11月24日(金)

 札幌滞在4日目。
 さすがにへばった。おまけにホテル暮らしはやっぱり寝付けない。
 RPGだと、宿屋に泊まれば、体力が全回復するのだが、どうも現実は毎日5/8
程度の回復力のような気がする。

 午前10時。ロビーで、土居ちゃん、うちの家族と待ち合わせ。4人で、ススキノ
方面へ歩いて行く。
 どこかでラーメンを食べたいと思ったのだが、どのお店も開店は午前11時から。
夜遅いラーメン屋は多いけど、確かに朝早くからやってるラーメン屋ってほとんどな
いよなあ。たまにあっても、ラーメンだけでなく、カレーライスもメニューにあるよ
うなお店だ。

 大通り駅近くまで歩いたあげくに、1軒も開いていないので、札幌駅へ。

 ここでも開いていない。
 そうこうするうちに、午前11時になって、どのお店も開店し始めた。

 札幌駅地下の「えぞっこラー麺」で、味噌バターコーン・ラーメン。まあまあの味。
 午前11時41分。札幌駅で、土居ちゃんとはここでお別れ。土居ちゃんはきょう 飛行機で、東京に戻る。  うちの家族は、高速エアポートで、小樽に向う。  午後1時16分。小樽駅着。  札幌に来たのが、8年ぶりだから、小樽はたぶん10年ぶりぐらいだろう。古めか しかった駅舎は、けっこうきれいに改装されていた。駅前から運河に向う道の拡幅工 事をやっている最中で、かつての小樽駅前のイメージはまったくない。  小樽のほうが、沿道の残り雪も多く、小雪も舞い散る寒さ。  いよいよ防寒帽子を取り出してかぶる。  この扮装、ほとんど黒澤映画の『デルス・ウザーラ』である。
 おっとっと! 凍った氷を踏んで、滑った! 嗚呼! 退院後一度も転んだことが ないのに、こんなところで転ぶとは! ゆっくり転んだので、外傷は無い。  そんな寒空なのに、「山中牧場のソフトクリーム」という看板を見つけるや、やっ ぱり食べてしまう、バカ家族であった。
 牛乳アイスと呼ばれるソフトクリームは、ちょっとしゃきしゃきしていて、美味し い。牛乳そのものの味がする。  そういえば、昔「一杯のかけそば」という貧しい家族の話が流行したが、その舞台 は北海道であった。  今もこうして、一杯のソフトクリームを家族で分け合って、「おいしい! おいし い! 寒い!」と言い合う、貧しい…いや、意地汚い家族がおったとさ。  小樽名物の運河までたどり着く。
 寒さに、身体が恐がるのか、腕が痛くなってくる。  この2日間、土居ちゃんと札幌市内を歩きすぎたツケが出てきたようで、ふくらは ぎが痛い。  運河のそばの喫茶店で休むが、もう眠くて仕方がない。  11月に入ってからの、京都、仙台と続いた旅行シリーズの疲労もピークに達し始 めているようだ。  こういうときに無理すると、また倒れるので、私だけ札幌に戻ることにする。  午後2時19分。普通列車で、小樽へ。鈍行列車はおあつらえ向きに、睡魔を呼び、 そのまま熟睡する。  午後3時。札幌。  そのまま、ホテルに戻り、まだ寝たり無いのか、ぐっすり。  午後5時30分。ほとんど爆睡。ようやく起きる。  午後6時。家族と大通り公園の近くのパルコで待ち合わせ。ふたりして『ナイト・ メア・ビフォア・クリスマス2000』を見ていたそうだ。  かつて、サザンオールスターズのベーシスト・カズ坊(関口和之)に教えてもらっ た、美味しいお店「俺んち」を探すが、見当たらない。確か「すすきの0番地」とい うスーパーのすぐ近くだったと思ったのだが。このお店も無いんかい? もうほとん どかつての思い出はほとんど消えてしまったなあ。札幌での新しい歴史を作れってこ となのかな?  一応、電話してみたら、なんと! 前のお店があったビルが焼けてしまって、移転 したとのこと。現在は駅前通りをどうのこうの…と言っているようだが、こっちは旅 人、通りの名前までは暗記していない。また今度、カズ坊(関口和之)といっしょに 来るときにしよう。  午後7時。「すすきの0番地」の真ん前にある郷土料理のお店「魚作(うおさく)」 に入ってみる。まったく予備知識なし。  ところが、とんだ拾い物。  朝採れのイカ刺身、きんき、焼きたらば蟹、十勝牛のステーキ、マイタケとアスパ ラのバター焼き、じゃがいもバター、蟹雑炊を瞬く間にたいらげる。  どれもこれも、美味しい !  とくに、じゃがいもバターは、キャラメルで味付けしたの?と思うほど、甘い味。 こんなジャガイモの食べ方は初めてだ。  しかも若い女子従業員が、一生懸命動き回って、気もつかうさまは、見ていて気持 ちいい。  魚のきんきを下げてもらったとき、「きんきは頭のところが美味しいんですよ!」 と言って、いったん下げたきんきをまたわざわざ持って来てくれる。できそうで出来 ない気遣いだ。  美味しいお店は、従業員もいいのは、定説だな。
 そうだ! 美味しいお店は、デザートも美味しいという、うちの娘の定説も話して おかなきゃ。「魚作」のデザートがまた美味し。夕張メロンのシャーベットに、とう もろこしのアイスクリーム。本当にとうもろこしの味なのよ〜! 最後の最後まで、 減点0のまま終了。  午後8時。新しいお店を見つけた喜びに、大満足しながら、ホテルに戻る。  今回の札幌旅行では、かつて通ったお店のことごとくが消えてしまって、ちょっと もう札幌に来るのは、もういいかな?と思ったのだが、昨日の「あわびの源太」が、 そう何回も通ったわけではないのに、ずっと私たち家族のことを覚えていてくれたり、 さっきのお店のように、お勘定を持って来るときに、「たくさん食べていただいてあ りがとうございます!」と言ってくれるお店に出会うと、とたんに札幌の印象がよく なって、雪祭りの頃にまた来ようかなと思ってしまうものだ。  けっきょく町もまた、人の印象が、その町の価値を決めてしまうものなんだなあ。 ゲームも人柄、料理も人柄、町も人柄、何をそんなに今更と思う人も多いだろうが、 私にとっては、仙人が悟りを開いたような境地。今後の物の考え方の基本にしたいと 思う。  土居ちゃんが「ホテルの温泉が気持ちいいよ!」と言っていたのを思い出して、ホ テル内の温泉へ。土居ちゃんと打ち合わせた大量のアイデアを毎晩夜中までまとめる 作業をしていたので、温泉に入ろうという気分にすらなっていなかった。  手足が不自由なので、温泉には入りづらいというせいもある。  健常な人なら、想像もつかないだろうが、温泉といえば、浴衣である。その浴衣が 片手だと、腰の帯が結べないのである。  ねっ? 難しいでしょ?  なんとか、浴衣の帯を無理やり、ねじ込んで、温泉へ。 「は〜、極楽! 極楽!」  こんなに気持ちいいとは思わなかった。  温泉のあとは、マッサージもお願いする。  担当の女性の人の名前が、佐々木さん。  北に来ると、佐々木さんという名前が急に増える。私にとっては、佐々木さんは、 元横浜ベイスターズ、シアトル・マリナーズの佐々木様だから、印象がよい。  まあ、そうでなくとも、マッサージが上手かったので、ストレスが相当解消された と思う。  それでも思った通り、足のふくらはぎが、痛い、痛い、痛い! やっぱり歩きすぎ たなあ。山形立石寺に登ったのも、つい先週のことだもんなあ。  午後10時。ホテルの部屋に戻って、だらだらすごす。貧乏性なので、つい仕事を したくなるが、明日の電車のなかにしようっと。  明日はまた、函館。
 

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