3月5日(月)

 午前11時。嫁と荻窪駅。約束の時間より、30分も早く着いてし
まった。血液A型は、どうしても遅刻が苦手だ。しかし、遅刻アーテ
ィストとして、その名声を欲しいままにしている成沢大輔くんは、血
液A型なのである。
 何のセオリーにも、例外というものがある。

 柴尾英令くんから、電話が入って、荻窪駅に、午前11時35分に
着くという。中途半端な遅刻の仕方だなあ。遅刻アーティストの成沢
大輔くんを見習いなさい!
 と思ったら、ゲーム・ディレクターの國政修くんから電話が入って、
前の打ち合わせが押していて、午後12時には着けるとのこと。
 
 午前11時30分。荻窪駅南口釜飯料理の「釜膳(かまぜん)」。
見た目より、まったく遅刻をしない土居ちゃん(土居孝幸)が、時間
どおりに来る。
 きょうは土居ちゃんの家で、打ち合わせをするので、どうせなら釜
飯の美味しい、この「釜膳(かまぜん)」で食べようということにな
った。

 遅く来る人もいるけど、料理を先に注文しておく。時間がかかるのだ。
 みごとに國政修くんが、到着したときにもまだ料理が出来上がって
いなかった。でもそれほど待たされても、食べたい料理なのだ。ここ
の釜飯は。
 私は鮭。嫁は、黒米の蟹。土居ちゃん、柴尾英令くん、國政修くん
は、ここのイチ押し、生うに!
 小さな釜で炊きあがったご飯が、何よりも美味しいのよ。  ふっくらほくほくなのよ。  生うになんか、♪クリームみたいな、石鹸…じゃなくて、本当にク リームのようなウニなのだ。これ釜炊きのご飯にまぜると、経験した ことのない、ご飯の味になる。  おそらくご飯の美味しさでは、我が家の全グルメお店のなかでも、 一、ニを争うと思う。  しかも、最後は、釜にこびりついて、おこげになった部分を、しゃ もじでこそぎ落として、そこにお出汁と、わさびと、刻みネギを入れ る。極上お茶漬けとして、もう一度楽しめてしまうのだ。クリアした ゲームに、まだ広大な裏面があった!というようなもんだ。 「朝から、しあわせ!」 「ああ! これで家に帰って、寝たいぐらい美味しい!」 「釜飯に対する概念が変わる味ですよね」 「いやあ! ひさしぶりに食べるこの味は最高だなあ!」  なにしろ、私の自宅がまだこの「釜膳(かまぜん)」に近かった頃。 7年ぐらい前にここは開店したのかな。当時美味しいのに、全然お客 さんが少なくて、当時荻窪に住んでいた、ひろたたけしとか、土居ち ゃんを誘って、何度も来た。お店が潰れてほしくなかったのだ。その くらい熱中した味。  今でもうちの娘がふと、思い出したかのように、「釜飯が食べたい!」 というのは、このお店のことだ。  食後、土居ちゃんにケーキを買わせて、土居ちゃんの豪邸へ。  きょう、一睡もしないでここに来て、「にこにこ、ふわふわ」、す でにハイな状態の柴尾英令くんが、土居ちゃんの豪邸を見て、びっく りする。  誰もがこの豪邸を見て「ひとりで住んでるのが、もったいない!」 という。土居ちゃんはこの言葉を聞き飽きてるんだろうなあ。  何たって、ベランダでバーベキュー・パーティが開けるくらい広い んだもの。    さて、きょうは『桃太郎02(仮)』の最初のテスト・プレイ。  そのテスト・プレイのために、今回このプロジェクトには参加して いない、柴尾英令くんが、最初のテスト・プレイヤーを買って出てく れた。  でも、一睡もしていないので、見るからに、疲労度満点。  大丈夫かな?と思っている間もなく、ミニゲームの部分のテスト・ プレイを頼むと、生来の負けず嫌いの血が騒ぐのか、がしがしっ!何 度もチャンレンジして、ぐんぐん上手くなって行く。 「おお! 柴尾くん。どんどん上手くなって行くねえ!」  ホメられると、木に登るどころか、成層圏まで飛んでいってしまい そうな、柴尾英令くん、さらに、がしっがしっ!チャレンジ!  2人対戦を國政修くんとやって、負けると、またまた必死になって、 ついには勝ってしまう。 「すごいね! 柴尾くん!」 「そんなホメないでくださいよ!」 「いや、本当にぐんぐん上手くなってるよ!」 「いやあ、それほど…ああ! 失敗しちゃったじゃないですか!」  わかりやすい性格である。  それにしても、4時間ぶっ通しで、柴尾英令くんはテスト・プレイ を続ける。  ゲーム作家だけあって、ゲームに対する的確な指摘があって、今後 の大きな課題となる部分を探し出してくれたのだが、驚異的な体力だ。  しかし「柴尾くん、少しは休んでよ!」…という私の声が柴尾英令 くんに、届いたか否か、ぐご〜〜〜、ぐご〜〜〜、ぐご〜〜〜!と、 いびきをかいて深い眠りについてしまった。  まさに、ばたんきゅーーー!  「まるで、寝太郎が寝てるみたいだな!」  ふご〜〜〜! すご〜〜〜! ふご〜〜〜! すご〜〜〜! 「となりのトトロというよりも、『となりのトド』だな、こりゃ!」  ふご〜〜〜! すご〜〜〜! ふご〜〜〜! すご〜〜〜! 「このいびきを、録音したいなあ!」  ふご〜〜〜! すご〜〜〜! ふご〜〜〜! すご〜〜〜! 「ドルビー・サラウンド・システムだな!」  ふご〜〜〜! すご〜〜〜! ふご〜〜〜! すご〜〜〜!  柴尾英令くんのいびきをBGMに『桃太郎02(仮)』の細部につ いて、いろいろ打ち合わせ。オープニング・デモ画面をどうするか? とか、まさに佳境に入って来ている。  土居ちゃん(土居孝幸)も、國政修くんからイラストの催促が入る。  このゲームのおもしろさも伝えたいのだが、どうにもジャンルすら 匂わせることができない訳ありのゲームなので、もうしばらくお待ちを。  午後6時。「ふわ〜〜〜〜〜〜!」  本当に『桃太郎伝説』で、寝太郎が起きたときのような起き方で、 柴尾英令くんが目覚める。  午後6時30分。荻窪北口の居酒屋さん「月の卯(つきのうさぎ)」 へ。  鴨ねぎチャーハンやら、シーフードお好み焼き、明太子豚肉ロール など、料理の美味しいお店だ。 「今度から、土居ちゃんの家で会議したあとは、ここで決まりだな!」  午後8時30分。帰宅。  柴尾英令くんは、まだ寝たりない? いや、飲み足りないようで、 新宿の雑踏のなかに消えて行った。どこへ行ったかは、柴尾英令くん の日記のほうで、確認しよう。  きょうは『桃太郎電鉄X(仮)』のほうの宿題が出なかったので、 今夜はしみじみ『伊吹童子(仮)』の仕様書作りだ。意地でも、今週 中にこのゲームの仕様書を完成させちゃうんだぜいっ!  私が『桃太郎大全集(仮)』を中座した理由のすべてが、このゲー ムにある!と断言するほど、このゲームに入れ込んでいるのだ!  ではまた明日!
 

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