5月10日(金)

 午前8時。昨日のハドソンの会議で出た宿題をいくつか片付ける。
 ふうっ。こんがらがったコードの束をほぐすような内容なので、疲れた。
 よほど疲れていたのだろう。
 外出して、30分ぐらいしてから、いつも肌身はなさず持っている黒い
カバンを忘れて来ていることに気づいたくらいだ。年に一度あるか、ない
かの凡ミスだ。

 雨がけっこう強い。
 ついこの間、鎌倉で日焼けしたことが嘘のようだ。

 午後12時。嫁と、銀座歌舞伎座近くの「ギンザ舌呑(ぜっとん)」に
初挑戦。
「舌呑(ぜっとん)」とは、オーナーがウルトラマンの世代なのかな?
 お昼のランチが、串玉定食950円一品しかないという大胆さ。
 でも一品だけで勝負するだけのことはある味だ。
 みそかつの串が5本も付いて、さらに燻製玉子も付いている。
 デブ御用達のお店ですな、ここは!
 お店の雰囲気は「紅虎餃子房(べにとらぎょうざぼう)」っぽい。    食後、「茜屋珈琲店」に寄って、コーヒー。  午後1時。築地のハドソンへ。  きょうも『桃太郎電鉄11(仮)』の打ち合わせ。  メンバーは、まったく昨日とおなじ。土居ちゃん(土居孝幸)、柴尾英 令くん、井沢どんすけ。ハドソン宣伝部の梶野竜太郎くん。企画担当の 川田忠之くん、込山勉くん。プログラム担当の田中俊介くん。グラフィッ ク担当の佐藤裕くん。  いきなり、土居ちゃんが、昨日打ち合わせで足りないと指摘されたイラ ストを、もう描いて来た。 「土居ちゃん、やるなあ! 描いて来なかったら、叱ろうと思ったのに!」 「う〜ん。たくさん絵を描かないといけないからなあ!」 「土居ちゃんを叱るために、今朝、昨日の宿題を必死にやって終らせて来 たのになあ!」 「さくまサン、そんなところで、ムキにならないでくださいよ!」 「人を叱るためには、まず自分が後ろ指を刺されないための行動をしてお かないとね〜!」  決算画面、総資産、地域王、高額物件ランキング、発展の記録といった ところの画面レイアウトを、綿密に打ち合わせる。  私にとって『桃太郎電鉄11(仮)』で、いちばん不満が残ったのが、 決算画面から、発展の記録までの流れだっただけに、力が入る。  金額の表示を、1行にするか、2行にするか?  1位の次の文字のところに、空きスペースを入れるか、「・」を入れる か?  プレイヤーの名前の文字を、金額の数字より、大きくできないか?  こまかい打ち合わせでしょ?  とにかく、VAIOを長時間使ったときに、熱を持つのとおなじくらい、 頭が加熱する。  午後5時30分。総勢10人で、お昼に行った「ギンザ舌呑(ぜっとん)」 に、もう一度行く。  こお店は、名古屋発信の料理が自慢のようで、味噌煮込みうどんチゲ、 ひつまぶし、みそかつ、名古屋コーチン釜飯といったメニューが並ぶ。  柴尾英令くんが、串みそかつを食べて「んめ〜〜〜ッ!」と、叫んでい る。  午後7時。再び築地のハドソンに戻って、会議続行! 井沢どんすけの み、食い逃げ! ははは。  込山勉くんのほうから「さくまサン! 仕様書のほうには、宝くじカー ドは、日光駅でしか売らないとあるのですが、☆印カード売り場のメニュ ーを見ると、ほかのカード売り場でも売っているんですよ。それは、なぜ なんですか?ということをお聞きしたいのですが…」 「はっはっは。まいったなあ!」 「何が、まいったなんですか、さくまサン!」と、柴尾英令くん。 「実はな。最初、宝くじカードを考えたときには、日光駅だけで売るので、 なかなか買えないカードの位置づけだったのだ」 「はあ…」 「ところが、あるとき、井沢どんすけなら、ここで、ああして、こうして、 こうするだろうから、宝くじカードを、ここと、ここで、売れば、あいつ は気づかないだろうという推測で、たぶん売り場を変えたのだと思う」 「…ってことは、さくまサン! 自分だけわかればいいという必勝法を作 っているというわけじゃないですか! 卑怯な親父だ!」と、柴尾英令く ん。 「でもなあ。思いついたときには、強固な必勝法を見つけたはずなのだが、 実は今、それがどういう必勝法だったのか、覚えていないのだ!」 「どこかに書いていないんですか?」 「仕様書に書いたら、みんなにバレちゃうじゃないか!」 「汚ね〜!」 「卑怯〜!」 「ずる〜〜〜い!」 「当たり前ぢゃ! 自分が作ったゲームを、自分に有利なように作るのは、 当然だろうが、わっはっはっは!」 「その必勝法を忘れたら、意味無いじゃないですかあ!」 「そうなんだよ。その通りなんだよ!」  実際、最近の『桃太郎電鉄』は、規模が大きくなりすぎちゃって、いろ んなところに、いろんな仕掛けをほどこしているのに、自分で覚えられな くなっちゃっているんだなあ。  なにしろ、たとえば、おはらいカードの売り場はどの辺にあるのか、覚 えやすいように配置したはずなのに、その配置の法則が、自分で覚えられ ない。  最近、記憶力が極端に低下しているのか、『桃太郎電鉄』の規模が大き くなり過ぎているのか、どっちだか、わからない。  それでも、ひとつのイベントを巡って、みんなが「お客さんにとって、 大事なのは、こっちだと思う」という言い方が、会議の席で、飛び交うよ うな、いい会議になって来た。  信じられないだろうけど、「お客さん」という単語を、一度も言わない ゲーム・ディレクターって、たくさんいるからね。あの会社にも、この会 社にも。  午後9時30分。ふ〜〜〜ッと、みんなで大きく息を吐いて、2日間の 充実した会議は、終了。    午後10時。帰宅。  きょうは、さすがに、身体を休めて、明日から、iアプリ・ゲームの仕 様書作りを本格化させるぞ〜〜〜!と、自分に言い聞かせる。
 

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