4月27日(金)

 ふわ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ! よく寝たあ〜〜〜!
 何だかひさしぶりによく寝たよ〜〜〜。四国遠征シリーズは。新しい出
会いがあって、とっても楽しかったんだけど、睡眠不足だったからなあ。

 唐突な話題だけど、昨夜の横浜ベイスターズ・中野渡投手、プロ入り初
勝利おめでとう! プロ野球ニュースなどをはしごしても、どの局も「プ
ロ入り初勝利」といってくれなかったから、私の記憶違いかと思っていた。
 中野渡投手の親戚である、ナムコの中野渡昌平くんに会って以来、中野
渡投手をいままで以上に応援するようになっている。嫁の「どうせベイの
選手なら誰でも応援するんでしょ」という声が聞こえてきたような気がする。

 午前10時07分。京都駅。のぞみ48号東京行き。
 これから東京に帰ると思ったら、大間違い。
 どこへ行くのでしょう。

 午前10時43分。名古屋駅下車。
 名古屋駅から、近鉄名古屋駅へ歩く。4分ほどの距離だ。
 うわあ。ホームがたくさんあって、どれに乗ったらいいのか、全然わか
らないなあ。準急四日市行きか。これなら早いだろう。

 午前10時58分。準急四日市行きが走り出す。
 えっ? 何だって? 蟹江駅以降は、各駅停車になるって? まだ10
分も走ってないぞ。
 その後も、特急の通過待ちをしたり、後続の普通列車が追いつくのを待
つといった不可解な停車をくりかえす。常に「時は金なり」でどんなに近
くても、特急を利用する主義っだたのに。鈍行で20数分ほどの距離にわ
ざわざ特急をつかうことないだろうと思ったのが、失敗だった。

 午前11時26分。近鉄弥冨(やとみ)駅。とうとうこの駅で、特急の
通過待ちと、急行松坂行きの到着待ちをするというので、急行に乗り換え
る。いったい普通列車だったら、何回停車待ちをしないといけないんだ。

 午前11時34分。桑名駅着。
 きょうはこの桑名を取材に来た。
「その手は桑名の焼きはまぐり」で、おなじみの桑名だ。
 徳川家康配下の闘将・本多忠勝が治めたことで、歴史マニアにはおなじ
みの桑名だ。なのに、駅の広場の看板には「鋳物の街」と大きく書かれて
いる。
 鋳物なんて、有名だったかなあ。
 さて、今回桑名に来たのは、iモード・ゲーム『さくま式東海道五十三 次』の毎月原稿を書くため。『さくま式東海道五十三次』では、毎月53 の宿場のうちのひとつを取り上げて、エッセイを書いている。でもさすが に、一昨年の12月から配信を開始したから、そろそろ20回近くなって きて、行ったことのない場所、行ったけど、当時東海道五十三次の宿場と 思っていずに行ってしまった場所などがけっこう残っている。  最初のうち筆が走って、2〜3個の宿場を一度に書いてしまったことも あって、そろそろ行ったことのない宿場の取材をしておかなければと思っ たのだ。  だから、きょうの日記は、桑名の回の下書きをかねて書く。  といっても、来月分の原稿ではない。おそらく6月分で取り上げるはず。  桑名は、東海道五十三次の42番目の宿場町。  東海道五十三次のなかでは、唯一、舟をつかって渡る場所だ。  名古屋の熱田神宮。当時は宿場町として「宮(みや)」と呼ばれていた。 この宮から、渡し舟で、28キロメートルの海路を渡ってくるので、その 波止場は、「七里(28キロ)の渡し」と呼ばれた。    また、この桑名は、伊勢の国に入って最初の宿場、東の玄関の役目も はたす重要な場所ということで、伊勢神宮の一の鳥居を移築した。総ひの き造りの豪華な鳥居だったそうだけど、いまはただの枯れた鳥居としか思 えない。  それにしても、知名度のわりに、桑名駅の駅舎はしょぼい。一瞬北口駅 とか、南口駅、または繁華街ではないほうに降りてしまったのかと思った ぐらいだ。  エスカレーターはないし、階段を下りたところから、道路が広がってい ない。広い道は、駅を降りてから、100メートル以上左に歩いていない と、見つからない。しかもその道路は右折できない。  駅舎にむかって向って、直角に大きな道路がまっすぐ伸びていてくれな いとねえ。知名度の高い駅は。
「七里の渡し」に向って、歩いて行く。  しかし、まっすぐな道がないので、曲がりくねりして、進んで行くしか ない。桑名というと焼きはまぐりのイメージなのに、蛤を売るお店はけっ こうあるものの、ハマグリ料理を食べさせてくれるお店がほとんどといっ ていいほどない。  朝から何も食べていないので、腹が減った。  やっとまっすぐに進めたと思うと、道を横切るように、商店街のアーケ ードが伸びる。どっちに向って行ったらいいかのか、わからなくなる。  非常にわかりづらい町の区画だ。  案内板もまったくない。  いくつかの道を行きつ、戻りつしながら、歩いて行くうちに、「桑名市 博物館」があったので、入る。入場無料。  ちょうど「東海道と桑名の歴史展」をやっていた。  東海道を描いた絵の桑名から、四日市、亀山あたりまでを選んで展示し てある。複写版といえども、葛飾北斎、安藤広重といった人たちの絵をま とめて見比べられるのは、気持ちのいいものだった。  しかし、歩きつかれた。まっすぐに道が続いてくれ。    午後12時30分。新聞配達所で場所を聞いて、ようやく「歌行燈(う たあんどん)」にたどり着く。  新宿と吉祥寺にも支店があって、いなにわうどんのように弾力のある白 いうどんと、蛤が名物の私と嫁がごひいきのお店だ。その本店がここ。思 ったより、小さいし、とても全国各地に支店があるようなお店に見えない。
 新献立「蛤天丼御膳」1250円というのがあったので、これにする。 「新献立」という文字にはつい、そそられる。 「新献立さんいらっしゃい」というギャグが浮かんだが、つかえそうもな いので。ここで使い捨てる。  おお! この蛤の天ぷらはうまいなあ。  大きな蛤をマシュマロのようにふっくらとしコロモが包む。  噛むと、蛤のエキスがじゅわっと出てきて、口のなかに広がる。豊潤なり。  単品で、蛤天丼・950円お吸い物付きというのもあるようだから、今 度東京の伊勢丹会館の「歌行燈」にもあったら、こっちを食べようっと。  これで、けっこう休みも取れたし、七里の渡しまで一気に歩けるかと思 ったが、歩き過ぎがこたえて、蛇行しながら古い東海道を歩いている。  朽ち果てたような割烹旅館。営業してるのかなあ?と思えるほど、色の 剥げた壁をそのままにしている旅館などが並ぶ。  さすがにこの東海道だけは、歌行燈を始めとして、蛤料理のお店がいく つかあった。何でこの東海道を、蛤ロードにして、蛤料理のお店をずらっ と並べて、蛤神社とか作らないのかなあ。  蛤の石像も忘れたくない。  おお! やっと「その手は桑名の焼き蛤定食」をメニューにしている お店があった。うれしいね。
 そういえば、桑名は東海道五十三次のなかでは、2番目に大きな宿場町 だったそうだ。本陣2軒、脇本陣4軒、一般宿が120軒もあったそうだ。 その往時の面影は、ま〜〜〜ったくない。  2番目と聞くと、1番目がどこか知りたくなる。   「平成七里の渡し」というイベントのポスターが貼ってあった。へ〜、そ れはおもしろいねえ。いつやるんだ? 4月27日、28日。何だよ、明 日じゃないかあ! なんかこういうのって、悔しいねえ。予約制のようだ から、たとえ同日でも無理だったんだろうけどねえ。  お弁当付きで、七里の渡しから、熱田神宮まで、船を渡すようだ。  10月6、7、8日の3日間も、この「平成七里の渡し」のイベントを やるそだから、そのとき参加してみるかなあ。まず間違いなく、忘れるな。 はっはっは。 「七里の渡し」について、興味のある人は、桑名観光協会まで。  午後1時。「七里の渡し」に着く。  一の鳥居が立っているものの、目立つのはいまも続行中の揖斐川川口水 門工事だ。大きな水門の前で、クレーン車が一生懸命働いている。宿場の 面影は、歌行燈の通り、30メートルほどで、主役は河口工事のようだ。
 そういえば、この桑名とか、長島といった土地は、中州のような土地の 連続で、昔から水害に合うことで知られている。  戦後最大の伊勢湾台風をもろに食らったのも、この地方だ。  江戸時代中期、幕府は薩摩藩に命じて、この七里の渡しあたりの治水工 事をさせた。ところが、工事は困難を極め、工事が終了する頃には、40 万両もかかってしまったそうだ。  なのにこの工事を命じた幕府は、1万両しか負担せずに、薩摩藩に残り の39万両を負担させたという。ひどいにもほどがある。    歴史はとかく、いいことをした人を、未来に語りついで行く風潮にある けど、本当に教育のためを思うなら、こういう無茶な要求をした幕府の役 人を取り上げて、こういう人間には絶対なるな!という教育をしたほうが、 身になると思う。  もうそろそろ気づいている人もいるだろうけど、この薩摩藩必死の治水 工事って、漫画『風雲児たち』の最終巻だったか、ひとつ手前だったかに、 掲載されていた短編漫画のことだよねえ。旅先なので、確認できないけど。  こういう歴史を語り継いで行ってほしいものだ。  そういえば、桑名駅から少し歩いたところに、「薩摩義士墓所」という のがあった。この話のことだろう。
 七里の渡しに隣接する、九華(きゅうか)公園で、しばらく川を眺める。  川といっても、海のように広い。  天気もいい。  だけど桑名という町は静かだ。音がしない。音が少ないわけではない。 まるで防音設備が働いているかのような、音が吸収されているような静け さなのだ。  比較的大きい九華(きゅうか)公園を出ても、バス停がない。そういえ ば、ほとんどバスを見なかったなあ。『東海道五十三次』の有名な七里の 渡しのところまで、バスも通っていないのはいかがなものか。 「柿安」という結婚式場かと思って入ったら、スーパーだったという珍な る建物で貸切られたタクシーの運転手さんに、タクシーを呼んでもらって、 桑名駅まで戻る。  午後1時55分。快速みえ12号で名古屋に向う。行きは近鉄名古屋線 で、帰りは関西本線で帰るのは気分がいい。おなじ電車で往復したくない のはいつもの通り。  せっかく桑名まで来たのだから、このまま次の宿場である四日市、石薬 師、庄野、亀山まで足を伸ばしたいのだが、行くとまた日記が長くなって しまう。  よく日記を読んでる人たちからは、「次から次へと1日でいろんなとこ ろまで疾風のように進んで行きますねえ!」といわれるが、これでも日記 を始めてから、かなり地味な旅程になっている。  もう1ヶ所多く回りたいけど、日記が長くなるのがイヤなせいで、行動 範囲が狭まっているのは、けっこう忸怩たるものがある。  いまのいところ日記を始めたことのメリットのほうが多いのと、日記の せいで無茶な旅行を控えめにするようになったので、健康にもよいので、 このペースで行こう。  午後2時13分。名古屋駅。  ちょどいい新幹線のぞみ号があったので、乗る。    午後2時34分。のぞみ15号。  本を読みながら、うとうとする。危ない。京都まではわずか40分だ。 うっかり寝て、博多まで行ってしまったら…、それはそれで楽しいなあ。 ははは。  午後3時10分。京都駅着。  午後3時30分。京都のマンションに戻る。  さっそく、iモード・ゲームの今月分の原稿を書き始める。『さくま式 東海道五十三次』、『さくま式奥の細道』、『さくま式西遊記』の3本の 原稿を書かないといけない。『桃太郎02(仮)』と四国遠征のせいで、 すっかり原稿が遅れてしまって、申し訳ないです、インデックスさん。  もうしばらくお待ちください。  午後5時。河原町四条のほうまででかけて、何を食べようかと迷いなが ら、あっちこっちほっつき歩く。  午後6時。おや。喫茶「自遊人」? 黒胡麻とくるみのカレーライス?  黒胡麻のオムライス? 黒胡麻ゼリー? 喫茶店なのに何でこんなメニュ ーあるんだ。まあ、際物(きわもの)狙いかな。  こういう変わったメニューで、味はいまひとつというのが、圧倒的だ。  デジカメを持って出るのを忘れたけど、美味しくなかったら、デジカメ しても無駄なので、とにかく入ってみる。 「黒胡麻とくるみのカレーライスを…」 「えっ? 何? え? カレー? あるよ!」  昔のお相撲さん、荒勢のように濃い顔で愛想の悪いおっさんに何度も聞 き返される。私はそんなに滑舌(かつぜつ)が悪いかなあ。  メニューに、ネーブルジュースを発見。  自分がネーブルが大好きだったことを思い出して、注文する。 「え? ん? あ? ネーブル? あるよ!」  本当に、愛想の悪いおっさんだなあ!  しばらくして、大きなフランス料理のようなお皿に、どっさり野菜が乗 って、黒胡麻のドレッシングがかかった料理が、目の前に置かれる。  なんだよ、やっぱりこの親父、ちゃんと注文聞いていないじゃないか! 「私が頼んだのは、カレーライスなんですけど…」 「え? ん? あ? おまけ!」 「おまけ?」 「だから、カレーのおまけ!」 「うそ。こんなどっさりあるやつが?」 「そう!」  にっ!と、おっさんが笑う。  どうやら、前菜のサラダのつもりのようだ。  誰だって、喫茶店でカレーライスを注文して、こんなものすごい量のサ ラダが出てくるとは誰も思わないよ! ああ! デジカメ持ってくればよ かった。 「うまい!」  このサラダ、むちゃくちゃうまい!  キャベツ、赤ピーマン、タマネギ、ニンジンとかたくさんの野菜が乗っ たお皿に、ドバッと黒胡麻ドレッシングがかあっている。 「このサラダ! 美味しい!」 「ありがとうございます!」  愛想の悪いおじさんは、にっこり笑って、すっかり愛想がよくなった。 「黒胡麻に、酢が入ってるんや!」  おっさんの胸に名札がついていた。何ていう名前なんだ? 「男前」。  ふざけた、おっさんだ。  とにかくこのおっさん、黒胡麻に凝っているようだ。と思ったら、もと もと胡麻屋さんだったそうだ。お店の壁にも、黒胡麻ペーストの瓶がずら りと並んでいて、テイクアウトできるようになっている。  さて、本編のカレーライス。 「なんじゃこりゃあ!」  普及しすぎて真似したくない、松田優作の名台詞を思わず口走ってしま いたくなるくらい驚いた。  だって、すっぽん鍋のような、土鍋がでん!と目の前に置かれたのだ。 「熱いから、気をつけてや!」といって、土鍋のふたを開ける。  ぐつぐつ、ぐつぐつ、石焼ビビンパのように、カレーが煮立っている。 「生卵入れまっか?」  ん? ああ、そうだった。関西は、カレーのトッピングに生卵を入れる ことが多い。生卵を入れて、かき混ぜると、味がまるくなって美味しいのだ。  あぢぢ…。あぢぢ…。  熱いけど、このカレー、おいひい…。  土鍋で、ちょっとご飯が焦げそうになって来たところが美味しいし、な により、くるみとカレーの相性が抜群なのだ。ひとかたまりカレーを口に 含んだときに、くるみが入っているときと、いないときがある。このラン ダム性がいい。  すっかり、おっさんとなかよくなってしまったせいで、昨日の岡山のソ ースかつどんのお店「だて」で、土居ちゃん(土居孝幸)が目の前にいる と、残せなくって!と言ったのとおなじで、私もカレーを残せなくなって しまった。 「また来るから、営業時間とか書いてあるカードありません?」 「ん? え〜と…、これだ!」  どこかの雑誌に載ったのをパンフレットにしたようなものをくれる。 「あの〜、これ営業時間とか書いてないんだけど…」 「えっ! このへんに書いてありまっしゃろ! ほんま。書いてないわ!」  カードならまとめてストックしてあるけど、こういう雑誌記事はすぐ捨 ててしまうので、この日記にメモ代わりに記録させて。お勧めだよ。1回 目だけでは、まだ断言したくないけど。 「自遊人(じゆうじん)」  中京区河原町通蛸薬師上ル東側 ツルヤビルB1  075(222)1156  午後12時〜 水曜休み  午後7時。マンションに戻り、iモード・ゲームの原稿を書いたり、東 海道五十三次の資料を読んだり。  iモード・ゲームの作品は、資料を間違えてつかってはいけないので、 気をつかう。それだけに執筆に時間がかかる。  明日は、東京に戻る…ではなくて、鎌倉に行く。  ゴールデンウィークだからねえ、明日から。
 

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