3月6日(火)

 午前中、『伊吹童子(仮)』のマップ作り。
 作る確証のないゲームの仕様書を作り続けるのは、なかなか孤独な
作業ではある。でも契約と同時に、次々に「敵キャラを全部ください!」
「 マップをください!」「アイテムをください!」と、矢継ぎ早に
言われることが多いので、先に作っておいたほうが、圧倒的に楽である。
『桃太郎大全集(仮)』にしても、契約をすませていたら、どんなに
途中で気に入らなくなっても、作り終えないといけない。納得のいか
ないままゲームを世に送り出して、けっきょく評価が下がるのは、私
である。

 だからこそ、契約せずに、ゲームの仕様書を書くのは、ゲーム作家
の自衛手段である。冗談ではなく、過去にまだ何も考えていないRP
Gを作ることだけOKした次の日に、「グラフィッカーを遊ばせてお
くのがもったいないので、敵キャラのデザインを送ってください!」
と言われたことがある。
「これから私はシナリオを考えるんだけど…」と言っても、「敵キャ
ラだけ先にください!」という。どうも相手はシナリオと、敵キャラ
は連動していないと思っていたようだ。
 そういう理解力のない人との仕事がうまく行くはずがない。
 案の定、あまり売れなかった。

 午後12時。嫁と、神宮前3丁目の「月光茶房」で、茄子とひき肉
のカレー。
 ここのカレーは、定期的に食べたくなる。
 
 午後2時。蔵前3丁目の蔵人総合研究所に行く。
 個人の決算やら何やら、打ち合わせ。

 帰路、蔵前のおもちゃ問屋街を歩く。
 実は私は、実家がおもちゃ屋だったので、小学生ながら、よくこの
問屋街まで仕入れのおつかいで来ていた。
 今も蔵前に残っている「三ツ星商店」など、よく通ったものだ。
 小学生のおつかいなど珍しいものだから、よくお店の人がアイスク
リームをくれた。小学生にとっては、アイスクリームひとつが、嬉々
としてこの手伝いをする動機にじゅうぶんなったものである。

 だからこの蔵前の問屋街を歩くと、漫画『こち亀』のなつかしいド
ラマのときのような、せつない気分になったりする。
 TVで花登筐(はなと・こばこ)さん原作の『どてらい男』が、何
より大好きなのは、この小学生の頃のせいである。
 同様に、私が豊臣秀吉が好きなのも、日吉丸と呼ばれていたときに、
針売りをしていたエピソードが、自分にだぶって、好きになったよう
な気がする。

 きょうも、五月人形を売っているお店のひとつに、豊臣秀吉の兜を
売っているお店があって、無性に欲しくなって仕方がなかった。兜の
烏帽子の部分が、まるで輪島塗のように美しく光っていて、でも買っ
ても置くところがないので、断念したが、いまだにあの兜はほしい気
持ちが残っている。
 値段が、10数万円だったので、ちょっとフィギュアとして見ても、
高い気がした。全然節句人形として見ていないところが、わがままで
いいでしょ?

 さらに帰り道に、NTTドコモがあったので、携帯電話をiアプリ
に買い換える。仕事上、iアプリにしないとまずいのだ。

 午後5時30分。千駄ヶ谷から、戻って来て、喫茶店「らぴす」サ
ンで、ひと休み。
 今回、iアプリは、F503とかいうのにしたが、前はD502と
かいうやつなので、またまた操作方法が違う!
 と言っても、いつも嫁が説明書を読んで、口頭で私に教えてくれる
のだが、携帯電話を買い換える度に、操作方法を覚えるのは、本当に
面倒である。
 世の中から確実にはみ出し始めている自分に老いを感じて、ストレ
スになることが多い。どうせまた違う操作方法を覚えないといけない
とわかっているから、よけい覚える力にも、パワーがない。

 ちなみに、私はコピー機の出始めに、まず個人で契約する人などい
ない頃から、レンタル契約したくらいの新しい好きである。
 まるで当世の柴尾英令くんのように。
 ところが、コピー機が拡大・縮小できるようになったり、用紙が選
べるようになる度に、また最初から使い方を覚えないといけない。こ
れがだんだんストレスになってきて、いまやまったくコピー機の使い
方を覚えなくなってしまった。
 覚えてもまた忘れないといけないのが、嫌なのだ。

 午後7時30分。家族3人で、代官山へ。
 夕方に、電話があって、アリtoキリギリスの石井正則くん、石井
愛(かな)さん夫婦が、うちの家族をごちそうしてくれるというので
ある。
 しかも石井正則くんらしくて、以前から、うちの家族を招待すると
きは、自分が見つけて美味しいと思ったお店で、しかもうちの家族が
行ったことのないお店にしようとルールを決めていたようなのだ。

 だから、きょうは石井正則くんはドキドキものだったようだ。わか
る、わかる。うちもグルメの師匠・すぎやまこういち先生ご夫妻に、
お店を紹介するとき、ドキドキするもん。ちょっとやそっとの美味し
さのお店ではいけないと思っているし、やっとお連れしたときにかぎ
って、いつもより油が濃かったりして、ああ! いつもならもっと美
味しいのになあ!と悔やむことが多い。
 石井正則くんがどきどきする気持ちはよくわかる。
 うちが、すぎやまこういち先生ご夫妻の影響で、食い道楽を始めた
ように、石井正則くんの食い道楽スタートは、うちの悪魔の誘いから
だからね。

 というわけで、代官山猿楽町の家庭料理のお店「間人(まにん)」
に連れて行ってもらう。
 前菜から、よく煮込んだ蛸が出て、幸先よく美味しいものが出てくる。
 お吸い物もうちの好きな味。
 石井正則くんが前に来て、美味しいと思ったお勧めの「海老パン」
を食べる。
 海老のしんじょうを、パンに挟んで揚げたもので、なるほど美味し
い!
 これは、近いうちに桃太郎チームを連れて来て、「海老パンを10
皿お願いします!」と言わなければいけない味である。

 私の評価としては、京都の「忘吾(ぼあ)」のちょい上の評価。
 おお! これは高い点数が出たぞ〜! って、自分でツッコミ入れ
てどうする!?

 ご飯の代わりに注文した、山形そばが、越後のへぎそば風で、これ
また美味しい。最近日本料理の美味しいお店は、お蕎麦が美味しい法
則が、確定しそうだ。
 最後がお蕎麦だと、カロリー的にも、非常にいい。

 というわけで、ご招待してもらったあげくに、うちのグルメ・リス
トに「間人」を登録。(C)石井正則と入れておこうかな。
 
 午後10時。帰宅。
『桃太郎02(仮)』が佳境に入っているので、だじゃれの整理など。
『桃太郎電鉄X(仮)』の仕様書に、オオボケのミス、発覚。この原
稿は今夜には、ちょっと無理だな。ああ、やることがいっぱいで、て
んてこまいだ。
 読みたい本も山積み。好きなときだけ、1日の時間を伸ばしたり減
らしたりできる魔法がほしいものだ。
 

-(c)2001/SAKUMA-