5月19日(土)

 連日、極秘裏に進めているお仕事はこんな内容。

 1970年鹿児島県内之浦から打ち上げられた、人工衛星の名前は?
    1おおすみ
    2けんや
    3こやなぎ
    4るみこ
          
 もちろん正解は、1番のおおすみ。
 こういうクイズを今月中に、100問以上作ろうとしている。
 ただいま48問目。もうすぐ半分だ。 

 午前10時30分。鎌倉長谷駅の北、由比ヶ浜通りにある「ベーグル」で、
サンドイッチを食べようとしたら、まだパンが届いてないというので、コー
ヒーとケーキですます。
 なかなか美味しいケーキだ。
 いまのところ鎌倉における朝食定番になること確実のお店。

 このお店の向かい側に、コロッケが名物のお店「宮代商店」がある。
 ここでコロッケを買って、さっきの「ベーグル」で売っていたパンにコロ
ッケをはさんで歩きながら食べようという魂胆。
 いかにも休日っぽくていいでしょ?
 この店は今年の春ぐらいに、フジテレビ『音楽寅さん』で、サザンの桑田 佳祐くんが来て、食べていた。その撮影時の写真を飾っていたので見ていた ら、お店の人に「もっと桑田佳祐さんの写真ありますよ〜!」と言われて、 アルバム写真を見るはめになってしまった。ははは。  午前11時30分。念願の鎌倉文学館へ。  昭和60年にオープンしたんだ、この文学館。もっと古くからあるのかと 思っていた。高台にあって、鎌倉の海が一望できる最高のロケーションだ。  こういう広い芝生の家を見る度に、クレージー・キャッツの植木等さんの 映画のラストシーンを思い出す。  植木等さんが、浜美枝さんか、星由里子さんと結婚して、こういう豪邸に 住むのだ。あのシーンにあこがれて、いつかこんな家に住みたいと子どもの 頃思ったものだ。
 でも生活が現実に近づくにつれ、庭の手入れが大変そうだ、虫もたくさん 発生するんだろうなあ、車が無いと不便、家にたどり着くまでが急坂だ、コ ンビニが近くにないのはいやだなあと断念してしまうのだから、人間という のは不思議な生き物だ。
 この広い芝生で、現実から遠いうちの娘が寝ている。  気持ちよさそうだ。顔が笑っているが…。
 さて、鎌倉文学館は、土日ということもあってか、ものすごい数の見物客だ。  修学旅行生たちのコースになっているせいもある。  もう少しゆっくり展示物を見たかった。  もう一度来ることもあるだろう。  この文学館には、以下の鎌倉ゆかりの文学者たちの生原稿や、書簡が展示 されている。  川端康成、大佛次郎、小林秀雄、永井龍男、島木健作、高見順、久米正雄、 小島政二郎、里見惇、中村光夫、中山義秀、今日出海、林房雄。    まさに小説家オールスターズである。  いずれも中学生の頃に熟読した作家たちばかりである。  えっ? そんなに文学青年だったの?って思うでしょ。  違う、違う。  私たちの時代は、いまのようにAVビデオといったいやらしい物が普及し ていなかったし、エッチな本を買おうにも、本屋のおばちゃんが売ってくれ ないという真面目な時代だったのだ。  そこで仕方なく、家にあった「日本文学全集100巻」を片っ端から読ん で行って、エッチなシーンを必死に探したのだ。  だから、後年、太宰治というと、暗い作家の代表のように文学史で覚える のだが、中学生の私にはエッチ系の作家だった。  ときには、小林多喜二の『蟹工船』なんか読んで、何でエッチなシーンが ないのかと、激怒したものだ。  そういう点では、やはり谷崎潤一郎が白眉であった。  三島由紀夫のエッチなシーンは、美しかった。  まさか、のちにこのエッチな文章探しの日々が、さくまあきらを文筆業に するのだから、人間どこで何が役に立つのかわからないものだ。よもや私が 文章を書くことで生活できるようになるなんて、まったく想像つかなかった もの。  でもサッカーに夢中になるより、草野球に夢中になるより、エッチな小説 探しに夢中だったもんなあ。  だから、きょうのこの文学館の作家でいうと、やっぱり川端康成さんのエ ッチな美文がいちばん好きだったなあ。大佛次郎さんの『鞍馬天狗』は、全 集以外でもかなり読んだなあ。  なかでもいちばん嫌いだったのは、小林秀雄である。  エッチな文章がひとつもない挙句に小難しい。しかも評論である。行った こともない奈良の古い寺のことなど書かれてもちっともおもしろくないと思 った。  というように、けっきょくエッチな文章を探しながら、反発こそすれ、 100人の作家の文章に親しめたことは、本当に財産になっている。
 なおも、由比ヶ浜通りを鎌倉駅に向って歩く。  いつもはタクシーで通り過ぎる場所なのに、こうして歩いてみると、なん と魅力的なお店だらけなのだろう。
鎌倉彫の店
 小窓程度しか開けていないお店の麩まんじゅうを買って食べたら、麩のみ ずみずしさ、口のなかで溶けていくようなさっぱりとした餡(あん)に驚愕 する。 「いまのお店の名前、メモっておけばよかったあ!」と叫んだほど美味しい。 京都の有名な麩まんじゅうのお店の何倍も美味しかったぞ。  八百屋さんの軒先で、大きな伊豆産の椎茸を買う。  今夜は初めて、鎌倉の家でご飯を炊いて、地の野菜や魚を買い求めて調理 して食べようという試みを予定しているのだ。  和菓子の「桃太郎」で、黄味しぐれを買う。
 玄関マットを売っているお店だと思って入ったはずが、石のサイコロを見 つけて、買ってしまう。レッド・ジャスパー、ブルー・ゴールドストーン、 アラゴナイトの石でできたサイコロである。  鎌倉の家購入記念で、サイコロを集めようと思っている。  何たって、エッチな小説と、サイコロのおかげで、今日のさくまあきらが あるからね。サイコロのコレクションは始めるべきでしょう。  サイコロの携帯ストラップも購入。  何かサイコロで、コレクションしたほうがいいものがあったら、ご一報を!  備長炭を売っているお店が、日本そばとか、沖縄そばが食べられるお店を 兼用している。とてももう食べられないので、備長炭だけ買う。消臭用。  いいかげん疲れて来たので、喫茶店で休みたいと思ったら、古い銀行を喫 茶店にしたおしゃれなお店「THE BANK」というのがあったので、ひ と休み。
 小さなお店だけど、ゆったりとしたディスプレイで、格好いい。  夜は、バーになるそうで、湘南の昔不良だったおじさんたちが集まりそうだ。  わらび餅屋を発見。
 すでに買い食いのし過ぎで、とても食べる気にならないのだが、お店の作 りが、まさに「美味しい」と語っている。  憎いことに試食できる。食べる。 「買う! 買う! 買う! こんな美味しいわらび餅、初めてだよ〜!」  鎌倉って、和菓子のレベルがものすごく高くない?  京都より高いよ。  まったくもう『桃太郎電鉄X(仮)』の鎌倉の物件を全面的に変更したい よ〜! 『桃太郎電鉄X(仮)』の次の作品では、鎌倉を目的地にして、最新の充実 した物件に仕上げるぞ!  江ノ電の踏み切りを越えて、若宮大路に入る。  東京ガスに寄って、調子の悪いガス台を見てもらう手続き。
 鎌倉自由市場とかいうところを通って、小さな家の看板に、ぽつんと犬の 骨のマークが描かれている。  嫁がこのお店を見つけてよろこぶ。  このお店、犬に関する雑貨を扱っていて、いつが営業時間か固定していな い幻のお店なのだそうだ。出てきたオーナーが、実によく犬に似ていた。飼 い主に犬が似るのではなく、オーナーが似てしまったようだ。
 CDの新星堂で、私は嫁、娘と別行動。  親子は鶴岡八幡宮のほうまで、ご飯茶碗と箸を探しに、私は新星堂で、サ イモン&ガーファンクルの3枚組を探す。  鎌倉で、サイモン&ガーファンクルの3枚組があるのを期待してはいけな かった。小田和正のCDと、ザ・ピーナッツのCD、『ブループラネット』 のDVD、ザ・ドアーズのDVDを買って、新星堂のポイント・カードを出 したら、まだこのお店ではこのカードは扱っていないので、スタンプを押し ますから、ほかの新星堂のお店で、ポイントに変えてくれと言われる。  う〜ん。サイモン&ガーファンクルの3枚組で『レッド・ラバー・ボール』 が聴きたいよ〜!  鎌倉駅前の不二家の前で、親子と合流。江ノ電側にまわって、紀伊国屋で、 今夜の料理に必要なものの最後の調達。お米を買うのを忘れそうになった。  魚は、長谷の家の近所で買うことにしているので、野菜や、おぼろ豆腐など。  午後3時30分。家族3人、くたくたのへろへろになって、鎌倉長谷の家 に戻る。足がじんじん。ほかの生き物のようになっている。  バタンキューで、熟睡。  いつもの旅日記並みの密度の濃さだ、きょうの散歩は。  想像していたより、はるかにいい町だな、鎌倉は。  午後6時。家族揃って、キッチンで鎌倉の家、初食事。  ひとり暮らしの土居ちゃん(土居孝幸)が羨ましくなるような家庭料理だ ぞ〜!  青海苔のお味噌汁に、アジのたたきに、イカのお刺身、生しらす、椎茸の バター焼き、キュウリのもろきゅう、あんぺい、アジの干物…やっぱり家で 料理すると、買いすぎて、お腹いっぱいになっちゃうよ〜!  美味しそうな食べ物ばかり、店先に並んでいたからねえ。
 午後7時。TVを見れば、横浜ベイスターズ対巨人。4回表で早くも、 1対6。  はい、はい。もうどうでもいいですよ! ワンサイド・ゲームだし、こっ ちも身体のことを考えて、そろそろ応援をしばらく自粛することにする。  森祗晶監督には今年いっぱい、とことん膿を出してもらって、来季のため のデータ作りをしてほしいものだ。第2の佐々木様や、ローズ選手を発掘し てください。
 今夜は鎌倉で、本を読んだり、仕事をしたり、DVDを見たり、レコードを聴いたり。
 

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