さくまあきらホームページ:仕事人裏日記




6月21日(水)


「何でわざわざ京都にひとりでこもって仕事をするんですか?」と
よく聞かれる。

 一番の理由は、集中力。
「よくあんなアイデアが出ますね〜!」というのは、物作りをして
いる人なら一度は言われるホメ言葉だが、何のことはない。ひたす
らおなじことを延々考えるから浮かぶだけである。素人さんより、
圧倒的に時間をかける。さらにそれに拍車をかけるのが、集中力だ。

 東京にいると、打ち合わせが入って来る。
 現在集中しなければならない仕事以外の話がはさまって来ると、
カンタンに集中力が解けてしまう。
 打ち合わせを入れなければいいのだが、それでも自分の部屋には、
集中力を削ぐのに十分なものがたくさん転がっている。
 ビデオ、DVD、LD、TV、本…。
 とくにテレビ神奈川がやばい。
 横浜ベイスターズが映る、テレビ神奈川が危険だ。
 2時間以上に渡って、神経をあっちに集中してしまう。
 京都には、テレビ神奈川も無いし、スカパーも無い。

 京都にいると、仕事の連絡は全部東京の嫁のところで堰き止めて
くれるので、集中力が途切れなくていい。
 集中力というのは、グルメ・バカ娘ののんきな顔を見ただけでも
途切れてしまう、ナーバスなものなのだ。
 若い頃は、隣りに誰がいようが、その場を自分の部屋にできるく
らいの集中力があったのだが、今はこうして、人工的に、集中力を
高めることができる場所を作らないとダメになって来た。
 よく小説家の人が、ホテルに缶詰になるが、あれもおなじような
ものだろう。人間追い込まれると、びっくりするような力を発揮す
るようなものだ。

 もうひとつあるのは、感性がお客さん側に戻れること。
 どうしても東京という場所は、ステージ上だと思うんだなあ。
 今でも新幹線で、新橋の景色が見えてくると、自然と、ほころん
でいた顔に緊張感が戻る。これなどやっぱりステージの上に上がる
直前の感覚だと思う。

 京都にいて、ごくありふれた学生さんみたいな生活をすると、気
分が観客席側になって来る。
 たとえば京都の部屋で、『桃太郎電鉄』シリーズをプレイしたほ
うが、「何でここでこうするのかなあ?」と、お客さん側の気持ち
になって、自分の作品を見ることができる。
 この効果が意外と重要だと思う。

 あと日数が限られているので、どこまで仕事を終わらせるかとい
う目標を決めやすい。
 今回もほぼ、予定通りの仕事をこなせたと思う。
 誤算は、さらに新しいアイデアが浮かんでしまったことだろう。
 作品作りのためにはよかったのだが、さらに仕事が増えた。

 午前7時から、ずっと新作『桃太郎電鉄』の仕様書作り。
 腰が脂の切れたねじのように、ぎしぎし痛い。
 もう1週間近く座りっぱなしなのだから、仕方が無い。
 うっかりマッサージに行って、眠くなって、時間をロスするのさ
え、もったいない状況だから、身体はぼろぼろ。
 それでも以前より、たまに背筋を伸ばすことを覚えた。えばるほ
どのことではない。
 
 午後11時。外に出たら、雨。
 うわっ、まいったなあ。傘を取りに戻るのも面倒だから、アーケ
ードをつたわって行こう。地下街なら、さらに楽だ。
 げっ! 水曜日って、ゼスト御池地下街は、全店お休みなの? 
夜遅く来たみたいに、真っ暗だ。
 
 京都市役所前から地下鉄に乗って、烏丸御池駅で乗り換えて、京
都駅に出る。地下街から、プラッツ近鉄へ。

 午後12時30分。プラッツ近鉄1F「アフタヌーンティー」で、
チキンサンドにコーヒー。まるで東京にいるみたいだ。でもこの
「アフタヌーンティー」は広いし、明るくていいな。
 どこに行っても、GAP+アフタヌーンティーの連合軍にぶち当
たるなあ。

 食後、外に出たら、雨が上がっていた。何だか得した気分。
 バスで、四条河原町まで出る。
 河原町を北上しかけると、いつも長蛇の列ができてる「ひさご寿
し」の行列が少ない。テイクアウト専門のお店だ。せっかくだから、
穴子ちらしでも買ってみよう。きょうもご飯を食べる時間が惜しい。

 午後2時。マンションに戻って、新作『桃太郎電鉄』の仕様書作
り。完全に『桃太郎電鉄』のなかにのめり込んでいるので、仕事が
早い、早い! 
 ストライクが先行しているときの投手のように、気分がいい。

 キーボードを叩いているときは、息を止めていることが多いせい
か、呼吸困難になってくる。深呼吸、深呼吸。
 カタカタ…。カタカタ…。カタカタ…。
 深呼吸、深呼吸!

 カタカタ…。カタカタ…。カタカタ…。
 深呼吸、深呼吸!

 カタカタ…。カタカタ…。カタカタ…。
 深呼吸、深呼吸!

 カタカタ…。カタカタ…。カタカタ…。
 深呼吸、深呼吸!

 午後5時30分。深呼吸でもおっつかないくらい、目が痛くなっ
てきた。ちょっと町内を一周して来よう。やってることが、おっさ
んだな。もう十分おっさんだが。

 おお! 今週号の『フォーカス』だ。
 アリtoキリギリスが特集されている号のはずだ。
 でか〜い! 『有限会社 桃太郎商店』がでかでかと載っている。
私も堀越のりチャンもでかでかと載っているぞ! みなさん、ぜひ
お買い求めください! あのときの取材がこんな風に、掲載されま
したっていうのが、わかって、2倍楽しいよ。
 アリtoキリギリスの特集も4ページ。
 出世したなあ!
フォーカス
   そういえば、一昨日、石井正則くんと奥さんと、うちの親子が、 青山の「えさき」で食事をしたそうだ! 私がいないではないか〜!  くやしい〜! でも私がいないのに、うちの親子と食事してくれる 石井正則くんはえらい! まだまだ出世するな。2年後のNHK大 河ドラマは『前田利家』だそうだから、木下藤吉郎役あたりで、登 場しそうだなあ。石塚義之くんは、雑兵役で、真っ先に竹やりで刺 されて死ぬ役ね。    午後6時30分。マンションに戻り、昼間買って来た「ひさご寿 し」の穴子ちらしを食べる。  えっ? んまい! んまいぞ、これ!  錦糸玉子が上品だ。桜でんぶがわずかに入っているのが、いいワ ンクッション。飽きさせない。もちろん穴子がいい。タレの染み込 み具合が絶妙。くどからず、薄からず。  なるほど、行列ができるわけだ。  今後、お弁当はここと、「はつだ」の特選和牛弁当で決まりだな!  さあて、食後はミネラル・ウォーターをがぶがぶ飲んで、ラスト・ スパート!  明日、東京に戻らないといけない。  今度京都に来るときは、遊びで来たいぞ〜! 京都で仕事ばっか は、つらいぞ〜。   7月は、絶対遊ぶぞ〜! 人に会うぞ〜! 米子に行くぞ! 仙 台に行くぞ! 今治に行くぞ! 北海道に行くぞ! 場所も支離滅 裂! こんなこと言ってるヒマがあったら、お仕事、お仕事!
 

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