7月12日(水)


 午前6時。きょうの会議に間に合わせるために、新作『桃太郎電鉄』のゲ
スト・キャラの仕様書を書き直す。
 9日から始まった、京都桃鉄合宿もきょうで終了。
 私は京都に残るけど、みんなは今夜東京に帰る。
 そのためにも、仕様書の手直しを完成させてしまいたい。

 午前8時。予想外に早く完成したので、みんなにプリントしてあげようと、
iMacで、印刷。
 ところが途中で紙切れ。紙を補充しようとするが、手が不自由なこともあ
って、紙をうまくトレイに差し入れることができない。あと2枚で、5人分
のプリントが完成したのにぃ! ええいっ、やめた!

 冷静になったら、さっきプリントした仕様書には、大事な部分がごっそり
抜けていたことに気づき、あわてて書き直す。
 ふうっ。できた。
 でも書き直したってことは、さっきのプリントはまったく入らなくなって
しまったじゃないか! 悪戦苦闘して、けっきょく紙を補充できなかった徒
労を返してくれいっ!

 午前10時。朝の散歩。パンを買って、スターバックス・コーヒーで、ラ
テを飲みながら、きょうの会議の書類を読む。それにしても、今年10回目
ぐらいにして初めて、この京都三条大橋のスターバックス・コーヒーでイス
席に座れた。この時間なら空いているんだな。覚えておこ。

 午前11時。マンションの前に、きょうのメンバーが集合。昨日とおなじ
だけどね。
 土居ちゃん(土居孝幸)、宮路一昭くん、『御神楽少女探偵団』のプロデ
ューサー・ひろたたけし、ハドソンのディレクター・国政修くん、放送作家
の福本岳史くん。
 
 きょうはこれから、「メスキート」に行く。
 このところ京都で、立て続けに登場する、スモーク料理のお店だ。
 もともと福本岳史くんのお母さんに教えてもらったお店なのに、まだ一度
も福ちゃんを連れて行っていない。

 京都相互タクシーの宮本さんから電話が入る。「メスキート」に行くため
に、タクシーを2台頼んでおいたのだ。ところが、玄関を出たら、1BOX
カーが1台。
 宮本さんが運転席でこっちを向いて、笑っている。
 あ、これは、マツタケ号だ!
 昨年、兵庫県三田まで、マツタケを食べに行ったときに乗った1BOXカ
ーだ。
 宮本さんのもうひとりのなかよしの運転手さんが、きょう休みだったので、
思い切って、1BOXカーをチャーターしてきてくれたそうだ。
「太った方々ばかりなので、1BOXカーのほうがいいと思うて」と宮本さ
ん。
「そうだ、それはいい!」と誰も否定しない。
 宮本さんが「運転してると、どうも前輪が浮いてるような気がします」と、
ギャグを言っても、「そうだ、そうだ!」と誰も否定しない。「なんだかき
ょうは本当にハンドルが軽い気がします」と、宮本さんがまじめにいっても、
「そうだ、そうだ!」と誰も否定しない。
 ここまで太ると、太っていることを恥ずかしいと思うやつは、ひとりもい
ない。自信満々のデブは、無敵だ!

 午前11時30分。「メスキート」。
 マツタケ号の前で、記念撮影。
 これが今回の京都合宿のメンバー(後日、掲載予定)。
 国政修くん以外、デブ。
メスキート
  「メスキート」のご主人と、福ちゃんがご挨拶。  料理のほうは、すでに福ちゃんから、福ちゃんのお母さんに通報が行って いたせいで、舌(たん)のスモークが差し入れされていた。  いつもいつも、ありがとうございます!  きょうは、ステーキ4人前、ハンバーグ2人前にして、みんなで突き合う。
メスキート
    再び、1BOXカーで、マンションに向かう。  帰り道、宮本さんが、15日から始まる「祇園祭」の山鉾(やまほこ)を 作っている途中の、道を通ってくれる。 「メイキングものだ!」と、みんな大喜び。もうすでに完成して、試運転し ている山鉾もあった。観光客が山鉾を引っ張らせてもらってうれしそうだ。
山鉾
    お祭りの前からこういう儀式が続くせいで、「祇園祭」が京都では、特別 なんだな。  午後2時。マンションに戻り、新作『桃太郎電鉄』の打ち合わせ。  きょうはいよいよ、貧乏神、キングボンビー、ゲスト・キャラ、メ…、お っと、さすがにきょうの会議は、『桃太郎電鉄』のなかでもいちばん重要な 部分なだけに、ナイショ、ナイショ。  私が仕様書のひとつひとつを読み上げて行って、みんなが気になるところ をいう。  ところが…。 「宮路くん、いちいち仕様書をもとに、攻略法だけ考えないように!」  宮路一昭くんは、桃鉄師範代と呼ばれるくらい、『桃太郎電鉄』が得意な ので、貧乏神の新しいアイデアをいうと、すぐそこからの脱出方法を考えて しまうのだ。 「いやあ、ははは! ぶっとびカードをあらかじめ買っておけばいいかと思 って!」 「そういうこというと、国政修くんに頼んで、宮路一昭くんのロムだけ、嘘 の確率のテストロムにしてもらうぞ〜!」 「そこまでしないでくださいよ〜!」  言っておくけど、次回作で、メカボンビーの値段がかなり高くなるけど、 それは宮路一昭くんのせいだからね〜。恨むなら、宮路一昭くんを恨んでね 〜。何で宮路一昭くんのせいで、値段が高くなってしまったかという理由は ここでは言えないけれどね。 「宮路一昭さんは、本当に『桃鉄』くわしいですね」と、ひろたたけし。 「オレよりくわしいんだよ」と、私。  いつも私は宮路一昭くんに、昔のゲームのことを聞きながら、新しい仕様 書を作っている。 「宮路くん、うんち列車カードって、いつから登場したの?」 「『ハッピー』からです!」 「じゃあ、シャッフルカードは?」 「『7』からです!」  一応、私の仕様書を見れば、いつから登場するかわかるようになっている けど、宮路一昭くんの頭脳検索のほうが早いからね。人間桃鉄インターネッ トだ!  午後5時。めでたく、貧乏神、キングボンビーといった重要な部分の打ち 合わせが終了。  それでもいつもなら、4〜5時間で終了する仕様書の読み合わせが、まる まる2日間で、カードと、貧乏神系だけで終わってしまった。まだイベント の打ち合わせが残っている。いかに次回作に、新作、改良の部分が多いかだ。 さらに小さな声でいいたいが、九州マップ部分の打ち合わせもまったく手つ かずだ。  この続きは、また今度東京でやることになった。  どっちみち、手直しの量が膨大なので、私はしばらくこの仕事にかかりっ きりになる。  福ちゃんが、午後6時に、京都駅で嫁さんと待ち合わせているというので、 先に帰る。 「さあ、福ちゃんもいなくなったことだし、みんなで贅沢で高級で、いかに も京都!っといった感じのお店に食べに行っちゃおうかあ!」とみんなが言 い出す。 「Mがいいかな?」 「忘吾(ぼあ)か?」 「三嶋亭か?」 「菊乃井か?」 「穂積か? それは東京だ!」  さんざんいろんなことを言ってるうちに、土居ちゃん(土居孝幸)が「先 週のさくまサンの日記に載っていた、焼きそばのお店がいいなあ!」と言い 出す。ほかのメンバーも、「あれは美味しそうだ!」と口々に言って、あっ というまに世論は、焼きそばにまとまる。福ちゃんがいなくなったから、値 段の高いお店に行くという話はどこに行ってしまったのだあ!  午後5時30分。大和大路松原の焼きそば専門店「おやじ」へ。  6人前に、すじ肉、玉子などをトッピングして、ひろたたけしと宮路一昭 くんがご飯セットまで食べて、しめて、2050円なり。  値段が安いのにもほどがある!
おやじ
    それよりもっとすごいのは、この6人前の焼きそばが、1分ほどで完成し てしまったことだ。  国政修くんがトイレに行って、戻って来たらもうできていたと驚く。その 焼きそばをわずか、5分ほどで食べてしまった、この人たちのことをもっと 驚くべきだ!  午後5時40分。お店に到着してから、注文して、食べて、ご飯セットを 追加注文して、土居ちゃんがお金を支払って、全員がお店の外に出るまで、 わずか10分。  しかも「今度来るときは、焼きそばの玉を3玉にして、玉子を2個にする と美味しそうだな」「味はものすごくいいけど、ちょっと量が少なかったな。 帰りは京都駅で駅弁買って行こうっと!」とか言っている。  思い出してほしいんだけど、私が先週6日に来て、量が多すぎて、その日 の晩の食事をパンにしたという、焼きそばだよ。  どういう胃袋してんだ、この人たちは。    午後6時。京都駅。 「こんなに早く着いたら、福ちゃんたちに遭っちゃったりして!」とか言い ながら、みんなは新幹線のキップを買いに行く。宮路一昭くんが「手塚治虫 ワールド」で、子ども用のTシャツを買いたいというので、私は「手塚治虫 ワールド」のほうで、待つことに。  しばらく待って、土居ちゃんがキップを買って、戻って来た。  あれ? 土居ちゃんといっしょに、福ちゃんがいるではないか! 福ちゃ んがいるってことは、奥さんも? あ、いたいた。おお! 福ちゃんにはも ったいない、おとなしくて、かわいい奥さんだ。本当にばったり会ってしま ったそうだ。  おやおや。しっかり手をつないじゃって…、そうか、まだ福ちゃんは新婚 ばりばりだったんだっけ!  そういえば、新婚さんを見るなんて、ひさしぶりだなあ。いいもんだなあ! ふたりをとりまく空気が新鮮だ。  土居ちゃん! 君をとりまく空気は、ひとり者の匂いで充満してるぞい! 「手塚治虫ワールド」で、福ちゃん夫婦と話したり、グッズを見ているうち に、みんなが東京に戻らないといけない時間になってしまった。  京都駅で別れて、私はマンションへ。    午後7時30分。マンションに着く。  さっそく新作『桃太郎電鉄』の仕様書の手直し部分に取り掛かる。  少しでも仕事をやっておかないと、週末うちの家族が来たときに、いっし ょに遊べなくなってしまう。  週末は、何ていったって、京都最大のお祭り「祇園祭」が始まる。  去年まったく見ることができなかったので、今年はもうちょっと「祇園祭」 をいろんな角度から楽しんでみたい。  そんなわけで、また私は『桃太郎電鉄』のお仕事の続き!
 

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