11月13日(月)

 いつも思うのだが、1泊2日の旅に限って、家に帰ってくると、1週間近く旅行して
いた気分になることが多い。
 今回の旅もそんな密度の濃い1泊2日の旅だった。

 まずは、午前9時30分。
 東京駅地下の「資生堂パーラー」におなじみの顔が揃う。
 土居ちゃん(土居孝幸)、柴尾英令くん、わが家族。
 おや? ハドソン桃太郎事業部の梶野竜太郎くんがいないぞ! しめしめ! 寝過
ごし男のひとりも出ると、俄然日記がおもしろくなっていいぞ! …と思ったら、前
もって、梶野竜太郎くんにキップを渡してあったので、新幹線の座席で会うことにな
っていたのだった。
 忘れてた。
 ゲーム・ディレクターの国政修くんも参加の予定だったのだが、『桃太郎伝説1→
2』のマスター・アップが、きょうか明日という段階なので、来れなくなってしまっ
た。

 午前10時。大丸デパート地下のお弁当公園が開店するのと同時に「けやき弥」ま
で走り、うちの娘イチ押しのお弁当、「栗林」を買い求めるも、まだ3個しかできて
いないという。
「待っていただければお作りしますが…」
「いや、あと10分で、新幹線に乗らないといけないので!」
 栗林3個、諸国逸品弁当3個を買って、東北新幹線のプラットフォームにダッシュ!
 まわりから見れば、太ったおじさんたちが、何をそんなに急いでいるのだろう?と
思っただろう。どうせ食べるなら、美味しいお弁当を食べたかっただけである。

 午前10時16分。つばさ121号。
 本来は仙台に行くはずが、土居ちゃん(土居孝幸)が、「閑けさや 岩にしみ入る
 蝉の声」でおなじみの立石(りっしゃく)寺に登るのが、念願だったというので、
こうしてわざわざ山形新幹線に乗っている。

 物事に固執しない土居ちゃんが、2〜3年前から、何かと旅の話になると、「立石
(りっしゃく)寺!」「立石(りっしゃく)寺!」とつぶやいていた。そんな土居ち
ゃんの念願だから、夢をかなえてあげなきゃ!と、本日の旅行となったのだが、その
念願の理由を聞くのを忘れていた。

「土居ちゃん、何でそんなに立石寺が、念願だったの?」
「ううっ! あの、その…、実はね、間違えてた!」
「何〜〜〜! 何だって〜!」
「出羽三山に登ると、いいことがあるって昔から言われたでしょ! 立石寺がそのひ
とつだと思ってたんだ。湯殿(ゆどの)山と、月山(がっさん)と、立石寺だと思っ
てた」
「もうひとつは羽黒山だよ! iモード・ゲームの『さくま式奥の細道』でも表現し
たじゃないかあ!」
「はっはっは! 間違えた!」

 くそ〜! 土居ちゃんに一杯食わされたあ!

 私は以前も、立石寺の前まで行って、断崖絶壁にへばりついたお寺を見て、気が遠
くなり、登らずに退散したことがある。
 でも、土居ちゃんが3年間もおなじ話題を続けるなんて、よっぽど心中、期するも
のがあると思って、私も今度は登ってみるかという気になったのだ。
 だいたい、「無理はしない!」を標榜する土居ちゃんが、1000段もある石段を
登りたいと言い出すだけで、登頂後、45年間の独身生活に別れを告げて、結婚発表
するくらいの大イベントがあると思うのは、至極当然だろう。

 私は、正直言って、きょうが大雨か、雪で、登山不可能になることを祈っていた。
きょうの登山のために、この1週間毎日必死に歩いて、右膝は痛くなってるし、疲労
はピークに達している。今朝もユンケルを飲んできた。

 それを…! 「間違えた!」のひとことで、立石寺の石段を登らす気かあ!
「ゴメン! この日程が決まってから、いろいろ調べてたら気がついた!」

 あ〜、くっきり晴れちゃったよ!
 いい天気だなあ!

 一方、梶野竜太郎くんと、柴尾英令くんはすでにうれしそうな顔。
「さくまサン、このお弁当、一品、一品、真面目にうまい!」と梶野竜太郎くん。梶
野竜太郎くんは先日、富士山の登頂に成功している健脚の持ち主である。

「これ、本当においしいですね〜!」と、柴尾英令くん。
 柴尾英令くんは、日常生活強力(ごうりき)男と呼ばれるほど、VAIOの4時間
充電パック付きを担ぎ、報道カメラマンのような大型デジカメを担ぎ、20キログラ
ムはあると思えるお腹を常に携帯している力持ちだ。
 嫁と娘の体力は、あの安土城城跡を駆け足で登れるほどだから、いわんやをやであ
る。

 う〜む。人選も間違えた。
 デブで、すぐ息が上がるような男も、加えておくべきだった。

 車中、土居ちゃん、柴尾英令くんと、『桃太郎大全集(仮)』の真剣な打ち合わせ
をしているうちに、新幹線つばさは、山形駅に着いてしまった。
 さすがに寒い。気温4度とか5度らしい。

 午後1時2分。山形駅。
 改札口を出ると、えっ!?
 『桃太郎電鉄』貧乏神のモデルである、榎本46歳にそっくりなおじさんがいるぞ!
 うひょ〜!
 えっ? 札を持っているぞ!
「佐久間様」?
 あ! ジャンボタクシーを頼んだタクシー会社の人なのか!
 それにしても、似すぎてる!
 きょうのメンバーが、いっせいにそう思ったほど、似ている。
 ああ! ネタにしまくりたい! でも初対面の人だし。真面目そうだし。立石寺登
山が気になって、いじる余裕がない。返す返すも無念。
 せめて、あとで集合写真に入ってもらったので、お楽しみに。
  
 そんなわけで、ジャンボタクシーに乗る。
 最近、京都相互タクシーの宮本さんが運転する9人乗りのジャンボタクシーの乗り
心地に味をしめ、大人数の場合は、すぐこの手の車をチャーターしてしまう。何台も
タクシーを連ねるよりも、値段は格安だし、交渉次第で本当にぐんぐん値段が安くな
る。しかも何より遠足気分満点になる。

「あれ? もう車に乗るの? お昼ご飯どうするんですか?」と、土居ちゃん。

「食べたでしょうが! お弁当を!」と、みんなでツッコミを入れる。
「あれは、朝食だったんじゃないの?」と、土居ちゃん。
 のんきだ。どこまでも、土居ちゃんはのんきだ。はてしなくのんきだ。

 午後1時30分。あっというまに、立石寺に着いてしまう。山形から近い。
 立石寺というよりも、山寺という通称のほうが有名だが、正式名称は、
宝珠(ほうじゅ)山立石寺
 到着早々、すっとこどっこいな一行は、まだ元気な姿をデジカメに写すやいなや、 いきなり玉こんにゃくを食べる! みそだれつきのこんにゃくも食べる。
「帰りはここの、ソフトクリームを食べるぞ!」  なかなか登山に入らない。
 ようやく意を決して、登山開始!  いきなり、垂直に近い石段が、私たちを待ち受ける。  柴尾英令くんが「1段、2段、3段…」と声を上げながら登る。 「しゃべりながら登ると、へばるの早いぞ〜!」  30段ほど登ったところで、私は「もう疲れたあ!」とギャグをいうが、実はあな がち嘘ではない!  心配された足取りのほうは、思ったよりも好調なのだが、心臓がばくばくいう。息 が上がるのが早い。これはきついぞ。
 次第に、「うわ〜!」「ひえーーい!」「ぬわ〜!」と悲鳴のほうが、多くなる。  娘がしきりに「さくちゃん、大丈夫〜!」とはるか上の方から言ってくる。 「おまえに届くような声を出したら、お父ちゃん、疲労するんだよ〜!」 「さくちゃん、大丈夫〜!」 「だからもう声が出ね〜だよ!」
 午後2時。「閑かさや 岩にしみ入る 蝉の声」の、せみ塚で、ストップ。  ひ〜〜〜っ! どこにせみ塚があるのか、見る余裕など、まったく無し!  せみ塚の休憩所で売っていた、ポカリスエットが玉露のように美味しい〜!  よく、旅の本などには、あえぎながら、石段を登って行くと、徐々に心に変化が起 き、清澄な世界が出現するなどと書いてあるが、冗談ではない。  心頭滅却すればの世界であると、書いてある本もある。  昔の私なら、心頭滅却どころか、怒り心頭に達するくらいきつい石段なだけである。 いまのところ、石段の色しか覚えていないぞ。 「けっこう、きついなあ!」と言いながら、土居ちゃんの足取りは軽い。毎週バスケ ットボールをやっているだけあって、へばらない。昨日ほとんど寝ていないと言って いたはずなのに。  午後2時17分。仁王門に着く。
「さくまサン、ここだよ、TVでよく見る景色は!」と、土居ちゃん。 「うるへー! 景色見る余裕なんて、ねーよー!」  しかも、私は松雄芭蕉の『奥の細道』の本や、ビデオを大量に見ているから知って るけど、そこじゃねーよ! くそ〜! 土居ちゃんが、出羽三山と立石寺を間違えな ければ、こんな目に会わずにすんだのに…。  いつか、土居ちゃん(土居孝幸)をだまして、大分県国東半島の「熊野磨崖仏(く まのまがいぶつ)」に連れて行ってやる! くそっ! 「さくまサン、もう少しだ!」と、土居ちゃんの「もう少しだ!」攻撃が始まる。私 は信じていないぞ! 石段を降りてくるおばちゃんたちが、「まだまだ3分の1ぐら いよ〜!」と言ってるではないか! ほら、見ろ! いいかげんだなあ、土居ちゃん は! もとより信じてはいないが…。  ひ〜〜〜、疲れた!  午後2時30分。性相(せいそう)院に、たどり着く。ベンチにどかっと、へたり 込む。  軽快な土居ちゃん(土居孝幸)が、「性相(せいそう)院だって、やらしいね!」 とうれしそうに言っている。中学生じゃあるまいし、「性」という文字が1文字入っ てるだけじゃないか、くそ!  もう、これ以上、動かんぞ、私は。  おお! 柴尾英令くんも、へたり込んだ!  それでこそ、文筆業だ!  物書きは、根性無しでなければならない!
「さすがに、昨日一睡もしてないと、つらいですねえ!」と柴尾英令くん。  なんだと〜! 寝不足でここまで来れるかあ?  十分元気じゃないか!    道しるべは、右・奥の院、左・五大寺と記している。  おお! 五大寺こそ、TVでよく撮影される、絶景眺望の場所のはずだ。  私はさっさと、奥の院をあきらめる。 「私はここで待ってる。奥の院に行く人たちが戻ったら、いっしょに五大寺に行こう!  さらばじゃ!」  通常「さらばじゃ!」というのは、出発する側がいうべき掛け声だが、もう面倒な ので、残る私が言って、みんなを先に進ませる。  柴尾英令くんも残った。  少し休んだら、ようやく、まわりの景色を楽しむ余裕が出てきた。  空気がおいしい。  紅葉は、すでに終わりにさしかっているようだ。  それでも、紅色や、黄色が鮮やかだ。  カラーフィルムがこの色を競い合うのがよくわかる。  微妙で美しく難しい色だ。  しかし平日というのに、登山の客が多いなあ。  えっ? この場所は、立石寺の7合目に当たるの? もったいないことしたかなあ。 五大寺に行けば、8合目? まあ、それでいいや。ほぼ制覇だ。
奥の院から
「さくちゃーーーん!」  元気だなあ、うちの娘は。もう帰ってきた。そんなに頂上が近いなら、行けばよか ったかも。  五大寺に行く。ここだ! ここだ!  おお! 高所恐怖所には、足元がとっても恐いけど、絶景! 絶景! 「♪秋の夕日に、照る山、紅葉〜」だ。  気持ちいいねえ。 
 うおおおっ。真下を覗き込んじゃいけない。  バンジージャンプに最適なような場所だ。  もう、いいや。いいや。帰ろう。「水島、日本に帰ろう!」
 登山は、行きよりも、帰りのほうがつらいというが、順調な足取りで、下山できる。 ここは、石段の数よりも、垂直に作られた石段がつらいようだ。  再び、せみ塚で、ひと休み。  よくしゃべるおばちゃんと、談笑。
「毎日ここまで登ってきたら、歳を取りませんねえ!」と、柴尾英令くんは、本当に 客商売をしても成功するだろうと思うほど、初対面の人との会話が上手い。    午後3時6分。下山に成功! やった! また私の旅日記に新たな勲章だ。奥の院 までは行けなかったが、正式総石段数1115段のうち、800段くらいは踏破した だろう。  思ったより全然膝は笑わなかった。  けっこう石段は、観光客のことを考えて作ってあるようだ。  休み休み行けば、そんなにつらくないかもしれない。  さっそく、ご褒美のソフトクリームを食べる!  うほっ。そば味だ。  山形は、おそばが美味しいからなあ。  たいした味ではないが、美味しいと思おう! ご褒美なのだから。  午後3時20分。立石寺からは、ちょっと離れているが、ちょうど川を隔てて向い 側にある、芭蕉記念館に行く。記念館は月曜日で休館日だったが、茶店と、土産物屋 さんはやっていた。  前回もここに来たが、この芭蕉記念館はきれいだし、広々としていて、気持ちのい い場所だ。ぜひ立石寺に来たら、ここにも立ち寄ってほしいものだ。  ここから見ると、ちょうど岩山に立石寺がへばりついている様がくっきり見える。 きょうは登ってきただけに、五大寺の舞台も見えて、よくあんなところまで登れたも のだなあと、感慨も深い。
 私の場合、手足が不自由になってからのほうが、登山を断念してきた場所の登頂に 次々に成功しているのが、不思議だ。  健康というのは、けっこう不幸かもしれない。  運転手さんもいっしょに茶店で休む。  この茶店のコーヒーがたしか美味しかった記憶がある。  コーヒーに和菓子のセットで、お互いの健闘をたたえ合う。  コーヒーは、やっぱり美味しかった。  土居ちゃん(土居孝幸)が、唐突に「ボクたちの知り合いに、運転手さんによく似 た人がいるんですよ!」というが、日常会話で、相手のことを知らない人に似ている と言われても、うれしくない。言いたくなる 人の気持ちもわからないでもないが。  私たちの場合、「ほら、この人に似てるんですよ!」と説明できないこともないの だが、貧乏神に似てるというのは、ちょっとねえ…。  土産物屋で、それぞれお土産品を買って、いざ、仙台に向けて、出発!  もちろん、車中は、ぐっすりタイム。  ぐうぐう寝ていた柴尾英令くんの脇で、映画の話題をすると、むっくり起き上がっ て、会話するのはさすが、東武練馬の映画狂人である。  娘が先日見てきた『スペースカウボーイ』が話題になった。  いつのまにか、娘がみんなとおなじ話題を論じるようになっているのだから、不思 議だ。柴尾英令くんにしても、梶野竜太郎くんにしても、業界でも有数の映画マニア だ、こういうマニアに囲まれて、見てきた映画の話題を聞ける娘は、幸せ者である。  午後5時30分。仙台着。  さすがに北だ。5時30分でもう真っ暗。  私はもう何10回仙台に来たかわからないくらいだが、みなさん、ビルが林立する 仙台の大都会っぷりに驚く。  仙台駅の並びにあるメトロポリタンにチェックイン!  インターネットで予約していたのだが、どうもホテル側がちゃんと部屋を取ってい なかったようだ。6人がそれぞれ、703号室、803号室、1003室。1013 室、1023室、1033号室になるのは変だぞ。  広いお部屋をサービスさせていただきましたという言い方が、ますます怪しい。  団体なら、通常おなじフロアに固めるのが、サービスのはずだ。  最近インターネットで予約すると、電話予約より、3000円〜4000円も安く なる。何でインターネットのほうを安くするのだろう。どういうメリットがホテル側 にあるのだろうか? きょうのようにインターネットをおそらく見忘れただろうとい う、未遂事件も多く発生するだろうに。今後こういう場面発生のための予行演習なの かな。  それより、6人でエレベーターに乗って、ホテルのボーイさんに、私が部屋のカギ を渡されずに、703号室があるフロアに放り出されるというアクシデント発生。必 死に謝っていたから、許したが、態度が横柄ならば、いしかわじゅんサンのビッグホ リデー事件『鉄槌!』後追い版刊行である。  誠意ある陳謝は、大切なり。  午後7時。立石(りっしゃく)寺登頂で、ここ数年間のすべての罰当たりを払拭し たかのように、すがすがしい顔つきの一行は、今回の旅のメインである、仙台牛の 「大胡椒(だいこしょう)」に向う。  携帯に電話が入る。いま駐車場を探しているところだという。 「三田松茸ツアー」にも参加した、高円寺の整体のお兄ちゃん・梅津実くんが到着し たのだ。お兄ちゃんは、毎週月曜日に、いわき市に戻ることが多い。車なら、仙台と いわき市はそれほど遠くない。  で、きょうは梅津実くんは、東京から新幹線で到着。実くんのお兄さんとお母さん が、いわき市から車で来て、帰りはいっしょにいわき市に戻る寸法になっているよう だ。  かくして、食べることが大好きな9人が、勢ぞろい。  さすがにこの人数の多さに、いつも接客してくれる「大胡椒」の佐々木さんもびっ くりしたようだ。  このお店のお肉の美味しさは、変幻自在に美しい日本語を操ることのできる柴尾英 令くんの日記のほうで、堪能してもらうことにする。その代わりいつものように、今 や食べ物写真家と呼ばれる、嫁の写真で思い切りお腹をすかせていただこう。私は何 度もこの日記で、このお店のお肉の美味しさを絶賛し続けてきた。  たまには、食べながら日記の文章を考えずに、何もかも忘れて、お肉を味わいたい!
 う〜む。美味しいなあ。  梶野竜太郎くんが、先日京都の「M」で、成沢大輔くんが、美味しさのあまりステ ィービー・ワンダーのように、踊っていた気持ちがわかりますよ!と、目をうっとり させていた。  このあと、仙台の夜に、迷子になって苦しんだそうだが、いまはそんなこと知る由 もない梶野竜太郎くんであった。  梅津実くんのお母さんとお兄さんとは、初対面だけど、食べるときの笑顔のいい人 との食事は、初対面のような気がしない。  美味しい物が好きな人たちとこうして笑いながら、食べる幸せに勝るものはないな あ! 
 いつも「大胡椒」の佐々木さんが、最後はこのお店特製の絶品ガーリックライス海 苔巻を、お土産にくださるのだが、きょうはみんなでそのお土産用の分まで、その場 で食べてしまう。 「このお肉のコースを、もう一度最初から今出されても、食べられるなあ!」と誰か が言えば、整体のお兄ちゃんが「ボクだったら、3人前でもいけるな。はっはっは!」 という。  お兄ちゃんなら、いけそうな気がする。    う〜ん。そろそろ食べ終わってしまうのが、とても淋しい。  そう思った瞬間に、佐々木さんがとんでもないこという。 「いつもの海苔巻が終わってしまったので、きょうは味噌汁を用意させていただきま した!」
 この味噌汁というのが、なめこと青のりと、ネギが入った絶品の基準をはるかに超 えた美味しさ! もちろんお店のメニューにはないものだ。  最高のアンコール曲だ。
 お店の前で、勢ぞろい写真を撮る。  次はいつ行くかな?と考えてしまう時分が恐い。  午後9時。ホテルに戻る。  まだ夜更けに遠いので、『桃太郎大全集(仮)』の仕様書を直す。  ちゃんと仕事しないと、罰が当たるからね。  それでもさすがに、眠い。ちょっと早めに寝よう。
 

-(c)2000/SAKUMA-