12月26日(水)

 午前8時。柴尾英令くんから、電話があって、あれこれ仕事の打ち合わせ。
 柴尾英令くんは、日記のなかでは最多出場だけど、付き合いはまだ短い。
でも彼ほど、私の仕事の意図を的確に把握できる人は、珍しい。
 過去に私の仕事を理解できる男の代表は。『暴れん坊プリンセス』の作者・
桝田省治(ますだしょうじ)だけど、彼以来だろうなあ。
 一度、この3人でゲームを作ってみたいものだ。

 午前11時。今度は放送作家の福本岳史くんから電話があって、昨夜の
『漫才格闘技M―1グランプリ』は、関東でも流れていたとの報告。では何
で、東京会場の票を入れなかったんだろうという議論になる。きっと意図が
あるはずだ。答えはもちろん聞けないから出ないんだけど、おおよその推論
はまとまる。
 日記の出来事以外でも、日々こういうことをつねにしている。

「報告」と「連絡」と「相談」の「ホウ・レン・ソウ」は、とても大事であ
る。

 午後12時。四条河原町の「神戸屋キッチン」で、ローストビーフサンド
にコーヒー、アップルジュース。
 セルフサービスなので、トレイを持って、座席に移動しないといけない。
 トレイの上のお皿が重たい。
 私の場合、片手しか使えないので、片手でトレイを持つ。でもこの重さは
とても耐えられそうもない。
 すると、おばあちゃんが、スッ!と横から、手を差し伸べて、助けてくれ
るではないか! おばあちゃんといっても、上品なおばあちゃんだ。
 それにしても最近私は日常生活で、手足が不自由なのを感づかれないまで
に回復しているのに、よくこのおばあちゃん、気づいたなあ。何でも身の回
りの人で、脳梗塞や脳溢血で倒れた人が多いのだそうだ。う〜ん。そういう
人じゃないと、気づかないだろうなあ。
 しばらく、おばあちゃんと世間話。会話も知的だ。
 おばあちゃんのほうが先に食事を終えて、私がコーヒーを残して、あとは
全部食べ終えているのを見て、「すんだ分だけでも戻しましょうね」といっ
て、トレイとお皿を持って行ってくださった。あまりにも自然体な動きに、
頭が下がる。
 こういう年の取り方ができたらいいなあ。できないだろうなあ。

 食後、京都河原町で、日用品をあれこれ買う。

 午後3時。京都のマンションに戻って、少し仮眠。
 夕方、ぽつぽつ仕事を始める…。

『桃太郎電鉄11(仮)』のほうは、今朝ほどカードの仕様書が完成した。
 カードが完成すると、あとは貧乏神、キングボンビー、イベントで終わり
だ。
 何度もいうが、仕事が速いのではなく、つねに『桃太郎電鉄』のアイデア・
メモがあって、そのなかからどれを昇格させるだけだから、いざ仕事を始め
ると早い。プロ野球で、2軍の選手のなかから、誰を1軍に昇格させようか
と、悩むのとおなじで楽しい。5年間も2軍でくすぶっていたアイデアが、
ひと味加えることで昇格できるようになる瞬間ほど、うれしいことはない。

 どうも、やっぱり、私は仕事でストレスを解消するタイプのようだ。

 午後5時30分。新京極の「田毎(たごと)本店」で、にしんそば定食を
食べた後、京都宝塚劇場へ。
『ゴジラ・モスラ・キングギドラ大怪獣総攻撃』を観る。

 すごい! すごい! すごい! すごい! すごい! すごい! すごい!
 すごい! すごい! すごい! すごい! すごい! すごい! すごい! 
 すごい! すごい! すごい! すごい! すごい! すごい! すごい! 
 すごい! すごい! すごい! すごい! すごい! すごい! すごい!
 すごい! すごい! すごい! すごい! すごい! すごい! すごい!
 すごい! すごい! すごい…、まだ「すごい!」を書き足らない!

 とにかく、すごい!
『ガメラ』シリーズの金子修介監督だから、期待はしていたけど、ここまで
正攻法な作り方で、すごいとは思わなかった。

 怪獣同士の肉弾戦の連続なのよ。

 怪獣映画で見苦しいのは、「オレは本当は子ども向けの仕事なんかしたく
なったんだよ」と言わんばかりに、小難しく作っちゃうこと。かといって、
怪獣の対決シーンばかりだと、どうしても陳腐な映像になって、貧相になっ
てしまうことが多い。この映画は、実写とCGの合成が見事で、ちっとも陳
腐に見えないんだなあ。 実写映像の焼津港の市街地を、ゴジラがずんずん
進んじゃうのよ。いかにも模型の町を歩くんじゃないのよ。実写の町を歩い
ているのに、違和感が無いのよ。これには驚いたね。

 しかもまさか、のっけから怪獣が出てきて、最後までほとんど出ずっぱり
状態のまま進むと思わなかったよ。勇気あるなあ。

 構図がまたいいんだ。常に広い景色を見せておいてから、画面手前を飛ぶ
モスラ、遠くににゴジラ、ゴジラの回りには、ゴジラの大きさをわからせる
ためのヘリコプター。地面に小さな小さな人間たちを配す。
 鉄塔ではなく、観客がその大きさを実感しているロープウェーを、対決場
面につかっているのも見事。
 見事な構図だ、ほんとに。ほれぼれする。
 ローアングルから写して、恐怖感と巨大感を同時に見せる。
 話題のゴジラの白目はじつに効果的で、憎いばかりだ。 

 はっきりいって、黒澤映画以来、ひさびさに外国映画を見るように観た。
 どうしても、邦画って、横浜ベイスターズを応援するときみたいに「がん
ばれ! がんばれ!」って見ちゃうんだなあ。

 日本映画はやっぱり、怪獣映画に、時代劇、やくざ物がいいんだろうなあ。

 午後9時。映画館で買って来た、2冊のパンフレットを熟読する。
 CDロムは、あとで見てみよう。

 『ゴジラ・モスラ・キングギドラ大怪獣総攻撃』の余韻が消えないうちに、
キングボンビーのセリフを書こう。
 

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