5月18日(金)

 午前10時53分。鎌倉駅まで、土居ちゃん(土居孝幸)、昨日来るとこ
ろだった柴尾英令くん、アニメ・プロデューサーのひろたたけしを迎えに行
く。
 ゲーム・ディレクターの國政修くんは1本電車に乗り遅れて、午前11時 7分に到着。  さて、みんなで何を食べるかを議論。 「魚料理と、お肉料理とあるけど…」 「さくまサン、お肉というと?」 「前回、柴尾英令くんを出し抜いて、みんなで食べてしまった葉山牛のステ ーキだよ!」 「ああ! あのお肉かあ…」と柴尾英令くんがつぶやく。  どうも、世論がすっかり葉山牛に傾いている。小泉内閣並みの支持率だぞ!  このデブさんたちは、本当にお肉が好きだ。 「やっぱり、このメンバーなら、お肉でしょう!」 「仕方ない。ひろたたけし来日記念ということで、葉山牛にするか!」 「何でもボクのせいにしてください! はっはっは!」  葉山牛の「マザーズ・オブ・カマクラ」に行くが、開店時間は午前11時 30分からなので、まだ20分近くある。  これでやめるのかと思ったら、誰も「ほかのお店に行きましょう!」と言 わないどころか、ひろたたけしは「午前11時30分、5人で予約してきま したあ!」と明るく階段を下りてくる!  さらに、道をへだてたおせんべい屋さんで、おせいべいをバリバリ試食し 始めている! これからステーキを食べるというのに、おせんべい食べるか?  土居ちゃんなんか、早くもぬれせんべいの袋づめを買っている。 「何で、土居ちゃん、おせんべい買うの?」 「あとで、会議のときにみんな食べるでしょ?」  ダメだ、こりゃ。  この人たちは、チェーン・イーティングの人たちだ!
 午前11時30分。葉山牛の「マザーズ・オブ・カマクラ」へ。  このデブ軍団は、お昼から、サーロインステーキ160グラムのランチを、 サンドイッチを頼むかのように、軽々と注文する。 「お昼からサーロインかあ?」 「脂が乗ってないとお肉は美味しくないでしょう、さくまサン!」  底知れないやつらだ。  私は、ミニッツステーキ60グラムと、少量の料理にする。ふっふっふ。 この差が最後に笑う者になるのだよ。ふっふっふ。  ダメだ、この人たちは!  ばくばく、ステーキを食べて、次々にご飯をお代わりしている! 「美味しいですねえ!」 「ご飯も美味しいですよ、このお店のは!」  食後、土居ちゃん(土居孝幸)が恐ろしいことを言い出す。 「さくまサン、ショートケーキのお店って、こっちの方向でしたっけ?」 「おいおい! ステーキのあとに、ショートケーキ食べるのかあ?」 「食べるでしょう!」 「食べますよね!」 「ボクは、食べてもいいですよ!」  これほどまでに結束の固いやつらはいないぞ!  自由民主党じゃなくて、自由甘味党だ、こいつらは!  午前11時30分。「ラ・ルナ」へ。 「それじゃ、ショートケーキを5つに…」 「あの〜、ショートケーキは、季節限定商品なので、4月で終了してしまっ たんです〜!」 「何ッ!?」 「何だって〜!」 「誰に断わりもなく! けしからん!」 「イチゴは、やっぱり4月までだな」  けっきょく、コーヒーに、シフォンケーキ、ベーグド・チーズケーキなど を注文する、おじさんたちであった。
 しかし甘い物ばかり食べているけど、このデブ軍団は、食べながらもちゃ んと仕事はする。エンディング画面をどうする?という議論でも、しっかり 古今東西の映画のワンシーンを例に出して、ああでもない、こうでもないと、 アイデアを出すことができる。  土居ちゃん(土居孝幸)も、わざわざ葛飾北斎の画集を持ってきて、こう いう画面にしない?と、例を出す。  午後1時。江ノ電で、長谷駅へ。  長谷の自宅で、さっそく会議の続き。 『桃太郎電鉄X(仮)』の最新ロムを見て、たった1行の文章をめぐって、 議論百出となる。 「そこにわざわざ文章はいらないと思うなあ!」 「ゲームをする人にとって、必要な文章だと思うんですけど…」 「必要ならば、文章にするのではなく、表組に近い形にしたほうがいいと思 うなあ!」 「うん。それがいい! こういう文字のレイアウトになるってことでしょ?」 「そうです! そうです!」    マップ上に登場する貧乏神についても、土居ちゃん(土居孝幸)が細かく 修正を要求する。人生は大雑把な男だが、仕事は細かいぞ!  そのうち、柴尾英令くんが、九州マップ部分をぐりんぐりん回しながら、 高速で汽車を走らせるので、後ろで見ていた私が気持ち悪くなる。 「ううっ! バンゲリング・ベイを見ているみたいだ! 気持ちわる〜!」  ゲーム・マニアには、わかりやすいゲーム名だったかな? おっと。い かん。バンゲリング・ベイは、ハドソンのゲームだった!
 午後4時30分。近所のビルの2Fの喫茶店に場所を移して、みんなが 鎌倉に来てからずっと議論しているエンディング画面のアイデアを元に、 ひろたたけしが、サササッとその場で、ラフスケッチにして、見せてくれる。 「うん! これ、これ! こういうのにしたい!」 「きょう、ひろたたけしを呼んでおいてよかったなあ!」 「ひろたたけし、ただのデブじゃないんだなあ!」 「ボクは今回、アート・ディレクターとして参加してるんですからね!」 「あっ、そうか、そうだった!」  こういうやり取りをしているから、私たちの仕事の仕方は楽しそうで、 簡単そうで、ちょろいと思われてしまうんだよなあ!  ひろたたけしが、只者ではないことは、ぜひ『桃太郎電鉄X(仮)』の エンディングを見て、満喫してほしい。  ちなみに、『桃太郎電鉄X(仮)』の発売日は…はっはっは。ハドソン 桃太郎事業部の石崎仁英くんを脅かしてみました。  その前に、『桃太郎02(仮)』が発売されるのだ。  たしかきょうぐらいから、『桃太郎02(仮)』の話題は解禁じゃなか ったな。うっかりフライングするといけないので、もうちょっと待ってお こうかな。  午後6時。長谷の家に戻って、さらに『桃太郎電鉄X(仮)』の打ち合 わせと、『桃太郎04(仮)』の打ち合わせ。  午後7時30分。長谷駅の北側に、浅草で有名な焼きそばのお店「染太 郎」があるので、行ってみる。もちろん、初挑戦。  さあ、料理名人のひろたたけしが、すべてを仕切る。 「きょう1日、ひろた、すっかり主役だなあ!」  お好み焼きに、焼きそばを注文する。  ひろたは、鉄板にラードを敷いて、手早くお好み焼きを広げる。  わざわざ生卵を別注文して、できあがったお好み焼きに、広島風お好み 焼きのときの玉子をクレープのように焼くやり方をして、乗せる。  鮮やかな手つき。  クルッ! 「おお!」  きれいにお好み焼きをひっくり返す。 「見事だなあ!」 「デブのくせに!」 「はっはっはっは!」
「まだ、もっと食べますよね!」と、ひろた。  まだ食べるんかい、こいつらは! 「もんじゃ焼きなんかいいなあ!」 「トッピングは何にしますかね?」 「明太子は絶品ですよねえ!」 「どうしてそう、君たちは血圧が上がるような食べ物が好きなの?」 「じゃあ、おそばと、お餅にしましょう!」  お餅を入れるんか〜い!  ひろたたけしの塩、胡椒の仕方などを見ていて、柴尾英令くんが感心する。 「ひろたサン、料理が細かいですねえ」 「ひろたはなあ、仕事はすぐ妥協するけど、料理は絶対妥協しないんだぜ いっ!」 「うん。仕事はすぐ妥協しちゃう! は〜っはっは!」 「ひろた、たまには否定しろ!」  笑いながら、仕事の打ち合わせをしながら、美味しく食べる。  楽チンだ。この人たちとの仕事は。  自分のペースを持っていた上で、他人のペースにあわせてくれる。  仕事はこうでなきゃね。  午後9時。長谷駅で、みんなは鎌倉、東京方面へ。  私は、そのまま長谷の家に戻る。  横浜ベイスターズ対巨人戦。  予想通り、ぼこぼこに横浜ベイスターズ投手陣がホームランを浴びまくり!   夏の花火大会がもう開催されたみたいだ。きょうみたいな負け方のほう が心臓が苦しくならなくてすむからいい。  午後10時。東京から、嫁と娘が合流。  日曜日まで、鎌倉に滞在する予定。
 

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