6月3日(日)

 午前10時。鎌倉由比ヶ浜の海岸で、日光浴。
 嫁、清正まなつチャン、井沢どんすけと4人。天気がいいので、のんび
り、ほっこり。陽射しがちりちり。
 初老のおっさんがウインド・サーフィンの帆を上げて立つのを、みんな
で密かに応援する。おっとっと。お父さん、がんばって!

 昨日も井沢どんすけは、午前4時まで『桃太郎まつり・石川六右衛門の
巻』をやっていたそうだ。「ほほえみの村」のだじゃれ大会はどうしても
見たかったと相変わらずだじゃれ大好き少年、いやもう33歳!である。

 ところで、『桃太郎まつり・石川六右衛門の巻』。プレイステーション
1用のメモリーカードが無いことに気づく。あれだけ原宿のゲーム部屋か
ら、たくさんのハードとゲームソフトを持って来たのに、メモリーカード
を忘れてくるとは思わなかった。
 
 午前11時。井沢どんすけと鎌倉まで出て、メモリーカードを探すこと
に。
 鎌倉小町通りの小さなおもちゃ屋さんでは、プレイステーションは扱っ
ていなかった。駅前のCDの「新星堂」に行くが、やっぱりプレイステー
ションは扱っていない。
 井沢どんすけが「ファミリーマートがあればいいんですけどねえ…」と
いう。
 ふ〜ん。私のような立場にいる人間は、ハードもメーカーからもらえて
しまったり、ゲームソフトももらえてしまったりするし、たとえ無くても、
東京でいつでも手に入る。
 だからちょっと都心を離れると、困るということを初めて味わう。でも
こういうお客さんのほうが大半なのだから、とっても勉強になる。

 おお! 駅前の「とうきゅう」の裏に、ファミリーマートが!
 やった! 何たる偶然! 鎌倉で見つけた最初のコンビニが、ファミリ
ーマートとは! よ〜し! メモリーカードと、日刊スポーツを買うぞ。
へっへっへ。昨日は横浜ベイスターズ快勝のニュースをNHKから、東京
12チャンネルまで、全部録画したからね。

「ぷ、ぷ、プレイステーションの…メモリーカードで・す・か?」
 ファミリーマートのおばちゃんが、けげんそうな顔で、ゲームが並んで
いる棚に向う。
「ビジュアルメモリーは違いますよね?」
 げげっ! 井沢どんすけ! ファミリーマートで扱っていると言ってた
じゃないか! なぜなんだ、井沢どんすけ!
「ファミリーマートは、デジキューブを扱ってたはずなんで…」
 私としては「デジキューブというのは、9月に任天堂から出る新しいハ
ードでは?」とボケたいところではある。
 
 仕方なく「とうきゅう」の6Fのおもちゃ売り場へ。
 でもここでも、プレイステーションは扱っていないという。
 ふ〜ん。やっぱりおもちゃ屋さんって、プレイステーション売っている
ところって少ないんだなあ。任天堂の底力を感じる。

「井沢くん、腹減った。先に飯を食べよう!」
「作戦会議ですね!」
 小町通りを歩き、いつもの「崎陽軒ショップ」を覗くと、イートイン形
式になっているではないか! へ〜、この崎陽軒ショップの名前は「きょ
うちゃん本舗」というのかあ。

 おお! シウマイバーガー、250円の文字が! これは食べないとい
かんですなあ。パオパオビーフ、200円は、ぴり辛味か。こっちも食べ
よう。コーヒーもね。

 味のほうは、う〜ん。私のような崎陽軒マニアは、肯定できるが、ほか
の人にお勧めできるかというと疑問だなあ。
 崎陽軒のシウマイを、中華風のパン生地で包んでいるんだけど、いつも
の崎陽軒のシウマイの味が、トマトで死んでしまっている。惜しい味だ。
 でもこのさきも私はこのお店を利用することだろう。
 だって、子どもの頃から、崎陽軒のファンだもの。 

 午後12時30分。
「さて、井沢くん。どうするよ!」
「藤沢駅は遠いですかね?」
「江ノ電はのろいよ〜!」
「藤沢に行っても、メモリーカードがあるという確信は無いですもんねえ!」
「横浜まで行けば確実にあるんだろうなあ」
「行きますか?」
「横浜までか〜? 6駅あるぞ」
「横浜なら駅前にさくらやとか、ヨドバシがありますしねえ。6駅ってい
うのは意外と近いですねえ!」
 この井沢どんすけの「意外と近いですねえ!」にほだされて、横須賀線
に乗ってしまうのであった。しかも井沢どんすけが、伊勢原市出身の神奈
川県民だったことを知っていた私は、あとで軽いピンチに陥るのであった。

 午後1時。横浜駅。
「井沢くん、さくらやはどこだよ?」
「え〜と! あれ〜〜〜?」
「横浜に行けば、さくらやがあるといったのは、おまえだろうが!」
「やあ、最近横浜に来てないんで…」
「どのくらい来てないんだよ!」
「この10年間で、1回ぐらい…」
「だったら、オレのほうが、横浜ベイスターズ戦で、何10倍も来てるじ
ゃないか! どこが神奈川県民なんだよ!」
「大学出てからずっと実家に帰っていないんで…」
「おまえ、大学中退だろ!」
「はい!」
仕方なく、横浜という町を好きだと言っていた、ゲーム・ディレクターの
國政修くんに電話する。
「いま横浜に来てるんだけど、井沢どんすけが、さくらやの場所がわから
ないっていうんだ! 教えてくれる?」
「相鉄ジョイナスというアーケードがあると思うですけど、そこを抜けれ
ばいくつか量販店がありますよ!」
「ありがとう! 國政くん!」

 かつて私は井沢どんすけを評して、こう言ったことがある。
「井沢どんすけという男! 敵に回すと、恐いが、味方にすると、もっと
恐い!」

 國政修くんに言われたとおり、アーケードを抜けると、そこにあったの
は、ヨドバシカメラであった。さくらやではない。もう少し進むと、ビッ
クカメラがあったが、さくらやではない。
「井沢どんすけという男! 敵に回すと、恐いが、味方にすると、もっと
恐い!」

 けっきょく、ヨドバシカメラで、メモリーカードを購入。
 たった1枚のメモリーカードを買うのに、大騒ぎだ。

 午後3時。鎌倉長谷の家に戻る。
「井沢くん、『桃太郎まつり』をセーブできたかあ?」
「それが、さっきから、ついうっかり『だじゃれ大会』のだじゃれを聞い
てしまって、まだセーブできてないんですよ!」

「井沢どんすけという男! 敵に回すと、恐いが、味方にすると、もっと
恐い!」

 午後4時。嫁、娘、清正まなつチャンが、帰って来る。
 みんなで銭洗弁天(ぜにあらいべんてん)まで行っていたそうだ。
 
 午後5時30分。近所の魚屋さん「魚勘(うおかん)」で買ってきた魚
で、嫁が調理。ご飯を炊いて、魚料理。
 ご飯の上には、岩のりも乗せたよ。たたみいわしも美味しいよ。  アジの叩きが、や〜〜〜っぱり、美味い。  しかもこれからの季節、どアジはどんどん身が太ってきて、さらに美味 しくなるだろうなあ。  おっと。食後に、スイカが出た!  これだよ、これ! 海辺で食べるスイカは、京都嵐山吉兆並みに美味し いぞ!  こういう生活をしたかったのだ。  いやあ、極楽! 極楽!  午後7時10分。鎌倉駅。  もっとずっと鎌倉にいたかったよ〜!  1週間とか、ぶっ通しで鎌倉 に住みたいなあ。ずっと雨になったらイヤだけど。  清正まなつチャン、井沢どんすけ、私、嫁の4人は、横須賀線で、東京 に向う。  午後8時30分。原宿の家に戻る。  まだ身体が、ほてほて熱い。けっこうに日に焼けたからねえ。  今度、私に会ったら「あれ? ひょっとして加山雄三さんですか?」と いうギャグをプリーズね!  明日は、ふってわいたような念願の場所に行く。お楽しみ…なのは、た ぶん私だけだと思うので期待しなくていい。はははのは。
 

-(c)2001/SAKUMA-