5月1日(月)


 午前5時に目が覚めてしまった。
 仕事が乗って来ると、とたんに眠りが浅くなってしまう。
 いつものトランス状態に入ってしまったのだろう。

 昨日調べ忘れたことをインターネットで調べる。
 熊本県天草の特産品が、何海老だったのか確認したかった。たま
たま昨日読んだ本に、伊勢えびと書いてあって、そんなはずないだ
ろうと気になっていたのだ。それで眠れなかったのかな。

 めでたく本渡市のホームページで、車海老と判明。よかった、よ
かった。さて、これでぐっすり眠れるぞと、もう一度ベッドに横た
わるが、目がさえて眠れない。
 こんなときは本を読むにかぎる。

 ダメだ。うっかり東京から送ってもらった西村京太郎さんの『女
流作家』なんか読み始めたものだから、おもしろくて、ますます眠
れない。

 ええいっ。もう仕事始めよう!
 午前6時だというのに、新作『桃太郎電鉄』の仕様書作りを始め
る。完全にもう眠れなくなってしまった。

 午前11時。気がつけば、もうこんな時間。
 散歩すれば眠くなるだろう。

 午前11時30分。夷川通りのパン屋さん「進々堂」で、グルメ
ハムサンドイッチに、コーヒー。
 グルメハムって名前に誘われたんだけど、冷たいハムに、冷たい
トマトで、お腹が冷えてしまった。パンはあいかわらず、しっとり
やわらかで美味しい。

 午後12時。すぐマンションに戻って、新作『桃太郎電鉄』の仕
様書作りの続き。もうすっかり目が覚めてしまったので、そのまま
働くことにした。自覚症状は無いけど、これを続けるとまた危ない
身体になって行くんだろうなあ。

 まあ、それでも昔ほど、火を噴きながら働いているわけではない
から、病気で倒れたときのストレスも、いまは10分の1ほどだろ
う。のん気なものだ。

 小室哲哉の「TKワークス」とかなんとかいう、3枚組のCDを
聴きながら、お仕事。これだけヒット曲を作ったり、プロデュース
した、小室哲哉はすごいやつだな。
「みんなおなじ曲じゃん」とバカにする輩もいるけど、これだけの
曲数おなじだろうと作れないものだよ。1年間で365曲作ってみ
るといい。似た曲すら出なくなるぞ。

 いかん。熊本県で、加藤清正のことを調べていたら、また旅の虫
がうずくようなものを見つけてしまった。名古屋にいい博物館がで
きているじゃないの!
 豊臣秀吉と加藤清正の記念館?
 歴史もののベストアルバじゃないの、それは!
 おっと、きょうは月曜日だから、休館日か。
 明日あたり危ないな。京都と名古屋はあまりにも近い。
 とにかくいまは仕事!

 夕方、座りっぱなしなので、散歩にでかける。
 うまく料理しきれないアイデアは、外で考えるに限る。
 まいったなあ。玄関を出たとたん、固まっていたアイデアが、カ
ンタンに氷解してしまった。
 ありゃ。まあ、せっかくだから、散歩しよう。

 午後6時。御池川原町の交差点近くに、新しくできた、「びびん
ぱ家」に入る。牛丼の吉野家形式で、石焼ビビンパが食べられる
お店だ。もちろん24時間営業。

 本来なら私は、ビビンパなど、1年に1回ぐらいしか食べない。
 なんで入ったかというと、お店を覗いたとき、女性客が多かった
から。戸田圭すけべえな、戸田係長のように、女の子がいるだけで、
すりよって行ったのではない。
 仕事柄、お客さんの動きというのは、とても気になるのだ。
『桃太郎電鉄』シリーズは、ゲームのなかでも、女性客が非常に多
いということはあまり知られていない。
 もちろん、女性でも楽しめるようなゲーム作りをしている。
 これは秘伝なので、ナイショだよ。
 ラーメン屋のスープの部分だからね。

 だから石焼ビビンパのお店に女性客が多いというのは、それだけ
で調査対象なのだ。

 お店に入る。
 自動券売機で買うようになっている。
 この機械のせいではあるまい。

 余談だが、私はこの自動券売機をうまく作動することができず、
石焼ビビンパ、焼肉定食、テールスープの3つの券が飛び出してき
てしまった。
 私は石焼ビビンパとテールスープだけが食べたかったのだ。
あげく領収書のボタンを押したはずなのに、これは出てこない。

 カウンターに座る。
 お客さん8人中、6人が女性だ。
 多すぎるでしょ?
 しかもけっこう端正な顔つきの女性が多い。
  
 私がやっと、3人目の男性客だ。何が違うのだろう? 店内は本
当に吉野家と何ら変わらない。ちょっと壁が白っぽい程度だ。
 私のあとから、赤ら顔のおっさんが入って来て、ビールと石焼ビ
ビンパを注文していた。もちろん私のように、自動券売機に戸惑い
ながら。
 こういうおっさんが、こういうお店に来るのは、納得が行く。
 でもこういうおっさんが増えたら、女性客は寄りつかなくなるは
ずだ。

 その後も、アベックが何組か来た。
 少し男女比は縮んだが、すぐそのあと女性の2人組が、続けて2
組も来た。
 どうやっても、女性のほうが多い。
 これは絶対からくりがあるに違いない。

 別に従業員の制服も奇抜ではない。
 あっ! わかった! これだ。
 従業員が、私の位置から見える範囲内に、男の子2人、女の子3
人なのだ。しかも女の子の従業員は全員、最前線であるカウンター
まで出て来るのだが、男の子は決して厨房から出てこない。
 さらにその女の子の制服は、バイオレット色。これなら女性が入
りやすいわけだ。
 吉野家といえば、意気のいいお兄ちゃんだ。
 そうか。なるほどね。必ず物事には理由があるのだ。
 なんとなくは、絶対無い。

 まだほかにも隠し味があるのだろう。
 ビビンパであって、丼でないのがいいのかな?
「丼」という単語は、フランス語で男性名詞だったからな。嘘! 
とっても、嘘!

 午後7時。マンションに戻り、新作『桃太郎電鉄』の仕様書作り
を最下位、いや、再開。最下位とはまた不吉な変換。いつ「最下位」
なんてつかったんだ? 横浜ベイスターズじゃないよな?
 明日から、甲子園球場で、横浜ベイスターズ対阪神戦というのも、
誘われるなあ。

 京都入りしてから、3日目。そろそろ檻から出たくなって来てい
るなあ。
 マンションの白い壁に向かって、黙々とキーボードをカタカタ言
わせていると、『竜馬暗殺』を連想する。
 坂本竜馬の近江屋である。
 いきなり誰かがドアを開けて入ってきて、刀で斬りつけて来るよ
うな気がしてくる。
「ほたえな!」
「うわあああああ!」
「脳漿が…」

 歴史マニアだけにしか通じないギャグだが、毎日池田屋騒動跡の
前とか、坂本竜馬暗殺の石碑の前、大村益次郎、佐久間象山、遭難
の碑とか見てると、どんどん気分が明治維新になって来る。
 
 明日は出歩きたいが、新作『桃太郎電鉄』がまたまたものすごい
量の原稿を積み上げているはずなのに、ちっとも終わらない。昨年
から小さな大学ノート10冊分以上のアイデアは、そうカンタンに
まとまらないものだ。
 とにかく働きましょう。
 

-(c)2000/SAKUMA-