9月2日(土)


 嗚呼! 焦燥と絶望!
 粒粒辛苦の果て…。
 落胆と忸怩!

 ううっ…! 私は本当に、おつむてんてん!になってしまったのであろうか?
 完全に『ドラゴンクエストVII』が停止しまったなり〜。

 老骨に鞭打ち、刻苦勉励、誠心誠意、左腕の激痛にも、星飛雄馬のように顔を
歪めなら耐えに耐えて来たが、いまここに万策尽き果て申した!
 どうにも石版が見つかりもうさぬ!
 昨夜からの8時間に及ぶ探索で、もはや捜査を打ち切るしかござらぬ。
 無念。
 もはや! これまで!
 うううっ!
 は、早く、介錯を!
 武士の情け!
 願わくば、あの世で緑の石版を捜し求めたき〜!

 あ〜、あ〜、あ〜、本当につまっちまったよ、『ドラゴンクエストVII』!
 もうあきまへん!
 朝からずっと、あっちへこっちへ、そっちへむっちり、むっちりという言葉は
ないか! 正しくはむちむちか? 正しくな〜い! 
 ああ! ひとりツッコミは、寂しさが増すばかり。じっと手を見る。私は石川
啄木か?
 というわけで、京都を退去、東京に戻ることにした。

 東京に戻って、最初からやり直すか…。
 45時間分がパーか…。
 きついなあ!
 せっかく昨日から、ドラクエ7ノートをつけ始めたのに…。

 午後12時。プラッツ近鉄の「アフタヌーンティー」で、ソーセージとネギの
パスタを注文したにもかかわらず、ちっとも料理が出来上がってこなかったこと
に、怒り心頭! さらに領収書ひとつ書けない女店員を怒鳴り飛ばして、新幹線
へと急ぐ! ほとんど八つ当たりだが、本当に時間がない。店を出たのが、午後
12時56分。あと14分。手足の不自由な私には十分ピンチな残り時間。
 新幹線って、1号車から16号車まで、400メートルあるそうだからね。 

 午後1時10分。のぞみ14号で、東京へ。
 なんとか間に合った。
 この1週間の疲労と憔悴で、車中すっかり熟睡。
 ゲームひとつで、これほどまでに疲れるとは!
 いかんよ、『ドラゴンクエストVII』は。ちょっと展開がつまると、ご飯を食べ
ていても、風呂に入っていても、ずっとあれこれ頭をめぐらせてしまう。嫁から
仕事の電話が入っても、生返事しかできない。
 でもひさしぶりだねえ、これだけ熱中できるゲームは。

 午後3時24分。東京着。
 東京も暑いじゃないの! 京都だけだと思ってた、あの暑さ。

 午後4時。帰宅。
 家に「今日のともちゃん」でおなじみの古川知子が来ていた!
 古川知子に会ったとたん、「もうダメだよ、オレ! 『ドラクエ』つまるよう
な男がゲーム作っちゃいかんよ〜!」と愚痴ってしまう。
 グルメ・バカ娘が、「ゲームが上手い人が、ゲーム作れるなら、あの人もこの
人もみんなゲーム作れないといけないってことじゃない!」
 古川知子が「よく出来た娘ですね〜!」
 何も帰ってきて早々、吉本新喜劇のリハーサルを始めたわけではない。
 私は本当にがっくりとした顔をしていたようだ。

 今夜、嫁とグルメ・バカ娘と古川知子は、オフ会へ行く。
 最近私の家族とお付き合いしてくれる人が増えて、非常にうれしい。
 霊能者の岩崎摂さんなんか、私とじゃなくて、嫁と電話してる時間のほうが長
いもんなあ。柴尾英令くんも、映画オフに親子を誘ってくれるし。
 みんな『ドラゴンクエストVII』に出てくる町の人たちのように、親切だあ!
 あ〜〜〜、また、『ドラゴンクエストVII』を思い出してしまった。

 午後5時。みんなは外出。ひとり残った私は、帰るなり嫁がインターネットの
掲示板で調べてくれた情報を頼りに、『ドラゴンクエストVII』のスイッチを押
す。けっきょくまだやるんかい。
 でもゲームのことをまったく知らない嫁の情報だ。しかも宝箱を取り忘れるな
んてことは、この宝箱のものは全部現金に替え、どんなに遠くの町で戦っても、
わざわざ自分の家に戻り、決してお金を必要とする宿屋に入らない私が、宝箱の
ようなものを見落とすわけがない。

 見落としていた…。

 こんなわかりやすいところをなぜ…。

 一度ならず、二度、三度も来たところだ…。

 解せない…。

 ふ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。

 ちょっとため息つかせてね。

 結果的に、京都から帰って来て、大正解だったわけね。
 これも霊能者岩崎摂さんいうところの「運命」で、帰るようになっていたのだ
ろうか? それにしてもゲームまで嫁がいないと先に進めないとは。ますます嫁
のことを、さくまあきらの生命維持装置と呼ばれてしまいそうだ。

 そんなわけで、気をとりなおして、プレイ最下位、いや、再会、再開!

 順調! 順調! おかげで余裕たっぷり。
 今度こそ、のんびり、じっくりやるよ。
 どこかであせると、すぐ見落としちゃうからね。
『ドラゴンクエストVII』は、人生訓がたっぷりだよ、ホント。
 昔、『ドラクエ』の戦闘を書物にたとえて、スライムのように簡単な本でも、
たくさん読めば、経験値がたまっていく。でもいつまでもスライムのような本ば
かり読んでいると、時間が経ってしまう。
 たまには勇気を出して、橋を渡ろう!
 いきなり、橋を渡ると、キメラみたいに難しい本に出会って、眠らされてしま
う。そんなことを勝手に考えながら、プレイしていたものだ。

 夕食は、大丸デパートで買って来た、けやき弥のお弁当「栗林」だ!
 ついにこのお弁当ランキング上位の「栗林」が売り出されるようになった。も
う秋がそこまで来てるんだなあ!
 味覚の秋、忙しいぞ! 旅行に!

 のんびり『ドラクエ7』をやるために、テレビ神奈川で、横浜ベイスターズ対
阪神戦も、ちょびちょび見る。
 目を休めるためだけど、けっきょくTV見てるわけだから、目にはあまりよく
ないんだよな。でも、横浜ベイスターズが勝利! これが何よりのホイミだ。
 ええっ? きょう中日が負けたから、横浜ベイスターズが2位に浮上!?
 いつのまに? ついこの間まで、最下位だったような気がするけど。
 このまま行ってくれれば、上出来だ。

『ドラゴンクエストVII』も再開できたし、横浜ベイスターズも2位に浮上したし、
めでたし、めでたしだ。
 今夜は夜中までゲームをせずに、寝る! 
 

-(c)2000/SAKUMA-