2月20日(火)

 プロ野球のキャンプ中って、本当にいいねえ。
 結果が出ないから、夢ばかり。
 12球団のファン全員が、自分のチームが今年は優勝しそうだと、
夢を見ている時期だ。

 昨日、沖縄の宜野湾での紅白戦で、鈴木尚典がホームランを打った
と聞けば、今年の本塁打王は、鈴木尚典?かと思ってしまうし、ズー
バーという新外国人が3打数2安打しただけで、ローズの穴は埋まっ
た!と思ってしまう。
 ホージマー、福盛、竹下の投手陣が、すべて無安打に押さえたと聞
くと、今年の投手陣はご安泰だ! ホージマーは、横浜ベイスターズ
初の10勝投手も夢ではないぞ〜!と思い込んでしまう。

 ちなみに、横浜ベイスターズの外国人投手の最多勝利記録は、たし
か、…勝である。えっ? 聞こえなかった? 2勝である。とほほ…。

 午前10時30分。嫁と、銀座の「煙事(えんじ)」へ。お店のい
つも笑顔を絶やさない美人なお姉さんが、テンユウの杉沢義文さんが
来たことを伝えてくれた。
 杉沢さん、美味しいでしょう! ここのスモーク料理?
 
 いつものように、自家製スモークワンディッシュサンドに、コーヒー。
 ベーコンのスモークが太るとわかっていながら、大好き。
 チーズはあまり好きでない私が、ここのチーズは前向きに食べてし
まう。

 午後12時。きょうも築地のハドソンへ。

 さあて、きょうはみっちり、ゲーム・ディレクターの國政修くんと
お仕事だ!
『桃太郎電鉄X(仮)』の演出のこまかいチェック。
 あれだけ何度も見直したはずの原稿に、やっぱり誤植とか、メッセ
ージの書き忘れがあるのだから、人間はやっぱり生ものなのだねえ。

 今度のゲームに、メモリーカードというのを予定していたんだけど、
このメモリーカードという名称は、どこかのメーカーから発売されて
いる製品とおなじなので、紛らわしいということになって、ほかの名
前を考える。

 なかなか浮かばないので、トイレに行ってくると言って出て、トイ
レで「濡れ手に泡」という言葉が浮かぶ。手を洗っていたからね。
 ん? おや? でもあのことわざは「濡れ手に粟」ではなかったか?
「泡」か「栗」か? 度忘れした!
 國政修くんにも聞くが、こういう言葉は改めて聞かれると、わかっ
ていたはずの答えを思い出せなくなる。
 嫁も交えた上で、GOOとか、ゴーグルで検索して大騒ぎ。

 けっきょく「濡れ手に粟」というのが正解とわかる。
 意味は、濡れた手で粟をつかむと、粒が手にくっついてたくさんつ
かむことができる。苦労せずに利益を得ることの例え。
 そうだよなあ。「濡れ手に泡」だと、あまり儲からなさそうだもん
なあ。
 手を洗いかけると、手に石鹸をつけてくれるという意味か?とも思
ったんだけど、たいした得ではないし、ことわざになるほどの言葉に
しては、「泡」という言葉が、現代語過ぎる。

 というわけで、「濡れ手に粟カード」が誕生。
 内容は、見てのお楽しみね!
 たまに失敗すると「濡れ手に栗」というパターンも考えたけど、わ
かりづらいので、ボツ!

 さてさて。一度完成したはずの、九州マップ部分。もうだいぶ忘れ
てしまった人も多いと思うが、あくまでも「九州マップ部分」!
 断じて、全国編のほかに、別マップで九州編があるのでは…ない!
と言いたい。

 この九州マップ部分の地形を、國政修くんが、もう少しリアルな海
岸線にマッしたいと言い出す。
 おお! 望むところだ!
 もっと、リアルな海岸線にできるの? だったら、しみじみリアル
にしちゃうよ! その前に、もうすでに九州に旅行に行きたくなっち
ゃってるけどさ。

 ってなわけで、綿密に、綿密に、綿密に、綿密に、綿密に、綿密に、
綿密に、綿密に、綿密に、九州のマップを作り直し。
「津久見よりも、佐伯(さいき)のほうが、東側に飛び出てるんです
ねえ!」と、國政修くん。
「ふっふっふ。北海道生まれの國政修くんが、ぐんぐん九州の地理に
くわしくなっている。ふっふっふ。私の思う壺だ!」
「この盛岡が…」
「國政くん、延岡(のべおか)! 延岡!」
「ああ! 盛岡は、東北ですよね! しかも『桃鉄』で盛岡の場所を
覚えた!」

 私はうれしそうな顔で「國政くん、そこをもうちょっと膨らませて! 
鉄道は無いけど、陸地が少しでも飛び出ていたら、東松浦半島の人た
ちが喜ぶと思うから!」と、指示を出す。

 九州地方のみなさん! 本当にリアルでっせ!
 あのごちゃごちゃした長崎のあたりも、極力リアルにしましたぜっ!
 諫早(いさはや)のあたり、みごとにくびれてまっせ!
 伊万里湾も、志布志湾も、唐津湾も、別府湾も、たぶんわかるはず!

 ああ! 早く、ゲームしてえええっ!

 午後5時。キリがないので、この辺でOKを出す!
 あとはゲーム画面に落とし込んでから、微調整しよう!
 さすがに天草諸島は、むずかしかったなあ。
 本渡(ほんど)市も、やっぱり表示は「天草駅」のほうがいいだろ
うなあ。
 本渡市の西南に、天草という地名があるんだけど、やっぱりお客さ
んは九州地方の人だけじゃないからねえ。

 午後5時。蔵前3丁目の「蔵人総合研究所」へ。
 おなじみ、うちの税理士さん、赤根豊くんと決算の打ち合わせ。
 何やらたくさん、うちの嫁が判子を打っている。
 うちの会社ぐらいシンプルな会社は無いと思うのだが、それでもこ
んなにたくさんの書類に印判するのだから、ふつうの会社の決算って
いうのは、大変なんだろうなあ!

 この打ち合わせの間、私が口を挟んだのは、「『桃太郎まつり』の
ハードは、プレイステーションではなく、ゲームボーイアドバンス!」
だけである。頼りなさげ〜!

 午後6時。赤根豊くんのご招待で、浅草橋の「前川」へ。
 鰻で、有名なお店だ。
 眼下に、隅田川が見下ろせる。
 左手前方には、あのうんちビルが見えるぞ!
 いかにも老舗の味の、うな重を食べながら、赤根豊くんと、巨人軍 代表と、横浜ベイスターズ代表の会話。
「さくまサン、清水選手を上げますから、石井琢朗をくださいよ!」 「これか! 巨人がまったく釣り合わないトレード話を平気で言えて しまう体質は! 球団が横柄なら、ファンも横柄だ!」 「仁志選手では?」 「う〜ん。石井琢朗は、横浜ベイスターズの肝だからなあ!」 「仁志に、二岡をつけて!」 「ぐらぐら!」  ぐらついてる場合ではない。 「ふんぱつして、清水なら、三浦投手をあげてもいいぞ!」  そこへ、お店の仲居さんが来て「おや? あの横浜の三浦って人は、 巨人に入るんですか?」。 「はっはっは。違います! 違います! 間抜けな男の子たちの、だ ったらいいな話ですよ。はっはっは!」  こういう老舗のお店は、本当にこういう会話をする老獪な人たちも 来るんだろうなあ。  午後9時。帰宅。  國政修くんからもらった『桃太郎電鉄X(仮)』の宿題をやる。  やっぱり『桃太郎電鉄X(仮)』の仕事をしてるときが、いちばん 楽しいねえ!
 

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