5月2日(火)


 今朝も一度、午前5時に起きたものの、二度寝に成功。
 午前10時過ぎまでぐっすり寝ることができた。
 昨日はやっぱり疲れていたようだ。

 西村京太郎さんの『女流作家』に、何度もイノダコーヒ本店に行
く場面が出てきたので、行きたくなる。

 午後12時。イノダコーヒ四条店。本店に行くつもりだったが、
火事で焼けて、改築して再オープンして以来ずっと、お店は大行列
の大繁盛で、とてもひとりで入って居心地のいいお店ではなくなっ
てしまった。

 ひとりで入ると、だいたい10人掛けぐらいの大きな丸いテーブ
ルに座らされてしまう。
 この席がまた、タバコをよく吸うおっさんたちの専用席みたいな
ところだ。私もかつて1日3箱吸うヘビースモーカーだったから、
とやかく言えないのだが、やめてからタバコの煙がかなり苦手にな
った。とはいえ、ひとり、ふたりが吸っている分には、何ともない。
 ただイノダコーヒ本店の丸テーブルのように、10人が一斉に吸
うのは、さすがにつらい。

 しかもこの丸テーブル、手元のところに、テーブルを一周する出
っ張りがあるので、私のようにノートを広げて、文字を書く人には、
大変書きづらい。
 でも、まさかノートしづらいから、席を替えてくれとも言いづら
いしなあ。ひとりで来てるのだし。

 というわけで、本店が改築中によく行っていた、四条店に来た。
 スパゲティ・イタリアンに、カフェオレ。

 食後、いつものようにノートを広げて、アイデア出し。
 イノダコーヒの白いテーブルは、アイデアが出やすいという自己
暗示がみごとにかかり、湯水のように、アイデアが出まくる。
 1時間以上、ペンを走らせっぱなしである。
 本店が空くようになるまで、こっちのお店を利用しようかな。落
ち着くし。

 午後2時。高台寺の先にある、霊山(りょうぜん)歴史館に行く。
 何で「霊山」と書いて、「りょうぜん」と読ませるのかなあ。「れ
いぜん」でもいいじゃないか。あっ。「れいぜん」じゃ、「ご霊前」
になってしまうか。
     ここで「勝海舟展」をやっているのだ。  ポスターに「維新の頭脳!勝海舟展」とある。 「維新の頭脳」とはうまい言い方だなあと思ったら、司馬遼太郎さ んの『竜馬がゆく』のなかからの言葉であった。やっぱりすごいな あ、司馬遼太郎さんは。  その作品群のどこを切り取っても、広告に使えるような文章にな っているんだもんなあ!  一流のコピーライターだよなあ。  ところで、残念ながら「勝海舟展」のほうは、展示物が10品ほ どしかなく、さみしい。思わず受付の年配の方に「勝海舟の展示物 はあそこだけですか?」と聞いてしまったほどだ。  すると非常に丁寧に応対してくれて、勝海舟自体の資料がほとん ど残っていないことを教えてもらう。  へ〜。勝海舟って、明治になってもずいぶん長生きしていたから、 いっぱい資料が残っていると思ったんだけどなあ。長生きしたって ことは、それだけ捨てるチャンスもあったということかもね。  それより、勝海舟の豪快な江戸っ子気質というのは、一応3代続 いて江戸の人間である私は、とても好きなのだが、どうもあの豪快 な性格と、肖像画にある、細面で神経質そうな顔が一致しない。俳 優の山本学に似ている。  およそ歴史上の人物の性格と、肖像画のイメージが一致しないこ とが多いのはなぜなのだろうか? 私だけかな。  間違いなく一致するのは、西郷さんくらいなものだが、上野の西 郷さんの除幕式で、遺族が「西郷さんはこんな人じゃなかった」と 言ったというエピソードを聞くと、さらに首をかしげたくなる。  私の洞察力がまだまだ足りないのかもしれない。  せっかく霊山まで来たので、さらに急な坂を登って、三年坂に向 かって、降りていく。
     道端のつつじがきれいだ。  と思ったら、まっさかまに落ちるような坂道に難儀する。  足が不自由だと、登りよりも下りのほうがつらい。  足が不自由なくせに、こんなところをひとりで歩くなというのが、 正しい意見の気もするが。  実はこの坂を下ったところに、西村京太郎さんと山村美紗さんの 家が並んで建っている。  山村美紗さんのことを書いた『女流作家』を読んで、そういえば 山村美紗さん亡きあと、あの家はどうなったのだろうかと気になっ て来てみた。  きょうは『女流作家』文学散歩だ。  西村京太郎さんの家も、山村美紗さんの家もそのまま残っていた。  山村美紗さんの家の玄関には、今も出版社、俳優さんたちから送 られた花が山のように置かれてあった。中央に山村美紗さんの遺影 が飾ってあるのが、ミステリーの女王らしくて、今も輝いているよ うで、ホッとする。  西村京太郎さんは、現在伊豆のほうで、執筆しているようなので、 この家は引き払ってしまったのではないかと思ったのだが、まだ表 札は「西村京太郎」のままである。  私が300冊以上、西村京太郎さんの本を読んでいることもさる ことながら、私のすぐあとに、おなじ脳内出血で倒れているだけに、 西村京太郎さんのことはとても気になる。  病気も執筆量がまったく減らないどころか、増えているのもとて も気になる。  まだ『女流作家』(朝日新聞社)は、半分とちょっとを読み終えた ところ。読み終えたら、またもう一度ここに来てみようかな。  本当はもっと語りたいことがたくさんあるのだけれど、読み終え ていないで来ると、やっぱり考えがまとまらなかった。  三年坂から、さらに二年坂に向かって歩く。
     明日からゴールデンウィークのピークなので、観光客が微増して いる。  日差しが眩しい。トレーナー1枚なのに、汗をかくくらいだ。  靴の中がホカホカ熱くなっている。  午後3時。京都駅前の「プラッツ近鉄」に行く。  5Fの旭屋書店。この広大な本屋さんを歩いていると、1時間が あっというまに過ぎていく。めったに手に入らない本が置いてある ので、気がつくと、持ちきれないほど本を買っている。  京都のマンションは小さいので、本が入りきらないし、京都に来 るとぶっ通しで仕事してるのだから、本を読む時間が少ないのにな あ。  午後3時30分。伊勢丹の地下2階で、「はつだ」の特選和牛弁 当を買う。  さあて、帰って仕事しようと思って、タクシーに乗ったとたん、 嫁から電話が入る! 「いまから新幹線に乗るから、6時10分に着きます」 「え〜、いまお弁当買ったばかりなのにいっ!」 「はつだ」の特選和牛弁当は夜食にしよう。  午後4時。京都のマンションに戻り、お仕事の続き。  嫁とグルメ・バカ娘が到着するので、1時間半ほどしか仕事がで きないのだが、仕事が佳境に入っているので、わずかな時間でもは かどること、はかどること! 絶好調である。  午後6時。京都駅に、嫁とグルメ・バカ娘を迎えに行く。  そのまま京都駅の伊勢丹デパート7Fの「不二乃」で食事。  この日記ではおなじみの北野天満宮「おひるや豆魂」の系列店で ある。  豆乳の竹なべコース。  お豆腐の美味しさはいつも通りだが、接客係のマニュアル姉ちゃ んは、芸術的なほど棒読みで、こっちが理解しているかどうか確認 することなく、立ち去っていく。  もちろん言葉は聞き取れない。  味とか、器を見ているかぎり、相当情熱があって、素晴らしい経 営者がこのお店を作ったと思わせるのだが、こういうマニュアル姉 ちゃんがどんどん素晴らしいお店を潰して行くのだろうなあ。もっ たいない。  午後8時。京都のマンションに戻り、再び新作『桃太郎電鉄』の 仕様書作りの続き。  ああ! いまどの辺のところの仕様書を作っているのか、べらべ らしゃべってしまいそうなくらい、いまいちばんおもしろいところ を書いている。  いかん、いかん。きょうはこの辺で。全部しゃべってしまう。  明日は小旅行。
 

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