2月22日(金)

 午前8時。柴尾英令くんのホームページを読む。	
 BBSに、けーむらクンが書き込みをしていた。
 何っ! ブライアン・ウィルソン(ザ・ビーチ・ボーイズ)のコンサー
トに行ったとなっ!? 『英雄と悪漢』を歌ったとなっ!? 涙ぐんでし
まったとなっ!? むむむむむっ。
 う〜む。でも私はきょうから、京都なのだよ。
 2年半前に一度見たから、良しとしよう。
 ザ・ビーチボーイズは、英語の歌詞のなかでも、ビートルズと並んで、
けっこう暗記しているバンドなんで、コンサート会場でいっしょに歌う楽
しみは、格別なんだけどなあ…。 

 午前11時30分。西武新宿線上井草駅前の「細見デンタルクリニック」
へ。
 ええっ? まだ歯が完治していないので、歯を入れるのは、来週以降に? 
また仮歯(かりば)のままかい。相当ひどい症状だったんだなあ。

 午後1時。嫁と伊勢丹デパートの2F「アフタヌーンティー」で待ち合
わせ。
 カボチャとベーコンのトマトクリーム・パスタにコーヒー。このメニュ
ーを西武新宿の駅を降りたときに、携帯メールで、嫁に連絡しておく。
伊勢丹デパートに着く頃には、料理が出来上がっているという寸法。
 私は、せっかち。嫁も、せっかち。

 午後1時30分。帰宅。「アフタヌーンティー」の料理を急いだのは、
蔵人総合研究所の赤根豊くんが自宅に来るのが、1時間早まったため。
 赤根豊くんは、私たちに輪をかけて、せっかち。
 毎日、新潟、岐阜と、日帰りで、日本じゅうを飛び回っている。

 きょうは、会社の決算と、ビルの修理の話。
 おもしろいねえ。私が所有する古いビルの水漏れがあまりにもひどいの
で、修理を頼んでいたんだけど、その修繕工事の様子を、デジカメに撮っ
て、映画のパンフレットみたいな小冊子にして持って来てくれた。いまは
こういう風に、「仕事をちゃんとやりましたよ!」というアリバイを作る
時代なんだねえ。
 あれま。小さな排気口に、人が入っている写真があるよ。
 工事している人たちは、大変だろうけど、こうやって1冊の本になって
いると、何やらおもしろい。まるで『タモリ倶楽部』の「空耳アワー」の
VTRを見ているようだ。

 午後4時。柴尾英令くんと、井沢どんすけが到着。
 昨日、札幌から、『桃太郎電鉄11(仮)』の最新ロムが届いたので、
「敵に回すと恐いが、味方にするともっと恐い男・井沢どんすけ」に、そ
の評価を仰ぐ。大切な日だ。
 何しろ、井沢どんすけが気に入らない箇所があれば、原則的にやり直し
なのだ。私よりも、チューニングの権限を握っている男。それが井沢どん
すけなのである。
 世界広しといえど、テスト・プレイだけで印税をもらっているのは、井
沢どんすけだけである。

 井沢どんすけも固唾を飲んで、画面を見るが、その井沢どんすけの顔を、
私と柴尾英令くんは、固唾を飲んで覗き込む。

 くわしくは書けないが、貧乏神が変化する!
「こ、これは、いったい何ですか…、ああっ! こいつのお尻に! ああっ! 
ああっ! えへえへえへっ。えへえへえへっ。うひゃひゃひゃひゃひゃ〜
〜〜! 何やってるんだ、こいつ〜〜〜!」
 井沢どんすけ、ひさびさの大爆笑!
 う、うれしい! これだけ笑う井沢どんすけは珍しいぞッ!
 この貧乏神の「変化」は、自信あっただけに、私と柴尾英令くんは、
ガッツ・ポーズだっ!
「井沢どんすけ、そんなにおもしろいか?」
 「えへえへえへっ。こ、これはおもしろ過ぎますよ! えへえへえへっ。
えへえへえへっ。ああっ! 涙が出てきちゃったよ〜〜〜!」
 本当に泣いたのである。
「井沢どんすけ! 作者としてはうれしいかぎりだけど、今年何歳だ?」 「34歳になったばかりです。えへえへえへっ!」  井沢どんすけ、本当に笑い泣きしている!   不思議な男である。  引き続き、貧乏神が×××ボンビーに変身する! 「げげっ! 何だこれはあっ! で、で、でけえ〜〜〜ッ! でかすぎる るるるるるるるるッ!」  ちょっとバラし過ぎたかな。  この井沢どんすけの反応を、画面写真と並べて、公開したいよ!  さらに、ゲスト怪獣「××××・××××」に変身! 「あれ〜? こいつ、何をするんだ? あれ? ××××××××を手に 入れたぞ! あれ? 今度は××××××××を手に入れたぞ! まさか!?  まさか、さくまサン!」 「そのまさかだよ!」 「ひで〜〜〜! ひどすぎるるるるるるるるるッ!」 「これ、本当に次の作品でやるんですか?」 「やるから、こうやって君に見てもらっているんだろうが!」 「ひどすぎるるるるるるるるるッ!」  いくつか、ウインドウ・デザインなどに、井沢どんすけが気になる部分 があったものの、『桃太郎電鉄11(仮)』の目玉は、すべて、予想以上 の受け具合に、私も柴尾英令くんも大満足!  柴尾英令くんでさえ「ここまで、すごいデザインになっていると思いま せんでしたよ!」と、あっけにとられる。 「井沢どんすけ! 総合的にはどうだ?」 「すごいですよ! これは、本当に! まるで別のゲームみたいですよ〜 〜〜!」  ふっふっふ。そうだろ、そうだろ! 『桃太郎電鉄X(ばってん)』で 本当にやりたかったのは、こういうことなのだよ、井沢どんすけクン! 「もうちょっと、やっていいですか?」 「いいよ! いいよ!」  とにかくこの井沢どんすけ、どんなにこっちが自信作のロムでも、気に 入らないと、さっさとコントローラを置いて、帰ってしまう男だ。 「えへえへえへっ。えへえへえへっ。えへえへえへっ。えへえへえへっ。  えへえへえへっ。えへえへえへっ。えへえへえへっ。えへえへえへっ。  えへえへえへっ。えへえへえへっ。えへえへえへっ。えへえへえへっ!」  井沢どんすけ、笑いっぱなしである。
「どんすけ! そういえば、きょう30分しか時間無いって言っていたけ ど、帰らなくて大丈夫なのか?」  時計を見る、井沢どんすけ。時計の針は、午後5時を過ぎたところ。  サーーーッ!と、井沢どんすけのお尻のように真っ白い顔が蒼ざめる。 「打ち合わせは、何時からだっけ?」 「ご、ご、ご、5時です…!」 「いま5時5分だぞ! 大丈夫か!?」 「だ、だ、大丈夫じゃないです!」 「そんなに?」 「非常にやばいです!」 「顔色がすごいぞ!」 「貧乏神の×××××××に、見とれ過ぎました! と、と、と、とにか く行きます! し、し、失礼しました!」  あわてて荷物をまとめて、小走りに去る井沢どんすけであった。 「すごい人ですねえ! 井沢さんって人は…」と、柴尾英令くん、しみじ みする。 「永遠の子どもだからねえ!」 「大丈夫なんですかねえ! 仕事の打ち合わせのほうは…」 「たぶん、大丈夫じゃないんだろうなあ。すごい顔してたもん…」  私としては、かつて井沢どんすけが、キングボンビーに初めて遭遇した ときに、匹敵したときに近い、反応なので、うれしいかぎりなのだが、 井沢どんすけが仕事をしている会社の人に迷惑をかけてしまった。申し訳 ない。  それにしても、『桃太郎電鉄X(ばってん)』でやりたくても、やれな かったことができそうなので、うれしいかぎり。でもここで油断すると、 また地獄を見ることになる。最後まで、この調子で、グレード・アップさ せたいものだ!    午後5時30分。柴尾英令くんは、きょうからスキーへ。池袋に向う。  さて、私はこれから、京都へ…。  …のはずだったのだが…。  午後6時。あはははははっ! やっぱり来ちゃったよ〜! 東京国際フ ォーラムAホールに! 当日券を手に入れちまったよ!  そうだよ! ブライアン・ウィルソンのチケットだよ〜〜〜!  京都行くの明日にして、来ちまったよ〜〜〜!  けーむらクンのあの掲示板への書き込みを見てから、居ても立ってもい られなかたんだよ〜〜〜! 当日券なのに、1階の真中に近い席だよ!  こんなにいい席でいいのかなあ〜!  やっぱり、ザ・ビーチ・ボーイズは、私にとって、特別だよ〜〜〜!  それにしても、きょうのコンサートは不思議だ。  タイトルが「ペット・サウンズ・ツアー」。 『ペット・サウンズ』といえば、1966年に発売されたアルバムのタイ トルだ。どうも、このアルバムを全曲演奏するようだけど、36年も前の アルバムだよ。それを何でいまごろ、全曲も…。  まあ、私はビーチ・ボーイズなら、何でもいいんだけど、あのアルバム はとくに知的な匂いのする内容で、いわゆるサーフィン音楽とはちょっと 違いすぎる。  たぶん、ブライアン・ウィルソンにとって、自信作だったんだろうなあ。  前半、『カリフォルニア・ガールズ』とか、私のお気に入り曲『イン・ マイ・ルーム』とか、けーむらクンが、生で聴けると思わなかったという 『英雄と悪漢』が聴けた。私も感動。『恋のリバイバル』を聴いて、休憩 が入る。  休憩のあとは、本当に「ペット・サウンズ」を全曲演奏だ。  ブライアン・ウィルソンのリード・ヴォーカルじゃない曲も多いので、 ちょっとイメージが違う曲も多かった。  最後は、『グッド・バイブレーションズ』で締め!  …って、おいおい! 『グッド・バイブレーションズ』でおしまい?  楽屋のほうに戻って行っちゃったよ。  アンコールは? アンコールあったとしても、1曲か、2曲でしょ?  ちょっと待ってよ!  それじゃ、あまりにもたくさんのヒット曲をやらずに終ってしまうって こと? やらないにもほどがあるでしょ?  少なくとも、『サーファーガール』、『アイ・ゲット・アラウンド』、 『バーバラ・アン』、『サーフィンUSA』、『ヘルプミー・ロンダ』、 『ファン・ファン・ファン』のうち、2〜3曲ぐらいやって終りにしてく れよっ!  おお! 戻って来た!  アンコールはやるようだ! 『サーファーガール』に、『ヘルプミー・ロンダ』に、『バーバラ・アン』 だ。 『バーバラ・アン』がいつも、ビーチ・ボーイズ時代のエンディング曲だ から、これで終わりか! もう何曲かやってほしかったけど、これで満足 と納得するか…と思ったら、おいおい! 『アイ・ゲット・アラウンド』じゃないか! 『サーフィンUSA』じゃないか!  とどめは、やっぱり『ファン・ファン・ファン』だ!  はい! もう何も文句はありません!  大変満足でございます!  やっぱりビーチ・ボーイズはいいですの〜〜〜!  午後10時。帰宅。  きょうは頭のなかで、ビーチ・ボーイズの曲をおさらいだ。  マニアとしては、コンサートで歌わなかった『青空のブルーバード』とか、 『コットン・フィールズ』、『踊ろうよベイビー』、『アイ・キャン・ヒア・ ミュージック』なんかも歌っちゃうよ!  明日こそ、京都へ!
 

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