 毎回、どんな料理が登場するか、楽しみだったのになあ。
 チキンとベイグド・ポテトのサラダに、コーヒー。
 ポテトが、妙に美味しかった。

 食後、南館5Fで、旅行用カートを買う。
 旅行用カートのことを、ギャンル的にいうと、キャリー・バッグってい
うんだね。売り場で、初めて知った。
 今つかっているキャリー・バッグは、3年前くらいに、京都で、1万円
ぐらいなのを、4500円で安売りしていたので、話のタネに買ってみた
だけなのである。
 すぐ壊れるだろうし、便利かどうかも、わかっていなかった。
 ところが、日記を読んでいる人なら、ご承知だろうが、日本全国、津々
浦々、このキャリーバッグを持って、回っているのだが、まったく壊れな
い。バッグのへりは、擦り切れて、糸が飛び出し始めているのだが、持っ
て歩くのに、まったく支障がない。
 私としては、買い換えたい時期なのだが、「なくしてもいいやと思って
買った透明ビニール傘はなくさない!」のジンクス通り、壊れないのだ。
 というわけで、あえて不満をあげるとすれば、小さいので、コンピュー
タ以外の洋服が入りづらいという理由で、新しいキャリー・バッグを買う
ことにした。
 どうも、大義名分がないと、新しいものを買えない世代だ。
 
 買ったあとに気づいたのだが、またしても古いキャリー・バッグのほう
が、音が静かなのである。しぶとい4500円の安物バッグだ。

 午後1時。築地のハドソンへ。
 きょうは、『桃太郎電鉄11(仮)』の音楽の打ち合わせ。
 メンバーは、池毅(いけたけし)さん、辻邦博さん、札幌ハドソンの
佐藤昭洋さん。
 カズ坊(関口和之)と、宮路一昭くんは、欠席。
 宮路一昭くんの音源は、バイク便で届いている。

 ほかに、土居ちゃん(土居孝幸)、柴尾英令くん、井沢どんすけ、ハド
ソン宣伝部の梶野竜太郎くん、石崎仁英くん。

 前回の打ち合わせで、ほとんどの曲にOKを出していて、ちょっとした
手直しをお願いしていた部分を聴くだけなので、きょうはひさびさに楽チ
ンなお仕事。
 午後4時。音楽チームとの打ち合わせは、最後まで順調に終了。  音楽チームは、解散。井沢どんすけもほかの仕事の打ち合わせへ。  残ったメンバーで、梶野竜太郎くん、石崎仁英くんと、打ち合わせ。 『桃太郎電鉄11(仮)』の仕事が、あまりにも順調なので、こういうと きこそ「好事魔多し!」。何かどこかで魔の手が伸び始めているかをチェ ック。  実は誰も気づかずに、重大なイベントについて、打ち合わせをし忘れて いないか? 誰かひとりが、情報を独占していないか?  昨年の失敗を繰り返さないためにも、何も問題がないと思っていても、 定期的に、ここ近辺の動向を振り返らないと、危険だ。  いくつか、いまのうちに打ち合わせしておかないといけない部分が見つ かったので、安堵。こういう会議で、ひとつも問題点が出ないのは、全員 が油断している証拠だから。  仕事は、プロ野球の打率のようで、いま打率4割の打者が、1ヵ月後は、 2割3分台の打率に低迷する場合がある。1ヶ月に一度は、定期点検をや らないと恐い。  午後6時30分。築地の「太老樹(たろうき)」で、ひさびさにお寿司 を食べる。  メンバーは、土居ちゃん、柴尾英令くん、私、嫁の4人。  このお店も最初の頃は、ガラガラに空いていて、味は抜群、値段は桁外 れに安いので、足繁く愛用していたのだが、今や、予約を入れても、満員 という場合が多い。きょうもカウンター席は満員で、テーブル席。  蟹のお椀が、蟹一匹が無造作にお椀のなかに入っていて、不気味。
 午後8時。「茜屋珈琲店」で、もう少し打ち合わせ。  わがチームは、ご飯を食べていようが、お茶を飲んでいようが、突然、 仕事の打ち合わせを始めて、突然、世間話になり、突然また、仕事の話を 始める。このジェットコースターのような仕事の仕方に馴染まない人もい る。  午後9時30分。帰宅。 『桃太郎電鉄13(仮)〜地方編』各駅の物件を決めていく作業が、最高 潮に入った。  最高潮なので、口を滑らせたり、ヒントを言ってしまう危険が多いので、 今夜はこの辺で。  おっと。iモード・ゲーム『さくま式奥の細道』の投稿俳句を選考せね ば。  投稿者の「しみぼー」という人が、ここ数ヶ月で大量に投稿してくるよ うになって、いずれの作品もレベルが高いので、驚いている。  投稿作品のレベルが高くなると、うれしくなるのは、性だな。
 

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